週末公開の映画……2015.12.16

『きみといた2日間』☆☆☆
『マイ・ファニー・レディ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年の映画の更新はここまで。ご愛読ありがとうございました。
いかがでしたか?今年は素敵な1本に出逢えましたか?
ちなみに『きみといた2日間』は23日公開ですが、
年末なので、まとめてご紹介しておきます。
新年は8日公開作品から。来年もご期待下さい!
さ、今週は2本です!



『きみといた2日間』は、“ネット婚活”のラブ・ストーリー。

彼にフラれ、医大卒なのに就職も出来ず、
ルームメイトには「恋人と住みたいから、家賃が払えないなら出て行って欲しい」と
言われてしまったメーガン。
恋愛に関しては“お堅い”女性のメーガンでしたが、
現状打破を決意し、出会い系のウェブサイト『ロマンス.com』に登録。相手を探します。
すると意外と良さそうな男性を発見。彼の名はアレックス。
「いつもこうやって相手を探している訳じゃないんだから」と言い訳をしつつ、
アレックスの部屋で一夜を過ごします。
ところが翌朝、口論となり、怒って帰ろうとしたメーガンでしたが、
外は大雪でアパートの扉が開かない。
仕方なく部屋に戻ったメーガンは、もう一晩、
アレックスと一緒に過ごさなければならなくなったのですが…。

ネットで恋人を探すなんて、ろくな出逢いがない。
ボクのいつもの言葉ですが、アメリカでは驚いたことに、
結婚したカップルの約35%がネットで知り合ってゴールインしたんだとか!
う〜ん(笑)。
ま、一発的中じゃなく、何度も失敗しながらじゃないのかなぁと思うのと、
その失敗が取り返しのつく失敗ならまだいいけど、
事件なんかに巻き込まれる可能性もある訳だからね。
ボクはやっぱり“反対”だなぁ。
とはいえ、この映画は実際に高い割合を示す“ネット婚活”を題材にした映画。
アメリカではリアリティがあるということなのでしょう。
入口の(あくまでも個人的な)違和感さえ取り去れれば、
ストーリーとしては、なかなか面白かったです。
えっ?彼女が出来ないんだから、あなたもネットを活用しなさいって?
いや、そこは頑固に拒んでおきたいと思います(笑)。☆3つ。
「きみといた2日間」公式サイト



『マイ・ファニー・レディ』は、複雑に絡み合う男と女のラブ・コメディ。

舞台演出家のアーノルドには変わった“癖”がありました。
ブロンドの高級コールガールを呼び、まずはリッチな食事に誘い、一夜を共にした後、
「この仕事をもうやらないと約束するなら、君の将来に3万ドルをプレゼントする」という。
その後、女性を囲おうとかではなく、
本当に一夜限りなのに大金をあげることに喜びを感じてしまうのです。
実はアーノルドには女優の妻がいて、今はその妻を主役にした舞台を作っている真っ最中。
明日は妻と子どもたちがやってくるからと、アーノルドはまたまたコールガールを呼ぶんですね。
やってきたのはイジーという女性。イジーの夢は女優になること。
いつものようにアーノルドは大金をプレゼントしようと申し出ます。
イジーは喜んでこの仕事から足を洗うことを約束し、名残惜しそうに別れたふたり。
妻たちを空港に迎えに行く途中にも、
見知らぬ女性から「あなたのお陰で夢が叶った」と笑顔で声を掛けられるアーノルド。
そう、以前関係を持った“元コールガール”です。
妻にバレたら大変と、逃げるように立ち去るアーノルドでしたが、
さらに面倒な事態が発生していたのです。
昨晩のイジーが偶然にも彼の舞台のオーディションを受けに来ていて、
なんと役どころはコールガール。見事な演技でオーディションに合格してしまうんですね。
それすなわち、妻と共演することに。
頭を抱えるアーノルド。果たして、この“危機”を乗り越えることができるのでしょうか…。

これがまた複雑で、妻に気のある主演俳優。イジーに一目惚れした脚本家。
その脚本家の現恋人が、イジーの通うセラピストだったり、
大のお気に入りだったイジーが前職を辞めてしまったことで、
探偵を雇って付きまとう裁判官や、
その裁判官が雇った探偵が脚本家の父だったりと、もうグッチャグチャ(笑)。
ま、ドタバタ喜劇の結末は、見てのお楽しみということで。お遊びはほどほどに。☆3つ。
「マイ・ファニー・レディ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.12.11

『A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)』☆☆☆
『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』☆☆☆
『独裁者と小さな孫』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先日、某大物俳優さんが日本の映画に対して語っていて、
「TV局がTVドラマみたいな映画を作り、それがヒットする。
本来映画はそんなに薄っぺらくない」と。
考え方は様々ですが、ちょっと面白いなぁと。
実は、逆の意見を聞いたことがあります。
「TVのドラマ制作者は映画を作れるけど、
映画の制作者はTVドラマを作ることができない」と。
両者のプライドがぶつかり合ってます。
寿司屋の職人と、回転寿司の経営者に似てるかなと、
寿司屋に生まれたボクは思うのです(笑)。
玄人衆に言わせれば、実はこのふたつ、似て非なるものなんですョ。
さ、今週は3本です!



『A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)』は、
コーヒーの求道者たちを追いかけたドキュメンタリー。

街中のカフェはもちろん、コンビニでも挽いた豆から落としたものが買えるようになり、
より身近な飲み物になったコーヒー。
“質より量”のコーヒー業界に対し、
「飲む人がおいしいと満足する最高のコーヒー」を“スペシャルティコーヒー”と言い、
これが今、世の中に広がっているそう。
普通、ボクらが飲むのは“コモディティコーヒー”と呼ばれるもので、
大量生産されたものが均一化され、大手企業の手によって取り引きされていると。
一方のスペシャルティコーヒーは、
コーヒーのプロフェッショナルが生産者との間でダイレクト・トレード(直接取引)し、
産地、栽培方法、風味などの品質管理を徹底したもの。
そのコーヒーへのこだわりを、世界的に有名な、
また世界のコーヒー好きが注目するプロフェッショナルたちが語る1本。
いや、こだわりなんて言葉では軽いぐらいの情熱を持って、
皆さん、コーヒーに対峙しています。
うれしいのは、そんな中で今はもう閉店してしまった
日本のコーヒー店が“至高の1軒”として出てくること。
それは表参道にあった『大坊珈琲店』。
コーヒーの香りがスクリーンのこちら側にまで伝わってきそうです(^^)。☆3つ。
「A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)」公式サイト



『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』は、スペインの不思議な建造物、
サグラダ・ファミリアの実体に迫るドキュメンタリー。

スペイン・バルセロナにある未完の教会、サグラダ・ファミリア。
「聖家族贖罪教会」と名付けられたこの建物は、1882年に起工式が行われ、
1900年代には完工する予定だったのが、
初代の建築家がわずか1年で依頼主との間でトラブルとなり、
跡を継いだアントニ・ガウディが彫刻などの装飾を重要視し始めると、
ものすごく時間がかかり始めたとか。
途中、第一次、第二次世界大戦や、スペインの内戦などもあり、
資金調達が難航したりしながら、ガウディの死後も、建築は続いています。
竣工から133年!完成までに300年はかかると言われたサグラダ・ファミリアですが、
05年には世界遺産にも登録され、
毎年300万人を超える観光客が訪れるバルセロナのシンボル的建築物となりました。
技術の進歩もあり、予定はぐっと早まって、2026年に完成予定だそう。
この年はガウディの没後100周年に当たります。
サグラダ・ファミリアの関係者や宗教学者など、様々な人へのインタビューと、
技術者や芸術家の仕事ぶりも内部に潜入したカメラが見せてくれます。
あの特異なデザインの教会は一体なぁに?と、世界中の多くが思っているはず。
これを見れば、その謎が解けるかもしれませんョ。☆3つ。
「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」公式サイト



『独裁者と小さな孫』は、イランを離れ、
ヨーロッパで亡命生活を送るモフセン・マフマルバフ監督の作品。

とある独裁国家。
大統領は冷徹な独裁者。これまで圧政で国民を支配してきました。
ところが、ある日、クーデターが勃発します。
大統領の妻と娘は先に国外に逃亡したのですが、
小さな孫は幼なじみのマリアとオモチャから離れたくないと駄々をこね、
大統領と国に残ることに。
すると民衆の暴徒化は進み、大統領の首には賞金がかけられます。
逃亡の途中、次々と変装し、あらゆる手段を使ってなんとか逃げようとするふたり。
怒りの国民たちから、果たして逃げ切ることはできるのでしょうか…。

イランのテヘランに生まれたモフセン・マフマルバフ監督は、
人権活動家としても知られ、05年にイラン政府の検閲の圧力に抗議し、
母国を離れ、ロンドン、パリを拠点に活動を続けている文化人。
そのマフマルバフ監督のコメントに、“アラブの春”で独裁政権が崩壊した後も、
実は多くの暴力行為が行われていて、民主化が困難になっているとありました。
暴力が暴力を生み、懐疑的になった指導者はまた民衆を力で押さえつけようとする。
そうなったら首をすげ替えただけで、結局は以前と何ら変わらないのです。
どうしたら平和に暮らせるのか。そのカギは一体?
監督自身の出自から、架空の独裁国家を舞台に描かれたこの作品。
宣伝文句にもありますが、“衝撃の結末”に注目です。☆3つ。
「独裁者と小さな孫」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.12.3

『007 スペクター』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年もいよいよあと1ヶ月を切りました。
12月の後半はイベントがビッチリなので、見られる本数も限られてしまいます。
ボクにはここからがラストスパート。少し早仕掛けですが(笑)、
できる限り足を運びたいと思っています。
さ、今週は1本です!


『007 スペクター』は、24作目となるシリーズ最新作。

メキシコのお祭り“死者の日”。
人混みをかき分け歩く、仮装した男女。その男こそがジェームズ・ボンド。
ビルの屋上から狙う銃口の先にいたのは、スタジアム破壊のテロ計画を語る男たち。
すると直後にビルが爆破されてしまいます。
崩れ落ちる建物から逃げながらも、ターゲットを追うボンド。
彼らが口にしたワードや、奪い取ったリングに、今回のカギが隠されていそう。
上司だった先代Mの遺言、イギリス情報部“00”部門解体の危機、
ボンドを狙う謎の組織“スペクター”とは?
ボンドは危険な謎解きに挑むのでした…。

6代目ダニエル・クレイグになって4作目の007。
もうすっかりイメージは焼き付きました。
ポーカーフェイスで表情ひとつ変えないクールさは、一般的に描くスパイ像のひとつ。
ニヤケ顔のボンドとはまた違ったセクシーさ感じる女性ファンも多いはず。
今回も世界中を飛び回り、自らに課した危険なミッションを次々クリアしていきます。
あらすじを知らなくても、いや、ストーリー展開を知らない方が楽しめると思いますョ。
貫禄の安定です(笑)。☆4つ。
「007 スペクター」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.11.26

『愛を語れば変態ですか』☆☆
『亜人 第1部―衝動―』☆☆☆
『サクラメント 死の楽園』☆☆☆
『スニーカーヘッズ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


東京モノレールに乗ったら、車両が27日公開の『亜人』スペシャルになってました。
期待の度合いがわかります。
2週間限定公開。作品の詳細はこの後で。興味のある方はお見逃しなく!
さ、今週は4本です!



『愛を語れば変態ですか』は、演出家・福原充則の映画監督デビュー作。

郊外の住宅街で、脱サラしてカレー屋さんを始めようという夫婦がいました。
開店を翌日に控え、幸せそうに準備をしていたのですが、次々と変な客がやってきます。
まずは態度の超デカいアルバイト志願者。夫は拒むも、妻は雇ってあげなさいの一点張り。
次に来たのがカレー屋の開店祝いにレトルトカレーを持ってきた若い男。
夫も知っている妻との“訳あり男”のよう。
さらに不動産屋のちょっとアブナい担当氏が1億円を持って、
全身傷だらけで店を訪れます。
グズな夫の後輩は手伝ってるんだか、足を引っ張ってるんだか。
こんなことで明日の開店に間に合うのかという時に、珍客来店の理由が判明するんですね。
その原因のすべては、妻にあったのです…。

演劇界の鬼才と言われる監督の作品。なるほど舞台演劇っぽいなぁという感じです。
夫は妻を愛し過ぎているのか、妻の主張にNOを言えず、最終的にはすべて受け入れている。
珍客たちに対してもそう。ボクはそこにイライラが募る(笑)。
もうその時点で個人的にNOになっちゃう。
逆に「面白いっ」という人はこのあたりでニヤニヤするんでしょうね。
監督で演出家の堤幸彦さんは絶賛のコメントを寄せていますから、
ハマる人にはめちゃめちゃハマるんでしょう。もしかしたら玄人ウケするのかも?
タイトルから興味を持ったら見てみて下さい。ボクはすみません、☆2つ。
「愛を語れば変態ですか」公式サイト



『亜人 第1部―衝動―』は、桜井画門の大ヒットコミックのアニメ映画化。

アフリカで“神の兵”と呼ばれた不死身の兵士が、アメリカ軍によって捕獲されます。
それは“亜人”という不死の生物。見た目は普通の人間なんですが、
どんな死に方をしようとも、すぐに身体を再生し、復活する。
この亜人は世界で46体、日本では2体が確認されていたのですが、
未確認の亜人は他にもたくさん存在するだろうと思われていたのです。
高校生の永井圭は下校途中、トラックにはねられ死亡。ところが直後に生き返ります。
そう、圭は亜人でした。
「なんでボクが…」。
クラスメートは圭の情報を垂れ流し、懸賞金欲しさに日本中の人間が圭を追いかけます。
亜人管理委員会の責任者・戸崎は警察に緊急配備を命じる中、
幼なじみの海斗の力を借りて逃げる圭。
ところが、圭を追っていたのは警察だけではありません。
先に発見されていたふたりの亜人も圭に接近しようとしていたのです…。

まったく下知識もなく見た、この映画の試写。
圭が学校で亜人について勉強した帰りに事故に遭い、自分が亜人であることを知るのですが、
そもそも亜人とは何なのか、登場人物の詳細も何もわからないまま話は進み、
それでもグイグイと引き込まれるものがありました。
圭の言動が時に優しさに満ち溢れ、しかし時に恐ろしいほどにドライというか、
感情が欠けているというか。これが亜人の特徴なのでしょうか。
コミックを読んだ人はわかってるんでしょうけど(笑)。
ボクはこのままワクワクしながら次を待ちたいと思います。
ちなみにこの作品は3部作。まずはこの第1部をお見逃しなく。☆3つ。
「亜人 第1部―衝動―」公式サイト



『サクラメント 死の楽園』は、実際に起きた猟奇的な事件を描いたドキュメンタリーホラー。

ファッションカメラマンのパトリックは、数年前から妹が失踪。
その妹から奇妙な手紙が届きます。
妹はある共同体で暮らしていて、お兄ちゃんも一度来てみては?というのです。
妹に会いに行くのに、過激な取材スタイルで知られるVICE社の取材チームも同行。
潜入取材を試みます。
ヘリコプターで向かった先は“エデン教区”。
久しぶりの再会を果たした妹は元気そうで、笑顔で兄に語ります。
ここではファーザーと呼ばれる人物のお陰で、みんなが幸せに暮らしている。
ここは理想郷だと言うのです。
ところが何かがおかしいと感じずにはいられませんでした。
そんな時、ひとりの少女が彼らにメモを手渡します。
そこには「私たちを助けて」と書かれていたのです…。

1978年に、カルト教団『人民寺院』の信者による集団自殺があったのを覚えてますか?
南米の小国ガイアナの奥地で、教祖ジム・ジョーンズのもと、914人が一斉自殺。
実際に取材陣が乗り込み、教祖という男の悪い噂を確かめるべく下院議員も現地に入ったのですが、
その議員を含む視察団の5人が武装した信者たちに撃たれ、死亡。その直後に集団自殺は起こります。
そのおぞましい事件をドキュメンタリー風に追ったのがこの映画。
観客が、当事者のひとりのような目線で見られる
“POV”という主観映像で撮影されているのも特徴のひとつ。
どんな臨場感が味わえるのか、気になる人は劇場に足を運んでみて下さい。☆3つ。
「サクラメント 死の楽園」公式サイト



『スニーカーヘッズ』は、スニーカーマニアを追ったドキュメンタリー。

ヒップホップカルチャーやバスケット人気に端を発した、スニーカーブーム。
履くための靴から、収集するためのアイテムへ。
なぜスニーカーフリークはこんなにもスニーカーを集めるのか、
スニーカーのどこに惹かれるのかを、
実在のスニーカーマニアたちにインタビューしたドキュメンタリー映画です。
その一方で、スニーカーのために命を落とした若者もいて。
過熱するスニーカーブームの今を描いています。
靴にはこだわりますが、正直さすがにそこまでは…といった感じ(笑)。
有名人でもハマる人はものすごくハマってるんですね。
あなたはどうですか?☆3つ。
「スニーカーヘッズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.11.20

『さようなら』☆☆☆
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』☆☆
『レインツリーの国』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


フランス、パリの同時多発テロ。
映画のような出来事は、幸せなことならいいけど、悲劇は映画の中だけであって欲しいと願います。
今週は3本です。



『さようなら』は、人間と本物のアンドロイドの共演による近未来物語。

放射能汚染が進み、人が住めない環境になってしまった日本。
政府は“棄国”を宣言し、海外への移民を進めるものの、
汚染された日本人を受け入れるにはどの国もおよび腰。
そこで、国民に優先順位を付け、順番に避難させていたのです。
10歳の時、南アフリカから来日したターニャは、長年日本に住んでいるのに、
難民だったため、優先順位はかなり下。
さらに病を抱えており、逃げられないと、半ば覚悟を決めていました。
そんなターニャの同居人は、アンドロイドのレオナ。
幼い頃から病弱だったターニャのために、今は亡き両親が与えてくれた旧型アンドロイド。
もう足が動かなくなっていて、今ではレオナも車椅子で生活していたのです。
同様に一人暮らしの女友達の佐野も、ターニャの恋人だったはずの敏志も、彼女の元を去り、
いよいよターニャはレオナとふたりきりになってしまったのです…。

本物のアンドロイドと人間との共演が話題の作品。
マツコ・デラックスのアンドロイド“マツコロイド”を作った
石黒浩教授が手掛けた“ジェミノイドF”がレオナを演じています。
この作品、劇団・青年座の舞台の映画化でもあります。
見どころは、最後の最後にやってきます。特別な描写に息を飲むことでしょう。
無味乾燥のスクリーンから観客を救ってくれるのも最後。
多少の長いと感じるのは正直否めませんが、独特の世界観に、☆3つ。
「さようなら」公式サイト



『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』は、ハンガリー映画。

両親が離婚し、学校で所属していたオーケストラでも問題児扱いされていた少女のリリ。
彼女の唯一の友達は、飼い犬のハーゲンでした。
ある日のこと、母親が長期出張のため、大嫌いな父親に預けられたリリは、
父親からハーゲンを拒絶されるんですね。
実は、雑種犬は飼い主に重い税が掛けられ、無許可の場合は当局によって捕獲、
殺害されていたからなのです。
度重なるトラブルの末、父親はついにハーゲンを遠く離れた高架下に置いてきてしまいます。
ハーゲンは町をさまよい、なんとか生き延びますが、悪徳ドッグ・トレーナーに捕まり、
過酷な訓練を受け、闘犬に。野生が目覚めた瞬間でした。
獰猛な野獣に姿を変えたハーゲンは闘犬場を飛び出しますが、当局に捕獲されてしまいます。
その保護施設でハーゲンは、ついに人に牙を剥いてしまうのです…。

犬の映画は基本的に感動的なものが多いので、期待して見にいったのですが、
かなりざっくりと作られていた映画で(笑)。
そこからそういう事態にはならないだろうということが、いとも簡単に起きてしまう…。
その大雑把さはちょっと受け入れられませんでした。
後でプレスを読むと、
ひと握りの階級がその他大勢を支配するハンガリー政治への批判が含まれているとか。
自国の人が見れば、比喩がわかるのかもしれませんが…。ごめんなさい。☆2つ。
「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」公式サイト



『レインツリーの国』は、有川浩の人気小説の映画化。

大阪で美容室を営む両親の元に生まれた伸行は、今は東京の食品会社の営業マン。
父が倒れ、いよいよ店を閉めることになり、実家に帰って部屋を整理していると、
高校時代に大好きだった小説「フェアリーゲーム」の下巻見つかりません。
結末が思い出せず、モヤモヤしていた伸行は、ネットで検索。
すると“レインツリーの国”という名のブログに行き着くんですね。
都内在住のひとみという女性が書く「フェアリーゲーム」の感想に同感した伸行は、
ひとみに感想を送るんですね。
ひとみからも返信が届き、そこからやり取りを繰り返し、「よかったら会いませんか」と誘う伸行。
迷っていたのか、しばらくしてOKの返事が。
初デートにもかかわらず、ひとみは実に注文が多い女の子。
うるさい店はイヤ、映画は洋画の字幕版、
さらには乗ったエレベーターが定員オーバーでブザーが鳴っているのに降りようとしない。
伸行はひとみに怒りをぶつけます。何度も何度も謝るひとみ。
実はひとみは耳に難聴を抱えていたのです…。

耳が不自由なひとみと、明るい関西人の伸行が育む恋の物語。
でも、ボクはなんかメチャメチャ違和感を感じたんですよね…。
あまり多くを書くと誤解が生じそうなので書きませんが、ひとみの態度も、伸行の行動も、
またひとみに対する社会の向き合い方も、「そんなですか?」って。
例えば、補聴器をつけてる女性を、ボクらはヒソヒソ、ジロジロ見ます?見ませんよねぇ。
デフォルメかもしれませんが、個人的にはちょっと違うんじゃないかなぁと。
これまたすみません。☆2つ。
「レインツリーの国」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.11.12

『ハーモニー』☆☆☆☆
『パリ3区の遺産相続人』☆☆☆
『ラスト・ナイツ』☆☆☆☆
『ローマに消えた男』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


11月13日はボクの誕生日。
この日も1本試写を見に行くのですが、2作品、時間が被っていて。
コメディか家族がテーマの物語、どっちにしようか迷ったけど、やっぱり後者を選ぶ予定(笑)。
自分へのプレゼントになりますように(^^)。
さ、今週は4本です!



『ハーモニー』は、伊藤計劃の小説を劇場アニメ化する“Project Itoh”の第2弾。

未来社会。
高度発達医療に支えられ、人間こそが最重要とする“生府”が成立。
多くの人間が“Watch Me”と呼ばれる恒常的体内監視システムを身体に埋め込み、
あらゆるリスクを避けることに成功したのです。
日本は“優しさと思いやりの国”。トァンはそんな均一化された幸せの日本が嫌で、
強い権限を持つWHOの螺旋監察官として、紛争地域の監視にあたっていたのでした。 どうしても生命主義への違和感を拭い去ることができないトァンは、
酒やタバコなどの裏モノに手を出し、それがWHOの知るところに。
彼女は自国日本での謹慎を言い渡されます。
久々に帰国し、学生時代の親友キアンと再会。
昔話に花を咲かせるのですが、話題はもうひとりの親友ミァハの話になります。
ミァハは強い意志を持つカリスマ的天才少女でした。
「Watch Meなんかに管理されてる自分は自分なんかじゃない。
死ぬことでしか自分の存在を立証できない」。
そんなミァハの言葉に、3人は集団で自殺をはかるのですが、
ミァハだけが死んだとされ、他のふたりは助かってしまいます。
ランチの途中、キアンの様子が急変。
「ミァハ、ごめん」。そう言うと、キアンは自らの首にナイフを突き刺したのでした…。

34歳の若さで急逝した伊藤計劃(けいかく)。
このプロジェクトの第1弾『屍者の帝国』でも紹介しましたが、すごい才能の持ち主だったんですね。
人と異なる観点で言葉を紡ぎ、鋭く未来を切っていく。
そこには単なるSFではない、我々の生き方への警告のようなものも流れているようで。
この『ハーモニー』は、病床で書いた作品だとか。
病気のない世界をどんな思いで描いていったのか。
そのあたりも頭の片隅に置いて見ると、彼の死生観のようなものが垣間見えるかもしれません。
朝10時の試写はしばしば空いているものですが、会場も補助いすが出るほど超満員で、
アニメの持つ可能性のようなものをボクらに知らしめてくれたような気がしています。
今から最後の1作品も楽しみです。満点でもいいくらいかな。☆4つ。
「ハーモニー」公式サイト



『パリ3区の遺産相続人』は、大ヒット舞台劇の映画化。

離婚歴3回の冴えない中年男性、NY在住のマティアス。
ずっと疎遠だった父親が亡くなり、遺産の中にパリのアパルトマンがあると知り、
パリ3区と4区にまたがるマレ地区を訪れます。
借金まみれで、売却すればかなりの金になる。
そう目論んでいたマティアスでしたが、
そのアパルトマンにはイギリス人の老婦人マティルドが住んでいて、
フランス伝統の不動産売買制度“ヴィアジェ”のお陰で、
元の所有者であるマティルドが亡くなるまでは売却できないと。
さらにこれを相続するには、
月2400ユーロをマティルドに払い続けなくてはならないと言うのです。
頭を抱えるマティアスでしたが、すべてを置いてパリに来た彼は、
お金を払ってこのアパルトマンに住むことにします。
婦人の金目の物を黙って売却したり、密かに不動産会社と売買の話を進めたりしているうちに、
1枚の写真を見つけるんですね。それは父とマティルドの仲睦まじい写真でした。
さらなる父の裏切りを知り、怒り心頭のマティアス。
マティルドにはひとり娘のクロエがいて、クロエは妻子持ちの男性と不倫中。
酒に酔ったマティアスが、自分の母が目の前で自殺した話をクロエにすると、
クロエも母が父以外の男を愛していたことを幼い頃から知っていて心を傷めていたと。
でも、今、自分がやっているのは母と同じこと、とこぼすんですね。
初めは何かと反目しあっていたマティアスとクロエでしたが、
この瞬間、ふたりの間に通じる何かが生まれたのでした…。

再生の物語です。
監督は『いちご白書』の脚本などで知られるイスラエル・ホロヴィッツ。
彼のオリジナル舞台劇を、自ら脚本、監督したのが本作。初監督作品だそうです。
マティアスがどうしようもない男で、感情移入は難しいけれど(笑)、
みんなが幸せに向かって前進して行くのを見るのは悪いものではありません。
特にお年寄りがいますからね。
ここでひとつ心配になるのは、マティアスとクロエは異母兄妹じゃないのか?ということ。
それは見てのお楽しみです(笑)。☆3つ。
「パリ3区の遺産相続人」公式サイト



『ラスト・ナイツ』は、紀里谷和明監督のハリウッド進出第1弾作品。

舞台は、とある封建国家。
一国の領主バルトーク卿のもとに、都からの使者がやってきて、書状を手渡します。
それは皇帝に仕える悪徳大臣ギザ・モットからの露骨な賄賂の要求でした。
不正を嫌う気高いバルトーク卿は、騎士団のリーダーであるライデンを呼び、
この国の未来を憂いながら、「私の魂を継ぐのはお前しかいない」と、自らの後継者に指名。
バルトーク家に代々伝わる名刀を授けます。
天涯孤独の荒くれものだったライデンをここまでしてくれたバルトーク卿に、
ライデンは感謝し、改めて忠誠を誓うのでした。
上京し、ギザ・モットと対面したふたりの手土産は布1枚。
怒り狂ったギザ・モットは、言われ無き罪をバルトーク卿に被せ、死刑を宣告。
なんとライデンにバルトーク卿の首を斬るよう命じたのです。
城も燃やされ、バルトーク卿の妻や娘は追放。騎士団もバラバラになってしまいます。
復讐を誓う騎士団の面々とは逆に、ライデンは妻と別れ、酒と女とギャンブルに溺れる日々。
このまま、ライデンは輝きを失ってしまうのでしょうか…。

モーガン・フリーマンら豪華俳優陣を起用した、本格的ハリウッド作品。
日本の『忠臣蔵』を題材にした原作と出会い、映画化を決意したそう。
人としての普遍的テーマである“義”。
国籍、肌の色を問わずにキャスティングしたあたりにも、
紀里谷監督自身のアイデンティティが表れているのかもしれません。
西洋の“忠”たる騎士道に、時代劇のスカッと感が加わった1本。
実によく出来ていたと思いますョ。☆4つ。
「ラスト・ナイツ」公式サイト



『ローマに消えた男』は、監督自らが書いた小説を映画化したミステリアスなヒューマンドラマ。

イタリア最大野党を率いるエンリコ書記長。
選挙を前に支持率は低下。党大会でも、その責任は彼にあると、
支持者はエンリコに非難の声をぶつけるんですね。
その翌日、エンリコが会議に姿を見せません。
不審に思った腹心のアンドレアが自宅に向かうと、
エンリコは置き手紙を残して姿を消してしまっていたのです。
党のトップが失踪なんてスキャンダルを今出すわけにはいかないと、
アンドレアは「体調を崩して入院中」とマスコミをごまかし、妻のアンナに連絡を取ります。
アンナも知らなかった夫の突然の行動。
あてもなく、どうしたものかと思案していると、アンナがあることを思い出すんですね。
「夫にはジョバンニという双子の兄弟がいる」。
替え玉になってもらったらどうかというのです。
ジョバンニは哲学の教授。ただ、心の病を治療して、施設を退院したばかり。
それでも背に腹は変えられぬと、アンドレアはジョバンニのもとを訪ねるのでした…。

イタリアの名優、トニ・セルヴィッロの一人二役。
失踪したエンリコが向かった先は昔の恋人の家。
彼女はすでに結婚し、子供もいたのですが、理解ある夫に許しを得て、しばし部屋を貸します。
その夫が著名な映画監督で、映画好きだったエンリコは、身分を隠し、裏方として撮影現場に入ります。
一方、ジョバンニは頭のキレが抜群。
マスコミの辛辣な質問にもユーモアたっぷりに切り返し、党の支持率は回復を見せると。
ところがそう何もかもが上手くはいかないってところに、さらなるドラマが待ってるんですね。
プレスにもありましたが、まさに“消えた男と現れた男の物語”。
映画の裏方としてイキイキと生きるエンリコは、どちらの人生が本当の幸せなのかを考えます。
もうひとつ☆を加えようか迷ったぐらい。なかなか面白かったです。☆3つ。
「ローマに消えた男」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.11.6

『シネマの天使』☆☆☆
『7s/セブンス』☆☆
『起終点駅 ターミナル』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年もあと2ヶ月となりました。試写もあと何本見られますやら。
睡眠不足で行っても、眠ってしまっては迷惑を掛けるばかり。
体調も整えて、できるだけ足を運びたいと思います。
さ、今週は3本です!



『シネマの天使』は、実在した日本最古の映画館を舞台にしたファンタジー映画。

122年続いた老舗の映画館「大黒座」の閉館が決定。オーナーにとっても苦渋の決断でした。
残された時間を惜しむように、映画ファンが、そして大黒座ファンが集まります。
それを取材に来たTVのスタッフたちと、昔の写真を見ていると、あることに気付くんですね。
「時代はみんな違うのに、同じ老人が映ってないか?」
確かにそこには、ハットを被り、白く長い髭をたくわえた老人の姿がありました。
新人として働き始めたばかりの明日香は、館内で謎の老人と出会います。
それは、あの写真の老人だったのです…。

広島県福山市にあった「シネフク大黒座」。
1892年に開館し、2014年の8月に閉館となった、日本最古の映画館です。
地方商店街のシャッター通り化が問題になってますが、この街も例外ではなく、
近くにシネコンが出来たのをきっかけにその歴史に幕を閉じようと決めたそうです。
ただ、この歴史的な映画館を映像で残したいという思いから、
この映画の企画が持ち上がり、「シネフク大黒座」でのロケと相成りました。
壁に書かれたお客さんからのメッセージを始め、様々なシーンが実際の映像なんですが、
重機が入って解体される場面は個人的には見たくなかったかなぁ…。
現実とファンタジーの入り混じった、哀しいけれど温かい1本。
福山は競馬場も閉鎖されてしまいましたからね。世の無常を感じずにはいられません。
間違いなく、街の皆さんにとっては思い出がいっぱいの素敵な映画館だったはず。
お勤めご苦労さまでした!☆3つ。
「シネマの天使」公式サイト



『7s/セブンス』は、映画制作に夢を賭ける若者たちの物語。

居酒屋でバイトをしながら自主映画を作っている、監督のサワダ。
彼の作品がインディーズの映画祭でグランプリを獲得。
賞金100万円を手にし、次回作への意欲を燃やします。
そんな時、居酒屋の客としてやってきた小劇団のメンバーと意気投合。
中には人気のお笑い芸人やモデルなどもいて、とんとん拍子に話は進み、
サワダの映画にみんなで出演することが決まります。
サワダの書いた脚本は『7s』という7人の詐欺師集団によるサスペンスもの。
ところが、撮影が始まると、トラブルが多発。
資金も底を尽き、映画は未完成のまま、撮影はストップしてしまったのでした…。

テーマがインディーズ映画だからなのか、
この作品自体、ものすごくインディーズ感が漂っています。
それは決して悪いことではないんですョ。ただ、ストーリーの骨子を考えた時、
トラブルがあり、挫折があって、それを乗り越えて再起をする。
また、その周辺のサイドストーリーにもドラマがあると。
確かにそういうものだと思うのですが、「何故?」という、
ポジティブにもネガティブにも、“起因”の部分が弱い気がするんですよね…。
「描かれているじゃないか」と言われると思うのですが、それが弱い。
個人的な肌感かもしれません。
逆に気になるという方は是非劇場へ。すみません、辛口ですが。☆2つ。
「7s/セブンス」公式サイト



『起終点駅 ターミナル』は、桜木紫乃原作の人気小説の映画化。

旭川の裁判所で裁判官として働く鷲田完治。
エリートである彼は、間もなく東京に戻ることが決まっていたのです。
そんなある日のこと、とある裁判で被告人として彼の前に現れたのは、
学生時代の恋人、結城冴子でした。
薬物の犯罪で執行猶予付きの判決を言い渡した完治は、
裁判終了後に冴子が働く釧路のスナックへと向かいます。
愛し合い、支え合っていたのに、自分の前から忽然と消えた冴子との間に、
再び愛の炎が燃え上がります。
ただ、完治には東京に妻子がいたのです。
それでもすべてを棄てて、冴子とやり直そうと決めた完治は、
東京へ戻る日、冴子とふたりで釧路の駅に向かいます。
「電車に乗るまでは、他人のフリをしよう」。
悪戯っぽく笑う冴子の言葉通り、駅のホームでも距離を置くふたり。
すると、ふっと笑顔を見せた冴子は、入って来た電車に身を投げたのでした。
あれから25年。完治は釧路の地で、国選弁護士としてひっそりと暮らしていました。
そこに、彼が弁護を担当した椎名敦子という若い女性が、完治を頼って訪ねてきます。
そこからです。何かが再び動き出したのです…。

度々紹介するボクの中高の同級生、篠原哲雄監督作品。
贔屓目を抜きにして、本当にスゴい作品でした。
完治に佐藤浩市、冴子に尾野真千子、敦子に本田翼というキャスティングなんですが、
特にプロローグでありながら、完治という男の生き様をあぶり出す、
冴子との一部始終に、鳥肌が立ちました。
原作は読んでいないのですが、予感が当たってしまったというか。
本当はこの部分も書きたくなかったぐらいで。
でもあえて書いたのは、その先にある完治の物語が、さらに素晴らしいから。
人生は自分以外の様々なものに翻弄されて、自分が思い描くままになんて絶対に進まない。
それとどう向き合い、どう次を選択をしていくのか。
その繰り返しであるのと同時に、後悔もするから人生。
その失敗や後悔の先を、幸せに変える生き方というのがあると、
教えてくれる1本でもあります。
俯瞰で見た時に、もっといい人生ってあったよねと思うかもしれない。
でもボクはね、幸せは“点”でもいいんじゃないかって思うのですョ。
富や名声を得て悩むより、そこそこでも笑顔と感謝の1日なら、
それは素晴らしいんじゃないのかなって。
万の不幸も、一の小さな幸せが全部吹き飛ばしてくれる。
それが人生の素敵なところじゃないでしょうか。
劇中に、完治が料理をする場面がたくさんあって。これがまた篠原監督らしい演出(笑)。
ややもすれば寒々しいストーリーに、ぽっと灯りをともしてくれるような役割を担ってます。
篠原哲雄作品の代表作になること間違いなしです!☆5つ。
「起終点駅 ターミナル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.10.30

『1001グラム ハカリしれない愛のこと』☆☆☆☆☆
『氷の花火 山口小夜子』(評価なし)
『わたしの名前は…』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


『氷の花火 山口小夜子』は、ひとりの素敵な女性の人生を追った映画。
☆を付けるのはちょっとおこがましいかなと思い、「評価なし」とさせて頂きました。
さ、今週は3本です!


『1001グラム ハカリしれない愛のこと』は、ノルウェー映画。

ノルウェー国立計量研究所に勤めるマリエ。
“計る”エキスパートでしたが、人の心は計れなかったのか、結婚には失敗。
別居中の夫が家から少しずつ荷物を運び出している現状に、心を痛めていたのです。
マリエの一番の理解者だった父は研究所の重鎮。
ところが、その父が心臓発作で倒れてしまいます。
父の代わりに、マリエはノルウェーの“キログラム原器”(1キログラムの基)を
“国際キログラム原器”と比べてもらうために、パリ郊外にある国際度量衡局へ。
厳重に保管された原器を大切に運んだマリエは、そこでパイという男性と出会います。
些細な会話を楽しみ、別れたふたりでしたが、比較の済んだ原器を取りに再びパリに向かった時、
偶然カフェでパイと再会。ふたりは互いのことを話し合うのでした。
帰国したマリエが家に戻ると、別居中の夫が最後の荷物を持ち去る場面にばったり。
父も亡くなり、みんないなくなってしまうと動転したマリエは、車を急発進。
横転事故を起こし、キログラム原器を壊してしまうのでした…。

無機質なトーンで描きながらも、あったかいところは十分にあったかい作品。
その後、傷ついたキログラム原器を持って、三度パリへ飛び立ったマリエを救ってくれたのは、
またしてもパイでした。
そのパイとの恋愛話もいいんですが、この映画のキモはタイトルにもある“1001グラム”。
亡き父と、娘との間で起こるある出来事なんですが、
ここで顔が緩むというか、ふと優しい気持ちになれるんですねぇ。
そこを理解するにも、途中に散りばめられた伏線を絶対に見逃さないこと。
最近多いんですよ、「魂の重さは21グラム」だって話。あっ(笑)。
ラストも大人のユーモアにニヤリです。ついつい満点をつけたくなっちゃう作品です。☆5つ!
「1001グラム ハカリしれない愛のこと」公式サイト



『氷の花火 山口小夜子』は、
1970年代以降のファッション界を牽引した女性モデルのドキュメンタリー。

黒髪のおかっぱ頭に、キレ長の目。“東洋の神秘”とも言うべき容姿で、
世界的ファッションモデルとなった山口小夜子さん。
世界一流のデザイナーのコレクションに出演。パリ、NYを中心に大活躍しました。
日本では資生堂の専属モデルとなり、お茶の間にたくさんのCFが流れたので、覚えてる人も多いはず。 この映画は、生前に山口さんと親交のあった松本貴子監督が、
山口さんの没後7年目に、衣装やアクセサリーなどの遺品が入った箱を開けることを許され、
それをきっかけに山口小夜子という女性の生き様を辿っていこうとカメラを回した作品。
自分の身体で表現をするモデルという職業。
山口さんにとって、その先には前衛的演劇やダンスパフォーマンスもあったようで、
人々が「えっ?」と驚く方向へも活動の矛先を向けてるんですね。
近いようで、遠い昔の70年代。まだ女性の社会進出が当たり前ではなかった時代です。
そんな時代背景を考えながらこの映画を見ると、特に女性は何か感じ入るものがあると思いますョ。
「氷の花火 山口小夜子」公式サイト



『わたしの名前は…』は、ファッション・デザイナーのアニエスベーが本名で撮った初監督作品。

父親からの性的虐待を受けていた12歳の少女。
誰にも言えずに悩んでいた彼女でしたが、ある日、学校の遠足で行った浜辺に、
1台のトラックが停まっていました。そのトラックに隠れるように乗り込みます。
運転手はスコットランド人の男性。
フランス語と英語で満足な会話も成り立たない中、なんとか互いの気持ちを探ろうとしているうちに、
ふたりの間に“ある種の愛情”が芽生えてきます。
そんなふたりの、トラックの旅が始まったのです…。

アニエスベーの本名はアニエス・トゥルブレ。
主人公の少女とドライバーは、父娘ほども年が離れてるので、
“ある種の愛情”と言っても、ふたりの“愛”は違う種類のものだと監督は語っています。
過去は消せないと知っているから、少女にとって、このトラックの旅が現実逃避の救いだったのかも。
でもね、世の中にはアブない人はいっぱいいるんだよ。いい人でよかったね(笑)。
デザイン以外でも自己表現をしたかったとか。
彼女のブランドのファンは、是非劇場へ足を運んでみて下さい。☆3つ。
「わたしの名前は…」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.10.23

『トランスポーター イグニション』☆☆☆☆
『マルガリータで乾杯を!』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先日、『ザ・ウォーク』という“綱渡り”の映画の試写を見に行くのに、
会場である虎ノ門のソニーピクチャーズに行かず、
間違えて市ヶ谷にあるSME(ソニーミュージックエンタテインメント)の
試写室に行ってしまいました。
いつも早めに出るので、今から虎ノ門に向かってもギリギリ間に合うかなぁという時間。
けど、駅からはかなり歩く。よし、急げと。
まずは地下鉄かJRかの選択をミスし、選んだJRのドアは目の前で閉まる。
虎ノ門駅からは強烈に急な坂が待ち受け、到着したものの、
ビルのエレベーターは超近代式で申し込みをしない階には止まらないという…。
ホントにギリギリで間に合い、ハァハァ言いながら、「綱渡りだ…」(笑)。
さ、今週は2本です!


『トランスポーター イグニション』は、主演俳優を替えてのシリーズ最新作。

貧しい生活で、悪の組織に売られた少女たち。
売春を強要され、いつかは復讐をと、心の底でずっと機を伺っていたのです。
あれから数年が経ち、壮大なる復讐劇の幕が切って落とされます。
“運び屋”フランク・マーティンに依頼を持ちかけたのは妖艶な美女のアンナ。
1:名前は聞かない
2:契約厳守
3:依頼品は開けない
3つのルールを了承し、契約は成立。
すると、フランクの愛車に乗り込んできた依頼品とは、
アンナと同じ服装と髪型の2人の女性だったのです。
3人はさらにフランクに依頼事をするのですが、契約にないと拒むフランク。
そこでフランクが見せられたのは、人質となり、毒を飲まされた父親の姿でした。
毒が回るまで12時間。
解毒剤を渡すのと引き換えに力を貸すことにしたフランクでしたが、
彼女たちが復讐しようとしている相手とは、フランクの特殊部隊時代のライバル、
“狂人”カラソフ率いる巨大犯罪組織「カルテル」だったのです…。

リュック・ベッソン製作、脚本。
今作からエド・スクレインに主役俳優を替えてのシリーズ最新作です。
いわゆる“高値安定”。ストーリーがしっかりしてると、この手の作品はハズレないですよね。
派手なカーアクションはもちろんのこと、登場人物のキャラがそれぞれに立っていて。
なかなか見応えのある1本でしたョ。
フランクのパパが、ちょい悪オヤジで、強いんだけど隙がある。
ま、そんな男がモテるんでしょうけどね(笑)。☆4つ。
「トランスポーター イグニション」公式サイト



『マルガリータで乾杯を!』は、インド映画。

19歳の女子大生、ライラ。
生まれつきの障害を持ち、車椅子での生活ですが、明るく前向き。
音楽が大好きで同級生とバンドを組み、作詞を担当。
彼女の詞を絶賛してくれるボーカルの男の子にも恋心を抱いていました。
ところが、彼に告白するも成就はせず、
嫌な出来事が続いたライラは大学に行かなくなってしまいます。
そこに舞い込んできたNY留学の話。お父さんは反対するも、
お母さんが後押しをし、母が同行する形でマンハッタンへ。
夢と希望に満ちた、アメリカでの生活が始まったのですが…。

19歳の女の子の青春物語。
恋もするし、エッチなことにも興味を持つ。それを心配する母と、母の病。
新たに出来た恋人は、目が不自由だけど強い意思を持つ“女の子”。
理解してくれない家族たち…。
プレスにあった解説を読むと、衣装などから、ライラの両親も、
実はインドではまだ少ない異教徒同士の結婚。
特に母はかなり先進的な女性らしいんですね。
そのあたりを知って見ると、また感想も違うかもしれません。
ライラも、ライラの恋人のハヌムも、障害のない女優さんが演じていると。
これ、かなりビックリです。
監督の従姉が脳性まひで、この作品のモデルになっているそう。
主演のカルキ・コーチリンは、彼女と一緒に暮らして役作りをしたそうです。☆3つ。
「マルガリータで乾杯を!」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.10.16

『サイボーグ009vsデビルマン』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


仕事に疲れて、眠い目をこすりながら、
それでも行った試写会でいい映画に出会うと、気持ちがほっこり(^^)。
映画は心のビタミン剤です!
さ、今週は1本です!


『サイボーグ009vsデビルマン』は、
人気アニメ・キャラクターのコラボレーション。

ブラックゴーストにより改造人間となった009たちは、悪に与えられた特殊能力で悪に立ち向かい、
デーモンのアモンと不動明が合体して悪魔人間となったデビルマンは、
正義の心と悪魔の力を身に付け、デーモンと戦っていたのです。
共に自らの存在に葛藤を抱くサイボーグ009たちとデビルマンでしたが、
とある事件がきっかけで、両者が激突することに。
生き残るのは果たしてどちらなのか?この戦いの先にあるのは一体何なのでしょうか…。

石ノ森章太郎のサイボーグ009と、永井豪のデビルマン。
ボクらが夢中になった“ヒーロー”です。
どんな展開になるのか楽しみにしてたのですが、1本の映画ではなく、
短編が3本といった構成で、ちょっと想像していたのとは違っちゃいました。
それが悪いということじゃないんですョ。ただ、少しマニアの、というか、
少し高めのアニメファン向けの作品になっちゃってるのかなぁと。
狙いはそこにあるのかもしれませんが。
2週間限定のイベント上映だとか。興味のある人は劇場へ“加速”せよ!
って、わかるかな(笑)。☆2つ。
「サイボーグ009vsデビルマン」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.10.9

『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』☆☆☆
『海賊じいちゃんからの贈りもの』☆☆☆
『先生と迷い猫』☆☆☆
『名もなき塀の中の王』☆☆☆
『ファンタスティック・フォー』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年ちょうど100本目の試写が、ジャッキー・チェン最新作『ドラゴン・ブレイド』でした。
馬がいっぱい!テーマも今の時代にピッタリ。
後半に進むに従って、目が離せなくなっていきます。覚えておいて下さいね。
公開は来年の新春。実際、劇場で観られる時にはもう年も明けてるんですから、
先々と生きてるなぁと感じてしまいます(笑)。
2016年は、どんな年越しをしてるのでしょうね。
さ、今週は5本です!


『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』は、ドキュメンタリー。

この映画の監督でもあるジョン・マルーフが、自身の執筆本に使う、
古いシカゴの街並みの写真を探していたところ、
地元のオークション・ハウスでたくさんのネガを入手することに。 ヴィヴィアン・マイヤーという女性のものだったその写真を、
ジョンが少しずつブログにアップしたところ、大反響!
一体、ヴィヴィアン・マイヤーとは何者なんだろうと、ネットで検索しても引っかからず。
2年後に再び検索したところ、遂にヒットしたのですが、
それは数日前に彼女が亡くなったという死亡記事だったのです。 それでも手掛かりは掴んだと、ジョンは住所のところへ話を聞きに行きます。
そこでわかった事実。彼女はプロの写真家などではなく、ナニー(乳母)だったのです。
ますます興味を持ったジョンは、幼少期をヴィヴィアンに育てられた人々にインタビューを敢行。
ヴィヴィアンの人間像を掘り下げていくという映画です。
発掘したヴィヴィアンの写真で作った写真集は全米売り上げNo.1になり、
プロのカメラマンをも唸らせることに。
いかにも現代的なスポットライトの浴び方。インターネット時代の産物と言えそうです。
ヴィヴィアン自身も、天国でどう感じているのでしょうね。☆3つ。
「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」公式サイト



『海賊じいちゃんからの贈りもの』は、ハートウォーミングなコメディ映画。

父ダグ、母アビーに、9歳の長女ロッティ、6歳の長男ミッキー、
4歳の末娘ジェスからなる、5人家族のマクラウドー一家。
今日はこれから、おじいちゃんの誕生日を祝いにスコットランドまで出掛けます。
実はダグとアビーは別居中で、離婚直前。子供たちはちゃんとそれを察していました。
おじいちゃんの家にはダグの兄夫婦も来ていて、兄弟仲が悪いから、
子供たちは居心地が悪いったらありゃしない。
そこでおじいちゃんと3人の子供は浜辺へドライブ。
「おじいちゃんは海賊の子孫なんだ」と告白すると、子供たちは大興奮!
そんなおじいちゃんは高齢もあって、身体の調子が悪く、
なんとおじいちゃんが浜辺で死んでしまうのです。
子供たちは考えます。そして、おじいちゃんのことを思って、ある行動に出るのですが…。

子供→大人→老人。みんな順番に歩むプロセス。
だけど、いっつも大人が一番ダメですよね(笑)。
子供の純粋さ、老人のおおらかさ。大人はどちらも失っちゃうし、持ってもいない。
3人の個性的な子供たちが、突拍子もない行動に出るんだけど、おじいちゃん、
「よくやってくれた」と笑ってんじゃないかなって思うんですよね。
それが何かは見てのお楽しみです。☆3つ。
「海賊じいちゃんからの贈りもの」公式サイト



『先生と迷い猫』は、イッセー尾形主演作。

学校を定年退職した元校長先生の森衣恭一。
町のみんなからは、堅物な生活態度に皮肉も込めて、“先生”と呼ばれていました。
妻に先立たれ、友人もいない先生の元を訪れるのは、亡き妻が餌を与えていた三毛猫のミイと、
先生が撮り貯めた写真を町の資料にと足しげく通ってくる市役所の若い男性職員だけ。
ところが、邪魔だと思っていた1匹と1人のうち、
猫のミイの方がパッタリ顔を見せなくなったのです。
そうなるとミイのことが心配になります。
町を探し歩くと、ミイはいろんなところでいろんな人に可愛がられていたようで、
美容室ではタマコ、駄菓子屋ではソラ、いじめにあっていた女子中学生はちひろと呼んで、
みんながこの三毛猫に癒やされていたのです。
そうと知った先生は、みんなで協力して、ミイを探し出そうと、
懸命の捜索を始めるのでした…。

毛嫌いしてたけど、いないと寂しい。人間も勝手なもので(笑)。
でも、先生がミイにツラく当たっていたのは、奥さんのことを思い出してしまうから。
わかる気もしますよね。
いたらいたで奥さんを思い出す。
いないと奥さんとのすべてが断ち消えてしまうかのよう。複雑なんでしょう。
猫の自由気ままな性格がこの町の人々を掻き回しているのか、
いやいや人間のほうが勝手に自分で自分を掻き回してるのか。
猫ブームですからね。猫目線でのカメラワークもあります。
猫好きにはたまらない映画かもしれません。☆3つ。
「先生と迷い猫」公式サイト



『名もなき塀の中の王』は、刑務所内を舞台にしたバイオレンス映画。

19歳の犯罪者、エリック。
本来ならば少年院にいるはずのエリックでしたが、あまりに凶暴で、
成人用の刑務所に移送されてきたのです。
独自のルールで秩序が守られている“塀の中”に、怖いもの知らずの若者が投げ入れられる。
当然トラブルが起こるのですが、エリックに「大人しくしてろ。命を落とすぞ」と
諭すように話す中年の受刑者がひとり。
実はエリックが5歳の時に収監されて、そのまま別れ別れになった、父親のネビルだったのです。
相変わらず問題ばかり起こすエリックに、心理療法士のセミナーを受けさせるのですが、
初めてのコミュニケーションに、心を開いては閉じるの繰り返し。
それでも効果は少しずつ見られるようになっていきます。
その一方で、エリックを事故に見せかけて殺してしまえという声が、
囚人の内外から出てくるんですね。
果たしてエリックは、この閉じられた空間の中で、生き延びることができるのでしょうか…。

人の愛を知らずに育ったエリック。
希望などなかった彼に、少しの光が差したとしたら、それは父との再会と、
同じような境遇の仲間との出会いだったかもしれません。
この映画で象徴的な役割を果たすのが、くるくると回る鉄の回転扉。
激しい暴力シーンも見どころのひとつですが、その回転扉も見逃してはならないアイテムです。
覚えておいて下さいね。☆3つ。
「名もなき塀の中の王」公式サイト



『ファンタスティック・フォー』は、マーベルで最初のヒーローチームの物語。

天才小学生のリードは、小学5年生で物質転送装置を完成させます。
部品の調達は、同級生で父親が廃品業者のベンが手助け。
7年後、ふたりは地元の科学コンテストに装置を出品するのですが、
レベルの低い審査員にはまったく相手にされません。
ところが、それを見ていたバクスター財団のストーム博士がリードをスカウト。
息子のジョニー、養女のスー、同じく天才肌のビクターとチームを組んで、
物質転送装置の研究を始めます。
そうして完成した自信作の実験第1号は自分たちだと、博士やスーには内緒で、
ベンも含めた4人が異次元のプラネット・ゼロへと向かったのです。
転送は成功。ところがトラブルが発生し、ビクターが戻れなくなってしまいます。
リード、ジョニー、ベンと、仲間を助けようと機械を操作していたスーの4人は、
プラネット・ゼロの異次元パワーで、身体に異変が生じるんですね。
一方のビクターはというと、さらなる強大なパワーを身につけ、
邪悪な敵へと姿を変えていたのです…。

リードは手足が自由に伸び、ジョニーは体から発火して空も飛べ、
スーは透明になって身近な物質は通り抜け、ベンは巨大な岩の塊として無敵のパワーを持つ。
ファンタスティック・フォーの始まりです。
以前一度公開になった同名映画とは原作が違うのだそう。
だから同じ部分があっても、別物だと思ったほうがいいみたい。
きっと近い将来、アベンジャーズの面々と
“オールスター宇宙戦争”みたいになるんじゃないかなと(笑)。今から楽しみでしょ?
高値安定。さすがマーベルです。☆3つ。
「ファンタスティック・フォー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.10.3

『顔のないヒトラーたち』☆☆☆
『屍者の帝国』☆☆☆☆
『罪の余白』☆☆☆
『無頼漢 渇いた罪』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


10月になりました。日暮れが早くてビックリ。
ずいぶんと寂しさが増してきました(笑)。秋の夜長とはよく言ったものだなぁと。
そんな夜のお供は読書や映画鑑賞。と言っても映画はレイトショーかDVDになりますかね。
ゲームで無益な時間を過ごすよりは、実に有意義な過ごし方だと思いませんか?
さ、今週は4本です!



『顔のないヒトラー』は、実在の人物を題材にしたドイツ映画。

第二次世界大戦から10数年が経ったドイツ。
国の復興はなりましたが、大志を抱く若い検事のヨハンは、
交通違反の裁判ばかりで辟易としていました。
そんな時、検察庁のロビーにひとりの新聞記者が現れ、
アウシュヴィッツ収容所にいたナチスの親衛隊員が、
違法に学校の教師をしていると訴えたのです。
誰も耳を貸そうとしなかったのですが、ヨハンだけは違いました。
調査を始めると確かに記者の告発通りで、そのことを検事総長のバウアーに報告するのですが、
未だに政府機関には多くのナチ党員が存在し、
戦争犯罪者として彼らを裁くのは難しいと知らされます。
それでも自身の正義感から、この高く大きな壁に挑むヨハン。
ところが、調査を進めるうちに衝撃の事実を知ることに。
なんと、ヨハンの父親もナチの党員だったのです…。

第二次世界大戦では、同盟を組んで戦った日本とドイツ。
同じ敗戦国なのに世界的に評価が異なるのが、この戦争の反省と総括。
おそらく、ドイツ人が自らを裁くようにこういう映画を作るというのも、
戦争に対する反省のひとつとして評価される部分なんでしょうね。
プレスにあったドイツ在住のジャーナリスト氏によれば、ドイツ人自らが、
ナチスによるユダヤ人大虐殺などの過去とずっと対決し続けているからこそ、
周辺諸国との間で過去を巡る不毛な論争は起こっていないのだと。
ナチスの戦争犯罪に触れることをタブー視し、
過去にフタをしようとしていた50年代から60年代初頭。
それを崩したのが1963年に行われたアウシュヴィッツ裁判で、この映画は、
裁判を実現に導いた検察官たちの苦悩を描いた作品だということです。
日本でも安保法案が可決した今、いろいろと考える契機になる1本かもしれません。☆3つ。
「顔のないヒトラーたち」公式サイト



『屍者の帝国』は、34歳の若さで亡くなった小説家・伊藤計劃の
3つの小説を劇場アニメ化した“Project Itoh”の第1作目。

死者の蘇生という禁忌な科学技術が発達し、屍者を軍事力や労働力として活用していた19世紀末。
ロンドンの天才医学生・ワトソンは、亡くなった親友のフライデーを、
生前の約束通りに蘇生します。しかし、個人での死者蘇生は禁止行為。
諜報機関に呼び出され、ある任務を命じられるんですね。
それは100年前に意志を持った屍者を作った、
ヴィクター・フランケンシュタイン博士の究極の技術が記されているという
「ヴィクターの手記」を探すこと。
その手掛かりは、アフガニスタンの奥地に新型屍者の帝国を作っているという、
ロシアの司祭で天才科学者のカラマーゾフが持つと言うのです。
肉体だけでなく、親友フライデーの魂をも蘇らせたいと望むワトソンにとって、
ヴィクターの手法は是が非でも手に入れたいもの。
屍者となったフライデーと共に、ワトソンの過酷な旅が始まったのでした…。

伊藤計劃(けいかく)は、亡くなった後に『ハーモニー』で日本SF大賞を受賞するなど、
没後も評価の高い小説家。
その3つの長編小説をアニメという形で劇場公開。
その魅力を広く知ってもらおうというのが“Project Itoh”というプロジェクト。
10月2日公開の『屍者の帝国』に続いて、『虐殺器官』が11月13日、
『ハーモニー』が12月4日に公開となります。
原作を読んではいませんが、オリジナリティ溢れる独特の世界観。
絵の魅力もあるでしょうが、ちょっとクセになりそうな雰囲気を持つ作品です。
他の2作品も気になります。☆4つ。
「屍者の帝国」公式サイト



『罪の余白』は、心理サスペンス小説の映画化。

大学で行動心理学を教える安藤教授。
妻に先立たれたものの、ひとり娘の女子高生・加奈と仲むつまじく暮らしていました。
ところが、通っていた女子校の教室のベランダから加奈が転落し、死亡してしまうんですね。
目撃証言では、加奈が自ら手すりに登り、突然飛び降りたと。
事故なのか、それとも自殺なのか。
行動心理学の教授なのに、娘の心の変化に何ひとつ気付いてやれなかったと自らを責める安藤の元に、
笹川と名乗るクラスメートがやってきます。
何か手掛かりはないかと、ふたりで加奈の部屋を探し、パソコンの中に日記を発見します。
そこには咲という美しいクラスメートとの間にあった確執が書かれていたのです。
安藤が咲という同級生に会うために学校へ出向き、力を貸してもらおうと笹川を呼び出すと、
現れたのはまったく別の少女。驚く安藤にもうひとつ驚愕の事実が。
先日自宅を訪れた少女こそが、実は日記にあった咲だったのです…。

原作は芦沢央のデビュー小説『罪の余白』。
咲という少女は、クラスメートや先生、さらには警察をも巧みに操る悪魔のような美少女。
安藤も例外なく、咲の術中にハマっていきます。
教授の職も社会的信頼も、すべてを失う安藤。
心身共にボロボロになりながら、それでも娘の死の真相究明と、咲への復讐を誓うんですね。
ここであまり多くは語りませんが、大学教授vs女子高生。
ハラハラドキドキしながらご覧下さい。☆3つ。
「罪の余白」公式サイト



『無頼漢 渇いた罪』は、韓国の“ハードボイルド・メロドラマ”。

殺人課の刑事ジェゴンが追うのはジュンギルという殺人容疑者。
ジュンギルは投資会社の専務の愛人だったヘギョンと恋仲になってしまい、
怒った専務が送り込んだ男を殺してしまったのです。
ジェゴンはヨンジュンと名前を偽ってヘギョンに近づき、潜入捜査のため、
彼女が経営するバーの営業部長として働き始めます。
多額の借金を抱えるヘギョンに、さらに金を借りに来るジュンギル。
「上海でやり直そう」というジュンギルの言葉を信じるヘギョン。
そんな彼女のそばにずっと一緒にいることで、特別な感情が湧いてきてしまうジェゴン。
ヘギョンもまた、近くで自分のために頑張ってくれるジェゴンに好意を抱き始めます。
とは言っても、殺人犯の恋人とその犯人を追う刑事。この恋の結末は果たして…?

登場人物のすべてがスネに傷を持つ人ばかり。
互いにそこに共感を抱いたのか、ヘギョンとジェゴンは惹かれ合うんですね。
一途な心の持ち主だからこそ、生き方が下手なのか。
ある意味、すごく純粋で、だからこそ悲劇がより悲劇として伝わってくるのかなと。
“ハードボイルド・メロドラマ”とは、宣伝会社が考えたであろうキャッチフレーズ。
確かにこの映画にはピッタリです。☆3つ。
「無頼漢 渇いた罪」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.9.25

『合葬』☆☆☆
『チャンス商会〜初恋を探して〜』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


シルバーウィーク明け、もう遠出はいいやと思ってる方も意外と多いかも?
そんなあなたは映画館へ。国内だけでなく、海外や、過去や未来にまでも旅ができますから。
さ、今週は2本です!


『合葬』は、江戸時代の幕末を生きた若者たちの物語。

慶応4年、徳川15代将軍慶喜が、大政奉還の後に江戸城を明け渡し、水戸へ謹慎。
将軍の警護と江戸市中の治安維持のために結成された彰義隊の存在意義も薄れ始めていたのです。
メンバーのひとり、極は、婚約を破棄したいと許嫁の家に向かいます。
その許嫁の兄で、極の幼なじみでもある悌二郎は「なぜ?」と問いただすのですが、
極には深い思慮がありました。
幕府が解体した今、政府にとっては反体制派と見なされるだろうと。
そうなれば家族や親族に迷惑が掛かる。
ゆえにすべてと縁を切り、彰義隊の活動を続けたいと言うのです。
「彰義隊に何の意味がある」。
そう問い詰める悌二郎でしたが、将軍への忠誠を誓った極は、
自分の命など惜しんではいなかったのです。
極を彰義隊から脱退させようと本部に乗り込む悌二郎でしたが、
対応した穏健派の森篤之進は言います。
「彼らの暴走を抑えることができるのは、君のような者しかいない」。
その言葉に、悌二郎も彰義隊に加わることを決意するのでした。
極を守るため、妹を幸せにするために…。

原作は没後10年を迎えた、江戸風俗研究家で漫画家の杉浦日向子さん。
実は生前の彼女とボクは、親交があったんですョ。
意外なことに、競馬を通してなんですけどね。
幕末には様々な若い武士の組織がありましたが、あまり広くは知られていない彰義隊の物語。
熱い志を持ちながら、短い青春を生きた若者がたくさんいたんだということを、
知ってもらいたかったんだと思います。
今の時代に照らし合わせても、いろいろと感じ入るようなテーマがちらほらと。
考えさせられることは多いかと思います。
ただ、やや台詞回しが現代風というか、身体に染み付いていないというか。
時代劇の言い回しって独特なんですよね。そのあたりかなぁ。
役者さんたちも若いので、頑張ったなとは思います。☆3つ。
「合葬」公式サイト



『チャンス商会〜初恋を探して〜』は、韓国映画。

再開発計画に揺れる街の老舗スーパー、チャンスマート。
そこで働く70歳独身のベテラン社員のソンチルは、お客さんにも無愛想。
それでもなぜか憎めないキャラクターだったのです。
ソンチルが判を押せば、街の再開発が始まるのに、頑として押さないソンチル。
街のみんなは頭を抱えていました。
そんなある日のこと、ソンチルの家の向かいに、母娘と幼い娘が引っ越してきます。
美しいグンニム婦人を意識し始めるソンチルでしたが、ある出来事がきっかけで、
グンニムに食事をご馳走することに。
女性との食事なんて初めてのこと。
そこでチャンスマートのチャンス社長に、あれやこれやとデート指南を受けるんですね。
その一部始終を周りのみんなに報告するチャンス社長。
グンニムは色仕掛けでチャンス社長がソンチルに判を押させようと送り込んだ刺客?それとも?
ソンチルの思いは不器用に膨らむばかりなのでした…。

“チャンス商会”とは好機を売る店じゃなく、人の名前(笑)。
「なんだぁ…」と思ったけど、そんなファンタジー以上に胸を打つ映画でした。
ネタバレしちゃうと元も子もないので、非常にシンプルにしか書きませんが、
ボクは涙がポロポロこぼれて、どうしようかと大変でした。
典型的な韓国映画のパターンじゃないかと言う人もいるかもしれません。
でも、ボクには“大ハマり”。泣きたい人にはお勧めですョ。☆4つ。
「チャンス商会〜初恋を探して〜」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.9.19

『アントマン』☆☆☆☆
『心が叫びたがってるんだ。』☆☆☆☆
『ハッピーボイス・キラー』☆☆☆
『ポプラの秋』☆☆☆
『ぼくらの家路』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今週も先週に引き続き5本のご紹介。ボクの中では怒涛の公開ラッシュです(笑)。
お気に入りの作品がありますでしょうか?気になったら劇場に足を運んで下さいねっ。
さ、今週の5本です!



『アントマン』は、マーベル・スタジオのニューヒーロー。

盗みの罪で刑務所に入れられていたスコット。
出所の日、昔の監獄仲間だったルイスが迎えに来てくれました。
スコットがずっと気に掛けていたのは、娘のキャシーのこと。
別れた妻には新しいパートナーがいるのですが、娘のために、
まっとうな人生を生きようと決意したのです。
ところが世間の風は冷たく、過去がわかればバイトもクビに。
結局、拒み続けていたルイスの盗みの話に乗ってしまうのでした。
忍び込んだ豪邸の厳重なセキュリティーを、知能と判断力、
そして運動神経で破っていくスコット。
ところが、ようやく開けた金庫の中にあったのは、バイク用らしきスーツとヘルメットだけ。
「金目のものなんかありゃしない」。
仕方なく持ち帰って着てみると、なんと1.5センチの小さな身体に!
不気味なものだと戻しに行った時、スコットは警察に捕まってしまいます。
実はキャシーの新たなパパは警察官。
このことはキャシーの耳にも届いてしまうんですね。
すると、留置場にひとりの紳士が現れ、「助けてやるから、言うことを聞け」と。
実は、盗みに入ったのはこの紳士の家で、スコットをテストしていたのだと言います。
彼が与えた任務とは、“アントマン”になること。
同じ極小化の技術を使って、軍事利用しようとしている悪人を止めて欲しいと言うのです。
娘のために、スコットは小さなヒーローになることを承諾するのでした…。

アリを味方につけ、悪と戦うアントマン。
アベンジャーズのメンバーも登場して、まぁアメリカにはたくさんのヒーローがいるなと(笑)。
発想の勝利ですよね。日本の柔道の“柔を持って剛を制す”。そのミクロ版?
実はスコット、最初の罪も義憤から起こしたもの。
根底には正義の心があったのです。父娘の愛情物語にも胸が熱くなりますョ。
こちらも続編に期待。そのためにも、まずは入口たる1作目は観ておかないと。☆4つ。
「アントマン」公式サイト



『心が叫びたがってるんだ。』は、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
のスタッフが作ったアニメ映画。

あのお城には王子さまがいて、舞踏会に誘ってもらえる。
家の近くにあるラブホテルをお城だと信じていた、幼い頃の成瀬順は、
“お城”から出てくるお父さんを見てしまいます。
そしてお母さんにうれしそうに話すのです。
「すごいョ、お母さん。お父さん、王子さまだったんだ!」。
順の言葉が原因で両親は離婚。父は出ていくことに。
行かないでとすがる順に父が残した言葉、それは、「おまえは本当におしゃべりだな」。
それから順はしゃべれなくなってしまったのです。
高校2年生になった順は、心を閉ざし、言葉も失ったまま。
コミュニケーションは携帯のメール。
そんなある日のこと、音楽教師でもある担任の城島先生が、地元イベント
「地域ふれあい交流会」の実行委員を4人選びます。
誰もがやりたがらない中、選ばれたのは、野球部の元エース・田崎大樹、
優等生でチアリーダー部の仁藤菜月、
菜月と中学生の頃付き合ってたとの噂がある坂上拓実、そして成瀬順。
いやいや始めたイベントの準備でしたが、少しずつ打ち解けてきてわかったこと。
それは、言葉を無くした順だけではなく、
みんな心に叫びたい何かを持っていたんだということでした…。

よかったですョ。この映画。
順は歌なら声が出て、演目はミュージカルに決まる。
拓実が順の気持ちを見透かすようにわかってしまうので、
順は拓実に「王子さまがいた!」と恋心を抱く。
拓実にも過去に辛い思いがあったから、順の気持ちがわかったんですけどね。
大樹は甲子園目前のケガで夢が立ち消え、
野球部の中で陰口を叩かれていることに気づいていない。
ところが、それを知ってしまう。
菜月は拓実との恋を清算し切れていない。
みんな、それぞれに悩みを抱えていたのです。
順調に行くかと思われたミュージカルも、最後に新たな障害が出てきます。
それを乗り越えることかできるかどうか、という青春ストーリー。
音楽、声、伝える。ボクの人生の根幹を成す要素で構築された映画だけに、
いろいろ考えるところがありました。若いって、いいよなぁ(笑)。☆4つ。
「心が叫びたがってるんだ。」公式サイト



『ハッピーボイス・キラー』は、コミカルなサイコ・スリラー。

バスタブ工場に勤める、ちょっと変わった青年ジェリー。彼には精神疾患がありました。
それでも、忌まわしい過去から脱却しようと、裁判所が任命した精神科医のサポートの元、
社会復帰を実現していたのです。
ところが、家に帰ると、しゃべる犬と猫がいて、
彼らがジェリーにあれやこれやと指示を出します。
職場で恋心を抱いた女性と、会社のイベント準備で接近。
デートの約束まで漕ぎ着けたのですが、すっぽかされてジェリーは失意のどん底に。
その晩、偶然出会った彼女を、ジェリーは殺害してしまうんですね。
死体を切り刻み、首だけを残すと、なんとその首が話し始めるではありませんか!
しゃべる犬と猫と生首。ジェリーの狂った日常はさらにエスカレートしていくのでした…。

精神科医が出す薬を飲むと、犬や猫の声は聞こえなくなる。それはそれで寂しい。
ましてや好きな女性の声も聞こえなくなるのはイヤだと、
薬を拒否すれば、症状は進行していく。
残忍な連続殺人を、どこかコミカルに描いた作品です。
B級感溢れるこの手の映画には、絶対にマニアなファンがいるはず。
そんな人には、たまらないんじゃないですか?☆3つ。
「ハッピーボイス・キラー」公式サイト



『ポプラの秋』は、一軒のアパートを舞台とした、大家さんと住人の物語。

父を亡くし、母とふたりで、あてもなく電車に乗った8歳の千秋。
知らない駅で降りると、向こうのほうに1本のポプラの木が。
「あそこまで歩いてみようか」。
行ってみると“入居者募集中”と書かれた看板が。そこはポプラ荘というアパートだったのです。
最初はちょっと感じの悪い大家のおばあさんに、「子供はお断り」と言われてしまうのですが、
ふたりは結局ポプラ荘で暮らすことになります。
引っ越して間もなく、父を亡くした悲しみから、精神的にも不安定だった千秋は、
熱を出してしまうんですね。母は仕事を休めない。
そこで千秋は、あの大家さんのところに預けられることに。
相変わらず無愛想で、怖いおばあさんだけど、徐々に優しさに触れ、ホッとする千秋。
するとおばあさんが内緒の話をしてくれました。
「実はあたしには役目があってな。あの世に手紙を届けるのさ」と。
おばあさんは天国の郵便屋さんだと言うのです。
自分が死んだら、みんなから預かった手紙をあの世に持っていくんだと。
それから千秋は、毎日のように、天国のお父さんに手紙を書き続けるのでした…。

映画は大人になり、都会に住むようになった千秋が母親からの電話で起こされ、
おばあさんの死を知らされるところから始まります。
仕事も恋愛も、決して上手くいっているとは言えない千秋が、
おばあさんの葬儀に出ようと決め、子どもの頃を回想する。
それが物語の中心となっています。
大家のおばあさんには中村玉緒。千秋に本田望結。
何となくハマりだなって、想像がつく配役ですよね。
自分も故郷の古い家に行ったかのような、あったかさいっぱいの1本です。☆3つ。
「ポプラの秋」公式サイト



『ぼくらの家路』は、ドイツ映画。

ベルリンに住む10歳のジャック。
シングルマザーのザナと、幼い弟のマヌエルとの3人暮らしでしたが、
母親はふたりの子どもより自分の恋愛が大事。
家事も、弟の世話も、全部ジャックがやっていたのです。
ある日の朝、朝食を作り、洗濯物をしまい、学校へ行く準備をしながら、
弟を風呂に入れようとしたのですが、不注意から風呂は熱湯のまま。泣き叫ぶマヌエル。
このことがきっかけで、ジャックは児童福祉局により養護施設に預けられることになります。
そこで上級生たちのイジメにも遭うのですが、
お母さんと会える夏休みを楽しみにじっとこらえるジャック。
ところが、待望の夏休みを迎えても、母親は迎えに来ない。
「2、3日待って」と電話が入るだけ。
同じ部屋で暮らす友達が、父の形見と自慢していた双眼鏡を無断で借りて池に向かうと、
やはり居残りとなった意地悪な上級生がその双眼鏡を池に投げてしまうんですね。
遂にキレて、上級生を木の棒で殴り倒したジャック。
その場から逃げ出したジャックは、自力で母の元に帰ろうと決意します。
孤独な冒険の始まりでした…。

何をやっても裏目に出る。そんな人っているじゃないですか。
ジャックはまさにそんな子ども。
神様、もう少し、彼に優しくしてあげて下さいって、観てて本当に思っちゃう(笑)。
その後、弟と合流するのですが、ひとつ荷物が増えるようなもので。
でも、ジャックは大丈夫。
社会的には罪になっちゃうような行為も、仕方ないとは言わないけど、
でも生きるための精一杯の術だから。
このコは絶対に大丈夫。センスがあります。この辛い体験がすべて糧になって、
将来成功を収めるはず。そう確信させるから、作品が暗くないんですね。
それに比べて、ママ、あんたは何だ!反省しろ、反省!と声を荒げたくなります(笑)。
小さな人生の冒険の物語。
夏休み中の公開だったら、子供たちも観られてもっとよかったかな、なんて思ってもしまいます。
☆4つ。
「ぼくらの家路」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.9.11

『カリフォルニア・ダウン』☆☆☆
『キングスマン』☆☆☆
『ピエロがお前を嘲笑う』☆☆☆
『ピクセル』☆☆☆
『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会場でベテランの映画評論家さんと言葉を交わし、
年間どれぐらい映画を見てるのかを尋ねたら、何と550本だとか!
ボクもよく見てるほうだと思いますが、それでも150本ぐらいですから。
すごい数です。
もっと見てる人もいると教えてくれました。その道のプロはさすがにさすがですね。
さ、今週は5本です!



『カリフォルニア・ダウン』は、ドウェイン・ジョンソン主演のレスキュー・サスペンス。

どんな危険や困難が待っていようと、諦めることなく被害者を救出してきたレスキュー隊パイロットのレイ。 それでも家庭の崩壊は救えなかったようで、妻のエマはひとり娘のブレイクを連れて家を出て、
著名な建築家のダニエルと暮らし始めていたのです。
そんな時、カリフォルニア州一帯に未曾有の大地震が起こります。
ダムは決壊し、ビルは倒れ、あちこちで火災が発生し、大津波が襲う。
街はあっという間に壊滅状態に。
そんな中、レイはエマを見つけ、救命ヘリに乗せるのですが、
ブレイクの安否がわかりません。
「待ってろ。何としても助け出す」。
レイは愛する娘を懸命に捜すのでした…。

アメリカも地震は多いと思いますが、それでも日本ほどではない?
演出なのか、こんなことにはならないだろうという
シチュエーションにどんどんとなっていくんですね。
ま、そのほうが困難のハードルは上がって、映画としては面白くなるんでしょうけど。
地震ものとしてではなく、救出劇に焦点を当てて見る作品なんでしょうね。
こんな時、身を守るにはどうしたらいいか。
そんな豆知識的なものが入ってると、地震映画としては良くなったかも。
なんて、求めたのはそこじゃないんでしょうけど(笑)。
ハラハラドキドキ感は十分です。☆3つ。
「カリフォルニア・ダウン」公式サイト



『キングスマン』は、イギリスのスパイ・コメディ。

中東の紛争地帯で、1人の諜報部員が仲間のために命を落とします。
ロンドンの家族に訃報を伝え、栄誉のメダルを渡す男。
「困った時は、ここに電話を」。合言葉を言い残して、男は立ち去ったのです。
あれから17年。息子のエグジーは22歳になっていました。
車を盗み、警察に捕まったエグジーは、その時初めてメダルの番号に電話を掛けます。
すると、いとも簡単に釈放されたのです。
きょとんとするエグジーの前に現れたのは、あの時の男。
「今の君を見たら、勇敢だったお父さんは失望するだろうな」と。
男の名はハリー・ハート。
独立系の国際諜報機関“キングスマン”のエージェントだったのです。
秘密のオフィスにエグジーを連れて行くハリー。そこでハリーは言います。
「父譲りの身体能力を活かし、君もお父さんと同じ、
キングスマンのエージェントとして働かないか」と…。

真面目なスパイものではなく、あちこちに笑いの要素や、
過去のスパイ映画のエッセンスが散りばめられた、
コメディタッチのサスペンスアクション。
この後、厳しい試験を受け、並みいるエリートを蹴落とし、見事合格。
邪悪な金持ちの世界征服の企みと戦うことになります。
面白かったですョ。新たなヒーローの誕生なるか?
観客の反応が楽しみです。☆3つ。
「キングスマン」公式サイト



『ピエロがお前を嘲笑う』は、ハッキングを題材にしたドイツ映画。

学校ではイジメられ、バイト先でもナメられていた青年ベンヤミン。
しかし、彼にはハッキングの才能がありました。
好意を寄せていた彼女に好かれようと、試験問題を盗むベンヤミン。
ところがそのことが発覚し、課せられたのは社会奉仕。
そこでマックスという男と知り合い、二人ともハッキングが特技だと意気投合。
早速、仲間を増やし、
ハッカー集団“CLAY”を立ち上げ、様々な機関のコンピューターに潜入します。
意気揚々と成果を楽しむベンヤミンたちでしたが、ライバル集団が黙ってはいません。
ベンヤミンたちが流した情報がキッカケとなり、殺人事件が勃発。
命を狙われる身になったと、ベンヤミン自ら警察に出頭するのですが、供述は曖昧で、矛盾だらけ。
ベンヤミンの真意は一体どこにあるのでしょう…。

騙し騙されの映画。どんでん返しを楽しむ1本です。
日本でもマイナンバー制など、ますますネット依存の社会になると。
その脆弱性を思うと、やっぱりちょっと怖いですよね。
インターネットバンクなどを絶対にやらないのは、
セキュリティーを信頼できないから。
なんて、そもそも盗まれるほどの預金もないんですけどね(笑)。☆3つ。
「ピエロがお前を嘲笑う」公式サイト



『ピクセル』は、3DのSFコメディ。

1982年、NASAは宇宙の生命体に、地球からのメッセージとして、
人類の様々なカルチャー映像乗せて、ロケットを打ち上げました。
中にはTVゲームの映像も。
2015年。当時のTVゲーム世界大会で大活躍したサムも、
今ではホームシアターの取り付け業者に。
一方、親友のウィルは、何とアメリカ大統領になっていたのです。
ある日のこと、ウィルからサムの携帯に
「大至急ホワイトハウスに来て欲しい」と電話が入ります。
作業服のまま、ホワイトハウスに向かうサム。
そこには国防省の幹部が集まっていて、グアムの空軍基地で起きた、
信じがたい映像を見せられたのです。
建物や人々がキューブ状になって崩壊していく。
サムは一目見て気づきます。「ギャラガだ」。
そう、80年代に流行ったTVゲームそのものだったのです。
作業服姿のオッサンの言葉など、誰も信じてはくれません。
しかし、サムは昔のライバル、ラドローと再会して確信するのです。
ラドローが見せてくれた映像には、エイリアンからのメッセージが映っていて、
33年前に打ち上げたビデオを宣戦布告と誤解。
受けて立とうと、ゲームキャラに姿を変え、地球を襲ってきたのでした。
先に3勝したほうが勝ち。負ければ人類を滅ぼすと。
大統領は決断します。
この冴えないゲームオタクたちに、人類の存亡を託そうと…。

パックマンが地球を襲う(笑)。
その発想が奇抜で、秀逸です。
また、オタク仲間が大統領になっていたというのも、
あまり思いつかない設定ですよね(笑)。
あらすじには書きませんでしたが、離婚直後のシングルマザーとサムとの恋の話もあって。
80年代の、あの当時としては最先端で、
嬉々として遊んでいたTVゲーム世代には懐かしく楽しめる1本だと思いますョ。
☆3つ。
「ピクセル」公式サイト



『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は、奇跡の歌声が少年の人生を変える物語。

12歳の少年ステットは、酒浸りの母と二人暮らし。
学校では問題児でしたが、彼には素晴らしい才能がありました。
それは美しい声。
校長はその天賦の才を見抜き、
国立少年合唱団のオーディションを勧めますが、
ステットはまったく興味を示しません。
ところが、母親が突然の事故死。現れたのは初めて会った父親。
しかし彼には別の家庭があり、面倒は見られないと。
紆余曲折あり、ステットは全寮制の国立少年合唱団付属学校へ転校することになります。
初めはやる気もなく、周りとも馴染めないステットでしたが、
次第に歌うことに喜びを見出し、
指導者たちもステットの声に大きな可能性を感じ始めます。
初めて打ち込むものを見つけたステット。
しかし、この天使のような歌声も、変声期を迎えるまでの限られた“奇跡”だと知るのでした…。

家庭でも、学校でも孤独で、母を亡くし、初めて出会った父も他人のような顔。
そんなステットが“声”で自分自身を救うようになる。
もちろん、転校後も順風満帆とはいきません。
でも、彼は自分で未来を切り開くわけです。
そこには彼をちゃんと見ていた校長先生の存在が大きかったと思います。
「必ず誰かが見てくれている」。
そんな“誰か”との出会いが大きいのだと思います。
ボーイ・ソプラノは変声期前の男の子の高い声。
声変わりと共に二度と出せなくなる。
限りがあるという意味では、人生を2度生きられるのと同じかなと。
ボクらも気づいていないだけで、そんな経験を経てるんじゃないですかね。
いろんな登場人物の立場で見て、自分を重ね合わせてみると面白い作品です。☆4つ。
「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.9.4

『映画 みんな!エスパーだよ!』☆☆☆
『クーデター』☆☆☆
『Dearダニー 君へのうた』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


9月になりました。 急に涼しくなって、早くも秋の気配を感じる今日この頃。
急に夏が去ると、もう少し夏の余韻に浸っていたいと正直思いません?
あんなに猛暑を嫌がってたのにね(笑)。
人間って、ホント“無い物ねだり”な生きものですよね。
さ、今週は3本です!



『映画 みんな!エスパーだよ!』は、テレビ東京でドラマ化され話題を呼んだ、
人気コミックの映画化。

愛知県東三河在住の普通の高校生、鴨川嘉郎。
未だ見ぬ運命の人との出逢いに胸を膨らませながら、頭の中ではエッチな妄想ばかり。
その夜もひとりで××にふけっていたのです。
すると、数百年に一度の特別な天体の配列により、嘉郎は不思議な光を浴びてしまいます。
これにより、嘉郎は人の心の声が聞こえるという超能力の持ち主になってしまうんですね。
自分だけかと思いきや、周りにもエスパーはたくさんいて、
東京からやってきた超能力研究の第一人者、浅見教授のもとに集められます。
教授によると、悪の超能力者によって、この東三河の地が狙われているというのです。
すると、その心配は現実のものに。街の女性たちがすべて“エロ化”してしまったのでした。
果たして、嘉郎たちは東三河を救えるのでしょうか…。

パンチラで話題の深夜TVドラマの映画化ということで、
ボクも期待に胸膨らませて試写に行きましたが(笑)、
さすが園子温監督!これから伸びてくるだろう可愛い新人さんたちに、
セクシーな演技をしっかりとさせています。
劇場で見るというよりもDVDで買いたくなる作品かなぁ(笑)。
大きなスクリーンで見るのもボクはお勧めですけどね。
心の5つ星(笑)。☆3つ。
「映画 みんな!エスパーだよ!」公式サイト



『クーデター』は、東南アジアの国でクーデターに巻き込まれるというサバイバル・スリラー。

事業に失敗し、再就職した企業から東南アジアのある国で要職に就くよう命じられたジャック。
気の向かない妻と幼い2人の娘を連れて、赴任地に向かうのでした。
すると突然、その国でクーデターが起こり、怒りの矛先はなんと“外国人”に。
「外国人を見たら殺せ!」。
言葉も通じない異国の地で、周りのすべてが敵。それも命を狙ってくるという。
逃げ場のない絶体絶命の状況で、ジャックは愛する家族を守ることができるのでしょうか…。

まさかの展開ですが、無い話でもないよなぁと。
今は安全な国や地域なんて、世界中どこにもありませんから。
「ええっ。そんなことまでする!」という行動に出るジャックですが、何もしなければ死すのみ。
手に汗握る103分です。☆3つ。
「クーデター」公式サイト



『Dearダニー 君へのうた』は、実話をもとにしたアル・パチーノ主演作。

ダニー・コリンズは大ヒットを1曲持つベテラン・シンガー。
ステージで盛り上がるのはその曲だけ。
これでいいのかと、常にモヤモヤしたものを抱えていたのです。
誕生日のパーティーでマネージャーから渡されたプレゼント、
それは何とあのジョン・レノンがダニーに書いた自筆の手紙。
紆余曲折あって、コレクターの手を渡り歩き、ようやく本人のもとに届いたのです。
書かれていたのは、ジョン・レノンからの励ましの言葉。
曲が当たり、巨額の富を得たダニーが、「成功が音楽への思いを変えてしまうのではないか」と
不安を語ったインタビュー記事を読んで、
ジョンが才能を評価したダニーにエールを送ろうとしていたのです。
これを読んだダニーは、怠惰な生活に見切りをつけ、もう一度やり直そうと決意。
愛人と別れ、クスリを辞め、コンサートもキャンセルして、ニュージャージーへと旅立ったのでした。
ニュージャージー。そこには顔も見たことのない実の息子、トムが住んでいたのです。
ダニーは意を決して、トムに会いに行くのですが…。

「もし、あの時…」。
ありますよね、人生の分岐点。
ダニーがあの時点でジョンからの手紙を受け取っていたら。
まさに“れば”、“たら”ですが、これもまた運命。
この物語は、1971年にイギリスのフォークシンガー、
スティーヴ・ティルストンが雑誌のインタビューで不安を語り、
それにジョン・レノンが手紙を書いたけどスティーヴには届かなかった。
手紙には自宅の電話番号が書いてあって、
「もしあの時、偉大なるジョン・レノンと電話で話をしていたら」とスティーヴは思うと。
この逸話がもとになっているんですね。
息子トニーの家族も問題を抱えている。突然現れた、他人のような父を拒絶するトニー。
でも、ニュージャージーのホテルの女性支配人が素敵な女性で、ダニーの心の支えになっていきます。
ジョン・レノンの楽曲もあまた散りばめられた作品です。大人な映画だと思いますョ。☆4つ。
「Dearダニー 君へのうた」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.8.27

『しあわせへのまわり道』☆☆☆
『バレエボーイズ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写を見に行く時の楽しみのひとつが、それぞれの会場近くのお店で食べるランチ。
本当にお気に入りの店がある時は、それだけで重い腰が上がります(笑)。
映画も良ければ、お腹も心も満腹、満足で言うことなしです。
さ、今週は2本です!



『しあわせへのまわり道』は、働く女性の“再発進”の物語。

NYの文芸評論家として活躍中のウェンディ。
夫と大学生になる娘がいるのですが、ある日突然離婚を言い渡されてしまいます。
原因は、仕事、仕事で結婚生活を省みなかったウェンディの側にありました。
その結果、夫は浮気相手の元へと去って行ってしまったのです。
やり直せると信じていたウェンディでしたが、現実は甘くなく。
車の運転も夫任せで、免許すら持っていなかったウェンディは、生活に困ってしまうんですね。
そこで一念発起。忘れ物を届けに来てくれた親切なインド人タクシードライバーのダルワーンに、
自動車教習をお願いすることにします。
まっすぐでマジメなダルワーン。
車の運転を人生に置き換えて教えてくれるのですが、ウェンディの腕は一向に上がりません。
試験も散々な結果で、落第してしまいます。 すべてを投げ出してしまいたくなったウェンディでしたが、
でももう一度ハンドルを握ろうと、ダルワーンに再教習をお願いするのでした…。

NYのキャリアウーマンとインド人ドライバーの、心の交流を描いた物語。
ダルワーンもインドでは少数派の宗教で迫害を受け、アメリカに渡ってきていたのです。
ダルワーンは、ウェンディと出会った後に、
インドに住む妹が選んだ女性とアメリカで結婚するのですが、彼女は英語も話せず、
家にこもりっぱなし。
ウェンディもダルワーンも、どうにも結婚生活が上手くいきません。
でも互いに努力を重ね、これまでの殻を破り、新しい幸せを掴もうと頑張るんですね。
教習のため、助手席に座るダルワーンが、運転を人生に例えて話すのを聞いていると、
結婚式の祝辞でよく聞く話を思い出しました。
「エンジンをかけたらアイドリングはたっぷり時間をかけて…」なんてやつ。
あっちはちょっぴり下世話、ダルワーンのは真面目ですけどね(笑)。☆3つ。
「しあわせへのまわり道」公式サイト



『バレエボーイズ』は、女子に混じってバレエに打ち込む男の子たちのドキュメンタリー。

ノルウェーの首都オスロにあるスタジオで、プロのバレエダンサーになりたいと練習に励む3人の男の子、
ルーカス、シーヴェルト、トルゲール。
それぞれに家庭環境も違うけれど、同じ夢を持つ者同士、
いいライバルでもあり、いい仲間でもあったのです。
金銭的な負担を考えると、バレエを続けるためにはオスロ国立芸術アカデミーに入学するしかなく、
そのために日々猛特訓を重ね、遂に3人は全員入学を許可されます。
ところが、この中でルーカスだけが、イギリスの名門、
ロイヤル・バレエスクールからオーディションを受けないかと声が掛かったのです。
これまで共に歩んできた3人が、別々の道を進む第一歩となる出来事でした。
日本にも著名なダンサーはいるので、“男子のバレエ”にあまり特別な感じはしなかったけど、
言われてみれば確かにバレエは女の子のたしなみかも。
一度はバレエを辞める決断をしたシーヴェルトが、
やっぱりバレエがやりたいと戻ってくるのだから、魅せられる何かがあるんでしょうね。
10代から夢があるって素晴らしいこと。
そんな夢に向かって邁進する少年たちのドキュメンタリーです。☆3つ。
「バレエボーイズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.8.21

『at Home アットホーム』☆☆☆
『ナイトクローラー』☆☆☆☆
『夏をゆく人々』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


8月も終盤にさしかかり、あと10日もすれば9月。本当に早いですよね。
今年の夏は「暑い…」ばかりを口にしていたような(笑)。
夏バテしている心と体に映画はいかがですか?
今週は3本です!



『at Home アットホーム』は、一風変わった家族の物語。

和彦と皐月の夫婦に、淳、明日香、隆史の3人の子供たち。森山家は和気あいあいの仲良し家族。
ところが、父・和彦の職業は空き巣。母の皐月は結婚詐欺師。
淳は和彦の師匠が営む印刷工場で、偽物のパスポートなどを巧妙に作っている、これまた詐欺師。
明日香も隆史もみんなの仕事をよく理解していたのです。
皐月が見つけた新たなターゲットは不動産王の息子のミツル。
ところが、このミツルも実は結婚詐欺師!
自分が騙されていることに腹を立てたミツルは、皐月を拉致し、
森山家に1000万円の身代金を要求してきたのです。
淳は印刷工場で急いで偽札を作り、母との交換に成功したのですが、
その場にいた末っ子の隆史が、「ボクの家族を殴らせたりはしないって決めたんだ」と、
家にあった拳銃をミツルに向け、引き金を引いてしまいます。
その場に倒れるミツル。
和彦はすべてを被って、家族を守ろうとするのでした…。

実は、森山家は誰ひとり血が繋がっていないんです。
これがこの家族の不思議な在りようで。
皆、それぞれに問題を抱え、集まってきた男と女と少年と少女。
寄り添って生きていくための大切な単位としての家族だったのです。
和彦と皐月は心から3人の子供たちの幸せを願っていて、
進学のための学費が必要となれば普通の親のように考え、悩み、
「もう少し頑張ってみるよ」と盗みに精を出す。悪いことなんですョ(笑)、もちろん。
家族に必要なのは血の繋がりか、それとも?
あえて特殊な設定で、希薄になった家族の絆を考えさせる1本です。☆3つ。
「at Home アットホーム」公式サイト



『ナイトクローラー』は、報道パパラッチが題材のミステリー・サスペンス。

金網を盗み、工場に売って金にする。
そんなコソ泥稼業でなんとか生きている男、ルイス・ブルーム。
ある夜のこと、交通事故の現場を通りかかったルイスは、
ナイトクローラーと呼ばれる報道用映像専門のパパラッチに出会うんですね。
「悲惨な映像ほどTV局に高く売れるんだ」と聞いたルイスは、これを仕事にしようと決意。
盗品と引き換えに、ビデオカメラと無線傍受器を手に入れます。
警察の無線を盗み聞きし、事故現場へ駆けつけるルイス。
撮影のルールも知らないのが逆に強みで、先に来ていたパパラッチよりも生々しい映像を撮影。
TV局に売り込みに行くと、女性ディレクターが「これはスゴい」と映像を買い取り、
ナイトクローラーとしてのアドバイスくれ、スクープが撮れたら一番に連絡をとの約束を交わすのでした。
アシスタントを雇い、次々と衝撃映像をモノにするルイス。
そのやり方は法の境界線ギリギリのところでしたが、だからこそ緊迫の映像が撮れたのです。
しかし、常にそんなスクープをゲットできるはずもなく。
スランプに陥ったルイスは、遂に禁断の一線を超えてしまうのでした…。

主演はジェイク・ギレンホール。
2ヶ月で12キロの減量を成功させ、目の窪んだ不気味な表情を作り出したといいます。
人としてどうなのさ、とおそらく観た人のすべてが感じると思うんですね。
こんなヤツに待つ未来が、明るいはずがない。ところが、世の中はわからない(笑)。
いろんな意味で常識が覆され、予想は裏切られる。
その“心地悪さ”こそが、この映画の魅力だったりもします。
怪談とはまたひと味違うゾッとする感覚を、夏の終わりに体感してみてはいかがですか?☆4つ。
「ナイトクローラー」公式サイト



『夏をゆく人々』は、2014年のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。

イタリアのトスカーナ近くの人里離れた村で、昔ながらの手法で養蜂業を営む一家がいました。
両親と4人の娘たち。父にとっては、長女のジェルソミーナが息子代わり。
一番可愛がり、一番頼りになる存在だったのです。
そんな一家の平穏な毎日に、ある時、変化が訪れるんですね。
“少年更生プラン”に賛同した父が、家族に無断で14歳の犯罪少年を預かると決めたこと。
両親の留守中に、次女が蜂蜜の遠心分離機に手を挟み、大怪我をしてしまったこと。
伝統的な生活を送る家族をコンテスト形式で紹介するTV番組への出演が決まったこと。
それぞれが複雑に絡み合い、家族の環境は大きく変わっていくのです…。

父の寵愛を一身に受けていたジェルソミーナにとって、父の思いはうれしいけど重くもあり。
14歳の見知らぬ少年がやってきて、父は息子ができたかのように喜んで、
思いの数パーセントが彼に行くのは肩の荷が下りたような、反面悔しいような複雑な気持ち。
TV番組の司会のお姉さんがビーナスのようにキレイで、
どこかに違う世界が自分を待っているんじゃないかと夢を抱くようになり。
昔、昔、夏休みに田舎に行った数日間のような感覚を覚えるんじゃないかと思います。
現実なんだけど、どこか白日夢のような。
うまく言えないけど、「あ、カンヌのグランプリだな」という1本です(笑)。☆3つ。
「夏をゆく人々」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.8.14

『あの日のように抱きしめて』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写で上映が終わって、感動に浸っていると、横から「ふぁ〜ぁ」と大きなあくび…。
どう思います?こういう人。
ボクにはいい映画でも、他人には響かないなんて多々あるから、それはそれでいいんです。
でも、あちこちからすすり泣く音が聞こえてた作品で、ですョ。
少しは空気を読めと言いたくなります。映画評の資格なしだと思いません?
さ、今週は1本です!



『あの日のように抱きしめて』は、ドイツ映画。

第二次世界大戦が終わり、ドイツが降伏。
ユダヤ人女性のネリーは、強制収容所で顔をメチャメチャにされたものの、命は助かり、
親友のレネに連れられてドイツに戻ります。
女性弁護士のレネはパレスチナにユダヤ人国家を作るから一緒に来ないかとネリーを誘いますが、
ネリーは自分が死んだと思っているはずの夫ジョニーを探して、
以前の幸せな生活に戻りたいと願っていたのです。
顔の修復手術をする際にも、まったく違う顔に生まれ変わってはどうかという医師の勧めを拒み、
夫ジョニーに気付いてもらいたいと、元の顔にこだわったのでした。
しかし、レネは知っていたのです。ジョニーがネリーをナチスに売ったことを。
それを伝えても聞く耳を持たないネリー。
顔が治り、ジョニーを探しに行くと、彼はアメリカ兵相手のバーで雑用係として働いていたのです。
ネリーはジョニーに話しかけます。
するとジョニーは「君は死んだ妻に似てる。
彼女の一族もみんな死んでしまったから、その財産が妻に入る。
妻になりすまして、それをもらってくれないか。山分けしよう」と。
ジョニーはネリーだと気付いていないんですね。
その日から、ネリーは文字の書き方、歩き方をジョニーから叩き込まれます。
自分で自分を真似るネリー。ジョニーは本当に私を愛していたのか?
それともレネが言っていたように裏切り者なのか?
夫の真実の愛を確かめるべく、ネリーは自分で自分を演出するのでした…。

ネリーは以前、ロンドンの聖歌隊にいて、ジョニーはピアニスト。音楽で繋がっていたんですね。
これもストーリーを読み解く、重要なカギになっていきます。
この映画は、ナチス時代の卑劣な行動が生んだ悲劇を、ドイツ自身が取り扱うと。
このあたりが世界がよく言う、
“ドイツという国は自分たちの過去をしっかりと見つめて反省をしてきた”という
評価の一端なのかなとも思いました。
ラストは、静かだけど、実に重たい衝撃がズシンと来る感じ。自身で体感してみて下さい。☆4つ。
「あの日のように抱きしめて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.8.7

『最後の1本〜ペニス博物館の珍コレクション〜』☆☆
『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』☆☆☆
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


こう暑いと外に出るのが嫌になってしまいます。試写会も行くまでが…(笑)。
でも、行けば心身共に満たされて帰ることも多いので、重たい腰を持ち上げなくちゃ(^^)。
さ、今週は3本です!


『最後の1本〜ペニス博物館の珍コレクション〜』は、アイスランドのドキュメンタリー映画。

アイスランドの小さな港町フーサヴィーク。ここにあるのが世界で唯一の“ペニス博物館”。
巨大なマッコウクジラのペニスから、ハムスターの2ミリ以下の小さなペニスまで、
40年以上に渡り収集した哺乳類のペニスの標本が200点以上展示されています。
ただし、欠けているのがひとつある。それは“ヒト”のペニスでした。
亡くなった人から譲り受けるにしても、生前に同意をもらわなくてはならず、
なかなか難しかったのですが、ここに来て、
アイスランドの著名な冒険家でプレイボーイのパゥットル・アラソン氏が賛同。
90歳を過ぎてなおお盛んなアラソン氏は死後の寄贈を約束してくれるんですね。
ところが、アメリカからも名乗りを上げる人が。
自らのモノに“エルモ”と名付け、キャラクター化したがるほどサイズに自信を持つ、
カリフォルニア在住のトム・ミッチェル氏でした。
何と驚いたことに、ミッチェル氏は生前贈与を申し出たのです。
果たして、最後の1席はどちらの1本で埋まるのでしょう…。

博物館の紹介と、二転三転する“最後の1本”が決定するまでのドタバタ劇。
主題がバカバカしいので(やってる本人は真面目かもしれませんが)、
途中での中だるみは否めません。
でも、毎週読んでいる週刊プレイボーイの映画評では、
ふたりの評論家が共に高い評価でしたから、見る人によっては面白いのかも?
日本の温泉街にある秘宝館的ユーモアがあれば楽しかったかなと思いますが。☆2つ。
「最後の1本〜ペニス博物館の珍コレクション〜」公式サイト



『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』は、
メキシコを代表する女性画家フリーダ・カーロの遺品を撮影する、
日本人女性カメラマン石内都を追ったドキュメンタリー。

メキシコの首都メキシコシティにある“青い家”と呼ばれる建物が、フリーダ・カーロ博物館。
ここでメキシコを代表する女性画家のフリーダ・カーロは生まれ育ち、一生を終えました。
現代日本を代表する女性カメラマンの石内都は、
彼女の作品展を見たフリーダ・カーロ財団からの依頼を受け、彼女の遺品を撮影することになります。
衣服、靴、医薬品などなど。
母の故郷、イスモ地方の伝統衣装であるテワナドレスや、
幼い頃患ったポリオの影響で左右の長さが違ってしまった足を矯正する靴、
10代で遭った交通事故の後遺症に悩んだと見られるモルヒネや包帯の数々。
すべてがフリーダ・カーロの人生を浮き彫りにするものでした。
メキシコは『死者の日』と呼ばれるお祭りに代表されるように、“死の文化”も大切にする国。
撮影中に親友の訃報が石内都の元に届きます。
メキシコという国で生と死を身近に感じた彼女は、再びファインダーを覗くのです。
こういうドキュメンタリーを見て思うのは、縁の不思議。
メキシコ人女性の遺品撮影を日本人女性が依頼されるんですからね。
きっと何かに導かれたんだと思わずにはいられません。☆3つ。
「フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように」公式サイト



『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』は、
トム・クルーズ主演の人気シリーズ最新作。

アメリカの諜報機関IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)に
所属する伝説のスパイ、イーサン・ハント。
ところがIMFが無謀な任務を遂行するがゆえに逆に足を引っ張ると、
解体、CIAに吸収の危機に追い込まれます。
そんな中、謎の多国籍スパイ組織“シンジケート”が世界制服を企てており、
「そんな組織は存在しない」とする声を覆す証拠を発見。
そこには裏で暗躍する大物たちのすべてが書かれていたのです。
しかし、それを入手、解読するには数々の高いハードルを超えなくてはならず、
今や誰が味方かもわからない中、イーサン・ハントは真の仲間たちと悪の撲滅に挑むのでした…。

ご存知、超人気のアクション大作。
ストーリーもあえて漠然と書いておきましたが、息をもつかせぬとはこういうこと。
CGなしというアクションは、さすがの迫力です。
それにしても、トム・クルーズはボクの1つ年下。若い…。カッコいいよなぁ(笑)。
高値安定です。安心して劇場に足を運んで下さい。☆4つ。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.7.31

『コンフェッション 友の告白』☆☆☆
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今週からは8月公開の映画のご紹介となります。
早いよなぁと言いつつ、実はもう11月公開作品の試写も始まってますからね。
映画の世界も、サイクルは本当に早いです。
さ、今週は2本です!


『コンフェッション 友の告白』は、韓国映画。

中学の親友3人組、インチョル、ヒョンテ、ミンス。
3人は卒業式をサボって、記念登山へ。
ところがミンスが足を滑らせて滑落。重傷を負ってしまいます。
降ってきた大雪の中、なんとか山小屋まで辿り着いた3人でしたが、気が付けば、
インチョルがひとり山小屋を抜け出していたのです。
「助けを求めに行ったのか。それともケガ人を置いてひとり逃げたのか」。
ヒョンテの心は揺れ動きます。
雪の中、ミンスを背負っての下山を決めたヒョンテでしたが、寒さと披露で、
もうダメかと諦めかけた時、インチョルが救助隊を引き連れ、現れたのでした。
これでさらに深まった3人の絆。それは大人になっても変わらなかったのです。
保険のセールスマンとして成功したインチョル。正義感が強いヒョンテは消防士に。
ドジなミンスだけは仕事が上手くいかず、貧乏生活を送っていました。
それでも集まればあの頃のままの、仲良し3人組だったのです。
ヒョンテの両親はゲーム賭博の店をやっていて、
ヒョンテはそれが気に入らず、親子は断絶状態。
その代わり、ヒョンテの母はインチョルを息子のようにかわいがり、
保険にも入っていたんですね。
多額の借金を抱えたヒョンテの母がボソッと言います。
「誰か店でも襲って火でもつけてくれたら、保険金で楽ができるのに」。
それを聞いたインチョルの表情が変わったのでした…。

このあと、インチョルはミンスを誘ってゲーム店を襲います。
それで保険金が下りれば、ヒョンテの両親はゲーム店を閉め、親子の仲は戻るし、
ミンスも分け前をもらって生活が楽になる。誰も不幸にはならないと。
ところが、ひょんなことから歯車が狂い出します。
いい時はいいけれど、負のスパイラルに入ると人は本音が出る。友情って、人の心って…。
この映画を見た後は、友だちなくさないよう、気をつけて下さいね(笑)。☆3つ。
「コンフェッション 友の告白」公式サイト



『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は、
ザ・ビーチ・ボーイズの中心人物であるブライアン・ウィルソンの半生を描いた映画。

1962年のデビュー以来、曲が次々と大ヒット。コーラスが美しい独自のサウンドで、
アメリカを代表するグループになったザ・ビーチ・ボーイズ。
曲はブライアン・ウィルソンの手によるものでした。
ところが、アメリカ中を飛び回る多忙な日々にパニックの発作を起こしたブライアンは、
スタジオでの音作りに専念することに。
しかし、天才というのは、革新的なことに挑戦したくなり、
これまでのサウンドからかけ離れていくブライアンの音楽に、
メンバーの間には亀裂が生じていきます。
取り巻きにも怪しい連中が混じり、ドラッグに溺れるブライアン。
それから20年以上が過ぎ、ブライアンはふと立ち寄った車の販売店で、
セールスレディのメリンダと出会います。
初めは誰だかわからなかったメリンダでしたが、
大スターなのにどこか寂しそうなブライアンが気に掛かります。
ブライアンからデートに誘われるメリンダ。
二人きりかと思いきや、精神科医やら助手やらが同行。
ブライアンから生きる気力を奪っているのはこの人たちに違いない。
メリンダはそう確信するのでした…。

いやいや、壮絶な人生だったんですね。知りませんでした。
ブライアン・ウィルソンが初のグラミー賞に輝いたのが2004年のアルバム『スマイル』で。
これは60年代にレコーディングを中断した、ブライアンの自信作。
彼がこうして立ち直るまでにはメリンダの献身的な愛がありました。
名声や財じゃなく、その人の本質を愛した証し。いいですよね。
映画は60年代と80年代を行ったり来たりしながら進みます。
タイトルは1988年の初のソロ・アルバムの1曲目から。
最後、エンドロールのバックに流れますが、
ブライアン・ウィルソンの生き様が歌い込まれた素敵なナンバーです。
ザ・ビーチ・ボーイズのファンはもちろん、そうでない人も、
この人生の壮絶なドラマには胸を打たれると思いますョ。☆4つ。
「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.7.17

『インサイド・ヘッド』☆☆☆
『海のふた』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


暑くて、熱くて…。冷房の効いたところに逃げ込みたいですね。映画館、ピッタリですョ(笑)。
さ、今週は2本です!


『インサイド・ヘッド』は、ピクサー長編アニメーション誕生20周年記念作品。

人間の頭の中に5つの感情たちがいます。
楽しい気分にさせてくれるヨロコビ、嫌いなものを拒絶するムカムカ、怒りを爆発させるイカリ、
危険から身を守るビビリ、そしてカナシミ。
このカナシミの存在が謎に包まれていたんですね。
なぜなら、みんなその人を幸せにしようと一生懸命なのに、
カナシミは悲しませることしかできないから。
ミネソタ在住のライリーは明るく元気な11歳の女の子。
彼女の頭の司令室にも、5つの感情たちがいたのです。
ある日のこと、両親の仕事の関係で、ライリーはミネソタを離れ、
サンフランシスコに引っ越すことに。
大好きな友達と別れ、見知らぬ街で暮らさなくてはならないライリーの複雑な心。
転校先の教室で自己紹介をするライリー。
ミネソタの思い出を楽しく話していると、頭の中の司令室で、
カナシミが“思い出ボール”に触ってしまいます。
すると、ライリーにとって楽しかった思い出が、
一気に悲しい別れの思い出に変わってしまったのです。
ヨロコビはカナシミを“思い出ボール”から引き離すのですが、
「ごめんなさい。自分でもわからなくて」と謝りながら、
カナシミは“思い出ボール”に触ろうとするのです。
そんないざこざがきっかけとなり、
ヨロコビとカナシミが司令室の外に放り出されてしまうんですね。
喜びと悲しみの感情が欠けてしまったライリー。彼女の表情がまったく変わってしまいました。
果たして、ヨロコビとカナシミは、ライリーの頭の中の司令室に戻れるのでしょうか…。

放り出された先は思い出の保管庫。
迷路のようなその場所から司令室に戻るのは至難の業なんですが、
そんなアドベンチャー的話以外に、カナシミはなぜ存在するのか?というのが大きなテーマ。
大人にも子供にも見てもらえる映画ということなんでしょう。ピクサーの映画はこれまでもそう。
『トイ・ストーリー』も『ファインディング・ニモ』もそうでしたもんね。高値安定です。☆3つ。
「インサイド・ヘッド」公式サイト



『海のふた』は、よしもとばななの小説の映画化。

西伊豆の小さな海辺の町に、船が着きます。
まりが舞台美術の仕事を辞め、ふるさとに帰ってきたのです。
いきなり会った元カレで酒屋を営む治に、「私、この海のそばでかき氷屋さんをやるの」と宣言。
早速店舗を見つけて準備に取り掛かるまり。
そんな時、母の大学時代の友達の娘がちょっと訳ありで、しばらく泊まりにくるから面倒を見てと。
彼女の名ははじめ。まりははじめにかき氷屋さんを手伝ってもらうことにします。
サトウキビから煮出して作った糖蜜と、みかん水。あとはエスプレッソだけ。
こだわりのメニューのみで、いよいよふたりのかき氷屋さんはスタートしたのです…。

過疎の町。でもこの町が好きというまり。
治も店の経営が苦しく、はじめも心に傷があり、まりだって言ってみれば出戻りです。
それでも生きていくというか、生きていかなくてはいけないわけで。
幸せって何だろう、頑張るって何だろうというのを、
あまり肩肘張らずに考えるって感じでしょうか。
まりたちはどうするんだろう。ふるさとだから残るのかなぁ。
かき氷屋さんは続くのだろうか。なんてことをふわっと考えます。ふわっとね。☆3つ。
「海のふた」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.7.10

『踊るアイラヴユー』☆☆
『サイの季節』☆☆☆☆☆
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』☆☆☆
『リアル鬼ごっこ』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


夏風邪が流行ってます。試写室でも、くしゃみや咳が聞こえたりして。
密閉された空間に人がいっぱいいるので、どうしても気になってしまいます。
自衛の策としては、マスクにうがい、そして手洗い。
風邪なんて引いていられないので、気をつけなくちゃ。
さ、今週は4本です!



『踊るアイラヴユー』は、ミュージカル・エンタテイメント。

南イタリアの海辺のリゾート、プーリア。
大学生だったテイラーはここでひと夏の恋に落ちます。彼の名はラフ。
「ここに残りなよ」というラフの言葉を振り切り、テイラーは大学へと戻ったのです。
3年後、失恋に落ち込む姉のマディに、テイラーはプーリアへのバカンスを勧めます。
すると姉のマディから連絡が来たのです。
「素敵な出会いがあったの。結婚することになったわ」。
しかも式は明後日だと言います。
姉の招待を受け、3年振りにプーリアを訪れたテイラーでしたが、
そこにはラフとの再会を密かに期待する自分がいたのです。
ところが、マディから婚約者を紹介されてビックリ!
なんとマディの結婚相手は、ラフだったのです…。

ストーリーはさほど斬新ではないのですが、使われる劇中歌が80sのポップヒットがズラリ!
マドンナ、バナナラマ、ホイットニー・ヒューストン、ヒューマン・リーグ、
シンディ・ローパーなどなど。という触れ込みもあって楽しみに見に行ったのですが、
歌は出演者たちが歌っていて、オリジナルではないんですね。
また楽曲の詞にストーリーのほうを合わせていて。ま、方法論としてはありなんでしょうけど。
あくまで個人的にですが、期待してたのとはちょっと違っちゃったかなというのは否めず。
でもキレイなリゾート地が舞台。ひと足早い夏休み気分は味わえると思いますョ。☆2つ。
「踊るアイラヴユー」公式サイト



『サイの季節』は、クルド人初の映画監督、バフマン・ゴバディによるイラク・トルコ映画。

革命前のイラン。絶大な人気を誇る詩人のサヘルは、司令官の娘ミナと結婚。
幸せな毎日を送っていました。
ふたりの運転手として働くアクバルは、美しいミナに想いを寄せますが、もちろん叶わぬ恋。
ある日、アクバルはミナに告白してしまうのです。
司令官の怒りを買ったアクバルは殴る蹴るの暴行を受けた末、
仕事をクビになってしまうのでした。
ところが、2年後、イランに革命が起こります。
すべてが逆転し、サヘルは反体制的な詩を書いたとして、反逆罪で禁固30年。
妻のミナも共犯者として禁固10年の刑に処されてしまいます。
これは言われ無き罪。そう、今や指導者的立場に立ったアクバルの仕掛けた罠だったのです。
アクバルはミナに減刑をちらつかせ、関係を迫るも拒まれ、力でミナを襲い、
ミナは獄中で妊娠、出産。
毎日の虐待に耐えていた夫サヘルは死んだとされ、
釈放後のミナが子供と生きるためにはアクバルに頼るしか術がない状況に。
それでもミナは夫を思い続けていたのでした。
30年後、釈放されたサヘルは愛するミナの行方を追います。
調査の結果、イスタンブールにいることが判明し、住まいを見つけるのですが、
チラつくアクバルの影。
死んだとされるサヘルには、それを遠くから見守ることしかできなかったのです…。

ミナの消息がわかり、サヘルが車でミナのあとを追うと、ミナは見知らぬ男の家に行き、
男が服を脱ぎ、カーテンが閉まる。張り裂けんばかりのサヘルの心。
後でわかるのですが、これには理由があったのです。
その後、サヘルはふたりの若い娼婦と知り合い、
半ばドライバーと用心棒のようなものを務めるんですが、
彼女たちがサヘルと大きく関わってくるんですね。
それがまた衝撃の展開へと繋がっていく。
実はこの映画、クルド系イラン人詩人の
サデッグ・キャマンガールの体験談に基づいて作られたというから驚きです。
事実は小説より奇なりといったところでしょうか。
スクリーンを覆い尽くすトーンもしかり、93分とは思えないとても重苦しい時間に、
今までにない感覚を覚えるかもしれません。☆5つ。
「サイの季節」公式サイト


「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は、
アーノルド・シュワルツェネッガーの人気シリーズ最新作。

暴走した人工知能スカイネットが、1997年に核ミサイルを発射。
30億人もの命が失われた“審判の日”。それ以来続く、機械軍vs人類抵抗軍の戦いでしたが、
2029年、抵抗軍のリーダーのジョン・コナーが、
遂に機械軍の中枢部にとどめを刺そうとしていました。
ところが、敗北を悟った機械軍が、なんとジョンの母であるサラ・コナーを亡きものにし、
ジョンを誕生させまいと、1984年に時間転送でターミネーターを送り込んだのです。
サラの抹殺を阻止するために、ジョンの右腕であるカイルが過去に向かうことを志願。
1984年に降り立ったカイルが見たのは、か弱いウエイトレスではなく、
たくましい女戦士と化したサラ。さらに、側にはターミネーターT−800の姿が。
T−800は両親を殺された9歳のサラを救って以来、ずっと彼女を守ってきたのでした。
未来から送り込まれた刺客はもう始末したというふたり。
ところが歴史が変わったことで時間の分岐点に変化が生じ、
スカイネットはさらなる進化を遂げ、ジェニシスに変化。
さらに“審判の日”は1997年ではなく、2017年へと変わっていたのです。
“審判の日”を止めるべく、サラとカイルはタイムマシンを作り、2017年へと向かったのです…。

人気のターミネーター・シリーズに、時空を飛び越えるという設定が加わった今回、
スケールはさらに大きくなりました。イ・ビョンホン扮するT−1000も再び登場します。
面白いのは、T−800が中年のオジサンとして歳をとってること。
それはシリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが与えたアドバイスだとか。
「アイル・ビー・バック!」の名ゼリフももちろん健在で、ファンには待望の新作と言えるはずです。
ただ、このシリーズって、攻めても攻めても死なないターミネーターたちの戦いに、
ちょっと見てる側が疲れちゃうところがあるんですよね(笑)。破壊の連続ですから。
3Dだけに迫力満点ですが、ひと運動したぐらいの疲労感のオマケ付きかも(笑)。☆3つ。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」公式サイト


『リアル鬼ごっこ』は、大人気のベストセラーを、
園子温監督のオリジナル脚本で映画化したもの。

ミツコは女子高生。
遠足に向かうバスの中で、悲劇は起こります。
風の音がしたなと思ったら、バスが真ん中から真横にバッサリと。
バスごとクラスの全員がお腹から真っ二つに切り裂かれてしまったのです。
ミツコだけは落とし物を拾おうと屈んでいたから助かったのですが、
何とかバスから降りて走って逃げても、風は追ってきます。
途中ですれ違う女子高生たちも、みんなお腹から真っ二つに。
気付くと見知らぬ学校の通学路に。でも周りはみんなミツコのことを知っています。
「どうしたの?今日はおかしいョ」。
そんなクラスメートたちにも、悲劇は降りかかるのでした…。

精力的に作品をリリースする園子温監督。天才とも鬼才とも評される監督ですが、
量産が生む副産物として、ちょっと映画が粗くなってないかなぁと感じるのはボクだけでしょうか?
現場も過程も見てないので、単なる感覚的なものですが、
『ヒミズ』なんかゾッとする繊細さと荒削りな部分が同居していたような。
あれから監督の名前を聞いただけで期待してしまうので、ハードルが上がってしまってるのかも。
パンチラなどのサービス?は満載です。そこも監督にはなくしてもらいたくない部分ですが(笑)。
今回はあえて厳しく☆2つ。
「リアル鬼ごっこ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.7.3

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』☆☆☆
『チャイルド44 森に消えた子供たち』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年も半分が過ぎました。上半期のナンバー1映画は何でしたか?
半年で見させて頂いた試写の数は57本。今年は例年に比べて少ないのですが、
7月以降も時間を見つけて積極的に拝見したいと思います。
さ、今週は2本です!



『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は、MARVELの人気シリーズ。

“戦う実業家”アイアンマンことトニー・スターク。
彼が秘密裏に進めていたのが“ウルトロン計画”。
これは、もしアベンジャーズがいなくなっても人類を守れるようにと作られた、
人工知能による完璧な平和維持システムのこと。
ところが、その人工知能であるウルトロンが出した結論は、争いを繰り返す人類こそ平和の敵。
人類を滅ぼすことが平和維持の最善策だと。
ウルトロンは自ら機械の身体を持ち、悪の組織ヒドラ党の人体実験によって
特殊な能力を持つ人間兵器となったワンダとピエトロの兄妹と手を組み、
人類を滅ぼそうとするのです。
自らが招いた最悪の事態を何とかしなければと、
トニーはアベンジャーズと共にウルトロンに立ち向かうのでした…。

アイアンマン、ソー、ハルク、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、
ホーク・アイなど、そうそうたるヒーローたちが地球の平和を守るアベンジャーズ・シリーズ。
今回は彼らがマインドコントロールされ、消せない過去や忌まわしい心の闇に直面することにより、
超人なのに人間らしい弱さも持つというのが興味深いところ。
とはいえ、人工知能が「人類の平和を脅かすのは人類だ」というのは、
後に控えし話題作とも“ちょい被り”なんですよね(笑)。
多分にそういうことなんだと、人は映画から学ばなければ、
本当に滅亡するかもしれませんョ。☆3つ。
「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」公式サイト



『チャイルド44 森に消えた子供たち』は、数々の賞に輝いたミステリー小説の映画化。

舞台はスターリン政権下のソ連。
孤児院からひとりの少年が脱出。軍人に拾われ、レオという名をもらった少年は、
大人になり、第二次世界大戦時にベルリン陥落の英雄として報道されます。
その結果、レオは国家保安官となり、
いわゆる秘密警察として反体制活動を取り締まるエリート捜査官となります。
ある日のこと、同じ職に就く親友の子供が変死体で発見されるんですね。
しかし、スターリン曰く「犯罪は資本主義の病。理想国家で殺人はあり得ない」と。
つまり、これを殺人事件だとするのは“反逆”となるのです。
泣き寝入りせざるを得ない親友の家族たち。
ところが犠牲者は次々と出てくる。対象はすべて子供で、
全裸で胃が全摘出されるという惨たらしい遺体。
別件で妻にスパイ容疑がかけられ、その影響で左遷となったレオは、
それを機に、この事件の全容解明に挑むのですが…。

ベールに包まれた謎の多い国、ソビエト連邦。
秘密警察が闊歩するのですから、様々な圧政や統制は想像に難くないでしょう。
誰も信じることができないというのは、劇中のエピソードなんかにも出てきます。
そんな中で、良心に従って真実を求めるレオ。
いや、その原動力が良心だったかどうかはちょっとわかりかねますが。
重い空気が全編を覆いつくす作品です。
ちなみにこの原作、日本では09年の「このミステリーがすごい!」
海外編の第1位に選ばれているそうです。☆3つ。
「チャイルド44 森に消えた子供たち」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.6.26

『天の茶助』☆☆☆
『ラブ&ピース』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会に行くと、大体この席に座るというのがあります。
一番前がいい、右から見る、左から見る。人によってこだわりがあるんですよね。
同じ場所を狙ってる人もなんとなくわかるので、その人が列の前に並んでると、
「今日はあそこの席は諦めなきゃ」となります。
せっかくなら自分の好きな場所で見たいから、ついつい試写会場には早く行っちゃうんですよね。
ヒマな人だと思われてないか、心配です(笑)。
さ、今週は2本です!



『天の茶助』は、松山ケンイチ主演のファンタスティックムービー。

天界。無数の白装束の脚本家が、黙々とシナリオを書いています。
これは下界に生きる人間たちの人生という名のシナリオです。
脚本家たちにお茶を配る茶番頭の茶助は、ひとりの女性の物語が気になって仕方ない。
口が不自由なユリの人生でした。
そんな時、総指揮者からのテーマが響きます。
『斬新』。
ある脚本家が茶助に何か斬新なアイデアはないかと尋ね、
茶助は思いつきでしゃべってしまうんですね。
ところが、それが遠因となり、ユリは事故で死ぬ運命となってしまいます。
「えっ。まさか」。
ユリを救うには、自分が下界に降りて、事故から回避させるしかなかったのです…。

物語はこの後、下界である人間の世界、ユリの住む沖縄で展開していきます。
天界の住人はシナリオに影響を与えないらしく、茶助が降り立ったのはいいのだけれど、
どうにも茶助のことが嫌いな脚本家がいるらしく、ユリを助けようとすると邪魔が入ります。
さらに、茶助の持つ不思議な能力が波紋を広げていく。
運命とは、優しさとは、生きるとは何かを、ファンタジックに描いた1本です。
少々の中だるみ感は否めませんが、
原作から監督のSABU自身が書いたというチャレンジには敬意を表したい作品。
独特の“色出し”には成功してるのではないでしょうか。☆3つ。
「天の茶助」公式サイト



『ラブ&ピース』は、園子温監督のこちらもファンタスティックムービー。

楽器の部品会社で働く良一は、周りからダメの烙印を押された“お荷物サラリーマン”。
元々はミュージシャンを目指していたものの挫折。
唯一の楽しみは、同僚の裕子をチラッと見やること。
もちろん声など掛けられません。
ところがある日、デパートの屋上で1匹のミドリガメと目が合い、
えもいわれぬ運命を感じるんですね。
ピカドンと名付けたこのミドリガメとの出会いが転機となり、
良一の人生は猛スピードで変わっていくのです。 半年後には、2020年の東京オリンピックのために作られた日本スタジアムでライブをする良一。
裕子は客席から、その姿を見守っていたのです…。

小学生が寝ながら見ている夢をスクリーンに映し出したような映画。
つまり、普通に描く筋書きではあり得ないような展開で、話が、場面が変わっていく。
でも目覚めた時にうっすら夢が記憶に残っていて、
すぐに薄れゆく残像を追いかけているような。そんな感じ。
渡されたプレスには、“捨てられたものの変容を描いた寓話”という解説文がありました。
“大人のためのおとぎ話”なんて表現もありました。
ネタバレ防止のために書けないこともたくさんあるので、このへんにしておきますが(笑)、
どの登場キャラクターに自身を投影するかで、見方は変わるかもしれません。
ものを捨てられないボクは、ますますものが捨てられなくなりそうです(笑)。☆3つ。
「ラブ&ピース」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.6.18

『虎影』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


夏の超大型作品の公開を前に、続々と試写が始まっています。
そのほとんどが予約制なんですが、席がすぐに埋まってしまいます。
取れたらホントにラッキー。ちょっと無理をしてでも見に行かないと。
またご報告しますね。
さ、今週は1本です!



『虎影』は、斎藤工主演のアクション・エンタテインメント。

最強の忍びと言われた虎影。
そんな彼も今では足抜けをし、同じ忍び仲間だった月影と結婚。
静かに暮らしていたのです。
ところが、忍びの首領が宝の地図の片割れである“黄金の巻物”を手に入れたため、
もう一方の“銀の巻物”を奪わせようと、虎影たちに再び仕事を命じるんですね。
もちろん断る虎影たちでしたが、首領は息子である孤月を人質に取ります。
仕方なく、夫婦で“銀の巻物”を持つ藩主の館に忍び込み、
難なく目的の品は盗み出せたのですが、そこに捕らわれていた少年を助けたため、
藩主の雇う忍者部隊に捕まってしまうのです。
今度は妻である月影が人質となり、逆に“黄金の巻物”を持ってこいと命じられます。
愛する家族をそれぞれに人質に取られてしまった虎影。
果たして、妻と息子を助け出すことはできるのでしょうか…。

見る前は、人気絶頂の俳優・斎藤工を使った、普通の忍者ものかなと思っていたのですが、
意外やそうでもなく、コミカルな作品に仕上がってるんですね。
もちろん、殺陣のシーンなど、二枚目の斎藤工を十分に発揮している部分もあるのですが、
ラストなど中高年ならニヤリとしてしまうかもしれません。
走ったり、ムチで叩かれたり、TCK(大井競馬)のキャンペーンキャラクターを務める彼には、
また違った意味でピッタリかも(笑)。☆3つ。
「虎影」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.6.11

『画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


おすぎとピーコのピーコさんが、試写室で隣りに座った女性に一言。
「一番前の席に座る時は、白い鞄は光るからイスの下にしまうものよ」。
実は一番端の席に座る人が、荷物を横に置く時もそうで、
誘導灯に光って気になって仕方なかったりするんです。
こうして言ってもらわないと気付かないことってありますよね。
たぶん、ボクも何かしらマナー違反をしてる気がします。
ピーコさん、その女性、その隣りにボク。
その日はすっごい緊張しながら映画を見たのは言うまでもありません(笑)。
さ、今週は1本です!



『画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密』は、実話を元にしたストーリー。

19世紀半ばのフランス。
エドゥアール・マネが描いた1枚の娼婦の絵が物議を醸し出していました。
その絵を食い入るように見つめる2人の女性、エドマとベルト。モリゾ家の姉妹です。
姉妹がルーヴル美術館で模写をしているところに現れたマネは、
後日、妹のベルトにモデルになって欲しいと手紙を書くんですね。
ところが、マネに好意を抱いたのは姉のエドマのほう。
「姉でいかが?」と返事を出しますが、マネは首を縦には振りません。
そこで姉妹揃ってマネのアトリエに行くのですが、それを知った姉妹の父が激怒。
マネはモリゾ家に挨拶に出向き、家同士の交流が始まります。
実はマネは既婚者。それを知ったエドマは哀しみに暮れます。
自身をモデルに描いたマネの新作『バルコニー』を見て、斬新な画風に衝撃を受けたベルトは、
自分も外で光を描きたいと訴えますが、師匠のコローは大反対。
当時、女性の絵は“上流階級のたしなみ”。
本格的に職業画家として絵を描くなんてことは許されていなかったのです。
交流が深まる中、ベルトはマネと恋に落ちます。でもそれは道ならぬ恋。
恋も、絵も、自分はどう生きたらいいのか。ベルトは迷いながらも前を向くのでした…。

マネの絵画『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』という絵が、日本にもやってきて、
高い人気を博したそうですが、このベルト・モリゾが単なるモデルではなく、
“印象派”と言われる新たな絵画の世界を切り開いたメンバーのひとりだったと。
この時代の女性の在りようも考えるに、
ベルト・モリゾという女性は非常に興味深い人物だったんじゃないかということで探究し、
掘り下げていった映画のようです。
あまり美術に明るくないボクには、正直ちょっとピンとこないところもあったけど、
とにかく女性の社会進出の原点みたいな部分に、
日本のみならず、世界が注目をしているという意味では、これもそんな1本なのかなと。
時代考証など、パンフレットを買ったりして、
多少、先に知識を入れて見たほうがいいかもしれません。☆3つ。
「画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.6.5

『エレファント・ソング』☆☆☆☆
『奇跡のひと マリーとマルグリット』☆☆☆
『トイレのピエタ』☆☆☆
『トゥモローランド』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ディズニーの試写室が、目黒から虎ノ門にお引っ越し。
新しい場所に移ると、周りに新しいお店も発見するもので。
ランチが多いのですが、それが楽しみのひとつにもなります。
逆に、意外と好きだった目黒駅前の立ち食いそば屋さんには
もうほとんど行く機会がなくなっちゃうんだろうなぁ。それはそれで寂しいけど。
さ、今週は4本です!



『エレファント・ソング』は、精神科病棟を舞台にした心理劇。

とある精神病院で、ひとりの精神科医が姿を消します。
最後に彼の姿を見たというのは、病棟の中で最も問題児のマイケルという患者でした。
マイケルへの事情聴取を命じられたのはグリーン院長。
元妻の看護師長であるピーターソンはひとりじゃなく、
誰かと話を聞くようアドバイスをしますが、グリーン院長は聞き入れません。
美しい容姿を持つマイケルは、人気オペラ歌手の息子でしたが、
残念なことに“望まれない子供”だったのです。
なぜかゾウが大好きで、危険な匂いのするマイケルに翻弄されるグリーン院長。
消えた精神科医は?マイケルの狙いは一体何だったのでしょう…。

あまり書くとネタバレに近いことになっちゃうので書きませんが、
グリーン院長とピーターソンの間には事故で亡くなった娘がいたり、
マイケルが精神科医との性的関係をほのめかしたりと、いろんな要素が散りばめられています。
よく出来たというか、よく考えてまとめてあるというか、
独特の空気感の中で進むストーリーに、いつの間にか引き込まれます。
ちょっと好き嫌いはあるかなぁ。何が虚で、何が真が。
意外な真実と結末と。面白かったですョ。☆4つ。
「エレファント・ソング」公式サイト



『奇跡のひと マリーとマルグリット』は、実話をもとにした映画。

19世紀末のフランス。聴覚障害を持つ少女たちに教育を施すラルネイ聖母学院。
そこにひとりの少女が連れて来られます。
彼女の名はマリー。
マリーは耳が不自由なだけでなく、目も見えず、しゃべることもできなかったのです。
庭の木をよじ登り、下りようとしないマリーを見て、
院長は「聴覚だけならまだしも、マリーのような状態の子はうちでは手に負えない」と入院を断るのですが、
木から下ろすために修道女のマルグリットがマリーの手に触れたとたん、
えもいわれぬ魂の強さを感じたのです。
院長に自分がマリーの面倒を見ると申し出たマルグリット。
その思いの強さにOKを出した院長でしたが、マリーへの教育は、しつけを超えた“戦い”。
それでも決して諦めず、マルグリットはマリーと対峙したのです…。

いわゆる三重苦の聖人にはヘレン・ケラーがいますが、
ヘレン・ケラーは生後18ヶ月までは目が見え、耳が聞こえていたとか。
先天的に三重苦だったマリーとはだいぶ訳が違うと専門家は分析します。
8ヶ月までは何も進展がなく、座って食事ができない、
物に名前があることももちろんわからなかったマリーですが、ある日突然ナイフをナイフと認識したのです。
そこからは乾いたスポンジが水を吸収するように、様々なものを理解、表現していきます。
ところが、逆にマルグリットには重い持病があって、
ふたりが共にいられる時間は限られていた…そんなお話です。
佳子さまが試写をご覧になられたことでも話題になった1本。
心洗われたい方にお勧めです。☆3つ。
「奇跡のひと マリーとマルグリット」公式サイト



『トイレのピエタ』は、RADWIMPSのボーカル&ギター、
野田洋次郎の映画初主演作品。

窓拭きのバイトに明け暮れる宏。
美大に通い、画家になる夢を持っていた宏でしたが、今では断念。ただ漠然と毎日を過ごしていたのです。
ところが、ある日突然、宏は倒れてしまいます。
診断は「ご家族とご一緒に」。
両親を呼ぶのも面倒だと思っていたら、病院のロビーで制服を弁償しろとわめき散らす女子高生がいます。
彼女の名前は真衣。制服は買ってやるから妹のフリをしろと。
そうして聞かされたのは「胃に悪性の腫瘍ができていて、このままだと余命3ヶ月」というものでした。
真衣も生きることに喜びを見いだせずにいた女子高生。
「一緒に死んじゃおっか」。
しかし、入院生活で巡り合った様々な人との出会いが、宏の考え方を変えていったのです…。

最初は正直、あまり上手くない役者を使ったB級映画かなと思いましたが、さにあらず。
演技に慣れていないのはあとでわかりました(笑)。
タイトルの意味がわかるのも最後の最後。途中ヒントがあるので見逃さないように。
また、野田洋次郎の良さが出るのも最後の最後。
逆にそこまでは、杉咲花(味の素「クックドゥ」のCMで最後の回鍋肉を山口智充から奪う美少女)の
演技力が光ります。伸びますョ、このコ!☆3つ。
「トイレのピエタ」公式サイト



『トゥモローランド』は、ディズニー映画。

1964年のニューヨーク万博。
発明コンテストに意気揚々とやってきたのが、11歳の少年フランクでした。
彼は未完成ながら、背負えば人間が空を飛べる“ジェットパック”を発明、提出するのですが、
審査員は評価してくれません。
そんなフランクを見つめる少女がひとり。彼女の名はアテナ。
アテナはフランクに“T”のピンバッジを手渡します。
それはウォルト・ディズニーのパビリオン“イッツ・ア・スモール・ワールド”の秘密の扉への入場章だったのです。
フランクはアテナに聞きます。
「ここはどこ?」
「トゥモローランドよ」。
場面は変わって、現代。
17歳のケイシーは宇宙に夢を馳せる科学少女。なんと彼女のもとにも“T”のピンバッジが。
そしてあの少女アテナが、1964年と変わらない少女のままで現れたのです…。

ディズニーランドのアトラクション“イッツ・ア・スモールワールド”。
夢と平和の理想の世界像と言われているあの空間が、実は別世界への入口で、選ばれし者だけが入れるとしたら。
そんな発想を、おそらく“ディズニー哲学”を交えて描いたんだと思います。
「…だと思います」。なんか歯切れの悪い言い方ですみません(笑)。実は意外と難しくて。
21世紀はテクノロジーの進化こそあれど、それが戦争やテロに使われるなど、
必ずしも人間の役に立っているとは言えない現状。
そのあたりを嘆いてもいるんじゃないかなと。
これまでの作品のように、「さぁ楽しもう!」と思って見に行くと、壁にぶつかるかもしれませんョ。
出来の良し悪しではなく、そんな意味で敢えて☆を少なくしておきます。☆2つ。
「トゥモローランド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.5.28

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』☆☆☆☆☆
『グッド・ストライプス』☆☆☆
『新宿スワン』☆☆☆
『種まく旅人〜くにうみの郷〜』☆☆☆☆☆
『ピッチ・パーフェクト』☆☆
『夫婦フーフー日記』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今週は満点の☆5つが2本。
その他の作品もバラエティーに富んだジャンルで見応え十分です。
是非、劇場に足を運んでみて下さいね。
さ、今週は6本です。



『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』は、
NYのオシャレなマダムたちを追ったドキュメンタリー。

NYの街を歩く60歳以上のオシャレな女性たちを取り上げたブログ
『Advanced Style』。
08年に、33歳の男性フォトグラファー、アリ・セス・コーセンによって始められたこのブログは、
たちまち人気急上昇。
なんと言っても主役のマダムたちの、超個性的で、華やかで、
エネルギッシュなファッションが魅力なんです。
この映画には7人の女性が登場し、ファッションと人生を語りますが、実に生き生きとしていて。
こんな年の重ね方をしたいなぁと、見た誰もが思うはず。
アンチ・エイジングとはこうあるべきだという素晴らしいお手本だと思います。
人生はいくつになっても楽しいんだと自信がつきます。
若いのに元気がないあなた、必見です!☆5つ。
「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」公式サイト



『グッド・ストライプス』は、マンネリカップルが結婚に至るまでの物語。

緑と真生は交際4年になるマンネリカップル。
真生のインド出張が決まり、次に会えるのは3ヶ月後だというのに、緑はちっとも寂しそうじゃない。
ところが、真生がインドに行っている間に緑の妊娠が判明するんですね。
帰国後、一緒に病院へ行くと、妊娠5ヶ月との診断。
「結婚…するよね?」「う、うん」。
まさかの展開にふたりは戸惑うのでした…。

タイトルの『グッド・ストライプス』というのは“素敵な平行線”と訳すのだそう。
なるほどといった感じです。
いわゆる“できちゃった婚”だから、互いの親や家族のことは全く知らないわけで。
緑の診察をしたのが真生の母だったり、真生は離婚した父親と全然会っていなかったり。
緑の姉が変わり者で、妹の過去を真生にバラしたりと、
いざ結婚となって初めて知ることがいっぱいだったのです。
ま、“子はかすがい”とはよく言ったもので、
妊娠でもしなければ結婚なんかしないというカップルも多いんでしょうね。
すべては運命、ご縁なんだなぁと改めて。☆3つ。
「グッド・ストライプス」公式サイト



『新宿スワン』は、新宿・歌舞伎町を舞台にしたスカウトの物語。

すべてを失い歌舞伎町をうろついていた白鳥龍彦は、チンピラたちに絡まれ、大乱闘。
それを助けてくれたのはスカウトの大物、真虎でした。
「お前、スカウトになれ」。
水商売や風俗に女性を売り込むスカウトの仕事に躊躇していた龍彦でしたが、
「ならば俺がスカウトした女の子には必ず幸せだって言わせます」と腹を括り、
真虎が所属するバーストという会社に入ります。
ところが、対立するライバル会社ハーレムとのいざこざや、
暴力に耐えながら仕事をする女の子の存在など、
龍彦の理想と現実はあまりにもかけ離れていたのです。
中でもハーレムの秀吉という新進気鋭のスカウトが、異様なまでに龍彦にライバル心を燃やします。
実はこのふたり、龍彦が覚えていないだけで、深い確執があったのです…。

それはそれは豪華な出演陣。間違いなく話題になる1本です。
龍彦役の綾野剛はやんちゃっぽくていいけど、意外と真虎役の伊勢谷友介が迫力がない(笑)。
インテリやくざの目の奥の鋭さみたいなのが感じられなかったのが残念。
『明日のジョー』の力石徹役のほうが迫力があったかな。
秀吉役の山田孝之は『闇金ウシジマくん』同様の凄みがあって、こちらは当たり役。
風俗嬢の沢尻エリカはいいに決まってます(笑)。
いかにも劇画の実写版といった感じ。意外や幅広い層で楽しめる作品かと思います。☆3つ。
「新宿スワン」公式サイト



『種まく旅人〜くにうみの郷〜』は、篠原哲雄監督最新作。

淡路島。海と山の実りがいっぱいのこの土地に、農林水産省から地域調査官の神野恵子がやってきます。
アメリカ帰りの恵子は上司から、日本の第一次産業の実態をしっかり見てこいと命じられたのです。
ところが頭でっかちのエリート女性官僚を、市役所の職員たちが好んで迎え入れるはずもなく。
視察に行った海苔の養殖場でも、配慮を欠いたもの言いが従業員の渉の怒りを買い、
恵子は最初からつまずくことになります。
次に知り合ったのは、タマネギ農家の岳志でした。
父の急死をきっかけに東京の広告代理店を辞め、帰郷した青年で、実は岳志と渉は兄弟だったのです。
岳志は渉が家を出て海苔の養殖に就いたのが父の負担になったと罵り、
渉は岳志こそ畑を継がずに東京に行ったじゃないかと怒り。
ふたりは絶縁状態にあったのです。
そんな中、恵子は“かいぼり”という、
山の栄養を溜め込んだ池の泥を海に流すことで豊かな水質を取り戻す伝統手法の存在を知るんですね。
この“かいぼり”は、海に携わる人と山に携わる人の両方が力を合わせなくてはできない作業。
恵子は“かいぼり”の復活と、兄弟の仲直りを目指して奔走するのですが…。

ボクの中高同級生だった篠原哲雄監督の作品。
だからといって誉めるわけじゃなく、この手の映画の陥りやすいところは、
海苔の養殖や、タマネギ栽培、“かいぼり”の手法などを映した、
まるで役所のプロモーションビデオみたいになっちゃいがちなところ。
ところが、ちっともそんなふうに感じなかったのは、篠原哲雄監督のバランス感覚なんだと思います。
題材じゃなく、ちゃんとストーリーに主眼を置いている証し。
50代以上の人は覚えてるかなぁ、『サンダ対ガイラ』という映画を。
それの人間版と言っては語弊があるかもしれないけど(笑)、
海と山、どちらも同じ自然の恵みなんだということだと思います。
岳志に桐谷健太、渉に三浦貴大。似てます(笑)。ちなみに恵子は栗山千明です。☆5つ。
「種まく旅人〜くにうみの郷〜」公式サイト



『ピッチ・パーフェクト』は、女子大生によるアカペラコーラスグループの奮闘記。

バーデン大学に新入生として入学したベッカの夢は音楽プロデューサー。
大学に進学するつもりはなかったのですが、教授である父の切なる願いで大学に進んだのです。
ベッカは寮の部屋にこもってCDのリミックスに没頭。
そんな娘の姿を見た父は、大学生活に積極的に参加して欲しいと、
その上で1年後も希望が持てなければ中退も認めようとベッカを説得するのでした。
一度は勧誘されて断ったアカペラコーラス部“バーデン・ベラーズ”でしたが、
たまたま寮のシャワールームでベッカが鼻歌を歌ってたところをメンバーに聞かれ、
歌唱力を絶賛されると半ば無理矢理に入部させられてしまいます。
このアカペラコーラス部、個性的なメンバーがズラリ。
リーダーの頭も堅く、やる曲は古めかしい昔の曲ばかり。
全国大会進出を目指すも、地区予選どころか、同じ大学内のライバルグループにもバカにされる始末。
果たして“バーデン・ベラーズ”の夢は叶うのでしょうか…。

スポ根ならぬ、“ウタ根”もの(笑)。青春を音楽に掛けた訳あり少女たちの物語です。
ただ歌に関しては、天性のものが大きいのと、
アカペラってそんなに簡単には上達しないだろうという疑問が湧いてきちゃって。
音楽にちょっと詳しいのが災いした感じ(笑)。もっと素直に見ればいいんでしょうけどね。
大学が舞台ですから、もちろん恋愛もあって。
柔らかアタマで見れば、十分楽しめる作品だと思います。
ただ、ちょっとお下品な表現もあって、ボクは辛口で(笑)。☆2つ。
「ピッチ・パーフェクト」公式サイト



『夫婦フーフー日記』は、実在する夫婦の癌の闘病ブログを元にした愛情物語。

20歳の学生時代に知り合ったコウタとユーコ。
何でも話せる友達の関係は社会人になっても続き、互いのグチを聞いては励まし合うふたり。
状況が一変したのは出会って17年目のこと。ユーコが見合いをするかもしれないと。
それを聞いたコウタはあわててプロポーズ。ふたりは結婚したのです。
入籍1ヶ月で妊娠が発覚。幸せいっぱいのはずでしたが、その5ヶ月後、
ユーコに悪性腫瘍が見つかります。それでも無事に息子が誕生。
しかし、ユーコの病状は悪化。あっという間にユーコはこの世を去ってしまったのです。
その間の闘病生活をブログにしていたコウタは作家志望。
反響も大きく、書籍化しないかと出版社から声が掛かります。
すると、四十九日の法要の前日、死んだはずのユーコがコウタの前に現れたのです。
ユーコの姿はコウタにしか見えません。
コウタと幼いひとり息子と、死んだはずのユーコとの奇妙な生活が始まったのでした…。

友達17年、夫婦生活493日。それでも愛に満ち溢れた日々だったと。
幽霊となったユーコは後から映画用に付け足した設定。
ブログを書籍化し、映画化するにあたって気づいたことがいっぱいあったと。
また書けなかったこともたくさんあったと。
そんな思いを、幽霊になったユーコが代弁してるんですね。
コメディタッチにしてますが、温かい夫婦の愛の物語。
当たり前の存在がいかに大切か。
失ってからでは遅いということを教えてくれているのかもしれませんョ。☆3つ。
「夫婦フーフー日記」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.5.21

『メイズ・ランナー』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


シネマート六本木が閉まるんですね…。
韓国映画を中心に、単館系の作品を上映してたから、
逆にニッチなファンにはたまらない貴重な映画館だと思っていたのに。
ボクらも試写でよく足を運んでいただけに、本当に残念でなりません。
巨大資本が巨額の宣伝費を掛けた作品だけに陽が当たる。時代の波なのでしょうか…。
さ、今週は1本です。


『メイズ・ランナー』は、全米160万部を売り上げたベストセラー小説の映画化。
3部作シリーズの第1章。

周りを高いコンクリート壁に囲まれた“グレード”と呼ばれる広場。
そこには自分の名前以外、記憶を失った少年たちが暮らしていました。
月に一度、新たな若者が高速リフトに乗せられて、生活物質と一緒に送られてきます。
トーマスもそんなひとり。彼も何のためにここに来たのかもわからない。
高いコンクリートの壁は巨大迷路になっていて、朝になると扉が開き、夜になると扉が閉まる。
夜の間に中の構造が変わるという。
わかっているのは、その迷路を抜けなければ、外の世界へは戻れないということ。
少年たちはグループを作って対立しているものの、
手を組まなければ脱出できないことは理解しているのです。
そんなある日のこと、“最後の1人”が送り込まれます。
なんと初めての女性。さらにその少女は、なぜかトーマスの名前を知っていたのです…。

3部作の第1章ということで、正直??だらけ(笑)。
最後に予告編も付いていて、そちらを見ると、なるほどそんな背景があったのかと。
映像のスケール感は大きいので、もしかしたら原作を読んでからのほうが楽しめるのかもしれませんね。
3部作です。続く2章、3章のためにもしっかり見ておかないと(笑)。☆3つ。
「メイズ・ランナー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.5.14

『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救WOO!』☆☆☆
『ゼロの未来』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写になかなか行けなくて。「あぁ、終わっちゃったなぁ」と試写状を捨てる時の切なさ…(笑)。
そして、いい作品だったらどうしようという不安。
ま、人には1日24時間しか与えられていないので、仕方ないと割り切るしかないんですけどね。
さ、今週は2本です!


『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救WOO!』は、人気アニメの映画化。

四角く黄色い海綿のスポンジ・ボブ。
トレードマークはクリクリおめめにすきっ歯、そして四角い半ズボン。
スポンジ・ボブたちが暮らすのは海の底にあるビキニタウン。
スポンジ・ボブはカーニさんが経営するバーガーショップ“カニカーニ”で働いていたのです。
毎日飛ぶように売れるカーニバーガー。その美味しさは秘密のレシピにありました。
その秘密のレシピを狙っているのが、向かいのライバル店“エサバケツ亭”のオーナーのプランクトン。
ある日のこと、秘密のレシピの入ったビンが無くなっているではありませんか。
ところがプランクトンは犯人ではありません。
じゃ、一体誰が秘密のレシピを盗んだのか?みんなが一致団結して、犯人探しを始めるのでした…。

元祖“ゆるキャラ”の異名を持つスポンジ・ボブ。
レシピを盗んだ犯人は、意外なところで店を開いて商売大繁盛。こ
のシーンはアニメから、実写とCGに変わります。
理屈で見る映画じゃありませんからね(笑)。
黄色くボコボコの海綿キャラを可愛いと思うかどうかは、あなた次第です。☆3つ。
「スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救WOO!」公式サイト



『ゼロの未来』は、近未来ヒューマンドラマ。

舞台は近未来。
コーエンは、世界を支配するコンピューター会社で働く天才プログラマー。
帰宅すると“人生の意味を教えてくれる”電話を待ち続ける日々。
彼は社長に在宅勤務を直訴。そのほうが仕事に集中もできるし、
大切な電話を逃すこともないから。
許可をもらったコーエンは“ゼロ”という難解な数式を解読するという任務に就きます。
ところが一向に答えは見つからず、大切な電話もかかってこない。
ストレスが溜まったコーエンは、大事なスーパーコンピューターを壊してしまうのです…。

ごめんなさい。ボクが苦手なタイプの作品で。 こういうのの良さがわからないんですよ。あらすじを書いてても、自分でよくわからない…(笑)。 逆に好きな人にはたまらなくハマるはず。あなたはどっちですか?☆2つ。
「ゼロの未来」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.5.9

『愛の小さな歴史』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


GWはいかがお過ごしでしたか?
どこかに出掛けて、いろんな刺激を受けてきたという人は感性が豊かになっているはず。
こんな時にいい映画はさらに“何か”を与えてくれます。積極的に劇場に足を運んでみましょう。
さ、今週は1本です!



『愛の小さな歴史』は、数奇な人の縁の物語。

食品配達の会社で働く夏希は、突然訪ねてきた青年に父の現状を聞かされます。
知りたくもなかった父の話。夏希にとって父は、
母と自分を捨てた憎しみの対象でしかありませんでした。
一方、借金の取り立てをしている夏生には妹がいました。
家のすべてのトラブルを妹に押し付け、家を出て行った兄を、妹は憎んでいたのです。
夏希は悩んだ末、父を訪ねようと決意。罵り、そばにいることが復讐と同居を決めます。
夏生は、悪い仲間と付き合う妹を何とか更正させたいと妹の部屋に押しかけ、無理矢理同居を始めます
憎しみと優しさ。血が繋いでいるだろう複雑な感情が、それぞれの空間に渦巻いていたのでした…。

単館レイトショーものながら、中村映里子、光石研、池松壮亮など、豪華俳優陣が出演している作品。
見た後に「なるほどそういうことか…」と納得するシーンがあるのですが、
その全体像を最初から把握している作り手と、
初めて一から見る観客との間にある温度差みたいなものを感じてしまいました。
ストーリーの紡ぎ方というか、手法なんでしょうけどね。
主人公たちに疑問符の付く行動も多く。ごめんなさい、あくまで個人的評価です。☆2つ。
「愛の小さな歴史」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.5.1

『フォーカス』☆☆☆
『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』☆☆☆
『私の少女』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


いよいよGW。東京も観光の人でいっぱい。
映画もちょっと中心街からズレるだけで、比較的すいている穴場の劇場があったりするものです。
「混雑がやだなぁ…」という方にはオススメですョ。
さ、今週は3本です!



『フォーカス』は、ウィル・スミス主演の詐欺師の物語。

ニッキーは天才詐欺師。予約困難な高級レストランーで、
有名シェフに扮し、豪華なディナーを堪能していると、ひとりの美女が近づいてきます。
実は彼女もまた女詐欺師のジェス。
しかし、腕が違いすぎるニッキーは、ジェスを打ちのめし、その場を立ち去るんですね。
ニッキーの後を追うジェス。彼女に何かを感じたニッキーは、ジェスに盗みの極意を教えます。
スーパーボウルの開催中はスリの天下。ニッキーは仲間たちと詐欺の一大プロジェクトを計画。
そこにジェスも参加。グループは次々と仕事を完遂していきます。
これで幕締めという日に、仲間の金を持ったニッキーとジェスは、
仕事抜きでスーパーボウルを観戦。
ささいな賭けを楽しんでいたふたりに、東洋系の若い金持ちが話しかけてきます。
ギャンブラー同士の一騎討ち 。
生来の負けず嫌いで、負けが込んだニッキーは、仲間の金にも手をつけてしまうのですが…。

あくまで導入部。話が話ですから、二転三転、ドンデンデンのドン、さらにドン(笑)。
舞台をF1の会場へと移し、騙し、騙されのストーリーは続きます。
たぶん、最初は見る側も騙されてみて、できれば展開を知った上でもう一度見ると、
その凄さ、楽しさがわかるのかもしれません。
スタイリッシュな映画です。“彼女のハートを盗みたい”なら、デートにいいかも?
なんてコメントがベタ過ぎますか(笑)。☆3つ。
「フォーカス」公式サイト



『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』は、実話をベースにしたギャング映画。

1980年代のNY、クイーンズ。
“蛇頭”と呼ばれる中国人グループが、中国からの不法移民ビジネスを手掛け、
自由とお金を求めて多くの中国人がアメリカに渡ってきていました。
サニーとスティーブンも、そんな不法移民の子。
身分証もない彼らは、どこかの組織に所属しなければ生きてはいけなかったのです。
クイーンズで勢力争いを繰り広げる6つのギャング組織。
その中のひとつ、青龍(グリーン・ドラゴン)のメンバーとなったサニーとスティーブン。
中国系ギャングの彼らには、対立しながらもひとつだけルールがありました。
それは絶対に白人を巻き込まないこと。
白人を巻き込んでしまえば、FBIが動き、
不法移民である自分たちの存在が危うくなるから。
ところが、そんな掟を破る抗争が起こってしまったのです…。

『インファナル・アフェア』で知られる、アンドリュー・ラウ監督作品。
制作にはマーティン・スコセッシという、巨匠のタッグによるギャング映画。
暴力の中でしか生きることができない彼らに、選択肢などなく、
そこでのし上がるためには銃口は誰にでも向けなければならない。
救いのないストーリーに、席を立つ時は、ちょっと気持ちが落ちているかも。
ただ、スクリーン上に展開する緊迫の1時間33分。
さすがの制作陣だなと、思わされるのは間違いありません。☆3つ。
「リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン」公式サイト



『私の少女』は、韓国映画。

訳あって、ソウルから海辺の小さな村の警察所に所長として転任してきた
女性警察官のヨンナム。
心に傷を負っているのか、村の人々が歓迎会を開いてくれても居心地が悪いよう。
家に帰り、焼酎を浴びるように飲むのが日課となっていました。
赴任してすぐに見かけた、14歳の少女ドヒ。
彼女は複雑な家庭環境で、継父である村の有力者ヨンハから家庭内暴力を受け、
学校でもいじめに遭っていたのです。
ドヒを守ろうと、継父から離し、一緒に住み始めるヨンナム。
ところがヨンナムには、とある“過去”があったのです…。

児童虐待、アルコール依存、過疎、不法滞在。
そこに同性愛を入れるのが相応しいかとなると問題もありますが、
様々な社会的問題や要因を織り交ぜながら描いた不思議な感覚の映画です。
韓国では実際にセクシャル・マイノリティの人々は、
カミングアウトするか否かで悩んでいる、そんな段階にあるそう。
大きく根底に流れているテーマは“孤独”。
それでも人は生きていかなくてはならないのです。☆3つ。
「私の少女」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.4.22

『あの日の声を探して』☆☆☆
『龍三と七人の子分たち』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


4月前半は結構試写に足を運べたのですが、後半はスケジュールがキツくなって、なかなか…。
行けなかった試写状を捨てる時は、やっぱり心に何かが引っかかります(笑)。
さ、今週は2本です!



『あの日の声を探して』は、チェチェン共和国の紛争をテーマにした作品。

ロシアから独立を果たしたチェチェン共和国。
しかし、8年後に対テロ作戦の名目で、ロシアはチェチェンに侵攻を始めます。
9歳の少年、ハジの住む村にもロシア兵がやってきます。
まだ赤ん坊の弟を抱き、恐る恐る窓から外を眺めていたら、
いきなり両親が射殺されてしまうんですね。傍らにいた姉は泣き叫ぶばかり。
恐ろしさに足のすくむハジでしたが、家を捜索しに来たロシア兵から身を隠し、
ハジは弟を抱いてなんとか家を出ます。
途中、灯りのついた民家を見つけると、弟を軒下に置いてドアをノック。
家人が弟に気づいたのを見届けると、ハジはひとり歩き始めます。
通りがかったトラックがハジを拾ってくれますが、名前を聞かれても答えられないハジ。
そうです、ショックのあまり、ハジは声を失ってしまっていたのでした…。

この映画にはハジ以外にも複数の登場人物にスポットが当てられます。
ハジを探しに家を出た姉のライッサはもちろん、ハジと出会い、
一緒に生活を始めるEU職員の女性、キャロル。
街を歩いていたところを、いきなり軍隊に入れられて、人格が崩壊していくコーリャ。
戦争、紛争が生む理不尽な哀しみが、これでもかと描かれているんですね。
それでも懸命に生きる子供たち。ハジはそんな子供たちの象徴です。
逆に、どんなに惨状を訴えようと、無関心な国際社会に愕然とするキャロルも何かの象徴でしょう。
「戦争は絶対にしちゃいけない」。日本でも少なくなってきた戦争体験者の言葉です。
日本も戦争ができる国に戻りつつあるとしたら…。考えさせられる1本です。☆3つ。
「あの日の声を探して」公式サイト



『龍三と七人の子分たち』は、北野武監督最新作。

昔は“鬼の龍三”と恐れられた、元ヤクザの高橋龍三も70歳。
今では息子夫婦と同居して、肩身の狭い日々を送っています。
楽しみはといえば、兄弟分の“若頭のマサ”と、愚痴をこぼしながら昼間から一杯やるくらい。
ある日のこと、家族の留守を任された龍三の元に1本の電話が入ります。“オレオレ詐欺”です。
そうとは知らずに金を用意して、待ち合わせ場所に向かった龍三とマサ。
その異様な貫禄にビビった受取役は、金を受け取らずに逃げてしまったのです。
詐欺を取り仕切っていたのは元暴走族の京浜連合。
この事件がきっかけで京浜連合と揉め始めた龍三は、昔の仲間に声を掛け、
“一龍会”なる組を立ち上げます。
しかし、集まったのは手は震えるわ、足元はおぼつかないわのジジイばかり。
果たして、龍三たちの世直しは叶うのでしょうか…。

少子高齢化に一石を投じた…訳でもないんでしょうが(笑)、
“ジジイの元ヤクザ”という設定が奇抜な作品。
でも人って、歳を取れば取るほど子供に戻って、プライドが高くなる。
ヤクザとまではいかないけれど、扱いが難しくなるのが老人かもと、
身内を見ていてそう思います。
じいさんたちの勧善懲悪。主演の藤竜也、近藤正臣あたりはヤクザっぽいんですが、
意外と他の役者さんたちがハマっていない気がして。
その気になってるただの老人みたいで、もっと強面だったら説得力があったろうにと感じました。
このあたりがもしかしたら北野武監督の狙ったキャスティングだとしたら?
街に溢れる老人たちは頑固で扱いづらいならず者のようだと。
それなら深いなぁ。考え過ぎでしょうか(笑)。
『アウトレイジ』とはまったく違ったベクトルのヤクザもの。
北野作品が好きな方は是非。☆3つ。
「龍三と七人の子分たち」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.4.17

『あっちゃん』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先週、ドキュメンタリーが面白いと言いましたが、最近は割合としても増えてきている気がします。
今週ご紹介するのもそう。今週はその1本です!



『あっちゃん』は、ロックバンド、ニューロティカのボーカル、
“あっちゃん”ことイノウエアツシの半生を追ったドキュメンタリー。

2014年に結成30周年を迎えたパンクバンド、ニューロティカ。
ピエロのメイクが印象的なボーカルのあっちゃんを中心に、
これまで幾度となくメンバーチェンジを繰り返しながら、活動を続けてきました。
数々のバンドやアーティストに影響を与えてきたニューロティカのサウンドですが、
ライブバンドとしての色が濃く、大きなヒット曲を持たない中で、
ニューロティカがなぜここまで音楽を続けてこられたのか。
それはひとえに、あっちゃんの人柄でしょう。
実はあっちゃん、八王子で、年老いたお母さんと一緒に「ふじや」という
小さなお菓子屋さんをやっていて、バンド活動と並行して、
お菓子の仕入れや商品の陳列、販売までを手掛けているんですね。
お菓子も音楽も夢を売る商売。そんな庶民的な一面が、
ライブでのトークや楽曲の詞に活かされてるんでしょうね。
あくまで推測ですが、あっちゃんは人が大好きなんだろうなって。
人が好きだから、人に愛される。そんな気がしました。
ボクも実家が寿司屋で、
お正月なんかは店を手伝いながらラジオのスタジオに向かったりもしたものです。
だから勝手に親近感を感じてしまって(笑)。
大きく違うのはボクは“寂しがり屋の人嫌い”(笑)。
ボクも人が好きになれたらよかったのかなぁと、うらやましく思ったりもしました。
あっちゃん、50歳。庶民派パンクロッカー。
居酒屋で、なんで音楽をやり続けるのかを自問自答する時に、
あっちゃんの人柄がMAXに出ます。
あなたもきっとファンになっちゃいますョ。満点の☆5つ!
「あっちゃん」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.4.10

『JIMI:栄光への軌跡』☆☆☆☆
『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』☆☆☆
『宮古島トライアスロン』☆☆☆
『和食ドリーム』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ドキュメンタリーが面白い。 近年、映画を見ていて、本当にそう思うのですが、
今週は4本中、3本がドキュメンタリー。
実話なだけに、なかなか☆をつけづらいのですが(笑)、いい悪いじゃなく、
見る人の興味や関心がそこにあるかどうかですからね。
気になったら是非ご自身で確かめてみて下さいねっ。
さ、今週は4本です!



『JIMI:栄光への軌跡』は、“ギターの神様”ジミ・ヘンドリックスの生涯を切り取った映画。

1966年、ローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズの恋人リンダは、
NYのクラブでギターを弾く無名のギタリストの演奏に魅せられてしまいます。
彼の名はジミ・ヘンドリックス。
一発で才能を見抜いたリンダは、ジミに高価なギターをプレゼントし、
アニマルズのチャス・チャンドラーに紹介。チャスはジミをロンドンへと連れていきます。
そこで結成したのが、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス。
マネージメントを担当するチャスの手腕で、大物バンドのライブに飛び入り参加。
聴衆を魅了していきます。
ところが、イギリスでは人気になるも、アメリカではまったく火が着かず。
苛立ちを隠せずにいたジミですが、そんな状況を打破するチャンスが巡ってきたのです。
それはあのビートルズとの共演でした…。

“ギターの神様”と呼ばれた、黒人ギタリストのジミ・ヘンドリックス。
奇抜なファッションと、特異なプレイスタイルで、世界中の注目を集めるのですが、
この映画では、デビューした1966年とブレイクした67年の2年間にスポットを当てて、
ストーリーを構築しています。
リンダの前に交際していた女性がいて、ジミは“ヒモ状態”。
その後、リンダと出会ったもののグルーピーのキャシーに一目惚れ。
成功の陰にオンナあり、です(笑)。
クスリに溺れ、27歳の若さでこの世を去った天才の、一番密度が濃かったであろう2年間です。
実話に基づいたストーリー。音楽ファンは必見です。☆4つ。
「> 『JIMI:栄光への軌跡」公式サイト



『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』は、タイトル通り、
メキシコの麻薬犯罪の実態を追ったドキュメンタリー。

メキシコとアメリカの国境近くの都市シウダー・ファレス。
年間3000件を超える殺人事件が起こるこの都市では、なんと犯罪の99%が闇に消えると言われています。
なぜならその犯罪のほとんどが、巨大な麻薬密輸カルテルが絡む事件だから。
地元警察に勤務するリチ・ソトは、何とか生まれ故郷の治安を良くしたいと日々頑張ってはいますが、
1年間で同僚の警官が4人も殺されている現実に頭を抱えるしかありません。
その一方、“ナルコ・コリード”という、メキシコのヒップホップのような音楽があり、
組織のボスたちは、その代表的アーティストのエドガー・キンテロに、
自分を題材にしたオリジナルの詞を書かせ、歌にしてもらうのがステイタス。
エドガーは当然ドラッグマネーの恩恵を受け、裕福な生活をしているのです。
リチとエドガー。この映画はそんな対照的な2人の男性を通して、メキシコの現状を描いているんですね。
貧困が大きな社会問題となっているこの国では、
麻薬だろうがのし上がれるなら“メキシカン・ドリーム”だと。逆にギャングを英雄視する風潮がある。
死体もゴロゴロ出てきます。かなりショッキングな内容ですが、こんな現実もあるんだと、
直視しておく必要はあるのかもしれません。☆3つ。
「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」公式サイト



『宮古島トライアスロン』は、昨年30回目を迎えたトライアスロン宮古島大会を追ったドキュメンタリー。

水泳、バイク、ランのすべてをひとりで、続けざまにこなす“鉄人レース”、それがトライアスロン。
宮古島大会は3キロの水泳、155キロのバイク、42.195キロのフルマラソンと、
全長200.195キロのロングディスタンス・レース。
それでも人気が高いのは、エメラルドグリーンの海と、島あげての応援が選手の心を打つから。
そこに挑むトライアスリートや、日本で唯一のトライアスロン専門誌の女性編集長、
宮古島の整体師の夫婦たちの準備とレースの模様を、
さらには裏方さんや島民のみなさんにもスポットを当て、大会の素晴らしさを描き出しています。
様々なドラマと生き様が反映するトライアスロン。
情熱を注げるものがあることの素晴らしさを感じることでしょう。☆3つ。
「宮古島トライアスロン」公式サイト



『和食ドリーム』は、海外における“和食とは”を描いたドキュメンタリー。

和食がユネスコの無形文化遺産になったのが2013年の暮れ。
食文化のまったく違う海外にまで日本の和食が広まったのには、どこかに起源があるのだろうと。
アメリカにおいては、御歳91歳になる金井紀年さんという貿易会社の社長が、50年前から、
日本から寿司ネタを空輸。
いいものであれば、アメリカでも和食文化が広まるとの信念のもと、良質の食材を仕入れ続け、
それが数多くの職人さんたちの間でも使われて裾野を広げていったのだとか。
誤った和食もまかり通る中、外国人に本当の和食を伝えたい。そう思う職人さんはたくさんいます。
そもそも和食の良さとは何か?
盛り付けの繊細さを始め、いろいろあるのですが、何と言っても“出汁”の文化だろうと。
人の味覚に“うま味”が加わったのは、まさにダシから。
味覚は塩、甘、酸、苦味の4つとされていたのが、どれでも説明できないとして、うま味がくわわったのです。
またアクを取る和食に対し、アクを封じ込める洋食。
同じ食材で同じ手法で、唯一アクを取るか取らないかの違いで作ったビーフシチューを、
食べた全員が“アクを取らないほう”を旨いと言った。それはアクを取った料理人しかり。
でも、和食の料理人はこう言ったのです。
「確かに旨いが、店では出せない。味は分厚いが、品がない」。
ま、こんなエピソードが詰まった映画です。
グルメを自認される方は見ておいて損はないと思いますョ。☆4つ。
「和食ドリーム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.4.3

『がむしゃら』☆☆☆☆☆
『エイプリルフールズ』☆☆☆
『傷だらけのふたり』☆☆☆☆
『ラブバトル』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先週紹介すべき1本を忘れてしまいました。いい映画なのに。すみません。
満点をつけたのは罪ほろぼしじゃなく ホントにいい映画だから。是非ご覧になってみて下さい。
あと『エイプリルフールズ』はタイトル通り、4月1日公開です。
という訳で、今週は4本です!



『がむしゃら』は、ある少女の半生を描いたドキュメンタリー。

安川悪斗。28歳の女子プロレスラー。
以前は安川結花の名前で女優をやっていた彼女が、
女子プロレスを題材にした舞台に出演したのがきっかけで、プロレスラーを目指します。
腕立て伏せが1回もできなかった彼女が、チャンピオンになるまでを描いたドキュメンタリーなんですが、
単なる汗と涙の物語ではないんです。
青森県三沢市に生まれ、時代劇が好きで将来はサムライになるという夢を持っていた女の子は、
中学時代にいじめに遭い、中学2年生の時にレイプされ、自殺未遂。
環境を変えようと東京に出るも、解離性人格障害と診断されます。
その後、演劇を学び、プロレス作品をきっかけにプロレスラーを目指すのですが、
白内障、バセドウ病、頸椎椎間板ヘルニアなどを患ってしまい。
それでもとにかく諦めない彼女の生き様はすごいです。
たぶん、ギリギリまで自分を追い詰めないと生きていけない性格というか、
精神的症状なんじゃないかと思うのですが、それにしたってすごい。
自分が幼い頃の夢だった“サムライ”になれる場所を見つけたことが、
彼女にとっては幸せだったのでしょう。
自殺未遂を図った人が、「死にたくないんです。生きたいんです」と言う、その素晴らしさ。
よく見つけたねって声を掛けたくなりました。
「過去は過去、今は今、未来は知らん」。
彼女の人生から生まれた、リアルな名言です。
自分に甘えてるなぁと何となくは思ってる人、必見です!☆5つ。
「がむしゃら」公式サイト



『エイプリルフールズ』は、嘘がいっぱいのコメディ映画。

清掃のバイトをしているあゆみは対人恐怖症。

天才外科医の亘と1回だけ持ってしまった肉体関係で妊娠してしまい、そのことを電話で伝えるも
「エイプリルフールのウソだろ」と取り合ってもらえません。
亘はその頃、キャビンアテンダントの麗子と初デート。あゆみは、そのイタメシ屋に乗り込んで行きます。
同じ頃、身分の高い櫻小路夫妻は、リムジンを手配し、お忍びで街へと繰り出します。
一方で、ヤクザの勇司は小学生の少女を誘拐。
引きこもりの中学生は宇宙人との交信にやっきとなり。
エイプリルフールの4月1日。街は大騒ぎの予感に満ち溢れていたのです…。

他にもエピソードがたくさん!多過ぎて挙げませんでしたが、主要なキャストだけでも27人(笑)。
ビッグな俳優陣が華やかにスクリーンを彩ってます。
説明や解説は不要なエンターテインメント作品。理屈抜きに楽しんできて下さい。☆3つ。
「エイプリルフールズ」公式サイト




『傷だらけのふたり』は、韓国映画。

闇金融の部長として働くテイル。
容赦ない取り立ての一方で、情にもろい部分も併せ持つ彼でしたが、
ある日のこと、病院で昏睡状態の男性に借金の返済を求め、
ベッドごと病室から連れ去ろうとします。
それを見た娘のホジョンが、仕方なく月利49%の契約書に判を捺してしまうんですね。
そんな彼女に一目惚れしてしまったテイル。
ホジョンの勤め先が信用金庫だと知ると、待ち伏せして飲みに誘うのですが、
それはデートというより、脅しに近いもの。
会社の社長からホジョンの契約書を“ボーナス代わり”ともらい受けたテイルは、
1日1時間会ってくれたら借金は無かったことにしてやると伝えます。
嫌々ながら応じるしかないホジョンでしたが、ある日、
ベッドの上の父の背中を拭いているテイルの姿を見て心が動き、
その父が亡くなった際に誠心誠意尽くし、支えになってくれた優しさに遂に愛情が芽生えます。
「ふたりでチキンのお店を出さない?」。
コツコツ貯めたお金を元に、テイルにまっとうな道に進んで欲しいと願うホジョン。
ところが契約の日、テイルは不動産屋に現れませんでした。
実は金融会社の社長にハメられ、テイルは大切なお金を失ってしまったんですね。
酒を飲んで荒れて、傷害事件で警察に捕まってしまったテイル。ホジョンとの仲も壊れてしまいました。
さらに悪いことに、テイルは重い病魔に侵されていたのです…。

大局で見ると、よくあるパターンの韓国の恋愛映画なんですが、設定が少し変わってると言うか。
“情のあるヤクザもの”ですから、ツンデレの究極かもしれません(笑)。
儒教の国というお国柄もまたいい味付けになっています。
嫌いから始まったほうが、加点式で恋愛は成就しやすいと言いますが、
今時パンチパーマの怖そうな兄ちゃんに、ここまで惚れるかなぁという気もしますが(笑)。
それでもホロッと泣けちゃうから、悪い点はつけられません(笑)。☆4つ。
「傷だらけのふたり」公式サイト



『ラブバトル』は、フランス映画。

女は父親の葬儀のために久々に帰郷。
隣家を訪ねる女。住んでいる男とのギクシャクしたやり取りが始まります。
というのも、以前家族と揉めた女がパニック状態で駆け込んで来た時に、
男が家に泊めてあげたことがあり、ただその時は誘惑する女を男は拒みました。
なぜなら危険な性格だとわかっていたから。
しばらく実家に滞在すると告げて立ち去った女でしたが、その日から女は毎日のように男の家を訪れ、
遂に関係を持ちます。
それからというもの、ふたりは貪るように暴力的なセックスを続けていったのです…。

たぶん何か深いものが描かれているのでしょうが、ごめんなさい、ボクにはちょっと理解できませんでした。
セックスに対するベクトルが、同じ方向を向いているとわかるのかなぁ。
何ともコメントがしづらいのですが、いかにもフランス映画だなぁって感じ(笑)。
気になる人は是非自身の目で確かめてみて下さい。☆2つ。
「ラブバトル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.3.14

「イントゥ・ザ・ウッズ」☆☆☆
「ストロボ・エッジ」☆☆☆
「ディオールと私」☆☆☆
「ブルックリンの恋人たち」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ドキュメンタリー映画の試写には、そのジャンルの関係者が結構来ます。
ファッションものならアパレル系、音楽ものならミュージシャン系、
キリスト教ものだとシスターの姿もチラホラ。
普段あまり試写会に足を運ばない人が多いので、私語やらスマホの光やらが気になってしまって。
知らないのならあまり責められないけど、ルールとマナーはしっかり伝える必要がありますよね。
さ、今週は4本です!



「イントゥ・ザ・ウッズ」は、ディズニーのミュージカルコメディ。

子供が欲しいと願いながら、長年子宝に恵まれないパン屋の夫婦の元に魔女が現れます。
そして言うのです。ふたりに子供が出来ないのは、自分がかけた呪いのせいだと。
その呪いを解くチャンスが近々やってくるけど、この時を逃すと一生子供は作れない。
呪いを解くのに必要なものは、白い牛、赤い頭巾、黄色い毛、金の靴。
パン屋の夫婦はそれらを求めて森の中に入っていきます。
時を同じくして、ジャックは乳が出なくなった白い牛を売りに、
赤ずきんちゃんはおばあさんのお見舞いに、
黄色い髪のラプンツェルは閉じ込められた塔の中に、
金の靴を履いたシンデレラは森を抜けて舞踏会へ。
みんながそれぞれ森の中で出会うのですが…。

ディズニーのハッピーエンドキャラクターたちのその後を描いた作品。
曰く、『大人のための“アフター・ハッピーエンド”ミュージカル』だとか。
幸せになっているはずのおとぎ話のキャラクターたちに、現代社会と同じ悩みや心情を重ね合わせることで、
さらに深く“幸せとは何か”を考えさせる内容に。
おとぎ話の主人公というのは、やはりどこか現実離れしてるけど、
ここに出てくるキャラクターたちはそれはそれは人間臭くて。
“大人の”とあると、今も昔も、意味深なものになるんですね(笑)。☆3つ。
「イントゥ・ザ・ウッズ」公式サイト



「ストロボ・エッジ」は、大人気少女コミックの実写映画化。

高校1年生の仁菜子は、どこかクールな同級生の蓮に特別な思いを抱きます。
まだ恋をしたことのない仁菜子は「これが恋か」と気づき、蓮に告白するのですが、
「ごめん。俺、彼女いるんだ」と、あっさりフられてしまいます。
蓮には年上のモデルの恋人がいたのです。
それでも仁菜子は思いを伝えられただけで満足なのでした。
ところが、逆に少し背伸びをしながら年上の恋人と付き合っていた蓮は、
仁菜子といるとすごく楽な自分に気づき、仁菜子の真っすぐな性格に惹かれ始めるんですね。
ふたりの仲が進展しそうでしない。
そうこうしているうちに、蓮の親友の拓海が仁菜子を好きになり、仁菜子に告白するのですが…。

福士蒼太、有村架純主演作。有村ちゃん、可愛い(笑)。
蓮と拓海は中学の同級生で、その中学時代にひとりの女子を巡ってのいざこざがあり、
ふたりの間には今もちょっぴりトゲが刺さってる感じ。
その女子が同じ高校に入学してきたり、
蓮の彼女の弟が仁菜子たちとクラスメートでやっぱり仁菜子が好きだったりと、
字面ほど複雑じゃないけど、込み入った人間関係があります。
ま、何にしろ、人を好きになるというのは、ピュアで素敵な感情です。
先に公開された「アオハライド」の原点と言われてますが、
ボクはこっちのほうが好きかな。青春です(笑)。☆3つ。
「ストロボ・エッジ」公式サイト



「ディオールと私」は、老舗ファッションブランド、
クリスチャン・ディオールの内部にカメラが潜入したドキュメンタリー映画。

2012年、ディオールのアーティスティック・ディレクターに選ばれたのがラフ・シモンズ。
彼はベルギー出身で、オートクチュール界では無名の存在。
そんな彼が、7月のコレクション発表までに与えられた時間は、わずか8週間。
通常コレクションの準備には5〜6ヶ月掛かると言われており、
極端に少ない時間での作業となったのです。
過去の作品を学び、そこに新たな発想を加えることで、
ラフ・シモンズならではの新たなドレスたちが出来上がっていくのですが、
そこには熟練の職人たち、ひとつひとつを手作業で縫い上げる
“お針子さん”たちの存在が欠かせませんでした。
何度も何度もダメを出す。新たなアイデアが生まれればゼロからの作業も言い渡す。
言ってみれば“新参者”ですが、そのトップを信じて、プロの職人たちがそれに応えていく。
そこにはクリスチャン・ディオールというブランドへの思い、
理解、情熱が双方にあったからこその信頼関係が大きかったのです。
ショーの演出も斬新なもので、観客は度胆を抜かれるはず。
老舗ブランドも日々チャレンジなんだと思い知らされる作品です。☆3つ。
「ディオールと私」公式サイト



「ブルックリンの恋人たち」は、主演のアン・ハサウェイがプロデューサーも務めた恋愛映画。

モロッコで遊牧民の生活を追い、博士号の取得を目指しているフラニーの元に、母親から電話が入ります。
ミュージシャン志望だった弟ヘンリーが交通事故に遭い、意識不明の昏睡状態にあるというのです。
弟の将来に対して否定的だったフラニーは、疎遠になっていたことを悔やみ、
NYに戻って、寝ずの看病を続けるのでした。
一方、弟の思いや生活を知りたいと、実家の部屋を覗いてみると、
「この曲だけは聴いてみて」と姉に当てたメッセージ付きの1枚のCDを発見。それは素敵な曲でした。
壁には人気ミュージシャン、ジェイムズ・フォレスターのポスターがたくさん貼られていて、
ヘンリーのノートには、ジェイムズのライブチケットが挟まれていたのです。
弟の代わりにライブに足を運んだフラニーはジェームズの歌に感動。
ライブ終了後、弟のCDを手にジェームズに会い、事情を説明。
すると後日、なんとジェームズが病室にお見舞いに来てくれたのでした…。

と、まあ出会いの部分はこんな感じ。
弟の事故がふたりを引き合わせてくれ、ふたりの仲は次第に深まっていくのです。
でも、ジェームズもツアーが終われば、遠くメーン州にあるトレーラーの住まいに帰らなくてはならない。
弟ヘンリーの意識は戻るのか、というお話。
ふと冷静に考えると、弟は病室で命の危険と闘ってるのに、姉は恋愛でいいのかいって感じですが(笑)、
もし弟の意識が戻った時に、おねえちゃんが自分の憧れのミュージシャンと仲良くなってたら、
そりゃ弟もメチャメチャ喜びそうですもんね(笑)。
含みのあるラストに、きっといろんな意見が出るんじゃないかなと思いますが、
それもまたこの映画の狙いなんじゃないかと思います。☆3つ。
「ブルックリンの恋人たち」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.2.27

「アナベル〜死霊館の人形〜」☆☆☆
「幕が上がる」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


最近は試写も予約しないといけないところが出てきて、話題作などはすぐに席が埋まってしまいます。
ところが行ってみると空席が目立ったりするもので。
キャンセルだったり、当日用の席があっても、いっぱいならと諦める人が行かないことも多いのでしょう。
一見良さそうなシステムにも、長短あるんだなと思ってしまいます。
さ、今週は2本です!



「アナベル〜死霊館の人形〜」は、実話に基づいたホラー作品。

初めての出産を控えていた、若い夫婦のジョンとミア。
ジョンはミアに、欲しがっていたビンテージの少女人形をプレゼント。うれしそうに部屋に飾るミア。
そんなある日のこと、真夜中に隣人宅で物音が。ジョンが駆けつけると、老夫婦が殺害されていたのです。
犯人は、家出をし、狂信的なカルト集団に入信した老夫婦の娘アナベルと仲間の男。
すると、アナベルたちはジョンとミアの家にも侵入。ミアに襲いかかったのです。
間一髪、警官が男を射殺。アナベルは自ら喉を掻き切って自殺。
その胸にはミアがプレゼントされた人形が抱かれていました。
それからです。様々な異変が起こり始めたのは。
ジョンとミアは引っ越しを決意。気味が悪いからと、人形も捨てていきます。
ところが、ダンボールの中から捨てたはずの人形が出てきたのです…。

アメリカのコネチカット州にあるオカルト博物館に、この人形があるとか。
捨てても捨てても、戻ってくる人形。
ガラスケースには「絶対に開けるな」との貼り紙があり、今も祈祷を受け続けているそう。
映画の中身は想像の通りです。期待も裏切らなければ、言い方は悪いけどそれ以上もない。
この手の作品が好きな人は、安心して見られます。
って、ドキドキするんだから“安心して”は変ですが(笑)。☆3つ。
「アナベル〜死霊館の人形〜」公式サイト



「幕が上がる」は、ももいろクローバーZ主演の青春映画。

舞台となるのは、静岡県立富士ヶ丘高等学校演劇部。
高等演劇の地区大会が終わり、全国大会に進めなかった3年生からバトンを渡される形で、
2年生のさおりが部長に任命されます。
翌4月、3年生になったさおりたちは新入生勧誘の舞台をやるも、ひどい出来に肩を落とします。
何のために演劇をやっているのかもわからなくなってきた時、
たまたま赴任してきた美術教師の吉岡がさおりたちにアドバイス。
実は彼女、元学生演劇の女王と呼ばれた存在だったのです。
演劇にはまったく素人の男性顧問そっちのけで、さおりは吉岡に顧問になって欲しいと懇願。
見学だけならと曖昧に承諾した吉岡と、富士ヶ丘高等学校演劇部の部活動は本格的にスタートしたのです…。

登場人物もたくさんいて、それぞれにいろいろあるので、あらすじは簡潔に。
名門高校の演劇部から、半ばドロップアウトして転校してきた中西という生徒や、
さおりの同級生や後輩たちが懸命に頑張る姿は確かに胸を打ちますが、
演劇は陸上競技のように順位が明確に着くものじゃなく、感性のジャッジだから少し伝わりづらい。
なので、演劇の出来不出来ではなく、プロセスに注目すべき作品かなと。
ももクロ自身、ブレイクまでには多くの苦労がありましたから。
そのあたりはリアリティとして伝わるのかな。でも彼女たちは、苦労とは思ってないか(笑)。
ちなみにこの作品は、今年5月1日から始まる、実際の舞台で完結するようです。
面白い試みですよね。気になる方はそちらも是非。☆3つ。
「幕が上がる」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.2.20

「君が生きた証」☆☆☆
「女神は二度微笑む」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


1本試写を見終えて、次の作品の試写に長い列が出来ていると、「何の試写だろう?」と気になり、
プレスを覗き込んでボクのところに届いていない作品だとさらに気になり(笑)。
映画もすべては見られないんだし、映画もご縁ものだから、
縁が無かったって考えればいいんだけど、気になっちゃう。
人間って貪欲な生き物なんですよねぇ(笑)。
さ、今週は2本です!


「君が生きた証」は、父と息子のヒューマンドラマ。

広告宣伝会社のやり手社員のサム。狙っていた大きな契約を穫り、
息子のジョシュに「祝杯をあげよう。親父に付き合え」と電話。
「大学の授業がある」と気乗りのしないジョシュに店名だけ告げると、
サムは一方的に電話を切ったのでした。
一向にやってこないジョシュ。携帯にも出ません。
諦めて帰ろうとすると、店のTVでジョシュの通う大学で銃乱射事件が起きたと報じているではありませんか。
そう、ジョシュはこの事件で命を落としたのです。
2年後、生き甲斐を失ったサムは、停泊させたヨットの中で生活。
そこに別れた妻がやってきて、ジョシュの遺品を置いていったのです。
「あのコの音楽好きはあなたに似たのだから」と。
ギターと楽譜、歌詞を書いたノート、そしてカセットテープ。
息子の歌を聴いて、心を揺さぶられるサム。
少しでも息子の気持ちがわかればと、サムはジョシュの曲をカヴァーし、
ライブバーで披露したところ、ジョシュと同じ年ぐらいの青年クエンティンが猛烈に感動。
最初は煙たがっていたサムも、そのうち彼を受け入れ、
親子ほども年が違う若者たちとバンドを組むことになったのです。
ジョシュの曲であることを黙っていたサム。
バンドはどんどんと人気を博し、フェスへの出演依頼も来たのですが…。

なんか中途半端なあらすじの説明でごめんなさい(笑)。なかなか考えさせられる作品でした。
何かを語ろうとすると、いろいろとわかっちゃうから(笑)、
あんまり書きませんが“再生の物語”です。
この話がどこにどう着地するのか、うまく着地できるのかが心配でしたが、
きちんと着地。改めて、音楽には力があるんだなぁと。
いろんな意見があると思います。
でも、人は生きていかなくてはならないのです。☆3つ。
「君が生きた証」公式サイト



「女神は二度微笑む」は、インドの本格的サスペンス映画。

インド・コルタカの国際空港に、ロンドンから来た美しいインド人妊婦が降り立ちます。
大きなお腹を抱えた彼女の目的は、1ヶ月前に急に姿を消した夫アルナブを捜すこと。
聞いていた宿泊先や勤務先など、どこを訪ねても夫の姿もなければ、痕跡もない。
それどころかアルナブという人間の存在すらないと言うのです。
警察の力も借りて、必死の捜索は進みます。
するとアルナブに瓜二つのミラン・ダムジという男の存在が浮上。
ところがその男はかなりの危険人物で、この件は国家情報局まで巻き込む、
重大な案件となっていったのです…。

実はコルタカでは、2年前に地下鉄無差別毒ガステロが起きていて、
物語にはその事件が大きく絡んでいると。
“踊る”インド映画ではなく、
ハリウッドでのリメイクも決まっている本格ミステリー・サスペンス。
ただ、ボクの理解度の低さなのでしょう(笑)、
上映後のテロップが上がっている時点でもちょっと「ん…」と眉間にシワが寄ってて。
後でじっくり考えて、「そっか、そういうことか」とつじつまが合う(笑)。
できれば劇場の中で完結できるといいなぁと。
それくらいのわかりやすさがサスペンスものには欲しいぞと、個人的には思うのです。☆3つ。
「女神は二度微笑む」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.2.14

「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」☆☆
「味園ユニバース」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


映画の“良し悪し”と“好き嫌い”は本当に別物だなぁと、
今週の作品に☆を打ちながら、しみじみ感じます。
いつも言うように、ボクの評価はボクの“好き嫌い”ですから。
ラーメンのこってりとあっさりぐらい違う(笑)。自身の目で確かめて下さいねっ。
さ、今週は2本です!


「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」は、世界的人気キャラクターの生みの親、
トーベ・ヤンソン生誕100周年記念作品。

ムーミン谷に暮らすムーミン一家。
ムーミンのガールフレンドであるフローレンが雑誌を読んでいると、
地中海のリゾート地リヴィエラの記事が。
夢見がちなフローレンはリヴィエラにバカンスに行きたいと言い出します。
冒険好きのムーミンパパがそれに乗って、ムーミンとムーミンママと、
ミイは手作りボートでリヴィエラに向かったのです。
なんとか辿り着いたムーミンたちでしたが、高級ホテルのマナーも知らず、
逆にその大胆さが「高貴な方たちかも」と勘違いされ、ムーミンパパは貴族と仲良くなり、
ゴージャスな暮らしにどっぷり浸かってしまいます。
一方、フローレンはプレイボーイにナンパされて、舞い上がって。
ムーミンママとムーミンは、そんなふたりが気に入りません。
ムーミン一家はどうなってしまうのでしょう…。

フィンランドで生まれ、今や世界44言語に翻訳されているという児童小説。
今回の映画では、ムーミン谷を飛び出し、セレブなリゾート地を舞台とすることで、
逆にムーミンたちの普段の生活やキャラクターを立てる狙いがあったとか。
ちっちゃな物語を重ねる手法は、日本のアニメの「サザエさん」にも似てるのですが、
「サザエさん」と違うのは“オチがない”。
ムーミンファンには「オチなんていらない」と言われそうですが(笑)、
個人的にはやっぱり食い足りないかな…。☆が少ないのはそんなとこです。
ホワッと癒やされたい人には逆にいいのかも。☆2つ。
「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」公式サイト



「味園ユニバース」は、コテコテの大阪を舞台にした音楽映画。

大阪のバンド“赤犬”の公園ライブに突如乱入し、マイクを奪って、
和田アキ子の「古い日記」を歌い出す血まみれの男。
その歌声が“赤犬”のマネージャー、カスミの心をわしづかみにした瞬間、
男はパタリと倒れ込んでしまいます。
記憶喪失の男は“ポチ男”と名付けられ、
カスミの自宅兼スタジオ兼カラオケ屋に住み込みで働き始めるんですね。
そんなある日のこと、“赤犬”のボーカルが交通事故で全治2ヶ月の重傷を負ってしまいます。
カスミの口から迷わず出た言葉は「歌え、ポチ男」。
ライブで歌うポチ男の姿に観客は熱狂。ところが「古い日記」を歌い始めると、
ポチ男は固まって身動きが取れなくなってしまったのです。
そう、記憶が徐々に戻りつつあったのです。
ファンを増やした“赤犬”は、大阪なんばにある味園ユニバースでのライブが決定。
ポチ男の存在は欠かせないものになっていたのですが、ある出来事がきっかけで、
記憶が完全に戻ったポチ男。
果たして、味園ユニバースにポチ男は現れるのでしょうか…。

謎の男“ポチ男”ですが、映画の冒頭でポチ男の素性がまず明かされます。
で、記憶を失ってしまうんですね。
カスミはナニワ女で、根性は座ってるけど、情は深い。
カスミとポチ男の間に特別な感情が湧くけど、そう簡単には話は進まないと。
ポチ男に関ジャニ∞の渋谷すばる、カスミに二階堂ふみ。
赤犬は実在のバンドという、ナイスなキャスティングです。
「フルモンティ」とか「ブラス!」のようなイギリス映画のテイストが感じられて、
個人的には好きな作品。もう1段スカッとするともっといいんでしょうが、
あちこちにもどかしさが残る感じこそがこの映画のオリジナリティかも。
味園ユニバースも実在の歓楽ピル。大阪がマイブームのボクには舞台設定も良かったです。☆4つ。
「味園ユニバース」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.2.6

「はじまりのうた」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


2月になりました。
1ヶ月はあっという間。時間を有効に使いたいものです。
映画は人生を豊潤にしてくれます。有効活用をお勧めします!
さ、今週は1本です!


「はじまりのうた」は、NYと音楽が主役の再生の物語。

ミュージシャンのデイヴとグレタは恋人同士。
2人で作った曲が映画の主題歌になり、デイヴはメジャーデビュー。曲がヒットし、生活は一変。
セレブのような毎日を送ることになったのですが、それはまたデイヴの心をも変えていったのです。
浮気が発覚し、デイヴの元を去ったグレタは、旧友のミュージシャンの家に居候。
このままじゃダメになると考えた友人が、小さなバーの自分のステージに、
飛び入りで無理矢理グレタを上げたのです。
気乗りがしないまま歌うグレタ。客は歌に耳を傾けません。
「やらなきゃよかった」と吐き捨てるグレタでしたが、ただひとり、
無精ひげにヨレヨレのスーツの酔っ払い男が瞳を輝かせていたのです。
この男、ダンといって、数々のヒット曲を生み出した敏腕プロデューサー。
自身のレコード会社を立ち上げたのに、頑固さと古いやり方で、
自分の会社をクビになってしまったのです。
「一緒にアルバムを作ろう!」。
ダンは熱くグレタに持ち掛けるのですが…。

面白かったですョ。劇中に流れる曲もいいし。
実は、ダンも家族の問題を抱え、みんなそんな中で生きていると。
でも、音楽があるから頑張れているのです。
結局動き出した、グレタのアルバム制作プロジェクト。
ただ、スタジオもなければ、呼べるミュージシャンもいない。
そこで、奇抜なアイデアでレコーディングはスタートします。
頑張ろうという気持ちになれると同時に、ものすごくスッキリする映画ですョ。
小さいけれど素敵なサクセスストーリー。ご覧になってみて下さい!☆4つ。
「はじまりのうた」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.1.30

「エクソダス:神と王」☆☆☆☆
「ジョーカー・ゲーム」☆☆
「ドラフト・デイ」☆☆☆☆
「ミルカ」☆☆☆☆
「ワイルドカード」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


この文章を書いている時点で、今年に入って試写は13本。
比較的時間に余裕があるため、効率的に試写会に足を運べています。
早くも4月公開の作品を見ました。公開の頃は春なんだなぁと、寒さに身を縮めながら思ったものです。
さ、今週は5本です!



「エクソダス:神と王」は、リドリー・スコット監督最新作。

紀元前1300年の古代エジプト。 国王の息子ラムセスと兄弟のように育ったモーゼは、軍事にも長け、
セティ王からの厚い信頼も得ていました。
とある戦いに出向いた時、ヘブライ人奴隷の長老から、モーゼは自分の出生の秘密を聞かされます。
それによると、モーゼはヘブライ人の子で、赤子をみんな殺せという命令から逃すために、川に流したと。
それをエジプトの王族女性が拾い、育てたのだと言います。
その噂は国王になったラムセスの耳にも届き、ラムセスはモーゼを国外に追放したのです。
流浪の旅の後、遊牧民の娘ツィボラと出会い、結婚。
息子を授かったモーゼでしたが、神の山で土砂崩れに遭い、
そこで「同胞を助けよ」という神託を聞いたのでした。
モーゼは家族に「必ず戻る」と誓い、エジプトへと向かったのでした…。

旧約聖書「出エジプト記」のモーゼの英雄譚を、
「グラディエーター」のリドリー・スコット監督が映画化した、
スケールの大きなスペクタクル・アドベンチャー。
この後、奴隷解放を勝ち取り、多くのヘブライ人を連れて新たな地へと旅立つのですが、
心変わりをしたラムセスらの追撃を受け、そこで有名な“10の奇跡”が起こる訳です。
日本の神話もそうですが、聖書は物語としても面白いですね。
ボクは2Dで見ましたが、3Dはさらなる迫力なんだろうなと思いますョ。☆4つ。
「エクソダス:神と王」公式サイト



「ジョーカー・ゲーム」は、日本のスパイ映画。

第二次世界大戦開戦前の日本。
訓練中に仲間をかばって上官を殺めてしまった、陸軍の若い軍人に下った裁決は極刑。
ところが、執行直前に結城という男に助けられるんですね。
命を助ける条件は、結城が結成した“D機関”なる秘密組織でスパイになること。
厳しい訓練の後、彼には“嘉藤”という名が与えられ、
世界各国が狙う“ブラックノート”を略奪せよとの任務が言い渡されます。
ブラックノートは“魔の都”に駐在するアメリカ大使グラハムの元に。
果たして嘉藤は過酷な任務を遂行できるのでしょうか…。

嘉藤に亀梨和也、結城に伊勢谷友介、グラハムの家政婦でもある謎の女に深田恭子が扮します。
正直、世界のスパイものと比べてしまうと、スケールも物語の奥深さもまだまだかなぁと。
それぞれの出演者のファンが楽しめる映画という認識でいいのかもしれませんね。☆2つ。
「ジョーカー・ゲーム」公式サイト



「ドラフト・デイ」は、アメリカンフットボールの新人指名会議“ドラフト会議”の1日を描いた映画。

アメリカンフットボールのプロリーグ、NFLに所属するブラウンズ。
この2シーズンは実に惨憺たる成績で、
GMを務めるサニーは3期目となる来シーズンこそ地元ファンの期待に応えたいと、
今回のドラフトでは目玉となる大物新人を穫りたいと思っています。
NFLのドラフトは、例えば日本のプロ野球とは異なり、指名権のトレードができたり、
指名までの持ち時間が決まっていたりと、独自のルールがありました。
所属32チームの心理戦。
今年注目のルーキーは、クォーターバックのキャラハンでしたが、人
気の彼を指名するには最初に指名できる権利が必要。
それを持つのは最下位のシーホークスだったのですが、
そのシーホークスからドラフト12時間前に電話が入ります。
トップの指名権を譲ってもいいが、
その代わりに向こう2年分の1巡指名権と再来年の3巡指名権を渡せというのです。
ブラウンズにとって、キャラハンは喉から手が出るほど欲しい選手。
悩みに悩んだ末、圧倒的に不利な条件を呑んでトレードを受け入れるんですね。
ところが、直前になってスカウトからキャラハンのに“難あり”の報告が入ります。
頭を抱えるサニーでしたが、刻一刻と時は過ぎ、最初の指名選手を発表する時間が来ました。
果たして、彼は誰の名前を挙げるのでしょうか…。

主演はケヴィン・コスナー。
彼が扮するサニーの元には、他にもたくさんの選手から売り込みがあります。
それらの選手にもそれぞれの事情とドラマがあると。
また、サニー自身にもプライベートの悩みがある。
そんなすべてが絡み合い、ドラフト当日を迎えるんですね。
ドンデン返しが何度も繰り返される頭脳ゲーム。見ていて面白く、ラストはスカッとしますョ。
指名巡は最下位のチームから、指名権のトレード可、指名は10分以内。
この3つさえ頭に入れておけば、アメフトを知らなくても十分楽しめます!☆4つ。
「ドラフト・デイ」公式サイト



「ミルカ」は、実在のアスリートの半生を描いたインド映画。

ミルカ・シンは400m走のインド代表選手。
1960年のローマオリンピックではメダルが確実視されていたのに、
ゴール直前で彼はなぜか振り向いてしまったのです。
結果は4位。
国民の落胆も大きなものがありました。
その後、敵対する隣国パキスタンとの親善陸上大会が企画され、団長に選ばれたミルカでしたが、
彼は頑なにこれを拒否。
説得せよとの首相の命令を受け、担当大臣がミルカのふたりのコーチを連れて、ミルカの住む町まで出向きます。
コーチが車中で話すミルカの身の上話に、「なるほど、そうだったのか」と唸る大臣。
そこには過酷過ぎる幼少期があったのです…。

日本人のボクらにはわかりませんが、ミルカ・シンという人は、インド人にとっては国民的英雄のひとり。
イギリスから独立したインドとパキスタンは、1947年に分離独立。
その混乱の最中に両親を亡くし、自身もつらく大変な思いをしながら、生き抜いてきたのです。
いつの時代も、対立し、敵対する国や宗教というのは悲劇を生むんだなと。
そんな中、走ることに希望を見出したアスリートの物語。勇気をもらえるかもしれませんョ。☆4つ。
「ミルカ」公式サイト



「ワイルドカード」は、ラスベガスの裏社会が舞台の“ハイグレード・クライムアクション”。

ニックは元特殊部隊のエリート兵。
その腕を活かし、ラスベガスの裏社会で用心棒として働いていました。
ある日のこと、元恋人の女性からニックに依頼が。
あまりに乱暴に暴行を加えた男の正体を突き止め、復讐して欲しいと。
独自の裏ルートで探し出し、すぐに男の素性はわかったのですが、その男は“関わらないほうがいい”相手。
バックにはラスベガスの大物がいたのです。
それでも依頼を遂行するニック。身に危険が及ぶのは覚悟の上だったのですが…。

“ハイグレード・クライムアクション”は、もらったプレスに載っていたキャッチコピー。
ボクにはB級感溢れる映画に感じたかな。昔の東京12チャンネルで昼間やってたようなトーンというか(笑)。
いやいや、決して悪口じゃないんですョ。そういうのが好きな人もいるんだから。
ラスベガスの用心棒という特殊な舞台設定に思えても、意外とボクらの日常に共通する部分が見え隠れ。
ジャンルやレベルこそ違えど、人は刺激がないと生きていけないものなのかもしれませんね。☆3つ。
「ワイルドカード」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.1.22

「二重生活」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


インディペンデント系の映画館に行き、映画のチラシを見ると、
本当にたくさんの作品があるんだなぁと気付かされます。それも興味深い作品が多い!
見ても見ても見足りないですね(笑)。
さ、今週は1本です!


「二重生活」は、中国映画。

降りしきる強い雨の中、カーチェイスを楽しみながらスピードを上げる2台の車。
すると車道に立ちすくむ一人の女性が。
運転していたヨンチャオは避けきれず、その女性をはねてしまいます。
足にすがる女性を蹴り飛ばすヨンチャオ。女性はすぐに息を引き取ります。
ヨンチャオは妻のルー・ジェと会社を共同経営。
娘のアンアンを授かり、ルー・ジェは育児のため休職中ですが、すべてが順調に見える幸せな夫婦。
ルー・ジェはアンアンの幼稚園の同級生ユイハンという男の子の母サン・チーから、
「ママ友になりましょ」と声を掛けられ、付き合いが始まります。
そんなある日のこと、ルー・ジェはサン・チーから、
「夫に愛人がいるみたいで」とカフェで悩みを打ち明けられます。
「ほら、あの二人なんて絶対におかしい」と、サン・チーが指差す先にいたのは、
なんと夫のヨンチャオでした。
狼狽するルー・ジェ。
この浮気現場の目撃が、とんでもない悲劇の幕を開けてしまうのでした…。

今の中国ならではのサスペンス・ミステリー。
ただ、監督はサスペンスだ、ミステリーだで描いていない節もあって。
富裕層と庶民との格差拡大、一人っ子政策の歪みなど、現代中国の病みが生んだ悲劇。
タイトルだけでは想像もつかないような展開が待ってます。
思うことがいっぱいあるけど、何を書いてもネタバレになっちゃう気がして(笑)。
ロウ・イエ監督は、中国を客観的に見て、病巣をバッサリ。
スカッとという訳にはいきませんが、「そうなのか…」と考えさせられます。
惜しむらくは、ヨンチャオと、事件を追う刑事が似てるから区別がつかない(笑)。
おんなじように感じる人、いるんじゃないでしょうか。☆3つ。
「二重生活」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.1.16

「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


人気で大混雑の試写に行く時のコツは、朝の回を選ぶこと、3D作品は2D上映を選ぶこと。
せっかく行っても「すみません、満席で…」なんてことがあるんですョ。
今年も早速精力的に足を運んでます。いい作品に巡り会えますように。
さ、今週は1本です!



「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」は、英国の国立美術館を巡るドキュメンタリー。

ロンドンのトラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリー。
常設展への入場料は無料。訪れた人たちや企業の寄付で成り立つという国立の美術館です。
館内にはたくさんの見学者や、絵の解説をする人たちが。
その言葉に耳を傾けていると、様々なことに気付かされます。
「写真が無かった時代、人々はこの絵にどれだけのリアリティを感じていたと思います?」
「これらの絵を依頼したのは貴族たち。
邸宅の、どの窓からどう陽が差してこの絵を照らすかも、しっかり計算されていた。
暖炉の上もしかり。下から照らされることを考えて描いている」
「この馬の絵は、解剖学者でもあった筆者が、知人の納屋に馬を吊して、
皮から剥がしながら筋肉をスケッチ。そうして描いたもの」
そんな解説が「なるほど…」と、新たな驚きと絵を見る楽しさを教えてくれます。
TV東京『美の巨人たち』もそんな感じだとか。
あの番組を見てる人はそんなイメージで臨むといいかもしれません。
馬の話はジョージ・スタッブスの『ホイッスルジャケット』。彼の別の作品『エクリプス』が、昨秋、
東京競馬場の競馬博物館で行われた英国ジョッキークラブの秘蔵絵画展に出展されていて、
ボクがツアーの解説を任された時に役立ちました。
知的好奇心をくすぐる意外な発見というのは、いくつになってもワクワクするものです。
3時間01分という長い作品。でも、ゆっくりツアーで回ってると思って見て下さい。
普段はあまり美術に興味がないという人も是非!☆5つ。
「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2015.1.9

「映画 ST赤と白の捜査ファイル」☆☆☆
「サン・オブ・ゴッド」☆☆☆
「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」☆☆☆
「シン・シティ 復讐の女神」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


このコラム、今年もスタートしました。ご愛読、よろしくお願いします!
ちなみに2015年の初試写は劇場版の「ムーミン」(笑)。まったりと癒されてのスタートです。
さ、今週は4本です!



「映画 ST赤と白の捜査ファイル」は、人気TVドラマの映画化。

警視庁の中に設置された科学特捜班、通称“ST”。
天才分析官の赤城をリーダーとする5人組ですが、みんなひとクセもふたクセもあるメンバーばかり。
若い警部の百合根が警視庁との間に入って、調整役に四苦八苦。そんなSTに解散の危機が。
天才ハッカーによる挑発的な囚人脱走事件が起き、犯人の鏑木は焼死体で発見されます。
ところが、鏑木の殺人容疑で逮捕されたのは、何とSTリーダーの赤城だったのです。
今度は赤城が脱獄。この赤城をSTのメンバーが追うことになります。
赤城の真意とは一体?この事件の深い闇とは…。

日テレ系で放送された人気TVドラマが、早くも映画化。
藤原竜也演じる赤城左門と、岡田将生演じる百合根友久のいわゆる“バディもの”。
コンビの掛け合いの妙が楽しい作品です。
ドラマを見ていなくても楽しめますが、キャラが個性的なので、もし劇場に足を運ぶなら、
パンフレットを買うなどして、事前に情報を入れておいたほうがより楽しめると思いますョ。
サスペンス・コメディですが、ちょうど半々かなといったイメージ。
ドラマの延長として見るといいかもしれません。☆3つ。
「映画 ST赤と白の捜査ファイル」公式サイト



「サン・オブ・ゴッド」は、なんと『聖書』の映画化。

イスラエルはベツレヘムの洞窟で、救世主メシアと預言された男子が誕生。
その男の子はイエスと名付けられました。
成長し、洗礼を受けたイエスは、数々の奇蹟と共に、12人の弟子を集め、
神の言葉を伝える伝道師としての活動を始めます。
ローマ帝国の圧政下にあったユダヤの人々が、イエスに打倒ローマ帝国の夢を抱くのは当然のことで、
それに危機感を抱いたローマ帝国の大祭司たちは、イエスを罪人として捕らえようと画策するのでした…。

キリスト教徒でもないボクが、『聖書』の話を語ることはできないので、あらすじはこのあたりで(笑)。
ただ、日本の神話もすごく興味深いように、キリスト誕生のお話もそれはそれは興味深く。
何と言っても“世界で最も多く読まれている書物”ですからね。
宗教観に関係なく、いろんな見方ができる1本。面白かったですョ。☆3つ。
「サン・オブ・ゴッド」公式サイト



「ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して」は、
20世紀半ばのアメリカを舞台にしたフランス映画。

ネイティブ・アメリカンのジミーは、第二次世界大戦から帰還後、様々な病状に悩まされます。
軍の病院でも原因がわからず、担当医はフランス人の精神分析医ジョルジュに診断を依頼。
ハンガリー出身のユダヤ系というジョルジュは、
ネイティブ・アメリカンの研究も行っていた型破りな医師で、実はジミーが初めての患者。
対話を重ねるうちに、最初は戦争の後遺症だと思われていた症状の原因が、
ジミーの幼少期の体験にあると判明。
ジミーの心の闇に光を当てていくにつれ、ジョルジュ自身も自分の出自や、
深層心理に気づかされていくのでした…。

実話をもとに描かれた作品。
見る前は、男性ふたりのほわっと温かい友情物語かなと思って臨んだのですが、
見てみると、確かに“友情物語”でも、人種の話などが根底に流れている、重くて深い話でした。
コミカルな部分はほとんどと言っていいくらい無いので、
もしそんな先入観を持っていたなら、捨てていかないとダメ。
日頃、あまりこういうことを考えない日本人には、正直ちょっぴり難解かもしれません。☆3つ。
「ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して」公式サイト



「シン・シティ 復讐の女神」は、05年に公開の個性的アクション映画の第2弾。

シン・シティのバー“ケイディ”で飲んでいたマーヴは、気付けば銃で撃たれていたものの記憶がない。
不死身の身体を起こし、記憶を辿ります。
思い出したのは、ホームレスに火をつけた悪ガキ大学生ども。止めに入ったら銃をぶっ放してきたのです。
そんな彼らを追い詰めたマーヴの大立ち回りで幕が開きます。
街の顔役で、絶対権力者のロアーク上院議員に、ポーカーで立ち向かうジョニーという青年。
私立探偵ドワイトは、昔の女エヴァにそそのかされ、金持ちの夫の殺害を依頼された結果、
自らもエヴァに命を狙われることに。
自分を庇って命を落とした正義の刑事ジョンのことが忘れられず、
ケイディのストリッパーに身を落としてまで、
仇であるロアークへの復讐を虎視眈々と狙っているナンシーなど、
それぞれの思いが交錯する“罪の街”シン・シティ。
今夜も愛憎がぶつかり合うのでした…。

モノクロと赤という、独特のトーンで描かれるハードサスペンス。
原作に忠実に、また映画のために作られたオリジナルストーリーもあって、
マニアックなファンならずとも楽しめる1本です。
怖いのはオンナ。また、たまらなく愛おしいのもやっぱりオンナ。
そんな事を実感するかも(笑)。☆3つ。
「シン・シティ 復讐の女神」公式サイト