週末公開の映画……2012.12.21
「サイド・バイ・サイド―フィルムからデジタルシネマへ」☆☆☆
「シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」☆☆☆☆

2012年、最後の更新です。
結局、今年見た映画の本数は12月19日現在で79本。
例年の約半分です。忙しくてなかなか試写に行けませんでした。
それでもいい作品との出会いはありました。「ツナグ」は泣いたなぁ(笑)。
また来年もたくさん試写を拝見して、ここでご紹介できればと思います。
お付き合い下さい!
さ、今週は2本です!



「サイド・バイ・サイド―フィルムからデジタルシネマへ」は、
キアヌ・リーブス企画、制作のドキュメンタリー。

1909年、パリで開かれた映画製作者会議で、
35mm幅のフィルムが国際基準と制定されて約100年。
映画はこれまでも、サイレントからトーキーへ、
モノクロからカラーへと進化を遂げてきました。
今、3D映画も増え、フィルムからデジタルへと移行しつつある中で、
果たしてどっちがいいのかを、それぞれの立場の映画製作者にインタビューした作品です。
ナビゲーターはもちろん、キアヌ・リーブス。
ジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシ、
ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、
デヴィッド・リンチ、スティーヴン・ソダーバーグ等々、
とにかく大物たちに話を聞いています。
映像の質や保存方法においてはフィルム、可能性や費用の面ではデジタル。
それぞれに良さがあって、
職人たちのこだわりみたいなものが明確に差別化してるといった感じでしょうか。
技術革新の先には明るい未来があるけれど、
古き良きものにも捨ててはいけない良さがある。
これは映画に限ったことじゃなく、生活のあらゆる部分に共通する話でもあります。
少々技術色の強い1本ですが、これを観たら、
ちょっと違った視点でスクリーンを注視するようになるかもしれません。☆3つ。
「サイド・バイ・サイド―フィルムからデジタルシネマへ」公式サイト


「シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」は、ジャン・レノ、
ミカエル・ユーン主演のフレンチ・コメディ。

天才料理人の資質を持ちながら、いつも周囲と揉めて職場を転々とするシェフのジャッキー。
料理を愛すればこそ。しかし、周りはそれを理解してくれません。
婚約者が妊娠し、定職に就いてと頼まれ、渋々ペンキ職人に転職しますが、
老人ホームの壁を塗りながら、厨房の料理に口を挟む始末。
その老人ホームに暮らす友人に会いに来たのが、
三ツ星レストラン"カルゴ・ラガルド"のベテランシェフ、アレクサンドルでした。
実は彼は今、超のつくスランプ状態。
来週にはグルメ本の審査員が、お忍びで店に来るとの情報をキャッチしているのに、
まったくアイデアが浮かばないのです。
そんなアレクサンドルが、勧められるままに友人のスープを飲んでみると、
なんと自分の生み出したスープが、レシピ通りに再現されているではありませんか。
ジャッキーが作ったと知ったアレクサンドルは、彼をアシスタントとしてスカウトします。
が、試用期間で給料はなし。婚約者にはとてもとても言えません。
星を落としたらオーナーからクビを宣告されているアレクサンドル。
果たして、この迷コンビで、三ツ星を守る新たな料理が作れるのでしょうか…。

アレクサンドルは古いタイプの料理人。家庭も犠牲にして店を守ってきました。
一方のジャッキーもそう。婚約者に内緒で取った行動が、後々大きな問題になっていくのです。
審査員の好みを知って、
その研究のために変装してライバル店に忍び込むシーンがあるのですが、
ボクたち日本人には爆笑の場面。久々に映画で声を出して笑ったかも。
映画に刺激されて、美味しいもの食べに行ったとしたら、笑って、美味しいもの食べて。
なんだか一番の健康の秘訣のような気がしません?
笑いがすべての嫌なことを吹き飛ばしてくれる。年の締めにはいい映画ですョ。☆4つ。
「シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.12.6
「二つの祖国で・日系陸軍情報部」☆☆☆

師走です。何かとせわしなく時間が過ぎる頃。
こんな時だからこそ、ちょっとひと息。映画でも見ませんか?
さ、今週は1本です!


「二つの祖国で・日系陸軍情報部」は、戦争ドキュメンタリー。

日系二世として生まれ、アメリカ国籍を持つものの、
親の意志などで一度日本に戻されて教育を受け、
再度アメリカに帰ってきた人々のことを“帰米”と呼んだそう。
ここに目を付けたのがアメリカ軍。
日本語のわかるアメリカ人を、太平洋戦争の秘密情報機関のメンバーとして用いたのです。
父や母の国と戦わなければならなかった日系二世たち。
中には、開戦前に日本とアメリカで離れ離れになってしまった兄弟がいて、
互いに敵と味方に別れて戦ったことも。
パイロットだった弟の戦死した場所で、兄は戦闘機めがけてミサイルを打っていたと。
その人は肩を震わせて泣いていました。永遠に消えない悲劇です。
どんなことがあっても、戦争はいけない。こういう映画を見ると強く思います。
きな臭い今だからこそ、多くの人に見てもらいたい1本です。☆3つ。
「二つの祖国で・日系陸軍情報部」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.11.29
「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」☆☆☆

今週紹介するのは「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみのダニエル・ラドクリフ主演作。
あれだけ色が着いちゃうと大変。
何をやっても"ハリー・ポッター"で見られちゃうんでしょうね。
ダニエルの奮闘ぶりを確かめてみて下さい。
それでは今週の1本です!



「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」は、イギリスで有名なホラー小説の映画化。

4年前に妻を亡くした弁護士のアーサーは、幼い息子と2人暮らし。
仕事も順調とは言えず、事務所の所長から与えられた任務がいわばラストチャンス。
クビをかけたその仕事とは、とある田舎町で亡くなった夫人の遺産整理でした。
ところが、町に赴くととにかく雰囲気がおかしい。
夫人の話をすると、皆がいぶかしがるのです。
露骨に邪魔者扱いされるアーサー。
それもそのはず、なぜなら、沼地に浮かぶ不気味な夫人の館には亡霊がいて、
その姿を見た者の子供はみんな死んでしまうから。
アーサーは周りの制止を振り切って、館へと向かったのです…。

黒衣の亡霊、それこそが夫人の霊。町の人にしてみれば、そっとしておいて欲しいと。
ところがそこへアーサーが来て、また亡霊を刺激するから悲劇が起こる。
アーサーも夫人の霊を見ている訳で。
週末、息子が町にやってくる。果たして…というお話。
原作は古くから伝わるゴシックホラー。イギリス人なら誰もが知ってる作品のよう。
冬のホラーは、寒い時に食べるアイスクリームのようなもので(笑)、意外と美味しいかも。
☆3つ。
「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.11.22
「カラスの親指」☆☆☆
「綱引いちゃった!」☆☆☆

"芸術の秋"なんて言葉をあまり耳にしないまま、季節は一気に冬へ。
そんな感じの2012年。やっぱり異常気象なのでしょうか。
四季が人の感性に訴える部分は大きいのに。
その分?映画で刺激を補填しましょうか。
さ、今週は2本です!



「カラスの親指」は、阿部寛主演。5人のサギ師の物語。

サギ師のコンビ、タケとテツ。
年下のタケを、テツは"タケさん"と慕う関係。
それぞれに暗い過去を持つふたりは、日々の"仕事"で生活を維持していました。
そんな中年コンビの元に、ひょんなことから若い美人姉妹とその彼氏が合流。
5人の共同生活が始まったのです。
タケの持つ"暗い過去"。それはヤミ金との関わりでした。
何もかも失い、すべてを捨てて別人として生きてきたタケでしたが、
その後もヤミ金は執拗にタケを追っていたのです。
そのことが、5人に大きな"ヤマ"を与えます。
これが成功すれば人生一発逆転!
5人は手を組み、その壮大なストーリーに挑むのです…。

"カラス"とはサギ師のこと。
"親指"は映画のカギにもなるので、劇中で明かされるのを楽しみに。
いきなり画面が川崎競馬場の券売機から始まる。
コーチ屋という古いスタイルの詐欺です。
それだけで競馬好きのボクとしてはニヤリとしちゃいますが、
このコーチ屋もどんでん返しがあって、新しいスタイルのコーチ屋になってるんですね。
この映画はそんな"どんでん返し"を楽しむ映画。
小さなものから、大きなものまで、"どんでん返し"の連続。
最後の最後に待つ、意外なドラマに注目です。
オチを知ってから見ても楽しめるかも。
つまり、もう一回見ると、細部まで気づきがあって楽しいかもってこと。
原作者は道尾秀介。頭いいんだろうなぁ(笑)。
サギ師のみんなもこういう才能の使い方すればいいのに。ねぇ(笑)。☆3つ。
「カラスの親指」公式サイト



「綱引いちゃった!」は、大分市を舞台にした人情コメディ。

大分市役所の広報課に勤める千晶は、大分が大好き。
知名度の低い大分市をなんとかPRできないかと悩んでいた時に、
市長から「綱引きで大分をアピールしなさい」との命令が下ります。
実は昔、"大分コスモレディース"という主婦の綱引きチームが世界大会で優勝し、
大分のPRに一役買って出たと。もう一度それを目指せというのです。
そう簡単に言われてもと、頭を悩ませているところに、
抗議の女性団体がやってきます。
閉鎖を余儀なくされる給食センターで働く女性たちです。
この中には千晶の母、容子もいて、
それはそれは激しい抗議に市長も困っていたのです。
そこで千晶は考えました。このパワーを綱引きに使えないかと。
市長と交渉の末、このチームが全国大会に出場したら
給食センターの廃止は撤回するとの確約をもらいます。
集まったのは8名。名付けて『大分綱娘』。
一筋縄ではいかないメンバーの、激しくも緩い?トレーニングが始まったのでした…。

スポ魂ものに、訳ありの女性たち。
ぐっとくるものがあるだろうことは想像がつきますよね。
それぞれのキャラも立っていて、イケメンコーチの奪い合いも勃発(笑)。
この手の作品の王道です。奇をてらわない分、安心して見られました。
松坂慶子、浅茅陽子ら、大物熟年女優(失礼!)の奮闘ぶりもあっぱれ。
楽しい映画に仕上がってます。☆3つ。
「綱引いちゃった!」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.11.16
「その夜の侍」☆☆☆
「FASHION STORY」☆☆☆

そろそろ映画のストックがなくなってきました(笑)。
スケジュールが空いたと思うと、なぜかそこだけポッカリ試写がなかったり。
なかなかタイミングが合いません。
もう来年公開の映画も続々。時間を作って行かなくちゃ。
さ、今週は2本です!



「その夜の侍」は、堺雅人、山田孝之主演のヒューマン・サスペンス。

小さな鉄工所を経営する健一は、5年前に妻をひき逃げ事件で亡くし、
留守電に残った妻の声を毎日毎日聞き続けて、生きてきました。
犯人の木島は2年間の服役の後、社会復帰。
ひき逃げトラックの助手席に座っていた小林の家で居候を決め込んでいたのです。
反省の素振りも見せず、
ぬけぬけと世の中に出てきた木島に、健一は脅迫状を送り続けます。
「お前を殺して俺も死ぬ。決行まであと○日」。
そしてカウントダウンが進み、遂に、
「お前を殺して、俺は死ぬ。決行日」と書かれた脅迫状を送った健一。
その日は妻の命日だったのです…。

ジーッと見入ってしまう映画です。
糖尿病にもかかわらず、プリンをむさぼり食う健一。
眼鏡は曇り、髪は洗っていないのかベタベタ。
仕事の合間に木島の後をつけ、手には包丁の入ったコンビニ袋。
不気味でしょ(笑)。
対する木島の傍若無人な振る舞いが、すごくムカつくんですよねぇ。
暗い健一の取る行動が、じわじわと真綿で締めにけるように、
木島の精神にダメージを与えます。
「ほらっ、早く決定的な復讐をしてやれ」と思いながら見ていたのですが。う〜ん。
監督はあえてその表現方法を選んだようです。
主演のふたりだけではなく、脇を固める役者さんたちもすごくよかったので、
ラストはスカッとしたかったかな。
車の事故で人を殺めても刑が軽いですよね。
殺人とどう違うんだという遺族の憤りはごもっともだと思います。
そこに一石を投じてもいるはず。
映画全体を覆い包む独特の空気感などは秀逸です。そこに敬意を表して、☆3つ。
「その夜の侍」公式サイト



「FASHION STORY」は、
人気の現役モデルたちが出演する、華やかな青春ストーリー。

アルバイトをしながらモデルとしても頑張る雛子。
田舎の母親からは、大学を受験してちゃんと就職しなさいと参考書が送られてくる始末。
それでもコツコツ頑張っている雛子に、
人気ファッション誌の編集長が目を付けるんですね。
トップモデルのミホとコンビを組んで、大々的に取り上げられる雛子。
ところが、モデルとしての自信もスキルもまだまだの雛子にとって、
ミホはあまりに大きな存在だったのです…。

主演は本田翼。他にも加賀美セイラを始め、たくさんのモデルが出演しています。
試写の会場も華やかでしたョ。
こういう言い方も失礼ですが、想像していた以上によくできていました。
学芸会みたいになってるんじゃないかなって思ってたので(笑)。
脚本が良かったのかもしれませんね。
トップモデルのミホにも悩みがあって、ひとりの女性として苦悩する姿に、
雛子も少し存在が近くなった気がしたのでしょう。
モデルさんの志のベクトルも、最初はきっと「自分が綺麗なりたい」のはず。
でもそれが「見てくれる人を幸せにしたい」に変わった時、
おそらくひと皮むけるんじゃないかなぁと。どんな仕事も同じですね。☆3つ。
「FASHION STORY」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.11.9
「悪の教典」☆☆☆☆
「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」☆☆☆☆
「チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜」☆☆

先日、WOWWOWのドラマの試写に行って来ました。
篠原哲雄監督の「尋ね人」。11月3日に放送された作品です。
1時間55分という決められた時間に収める手法や演出の違いなど、
事前に話を聞いていたので、実に興味深く見ることができました。
どっちがいいかは別にしても、表現の違いがあるんだなと。
CFが入らないのは同じです。それはなんかホッとしますよね(笑)。
さ、今週は3本です!



「悪の教典」は、原作・貴志祐介、監督・三池崇史。
主演の伊藤英明が悪役にチャレンジした意欲作。

高校で英語教師として勤める蓮実聖司は、イケメン先生。
さわやかな生活もあって、
"ハスミン"のニックネームで生徒からの絶大な人気を誇っていました。
「2年4組を完璧なクラスにしたい」。
そう宣言した蓮実は校内の様々な問題にも着手していきます。
ところが、完璧にするはずの2年4組の生徒の周りで、
奇妙で残忍な事件が起こり始めるんですね。
その事件を追う同僚の教師や、他のクラスの生徒も姿を消し。
そう、実はすべて蓮実の仕業だったのです…。

2つの顔を持つ蓮実。というよりも、
快楽殺人者の本性を好青年という仮面で隠していると言った方が正しいのかもしれません。
ボクは常に思ってることがあって、
それは「人を殺した時点でそいつは正常じゃない」ということ。
精神鑑定で無罪になることが往々にしてあるけど、
そしたら殺人犯はみんな釈放です。
この映画を見終えて、改めて確信しました。
単なる"娯楽サスペンススリラー"に終わってないところがいいかな。☆4つ。
「悪の教典」公式サイト



「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」は、
「タイタニック」、「アバター」のジェームズ・キャメロン監督作品。

究極のパフォーマンスを見せるシルク・ドゥ・ソレイユ。
その、人が魅せるパフォーマンスと、
CGが作る空想世界が合致したのがこの映画なんです。
3Dじゃなくてもいいぐらい。
このパフォーマンスを毎回成功させてるんだと思ったら、
改めてそのすごさを思い知らされた気がします。
ボクは正直、「シルク・ドゥ・ソレイユ」は見たことがないのですが、
それはどうでもいいと言うか、人間の限界、
集中力ってこんなにすごいんだということを思いしらされます。☆4つ。
「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」公式サイト



「プラムとチキン〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜」は、
フランス、ドイツ、ベルギーの合作映画。

天才音楽家として名を馳せたナセル・アリ。
音楽のためには家庭を省みない彼は、
最愛の相棒であるバイオリンを妻に壊されてしまいます。
そこで出した彼の結論は、「死ぬことにした」。
いくら妻が謝っても許さないアリは、
好物のチキンのプラム煮を出されても口をつけません。
薄れいく意識の中で思い返すのは、
彼を"天才"と言わしめたきっかけにもなった、ある女性との恋物語だったのです…。

見ていて思ったのは、演出云々よりも、ストーリー展開。
アリは子供をふたりも作ってるんですョ。
なのに奥さんを悪妻だと。とにかく冷たい。
彼が死を選んで、幻想に耽るのは勝手だけど、
ボクは現実の奥さんをないがしろにするのは許せないなぁ。
もちろん、許すシーンは描かれてるんですョ。でもねぇ。
女性の感想を聞いてみたい映画です。☆2つ。
「プラムとチキン〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.11.1
「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」☆☆☆☆
「ジャパン イン ア デイ」(☆は割愛させて頂きます)
「ワンナイト、ワンラブ」☆☆☆

東京国際映画祭の『アジアの風』オープニング作品、
篠原哲雄監督の「スイートハート・チョコレート」を観てきました。
ご存知の方も多いと思いますが、監督とボクは中高の同級生。
この映画は中国映画なんですが、日本の夕張に魅せられた中国人プロデューサーが、
日中間の遠距離恋愛や友情をテーマに脚本も手掛けた作品。
残念ながら、日本での一般公開は未定だとか。
綺麗な作品です。公開が決まるといいのにと切に祈ります。
さ、今週は3本です!



「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」は、マドンナ監督作品。

マンハッタンに住み、名医として知られる分析医の夫と暮らすウォリー。
一見、誰もがうらやむ生活を送っているかのようなウォリーでしたが、
彼女には彼女にしか知り得ない悩みがあったのです。
夫の浮気、子作りの拒否、暴力。
結婚のために辞めた仕事への思いも断ち切れず、
働いていたサザビーズのオークションプレビューへ。
そこに置かれていたのは、イギリス国王、エドワード8世と、
恋人だったアメリカ人女性、ウォリス・シンプソンの愛用品の数々でした。
王位よりも、離婚歴のある他国の女性との恋を選び、
「王冠をかけた恋」と囁かれたウォリスとエドワードの恋物語。
ウォリーは自分の姿を重ね合わせながら、
ウォリスの気持ちを思い描いてみるのでした…。

エドワード8世は、1936年末に、弟のジョージ6世に王位を譲ると、
国民にラジオで発表した実在の国王。
批判の矢面に立たされたのはウォリスの方で、
"世紀のスキャンダル"とも"世紀の恋物語"とも評されるふたりのストーリー。
でもウォリスの側から描かれたものは少ないと。
そこにチャレンジしたのが、マドンナだったのです。
80年ほどの時空を行き来しながら物語は進みます。
最初はちょっと時系列がわかりづらいかもしれませんが、
設定を把握してから観ると決して難解ではないと思います。
大人の成熟した恋愛に必要なのはこういうものなんだなぁと、
改めて感じさせられる1本です。
どっかにいないかなぁ、そんな人(笑)。☆4つ。
「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」公式サイト



「ジャパン イン ア デイ」は、あの東日本大震災から1年経った、
今年3月11日の映像を集めたドキュメンタリー。

0時の時報がなり、あの未曽有の災害から1年。2012年3月11日が始まる…。
この映画は世界中の15000人あまりの人々から投稿があった、
2012年3月11日の映像だけを集め、編集した作品です。
同様の手法で作ったリドリー・スコット監督の
「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」にヒントを得、
フジテレビの早川敬之プロデューサーがリドリー・スコット監督に提案、
実現した、壮大なるリアリティの集合体です。
ひとつひとつは小さく、些細な日常。
でも、その小さくて、些細なことがどれだけ幸せなことか。
いろいろな意味で胸が締めつけられます。
復興予算はちゃんと被災地支援に使いましょうよ、ねぇ。
金銭的な援助は最低限必要なもので、
それじゃとてもじゃないけど補えない何かがあるって気づかされますから。
政治家には全員観てもらいたいものです。
このようなことが、映像の何万倍も起こっているということですからね。
☆はすみません、付けずにおきます。
「ジャパン イン ア デイ」公式サイト



「ワンナイト、ワンラブ」は、イギリス映画。

アメリカの人気エレクトロニック・ポップ・デュオ『ザ・メイク』のアダムとタイコ。
イギリス最大級のロック・フェス"T・イン・ザ・パーク"に招待されて会場に来たのですが、
ガールズ・バンド『ダーティー・ピンクス』のボーカルのモレロと口論になります。
仲裁に入った見ず知らずの男が取ったのは、ふたりを手錠で繋ぐという行為。
そして男は、なんとそのまま立ち去ってしまったのです。
カギもなく、カッターもない。
手を繋がれたままで行動しなくてはならないふたりは、
食事どころか、トイレもステージも一緒。
それぞれが連れてきた恋人ともおかしくなり始め。
その一方でロッカー同士、互いの音楽性や生き様に、
徐々に惹かれ始めていったのでした…。

設定の奇抜さと、それを補うリアリティ。
そのリアリティはというと、
何とロケを実際のフェス中にフェスの会場やったということなんです。
圧倒的な迫力、これはエキストラやCGでは出せませんから。
フェスの夜の顔もまたリアリティたっぷりで。
イギリス映画らしい結末も個人的にはうれしいというか、安心できる着地点(笑)。
繋がった手と手で起こる出来事は想像の範疇だったりするので、
若干の中だるみは否めませんが、
それでも合格点をあげられるラブ・ストーリーだと思います。☆3つ。
「ワンナイト、ワンラブ」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.10.24
「終の信託」☆☆☆☆

映画を見てて腹が立つのが、席の背中を蹴られること。
一気に現実に引き戻されちゃいますから。
ボクは振り向いて睨みつけちゃいます。
自分がやられないとわかんないんだろうなぁ。
今まで"背後運"がよかったんでしょうね(笑)。
マナーは守りましょ。
さ、今週は1本です!



「終の信託」は、周防正行監督作品。

綾乃は呼吸器内科のエリート医師。
ある日のこと、同僚の男性医師との不倫に一方的に終わりを告げられ、
院内で自殺未遂騒動を起こしてしまいます。
そんな綾乃の心を癒やしたのは、重度の喘息で入院していた江木の言葉でした。
信頼を深めた二人は、医師と患者の関係を超え、
人としての絆で結ばれていったのです。
しかし、江木の容体はどんどん悪化。
自分の死期を悟った江木は、綾乃に延命治療だけはしないよう懇願するのです。
そして、遂に江木が心肺停止状態に陥ったのです…。

草刈民代、役所広司、周防正行監督が「Shall we ダンス?」以来、
16年ぶりに手を組んだ作品。2時間24分の大作です。
江木が心配停止になり、綾乃は医師として、
友人として"重大な決断"をする。
話はそこで終わらず、3年後に刑事事件に発展し、
検察官の実に厳しい追及を受けるんですね。
随所に散りばめられた様々な問題。それを見事に描いていると思います。
考えさせられることがいっぱいです。☆4つ。
「終の信託」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.10.17
「ペンギン夫婦の作りかた」☆☆☆

毎週言っている「忙しい…」の言葉。時間は作るものだと実感。
そこで、まとめて見る日は4本にチャレンジ!
朝10時の回というのがありします。
でも、いざ朝になると眠気との闘いにコロッと負けちゃうんですよねぇ…。
会場でこっくりこっくりするよりはいいかな(笑)。
さ、今週は1本です!



「ペンギン夫婦の作りかた」は、実在の夫婦がモデルの物語。

フリーライターの歩美は、中国人カメラマンのギョウコウとの遠距離恋愛を経て、
晴れて国際結婚。
ところがギョウコウが勤めていた出版社が倒産してしまうんですね。
とにかく前向きな歩美は、「これぞ好機!」と夫婦で石垣島へ。
そのまま住み着いてしまいます。
元々"食"が大好きだったふたり。
歩美は食堂で働くようになり、いろんな沖縄の食材を知っていきます。
そこで思いついたのが、沖縄食材で作るここにしかないラー油作り。
夫婦はその作業に没頭していきます。
その一方で、ギョウコウの心に芽生えた、もっと深く歩美に愛を伝える方法。
それは日本への帰化だったのです…。

実在の夫婦の物語。一大ブームになった"食べるラー油"の元を作ったのがこのふたりだそう。
試写ではお土産に『石垣島ラー油』を頂きました(笑)。
ストーリーは帰化申請をした夫婦が、担当官に語る、これまでの経緯を追う形で進みます。
なぜ"ペンギン夫婦"なのかは、ま、見てのお楽しみ?
ただ、惜しむらくは、大人気ラー油の誕生秘話なのか、
夫婦の特異なラブストーリーなのか、どっち付かずになってしまっることでしょうか。
両輪あってこそのペンギン夫婦であることはわかりますが、
そのあたりが少々食い足りなかったかな。
頂いたラー油のお礼を込めて、☆3つ。
「ペンギン夫婦の作りかた」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.10.11
「情熱のピアニズム」
(この作品には☆は付けません)

とある映画の最終試写。
超満席で遅れて来た人は「もういっぱいで…」と断られる状況。
ボクもそんなひとりだったのですが、
スタッフの「はい。○○さんと△△さんで席押さえあります」の声を聞いて、
「もしかして空くかも?」と思い、
ダメならダメでいいのでと直前まで待たせてもらいました。
案の定?数名は来ない。そんなもんなんです。いかがなものでしょう…。
さ、今週は1本です!



「情熱のピアニズム」は、ドキュメンタリー映画。

99年に36歳の若さでこの世を去った、
フランス生まれのピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ。
彼は骨形成不全症という遺伝的障害を持って生まれてきました。
この障害は、些細な力でも骨が砕けてしまうというもの。
産まれてきた時も、全身の骨を骨折した状態で出てきたのです。
それゆえ、身長は1mとなく、常に骨折の痛みと闘ってきました。
でも、ミシェルには素晴らしい才能が備わっていたのです。
セミプロのミュージシャンの家に生まれたミシェル。音楽の才能はまさに"稀有な天才"。
幼い頃から与えられたピアノを弾きこなし、
多くの著名なジャズミュージシャンがミシェルとの共演を望んでいきます。
フランスからアメリカへ。西海岸からNYへ。
歩くことのままならない彼は誰かに抱かれて移動します。
特に女性に抱かれるのを好んだミシェル(笑)。
そう、彼は常に女性から大人気だったのです。
何人もの女性と付き合い、子供も授かりますが、その息子にも自分の障害が遺伝。
打ちのめされながら、それでも彼はこう言います。
「これを受け入れなければ、自分自身を拒絶したことになる。どうしてそんなことができるだろう」と。
カリスマ性を持ち、実に明るく前向きなミシェルの一生を追ったドキュメンタリー。
伝説のジャズミュージシャンのひとり、ウェイン・ショーターの言葉を。
「大人に成長した、いわゆるノーマルと言われる多くの人々が闊歩している。
彼らには何もかも揃っている。ちゃんとした大きさで生まれ、腕の長さも、色々なものが揃っている。
あらゆる意味において彼らは釣り合いが取れている。
だが彼らは、腕もなく、足もなく、脳もない人間のように人生を生きている。
そして自分の人生を責めながら生きているのだ。
私はミシェルが不満をもらすのを聞いたことがない。
ミシェルは偉大な、本当に偉大なミュージシャンだった。
彼があれほど偉大であったのは、彼が人として素晴らしかったためだ」。
人の人生のドキュメンタリー映画です。☆は付けません。
最初は正直、好奇の目で見てしまうかも。
でも素晴らしい生き様だと感動に変わります。
女性にモテるのも納得です(笑)。
「情熱のピアニズム」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.10.5
「アウトレイジ ビヨンド」☆☆☆☆
「ツナグ」☆☆☆☆☆

以前お話しした"開演30分で号泣だった"のが「ツナグ」です。
大切な誰かにきっと会いたくなるし、大切な誰かにきっと優しくしたくなると思います。
人生なんて後悔の連続。後悔しない生き方なんてまずできないはず。
でもすべてが今の自分を作っているのです。後悔も大事な自分の血や肉や骨なんです。
日々成長。そんなことを感じさせてくれる映画です。
さ、今週は2本です!



「アウトレイジ ビヨンド」は、北野武監督作品。大ヒット作の続編。

関東の巨大暴力団・山王会。
内部抗争の中、下克上でトップに立った加藤は、
「これからの暴力団は頭脳戦」と、国政にまで関わるようになり、
その右腕には元大友組の金庫番だった"インテリ・ヤクザ"の石原を起用していたのです。
冷や飯を食わされるはめになった古参の幹部たちは面白いはずもなく、
マル暴の片岡はそこに目を付け、関西の花菱会と繋ぎ、揺さぶりを掛け始めたのです。
山王会の加藤にはよからぬ噂がある。
自分が会長になるために、前会長を殺ったのは加藤じゃないか?
決して一枚岩とは言えない山王会。
そんな時、大友組の組長だった大友が服役を終え、刑務所から出てきたのです…。

ボクは最初の作品を見てません。それでも十分に楽しめました。
TVのインタビューなどで北野武監督は、
「現代の、新しいヤクザ映画を撮りたかった」と言っているように、
荒々しくてもどこかスマートなんですよね。
ほら、昔のヤクザ映画はみんな見るからにそっちの人じゃないですか(笑)。
三浦友和、加瀬亮、西田敏行…。みんな違うでしょ。
だからこそ生まれた、それがこのシリーズのオリジナリティでもあるんでしょうね。
個人的には、中野英雄が一番光ってた気がしました(笑)。
とにかくストーリーは秀逸。
これを見たあとに、健さんや文太さんの映画をDVDとかで見るとまた何かを感じるかも?☆4つ。
「アウトレイジ ビヨンド」公式サイト



「ツナグ」は、直木賞作家、辻村深月の小説の映画化。

死者と生者を会わせてくれる案内人。それが"ツナグ"。
でもこれにはいくつかのルールがあります。
依頼人が死者に会えるのは一生に一度、一人だけ。
死者も一度だけ、一人にしか会えず、死者の側から生者は選べません。
つまり、会いたい人でなければ依頼を断ってもいいのです。
会えるのは満月の夜。夜が明けるまでの数時間だけ。
ごくごく普通の高校生の歩美は、
祖母のアイ子が持つ不思議な"ツナグ"の能力を引き継ぐための見習い期間中。
そうして依頼人の様々な人生と向き合っていくことになるのです…。

親子、友情、恋愛。
3つの話に歩美自身のストーリーが加わっての物語。
ボクの個人的な話です。
昔付き合ってた女の子と偶然バッタリ出会って、
すごく謝りたいことがあったけど謝れなかったことを話すと、
意外なことに彼女はそこに感謝していたと。
スーッと心が晴れた思いだったのですが、それって実に稀有なパターン。
だって再会自体が奇跡なんですから。
じゃ、普通はどうかと言えば、頭の中で、心の中で相手の気持ちを推察するしかない。
でも、大体が悪い方に考えちゃうんですよね。
もし、それが人生の足かせになってるとしたら…。
勝手な考え方だけど、後悔もいい方に"思い込めば"いいんじゃないかなと。
もちろん散々悩んだり、省みたりしたその後にですョ。
ボクは自分の両親には後悔するんだろうなって、今から思ってます。
まだ二人とも元気なんですョ。わかってるならもっと親孝行しろって(笑)。
でもそれがなかなかできない。
号泣したのはそんな思いの表れなんでしょう。
"月の出ている時間だけ"。
裸の心を照らすべきは、太陽の強い光じゃない、
柔らかくも凛とした月の光なんだろうなと。☆5つ。
「ツナグ」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.9.20
「王様とボク」☆☆

まだまだ残暑が厳しい中、風には秋の気配が感じられるようになりました。
それでもちょっとまだ"芸術の秋"というには暑いですかね…。
映画館の冷房が恋しくなります。
さ、今週は1本です!



「王様とボク」は、人気コミックの映画化。

18歳の誕生日、ミキヒコは、親友のトモナリと、
もうひとりの仲間、モリオのことを思い出していました。
幼い頃はこの3人でいっつも一緒に遊んでいたのに。
モリオはブランコから落ちて、そのまま昏睡状態に陥ってしまったのです。
あれから12年。なんとモリオが目を覚まします。
身体は18歳でも、心は6歳のままのモリオ。
ミキヒコはモリオの姿に、失くしてしまった何かを感じずにはいられないのでした…。

大人の階段を登るに従って、当然失っていくものもある。その代わりに得るものもある訳で。
例えばそれがミキヒコの誕生日を一緒に祝ってくれた彼女のキエだったりもする訳です。
ミキヒコにとって、モリオの心に戻るのは、ある意味"後退"でもある。
相反する2つを手にしようとする時に、どんな行動を取るべきなのか。
この映画の難しいところはその着地点なんじゃないかなと思います。
ミキヒコの行動は、ボクにはどうも衝動に駆られた後ろ向きの行動にしか思えないんですよね。
「子供はみんな王様だ」。
"裸の王様"という言葉もあります。
大人になるということはそこに気づくことでもあると思うのですが。
ミキヒコの行動を良しとするのではなく、問題提起として描いているとしたら深いです。
観た人が、果たしてそう取れるかどうかでしょうね。☆2つ。
「王様とボク」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.9.13
「コッホ先生と僕らの革命」☆☆☆

多忙で試写が見られないのは相変わらずで。
そんな中、久々に足を運んだ試写会で、開映30分で号泣してしまいました。
やっぱり映画はいいなと改めて。
可能な限り見なくちゃと強く感じさせた作品でした。
公開が近づいたらまたご紹介しますね。
さ、今週は1本です。



「コッホ先生と僕らの革命」は、ドイツ映画。

舞台は19世紀後半のドイツ。
イギリス留学から呼び戻されたコンラート・コッホは、名門高校の英語教師に就任。
革新的な教育をしようとする校長の試みのひとつでもありました。
当時のドイツは反英感情が強く、コッホに対する風当たりも決して弱くはなかったのです。
校長のもうひとつの試みが"奨学金制度"。
名門高校に労働者階級の子供のヨストの入学を許したのですが、
名士の息子フェリックスたちのいじめに合う毎日。
様々なことが、将来を担う子供たちにとって、とてもいい環境とは言えなかったのです。
ギクシャクするクラスをまとめようと、コッホが取り出したのは、
イギリスから持ち帰ったサッカーボールでした。
初めてのサッカーに生徒たちも興味津々。
サッカー用語で英語の勉強もするようになっていきます。
ところが、授業を視察に来た有力者たちが、
イギリス生まれのサッカーを教材にするとは何事だと大問題に。
このままコッホ先生の授業はなくなってしまうのでしょうか…。

「ドイツサッカーの父」と呼ばれるコンラート・コッホの実話を基にした作品です。
コッホはサッカーが"チームプレイと個性と自発性を養う"と考えていたようで、
そんな中、労働者階級の家に生まれたヨストにはサッカーの才能があり、
クラスの人気者になっていきます。
スポーツを通じて、偏見や差別と戦うことを教えたコッホ先生。
残念ながら大きな戦争を止めるまでにはいきませんでしたが、
フェアプレイやチームプレイが必要なサッカーは、今やドイツのお家芸に。
もちろん脚色はありますが、その歴史の1ページを知るにいい映画かもしれませんね。
☆3つ。
「コッホ先生と僕らの革命」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.8.31
「モンサントの不自然な食べもの」☆☆☆

8月はほとんど映画の試写が見られませんでした…。
最終試写で駆け込むか、宣伝会社にお願いしてDVDを借りるか。
映画は感性を刺激してくれます。ずっと見続けたい大切なもの。時間を作らなきゃ。
さ、今週は1本です!



「モンサントの不自然な食べもの」は、食に関するドキュメンタリー。

スーパーなどで食品表示を見ると、「遺伝子組み換えでない」と書いてあるものがあります。
裏を返せば、当然ながら「遺伝子組み換え作物」があるということですよね。
この映画は遺伝子組み換えの種を売る、アメリカのモンサントという企業にスポットを当て、
そのやり方の是非を問う作品です。
その手法とは、モンサントの主力商品であるラウンドアップという除草剤を撒けば、
すべての植物が枯れると。
しかし、モンサントの開発した遺伝子組み換え種子だけは、ラウンドアップに耐性がある。
だからその種を植えて、ラウンドアップを撒くだけで、雑草を刈る手間が省けますよと。
日本と違い、広大な農地で農業を営むアメリカなどでは実にありがたい商品。
しかし、一度ラウンドアップを使ったら、その土地に他の作物は育たない。
他の植物にとっては"死の土地"になってしまう訳です。
作物が豊作で価格が下がっても、
他のものは植えられないからモンサント社の種を買い続けるしかないけど、
この種は価格が高く、アジアの貧しい農家では、一度使ってしまったが最後、種が買えず廃業。
自ら命を絶つ人もたくさんいるとか。
映画のすべてを即座に信じる訳にはいきませんが、「怖いなぁ」と思ったのは事実です。
やり方ももちろん、その耐性の強い遺伝子組み換えの作物も実に怖い。
そんなものがボクたちの、また子供たちの口に入るのですから怖いでしょ?
外食をするとなると、ほとんどの店で素材までは選べませんよね。
任せるというか、信じるしかない。
食の安全について、ものすごく考えさせられる1本です。☆3つ。
「モンサントの不自然な食べもの」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.8.24
「あなたへ」☆☆☆
「フェイシング・アリ」☆☆☆☆
「闇金ウシジマくん」☆☆☆☆

今週の3作品の主演は大物だらけ。
高倉健さん、モハメド・アリさん、そしてウシジマさん(笑)。
それぞれに個性的でした。
今週は3本です!



「あなたへ」は、高倉健主演のロードムービーです。

刑務所の指導技官として働いていた倉島英二。
誰もが一生独身を貫くだろうと思っていた英二が、慰問に来ていた歌手の洋子と結婚。
熟年での結婚でしたが、洋子が53歳という若さで他界。
その洋子が遺した残した2通の便り。
1通には、故郷の海に散骨して欲しいとあり、もう1通は長崎の郵便局への局留め。
現地に行かなくては受け取れなかったのです。
妻の真意を知りたい英二は仕事を辞め、北陸の地から、妻の故郷である九州へと向かうのでした…。

高倉健、6年ぶりの主演作です。
ビートたけし、佐藤浩市、草なぎ剛、綾瀬はるか、大滝秀治…
脇を固めるのもビッグネームがずらり。
ちょっと期待し過ぎてしまったかもしれません。
約9000キロのロードムービー。
途中、英二は様々な人と出会い、人生とは何かを改めて考えます。
寡黙な健さんのキャラクターそのままに、映画も実は多くを語りません。
人生経験を積んで、その心を、言葉の裏を推察する。
サイドストーリーはわかりやすいけど、肝心の英二と洋子の部分がわからない。
ピンと来ないのは、まだボクが若造ということなのかもしれませんね(笑)。☆3つ。
「あなたへ」公式サイト


「フェイシング・アリ」は、あの伝説のヘビー級ボクサー、
モハメド・アリのドキュメンタリー。

1960年に18歳でプロデビューして以来、56勝5敗(37KO)。
"蝶のように舞い、蜂のように刺す"。
有言実行のビッグマウスで人気を博したアメリカの黒人ボクサーです。
人種差別と戦い、ベトナム戦争の理不尽さと戦い。
そんな中で3度、世界ヘビー級王座に君臨した彼を、
拳を交えた猛者たちが尊敬の念と共に語ります。
実はアリ氏はパーキンソン症候群で、言葉を発することができないのです。
「この偉大な王者の足跡を、俺たちが語らなくて誰が語る」。
ジョージ・フォアマン、ジョー・フレージャー、
ラリー・ホームズ、レオン・スピンクス…。
実に興味深いエピソードが次々登場します。
いい映画です。☆4つ。
「フェイシング・アリ」公式サイト


「闇金ウシジマくん」は、人気コミックの映画化。

10日で5割、1日3割も。
とんでもないやり方で金を集める"伝説の闇金王"丑嶋馨。
今回のターゲットは2人。
ひとりは高校を卒業して、プー太郎をしている鈴木未來。
自分の娘に売春を勧めるような母の元に育ち、
借金取りに来た丑嶋に、母の代わりに少しの金を渡してしまいます。
その時から未來が狙い撃ちに。未來はデート喫茶で働くようになるのです。
もうひとりは、チャラいダンスサークルの代表、小川純。
3000程の携帯のアドレスを自分の力と勘違いし、
丑嶋から金を借り、挑戦状を叩きつけたのです。
丑嶋の執拗な回収劇が始まります…。

週刊ビッグコミックスピリッツ連載の人気コミックだったこの作品。
違法な取り立てをする丑嶋率いる"カウカウファイナンス"が悪いんだけど、
なんか借りるヤツの方がもっと悪いんじゃない?
人生ナメてるとこんな目に遭うよっていうのを教えてくれてるんじゃない?
って気持ちになっちゃうから不思議(笑)。
価値観の根底からして間違えてるヤツって多いっすもんね。
物質的に豊潤な今の日本。
本当の豊さはそこには無いということに気づかなきゃいけないのにね。
まったく表情のないウシジマくん。怖いです(笑)。☆4つ。
「闇金ウシジマくん」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.8.17
「アベンジャーズ」☆☆☆
「WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々」☆☆☆

さぁオリンピックも終わりました!
筋書きのないドラマに感動した次は、筋書きのあるドラマで感動しませんか?
今週は2本です!



「アベンジャーズ」は、アメ・コミのヒーローたちが大集合!
超豪華な"史上最強映画"です。

地球を軽く破壊するパワーを持った"四次元キューブ"の研究をしていた、
国際平和維持組織シールド。
ところが、突如制御不能になったキューブが別世界と繋がり、
地球制服を目論む邪悪な神のロキが地球へ降臨してしまいます。
70億人の命が危ない。
シールドの長官ニックは、周囲の反対を押し切って、ある賭けに出ます。
それは世界中に散らばっている最強のヒーローたちを集めることだったのです…。

アメリカン・コミックの出版社であるMARVELの、
時代を超えたヒーローたちが大集結。
ならば敵なしだろうと思いますが、これがまたいろいろとあって(笑)。
アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、
ブラック・ウィドウ、ホークアイ、そしてニック・フューリー。
みんなヒーローのくせに、人間臭いんですよねぇ(笑)。
そのあたりが逆に親しみが湧く感じ。
アメ・コミに興味のないあなたでもきっと楽しめると思います。
過去のそれぞれの作品を見ておくと、より楽しめますが、
パンフレットを買って、事前に勉強しとくだけでも十分。
オリンピックのリアルなヒーローと比べてみるのも一興かも!?☆3つ。
「アベンジャーズ」公式サイト



「WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々」は、
個性派俳優ポール・ジアマッティ主演作。

妻とふたりの娘を持つ、弁護士のマイク。
不況で仕事の依頼はほとんどなく、高校の弱小レスリング部でコーチのバイトをしています。
ある日のこと、一人暮らしの高齢者のレオに施設に入るようにと州からお達しが来るんですが、
レオは頑として拒否。
その相談に来た際に、マイクはレオの後見人を買って出ます。
しかし、それは手当目当てのもの。
裁判でマイクを後見人とすることが認められると、
マイクはさっさとレオを施設に入れてしまうんですね。
するとレオの孫だという少年カイルが、おじいちゃんに会いにやってきます。
母親のことが大嫌いな彼は、おじいちゃんが大好き。
何で自宅があるのに施設に入っているのかを問われて、とっさに嘘をつくマイク。
母親の元には帰らないというカイルを自宅に住ませるのですが、
暇つぶしにと見学に行ったレスリングの練習で、とんでもない強さを発揮。
聞けば、今は辞めちゃったけど、中学では大変な選手だったとか。
掘り出し物に喜ぶマイクでしたが、彼のついていた嘘が、
徐々に、徐々に、ほころび始めるのでした…。

幸せって何だろう?
まさにそんなお話。
マイクの嘘も人を騙してはいるけど、大それたものじゃない。
家族を何とか養うために、苦肉の策でしたこと。
いや、誤解のないように。ダメなんですョ。人を騙してるんだから。
嘘で始まったことは嘘を塗り重ねていかないといけないから、必ず崩れるもの。
マイクは家族からも、やっと見つけた才能からもダメを出されてしまう訳です。
じゃ、この映画のタイトル「WIN WIN」にならないじゃないかって言われそうだけど、
日本の言葉にもあるでしょ?"負けるが勝ち"って。
大人のリスタートの物語。少年にとってもそうかな。
手放しても得るものがある。だから人生は面白いんです。☆3つ。
「WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.8.9
「聴こえてる、ふりをしただけ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

TVのオリンピック観戦で寝不足の人も多いでしょう。
表彰台に上がって喜ぶ選手の、また力はあってもメダルに手が届かず悲しむ選手の、
ひとりひとりにドラマがあります。
流した涙の裏側を想像して、物語を思い描いてみるのもまた一興。
世界の舞台に立てる。それだけですごいことなのですから。
さ、今週は1本です!



「聴こえてる、ふりをしただけ」は、
11歳の女の子の揺れる心を描いた物語。

突然の事故で母親を亡くした11歳のサチ。
家では父と叔母が、学校では友達が気を遣って接してくれるのですが、
周りが言う「お母さんは魂になって、空からサチちゃんを見守ってくれているから」
という言葉がピンときません。
そんな時、一風変わった転校生の希がやってきます。
彼女はお化けが怖くて、ひとりでトイレに行けないのです。
死後の世界を信じる希に、サチは興味を抱くのでした…。

この映画は監督の少女期の実体験が元になっているとか。
思いもしない悲しい出来事をどう消化していくのか。
描く側のそのリアリティが、
残念ながら観ている側には伝わりきらない気がするのです。
言葉少なに日々を過ごすサチの心の奥底を想像しなくてはならない。
その材料が"実体験"だとすると、同じ経験のない人には推測し切れないというのかな。
評価が分かれる作品かもしれません。ごめんなさい、ボクには☆2つです。
「聴こえてる、ふりをしただけ」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.8.6
「セブン・デイズ・イン・ハバナ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

更新が遅くなりました。
今回の作品はDVDでお借りしたのですが、腰を据えて見る時間がなかなか取れず…。
夏休みがないボクには海外旅行気分になれるかも。
それではその1本です!



「セブン・デイズ・イン・ハバナ」は、7本のオムニバス。

アメリカによる経済封鎖もあり、決して経済的には豊かとは言えないけれど、
世界中の観光客を魅了するキューバの首都ハバナ。
この映画は月曜から日曜までの7日間という形で、
7人の監督がオムニバス形式でショートムービーを紡ぎます。
アメリカから来た若い男性のテディが、言葉も食も合わない中、
唯一気持ちが通じた女性の驚くべき正体とは…。
シンガーを目指す女性、セシリア。
スペイン人のクラブオーナーに見初められ、スペインに来ないかと誘われます。
男女の関係になりそうになるけれど、
セシリアには同棲中の野球選手の恋人、ホセの存在が。
彼女は果たしてどちらを選ぶのか…。
他にもキューバならではの生活を背景に、宗教、伝統、
国民性、あらゆる切り口で物語が作られています。
音楽も主役のひとつ。海外旅行に行きたいけど行けないあなた、
人生も考えつつ、ゆったり観るにはもってこいの1本ですョ。☆4つ。
「セブン・デイズ・イン・ハバナ」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.7.26
「眠れぬ夜の仕事図鑑」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

実は新しいことを始めて、また試写を見る時間が取れなくなってしまいました。
奇しくも今回紹介するのは、人が寝ているだろう時間に働く人たちの映画。
忙しいのはありがたく、大変。逆に大変ですが、ありがたくもあります。
今週は1本です。



「眠れぬ夜の仕事図鑑」は、
ヨーロッパの深夜労働の実態を描くドキュメンタリー。

国境警備、新生児病棟、性風俗、老人ホーム、郵便仕訳、
空港清掃、深夜営業の飲食等…。
ヨーロッパ10ヶ国を回って、人が眠っている時間に働いている人々の
様々な勤労の様子にカメラを回し続けた作品。
監督は「いのちの食べかた」(07年日本公開)のニコラウス・ゲイハルター。
あの映画を見た人はわかると思いますが、
演出としてのBGMもなく、ただ淡々と映像が流れます。
だからこその生々しさというか、普段は気づかないものが見えてきたりもするんですね。
ただドキュメンタリーのひとつの重要なポイントは、見る人にとっての"リアリティ"。
例えば国境警備も、ジプシーキャンプの管理も、
欧州会議の同時通訳も、"島国"日本には縁遠い話。
残念ながら、ボクらにリアリティがないんです。
「いのちの食べかた」は我々が口にする食べ物の話。
すごく伝わるものがありました。
ただ、今作にはそれがない。正直な感想です。
もらったプレスにもありましたが、映像の情報を読んでから見るとわかりやすいかも。
パンフレットを事前購入することをお勧めします。☆2つ。
「眠れぬ夜の仕事図鑑」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.7.19
「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」☆☆☆
「屋根裏部屋のマリアたち」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

暑さが本格化してきました。
節電の夏ですが、映画館って、意外や省エネなの、知ってました?
上映中の2時間ぐらいは真っ暗な中、映写機が回るだけ。ねっ。
冷房は程よく効いてるし、節電の夏にはお勧めのスポットでもあるんですョ。
さ、今週は2本です!



「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」は、
ミャンマーの民主化運動をリードする女性指導者の、激動の半生を描いた作品です。

旧ビルマの指導者、アウンサン将軍の娘として生まれたアウンサンスーチー。
父が政敵の凶弾に倒れた後に、インド、イギリスと渡り、
オックスフォード大学で学び、イギリスで結婚。
ふたりの息子にも恵まれ、幸せに暮らしていました。
そんなある日のこと、故郷に住むスーチーの母が心臓発作で倒れたと電話が入り、
スーチーは久しぶりに祖国へと帰ります。そこで見たのは目を疑う光景でした。
クーデターで誕生した軍事独裁政権に対する民主化運動が激化。
学生を中心としたデモ隊に容赦ない武力弾圧が加えられ、
多くの若者が血を流していたのです。
アウンサン将軍の娘の帰国を聞きつけた活動家たちが、
スーチーに選挙への出馬を要請します。
最初は固辞していたスーチーでしたが、夫の後押しもあって、
初めて多くの人の前で演説をすることに。
すると集まった聴衆はなんと数十万人。これらの人々の熱狂のうねりの中、
スーチーは民主化運動のリーダーの道を選びます。
ところが、独裁者のネ・ウィン将軍はこれを面白くは思いません。
命の危険にも晒されるような、様々な妨害工作が始まったのです…。

ご存知のように、その後長いこと自宅軟禁という状態にあったスーチー氏。
命の危険を考えた夫のマイケルは、ノーベル賞の選考委員に掛け合い、
彼女のこれまでの功績をすべてまとめ提出。
その甲斐あって、スーチー氏はノーベル平和賞を受賞します。
「これでそう簡単には命は奪えまい」。夫の愛の結晶とも言える受賞でした。
それでも、もちろん授賞式には出られないスーチー氏。
逆にそのことで、ビルマの現状を世界中に知らしめることになったのです。
この映画のメガホンを取ったのはリュック・ベッソン監督。
ちょっとイメージは違うけど、自ら手を挙げたんだそう。
今、世界が最も注目する女性のひとりです。映画の先の物語は、現在進行形で続いています。
そのプロセスを学ぶにはもってこいの映画と言えそうです。☆3つ。
「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」公式サイト



「屋根裏部屋のマリアたち」は、60年代を舞台にしたフランス映画。

62年のフランス、パリ。
ジャン=ルイ・ジュベールは祖父の代から続く証券会社の経営者。
家にはメイドがいて、妻は家事をしない有閑マダム。
ある日のこと、妻と喧嘩になり、家を飛び出したジャン=ルイが選んだ逃げ場所は、
メイドたちが住む屋根裏部屋。
ここには新たにジュベール家に来た、スペイン人メイドのマリアも住んでいました。
いざ暮らしてみると、あまりにひどい環境にびっくり!
メイドたちの要望を次々聞いてあげたジャン=ルイは、「あなたは聖人です」と崇められ、
こうしてご主人様とメイドたちの不思議な共同生活が始まったのです…。

ジュベール家の屋根裏部屋に住むのは、貧しくも明るい、個性的なスペイン人メイドたち。
今までに出会ったことのない刺激的な女性たちに魅せられ、
ここでジャン=ルイは新しい人生の楽しみを発見してしまうのです。
でも本当はここにいる人じゃないと諭されるジャン=ルイ。
中でも、若くて、訳ありの人生を送ってきたマリアには、恋をしてしまうんですねぇ。
そのマリアが突然、国に帰ってしまいます。それもジャン=ルイには一言も告げずに。
さぁ、妻子のいる彼はいったいどんな行動を取るのでしょう?というお話。
マリアの立場、気持ち、ジャン=ルイの熱い思い。
なんか中高年の"夢"みたいなものがたっぷり詰まった1本(笑)。
ハッピーエンドは望めないんだろうなと思いながら見ていて、でもハッピーエンドを望んでしまう。
そんな映画でした。
ここにリアリティを見るなんて、ボクも本当に年を取りました(笑)。
結末は是非ご自身の目で!☆4つ。
「屋根裏部屋のマリアたち」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.7.13
「いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜」☆☆☆
「BRAVE HEARTS 海猿」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

沢尻エリカ主演の話題の映画「ヘルタースケルター」は見てないんですよ。
やっぱり見てみたいですね。
しばらくは劇場もいっぱいなんでしょうか。
ボクの場合、ちょっとよこしまな動機ではありますが(笑)。
さ、今週は1本です!


「いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜」は、人気の絵本画家、
いわさきちひろの人生を描いたドキュメンタリー。

水彩のにじみを生かした独自の技法で、
やわらかく子どもを描く、いわさきちひろの絵。
きっとあなたも見たことがあるでしょう。
その裏側にある彼女の意志の強さと、子どもへの思い。
まさかと思うような環境に生きた、いわさきちひろの55年の人生が描かれています。
タイトルにある"27歳の旅立ち"というのは、彼女が結婚に失敗し、
戦争ですべてを失い、絵の道で生きていこうと決意したのが27歳だったということ。
その後も決して生活は楽ではなく、再婚し失業中の夫を支えたり、
母の病気、また自分の病とも闘いながら、
子どもの心の内面を描き続けていったのです。
あのやわらかい作風の中にこんなエピソードがあったとは。
そうして改めて絵に触れると、描かれた子どもの目が語りかけてくるものが、
きっとまた違って感じてくることでしょう。
多くの芸術家、画家、イラストレーターたちに大きな影響を与えたいわさきちひろ。
彼女の人生を是非体感してみて下さい。☆3つ。
「いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜」公式サイト



「BRAVE HEARTS 海猿」は、シリーズ4作目にして、映画としては第3弾。

海難救助の"最後の砦"と言われる特殊救難隊に志願入隊した仙崎と吉岡。
ピンと張り詰めた空気の中、日々厳しい訓練を積み重ねる隊員たち。
そんな中、仙崎には二人目の子供が妻のお腹の中に、
吉岡には美香というCAの彼女ができ、心和む時間を持つことができていたのです。
ところが、美香の乗るジャンボ機にトラブルが発生。空港への着陸は不可能になります。
苦渋の決断は海上着水。
海に誘導灯を多数置き、何とか着水には成功したものの、機体が海に浮いている時間はごくわずか。
その間に乗客、乗員を機外へと退避させなくてはならないのです。
特殊救難隊の決死の救助が始まったのです…。

前作で完結するはずが、「まだやり残したことがある」。
スタッフはそう考えたそう。
仙崎と吉岡を海難救助の最高峰、
特殊救難隊に入れたらどうなるのかを見てみたかったと言います。
そんな時に東日本大震災が起き、映画のテーマが完全に出来上がったのだとか。
今作は前作と比べると、多少のざっくり感は否めません。
でも命の大切さ、絆、諦めない強い心といった、
人間の内面がより強く描かれているんだなと。そんな感想です。
これまでに考えもしなかった負の出来事は、おそらくこれからも起きるでしょう。
そんな時にまた次回作がお目見えするのかもしれません。☆3つ。
「BRAVE HEARTS 海猿」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.7.5
「崖っぷちの男」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、JRA発行のフリーペーパー『CLUB銀座』で、
週末のお勧めとして、映画を紹介することが多くなりました。
競馬の機関紙ですから、当然競馬に引っ掛けて文章を書くのですが、
結構そんな共通する切り口ってあるんですよねぇ。
例えば今週のこの映画だってそう。タイトルがまさにって感じでしょ(笑)。
もちろん取り上げさせてもらいました。
さ、今週は1本です!


「崖っぷちの男」は、"ノンストップ・アクション・サスペンス"(プレスより)。

NYの高級ホテルに入っていく男がひとり。
チェックインを済ませ、ルームサービスで朝食をとると、おもむろに窓枠を乗り越え、
幅35cmの縁に立ち、高さ60mの高層階から今にも飛び降りようとしているではありませんか。
通行人が気づき、警察に通報。野次馬が集まり、騒然とする中、警察もやってきます。
調べたところ、男の名はニック。
元NY市警の警察官で、今は30億円のダイヤモンドを盗んだとして逮捕され、
刑務所から逃げ出した脱獄囚だったのです。
ニックは自分の要求を伝える交渉人として、女性刑事のリディアを呼ぶよう求めます。
ギリギリの状況で進められるふたりのやり取り。
果たしてニックの目的は何なのか?
誰が味方で、誰が敵なのか?
そしてこの事件の真実とは?
謎が次第に解き明かされていくのです…。

いやぁ、ホントによく出来てましたョ。
意外と早い時間から、ニックの狙いがわかってくるかも。
それがわかってからでも十分面白くて。
どんでん返しの先にまたどんでんが待ってる感じ。
高所恐怖症の人はお尻がムズムズしっ放しかもしれません(笑)。
覚悟して行って下さいねっ。☆4つ。
「崖っぷちの男」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.6.29
「少年は残酷な弓を射る」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

久々の更新です(笑)。
この作品の試写の時、某TV局のワイドショーがアンケート調査をやっていて、
「週末公開作品の中からオススメの映画は?」ということだったのですが、
提示された一覧のほとんどを見てなくて…。
7月は少なくても1本ずつはご紹介できそうです。お楽しみにっ。
さ、今週は1本です!


「少年は残酷な弓を射る」は、イギリスのサスペンス映画。

作家として活躍していたエヴァは、恋人のフランクリンと結婚。
妊娠し、ケヴィンという男の子を出産したエヴァでしたが、
なぜか素直に喜べない。何か違和感を感じていたのです。
とにかくエヴァを困らせようとするケヴィン。
それは可愛い子供の悪戯と言えるものではありませんでした。
妹セリアが産まれ、一見すると幸せな家庭に見えるのですが、何かが引っ掛かる。
セリアの可愛がっていたハムスターが死に、
さらにはセリアは劇薬を浴びて、片目を失ってしまいます。
エヴァはケヴィンの仕業だと夫に訴えるのですが、
「実の息子を疑うとは」と、フランクリンとの間に決定的な溝ができてしまいます。
そして、ギリギリのところで保たれていた家族の繋がりを完全に断ち切る事件が、
遂に起こってしまうのです…。

世の中には常識では考えられないような事件が実際に起こります。
その"なぜ?"は本当にわからない。
でも起こってしまうんだという事実を描いたような1本。
子育ての難しさに主眼を置いたものではないと思うんですが、
そのあたりを読み解くのは少し難しいかもしれません。
この映画には原作があって、400ページの長編小説だとか。
逆にそれを読んでから観た方が面白いかも?
色彩の使い方や、なぜ?どうして?のハラハラ感は楽しめると思います。
できればもう一度見直したい。そんな作品でもあります。☆3つ。
「少年は残酷な弓を射る」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.6.6
「キリマンジャロの雪」☆☆☆
「幸せへのキセキ」☆☆☆☆
「ソウルサーファー」☆☆☆☆
「ホタルノヒカリ」☆☆
「道―白磁の人―」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先週もお伝えしたように、来週、再来週公開作品の試写は1本も見ておらず、
2週続けて更新がなくなります。ご承知おき下さい!
そのぶん!?今週はたっぷり5本です!


「キリマンジャロの雪」は、人の優しさを描いたフランス映画。

ミシェルは港湾労働者の労働組合委員長。
会社がリストラのために、20名の退職者を募らなくてはならず、
それをくじで決めることに。
そのくじの中に、ミシェルは自らの名前も入れておいたのです。
委員長特権として自分を除外するのを潔しとしなかったミシェルの名前が、
皮肉にも呼ばれてしまいます。
その事を妻に告げると、妻は「誇りに思う」と言って労をねぎらったのでした。
失業後、孫の世話ぐらいしかすることのなくなったミシェルたちが、
妹夫婦とカードゲームを楽しんでいると、突然マスク姿の男二人組が家に侵入。
金品と共に、子供たちからプレゼントされた
キリマンジャロ行きの旅行チケットを盗んでいったのです。
後日、犯人が判明。そのひとりは一緒にリストラされた元同僚だったのです… 。

犯人の男には、養っていた幼いふたりの兄弟がいて、
借金や生活苦のために強盗に入ったと供述。
悪態をつく男でしたが、ミシェルは何とか力になれないかと奔走します。
一方、妻もミシェルに内緒で幼い兄弟の面倒を見始めるんですね。
自分たちを襲った強盗の身内に愛情を掛けるなんてと、当然家族は怒ります。
それでもミシェル夫婦は自分たちの信念に基づいて行動するのです。
性善説に基づいて描いたという訳でもないと思いますが、お国柄というか、
その国々の事情で、おそらく感じ方が違うんだろうなという気がする1本。
あなただったら赦せますか?☆3つ。
「キリマンジャロの雪」公式サイト



「幸せへのキセキ」は、実話に基づいたヒューマンドラマ。

ベンジャミンは、14歳の息子と7歳の娘の父親。
半年前に最愛の妻を亡くし、新聞社に勤めながら子育てに追われる毎日。
仕事も思うようにいかず、反抗期の息子が学校を退学になったのを期に、
すべてをリセットして妻の思い出からも遠ざかろうと引っ越しを決意。
新しい家を探します。
そして理想的な物件を発見したのですが、そこに住むには条件があると。
実はこの家、2年前に閉鎖した動物園の中にあり、
その条件とは、47種類もの動物たちの面倒を見ることだったのです…。

7歳の娘、ロージーがかわいい(笑)。
アメリカでも子役ブームが巻き起こるんじゃないかというくらいのおませさん。
動物たちは前のオーナーの遺産と、
ボランティア同然のスタッフの頑張りで飼育が続けられていたのですが、
現状は当然"火の車"。
スタッフの誰もがベンジャミンも尻尾を巻いて逃げ出すと予想していたのですが、
ロージーの動物好きな天真爛漫さもあって、
これが頑張っちゃうんですよねぇ。
反抗期の息子のディランも、別に悪い子じゃない。
素直になれないだけで、それがこの環境で変わってきます。
ディランの初恋にキュンとして、ベンジャミンの新たな恋にニヤッとする。
恋愛がメインの映画じゃないけど、きっと恋がしたくなります(笑)。
人生を頑張るって素晴らしいんですョ。☆4つ。
「幸せへのキセキ」公式サイト



「ソウルサーファー」も、実話に基づいたストーリー。

両親とふたりの兄と、カウアイ島に暮らす13歳の少女、ベサニー。
家族全員がサーフィンを愛し、
母から"マーメイド"と呼ばれるほど海に溶け込んでいたベサニーは、
親友のアラナと共にプロサーファーになることを夢見ていました。
ベサニーが地方大会で優勝すると、うれしいことにスポンサーの話が舞い込んできます。
夢まであと少し。次の大会に向け、朝の海で練習をしていると、
何の前ぶれもなく突然サメがベサニーを襲います。
なんと、サーフボードごとベサニーは左腕を噛みちぎられてしまったのです。
一命はとりとめたものの、大事な腕を失ったベサニー。
このまま夢はついえてしまうのでしょうか…。

現実を直視し、一度はサーフィンを諦めかけるベサニーでしたが、
家族の支えと後押しがあって、再度夢に向かって走り出します。
途中、地震で大きな被害にあった国にボランティアで向かったベサニー。
そこで子供たちにサーフィンを教えたら、笑うことを忘れた子供たちに笑顔が戻ったのです。
この出来事が彼女自身を、自分の原点に引き戻したのかもしれません。
ハンディキャップを克服するのには並々ならぬ努力と根性が必要。
でもベサニーはやり遂げました。
好きなことだからできる。確かにそうでしょう。
人生に大切なのは、諦めない強い気持ちを持つだけじゃなく、
それだけ打ち込める"何か"を見つけることなのかもしれませんね。☆4つ。
「ソウルサーファー」公式サイト



「ホタルノヒカリ」は、人気TVドラマの映画版。

仕事はこなすが、家ではジャージ姿でぐーたらな"干物女"のホタル。
会社の上司でもある高野部長と結婚して、
新婚旅行に行こうと言う部長に対し、めんどくさいと答えるホタル。
それでも最愛の人の望みならと、重たい腰を上げたホタルでしたが、
旅先で出会った日本人姉弟と様々なトラブルに巻き込まれます。
果たしてふたりは無事幸せなハネムーンを終えることができるのでしょうか…。

日テレ系で放送していたドラマも1回ぐらい、何かのタイミングで見たことがあるけど、
ボクには面白さのツボが違うよう。で、映画はさらにう〜んって感じ。
昔の日本映画の海外ロケの悪いパターン(苦笑)。
名所回って、テロップに名称が出て、「こんなとこ行きました!」と。
ストーリーもあまり深みがなくて、ボクにはピンと来ませんでしたが、
おそらく原作やドラマのファンはそんなこと感じずに楽しめるのかもしれませんね。
ごめんなさい。☆2つ。
「ホタルノヒカリ」公式サイト



「道―白磁の人―」は、日本と韓国を舞台にしたヒューマンストーリー。

日韓併合から4年後の大正3年、朝鮮総督府の林業試験所に、
日本からひとりの青年がやってきます。
浅川巧、23歳。
乱伐により木がなくなってしまった朝鮮の山に緑を戻したい。
巧は純粋にそう考えて赴任したのですが、内情は別。
国力を上げるための資材を作る。それが林業試験所の目的だったのです。
そこには朝鮮人労働者もたくさんいて、巧はチョンリムという青年と仲良くなります。
日本人が日本語を一方的に強要するのはおかしいと、
朝鮮語を教えてもらい、朝鮮の文化を知ろうと努める巧。
ところが独立運動が激化。日本人との衝突も激しさを増していったのでした…。

いわば"信念"の物語。
サブタイトルにある「白磁の人」とは、巧がまるで白磁のような人だということ。
白磁は朝鮮古来の焼き物で、芸術品としても十分美しいのに、
普通に人々の生活の中で使われている素朴な陶器。
その無垢の白さと溶け込みやすい巧の性格を白磁に見立てたのです。
とは言っても、支配する国とされる国。そうそううまくはいきません。
そんな中でも流されずに自分を貫く巧と、巧の後妻に入る咲の強さと。
特に女性の存在はやっぱりデカいなと思わずにはいられない映画でした(笑)。☆3つ。
「道―白磁の人―」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.5.30
「ケイト・レディが完璧な理由(パーフェクトなワケ)」☆☆☆
「ジェーン・エア」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

来週はまとめて映画をドッとご紹介。
その分、再来週と3週先に紹介できる映画がなくなってしまいそうです…(苦笑)。
映画を見なくなった訳でも、コラムを辞めた訳じゃないので、ご安心下さい!
さ、今週は2本です!


「ケイト・レディが完璧な理由」は、
「プラダを着た悪魔」の脚本家が手掛けたコメディドラマ。

キャリアウーマンのケイト・レディはふたりの子供の母。
夫のリチャードとはうまくいっているけれど、そこはリチャードの理解があってこそ。
出張が多く、幼い子供を置いて、家を空けることがしばしばだったのです。
投資会社のファンドマネージャーとして働くケイトは、
新しい投資ファンドの提案がNY本社の責任者に認められます。
しかしそれは同時に、今まで以上に家族に犠牲を強いるということ。
タイミングの悪いことに、建築士として独立したリチャードに、独立後初の大仕事が舞い込みます。
果たしてケイトはこの難局をどう切り抜けるのでしょうか…。

主演は「セックス・アンド・ザ・シティ」のサラ・ジェシカ・パーカー。
個の考え方が日本とアメリカではちょっと違うので、意外と共感を抱くのに難しい部分があるかも。
昔は「仕事と家庭とどっちが大事なのっ」と、妻が夫に詰め寄ったもの。
「どっちも大切なのに…」と夫はタジタジ。
でも今はそのセリフまで逆なんですね。時代は変わったんだなぁ(笑)。
でも嫌なことを無理矢理やらされるのと違って、大事なもののためならいくらでも頑張れるもの。
その大事なものを見つけることが、人生の肝のような気がします。☆3つ。
「ケイト・レディが完璧な理由」公式サイト


「ジェーン・エア」は、1847年に出版されたイギリス文学の映画化。

幼い頃に両親を亡くしたジェーン・エア。
伯父に引き取られるもその家族に酷くいじめられ、過酷な環境の寄宿学校に預けられます。
卒業後、母校で教師を務めたのち、名家の家庭教師の職を掴みます。
主人のロチェスターは気難しく、独特の個性の持ち主。
ところが、何事にも自分を曲げずまっすぐなジェーンに心惹かれます。
ジェーンもロチェスターの深い感性に魅せられていくのです。
身分の違いを越えて、ジェーンに求婚するロチェスター。
しかし、彼には恐ろしい秘密があったのです…。

女性が自立を目指す、女性の側から愛を告白するなど、
今の時代では当たり前の行動も、当時のイギリスでは考えられないこと。
今から170年近く前の小説が映画化された背景には、
ジェーンの生き様が現代でも輝きを失せない、というより、
今だからこそ輝きを放つと考えられたから。
作者はシャーロット・ブロンテという女性です。革新的な考えの持ち主だったのでしょう。
サスペンスの要素も持ちながら、物語は進んでいきます。
ロチェスターの持つ秘密とは?
ふたりの心の奥底にあるのは駆け引きか、打算か、それとも真実の愛か?
答えを最後にしっかり提示してくれるのがイギリス映画のいいところ。
意外な結末に衝撃を受けると思いますョ。☆3つ。
「ジェーン・エア」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2012.5.25
「ヴィダル・サスーン」☆☆☆
「GIRL」☆☆☆☆
「ミッドナイトFM」☆☆☆☆
「私が、生きる肌」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

やっぱり映画はいいなぁと。
それを感じたのは疲れてる中で見た試写で、ホロッときた時。
いろんな負の要素がその中に溶け出た気がします。
あなたも疲れたなぁと感じたら、映画館に足を運んでみてはいかがですか?
さ、今週は4本です!



「ヴィダル・サスーン」は、今年5月9日に亡くなった、
美容界のカリスマのドキュメンタリー。

1928年、イギリスに生まれ、ユダヤ教会の孤児院で育ったヴィダル・サスーン。
14歳で美容の世界に入り、26歳で自分のサロンを開きます。
髪を盛り、オカマを被り、スプレーで固めるのがこれまでのスタイルだったのを、
洗ったままで何もせずに出掛けることのできる"ウォッシュ&ゴー"というスタイリングを開発。
窮屈なヘアスタイルから、自由で闊達な髪型を提案したことで、あっという間にサロンは大成功。
1963年に女優のナンシー・クワンの髪を切り、
その時のグラデーションボブがVOGUEの表紙になったことが、
彼の名を世界中に轟かせたのです。
64年に発表したファイブ・ポイント・カットを始め、とにかく斬新なヘアスタイルを発表。
「ハサミひとつで世界を変えた男」と称されています。
年を重ねてもオシャレで、素敵な笑顔ですが、その一方で、
幼少期は貧困とユダヤ人排斥運動に悩み、美容に関しては妥協を許さず、
厳しい人であったことがインタビューなどから見てとれます。
ここまで大きくなった人の人生から何かヒントをもらおうと思っても、
おそらく答えは"並々ならぬ努力"ということになるのかもしれません。
それでも環境を言い訳にできないことは、きっとこの映画が教えてくれるはず。
努力と信念です。急逝に合掌。☆3つ。
「ヴィダル・サスーン」公式サイト



「GIRL」は、香里奈を中心とした女性4人のストーリー。

29歳独身の由紀子は、大手広告代理店勤務。
夢見がちな"GIRL"の彼女は、30歳を前に何もできていない自分に焦りと苛立ちを感じます。
34歳で格差婚の聖子。大手不動産会社に勤め、管理職に抜擢されるも部下の男性と衝突。
34歳独身の容子は、老舗文具メーカー勤務。
イケメン新入社員に胸をときめかせるものの、「今さら」とその感情を抑え込みます。
36歳、シングルマザーの孝子は、自動車メーカー勤務。
自分の立場を言い訳にしたくないと、職場で、ひとり息子の前で、頑張り過ぎの毎日。
そんな4人はちょいちょい女子会を開く仲良しグループ。
悩み多き年代の女性たちは、それぞれにどんな明日を選択するのでしょうか…。

原作は奥田英朗の同名小説。
実はこの人、女性なんじゃないかと噂になるほど、
うまく女性心理を描いていると言われ、大ヒットとなった小説です。
確かにそうなんですが、
これ、男性に置き換えても結構そのまま当てはまるんですョ。
現実逃避で夢見がちな男。うまく部下をコントロールできない上司。
恋愛下手で未だ独身の中年男性。仕事も家庭も頑張るシングルファーザー。
ね、いるでしょ?
男女の細かい差こそあれ、人間だから、基本的には同じなんですョ。
根底に流れてるのは"一生懸命生きる"ってこと。
男女を問わず自己投影できる作品です。
香里奈の他に、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏。
男性陣も豪華キャストです。さぁ、あなたは誰に自分をだぶらせますか?☆4つ。
「GIRL」公式サイト


「ミッドナイトFM」は、韓国のサイコ・スリラー。

人気の女子アナ、ソニョンがパーソナリティを務める深夜のラジオ番組『真夜中の映画音楽室』。
娘の失語症を治すため、番組を降りてアメリカ行きを決意したソニョンにとって、今日が最後のOA。
いつものようにマイペースで始まった最終回の放送でしたが、
ソニョンの携帯に掛かってきた1本の電話で事態は一変します。
電話の主は見知らぬ男。男はソニョンの家に侵入し、ソニョンの娘や妹たちを監禁。
その映画を送りつけてきたのでした。
要求はただひとつ。
「俺の選曲通りに曲をかけろ。言うことを聞かなければ家族の命は無い」。
男の狙いはいったい何なのか。恐怖の生放送が始まったのです…。
いやぁ、面白かったですョ。
ボクもラジオのDJですから、言葉の重さは重々わかってるつもりですが、
思わぬ捉え方をされることがあるのも事実。
ソニョンのいけないところは裏表があるところかな。
出て来る言葉より、大事なのはその発信元たる心の在りようというのかな。
ソニョンの言葉は曲解されても仕方ないかも。
ボクも気をつけないと。学ぶところが多かったかな。
それはさておき(笑)、サスペンススリラーとしては実によくできてました!
次から次へと襲いかかる、手に汗握るまさかの展開。
夏先取りで、一足早くヒヤッとしたい人にはお勧めです!☆4つ!
「ミッドナイトFM」公式サイト


「私が、生きる肌」は、アントニオ・バンデラス主演作。

天才形成外科医のロベルは、人口皮膚を開発中。
"完璧な肌"を創るために、何度も何度も実験を繰り返すロベル。
実験台としてべッドに横たわるのは妻?
なぜ監禁状態で?
モニターで監視してるのは精神を病んでいるから?
その謎が徐々に解けていくのです…。

ほとんどあらすじを書かないのは、言っちゃうと全然面白くなくなっちゃうから(笑)。
「そういうことだったのか…」という気づきを楽しむ映画ですからね。
意外と仰天の種明かしですョ。期待してOKです!☆3つ。
「私が、生きる肌」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.5.16
「ザ・マペッツ」☆☆☆
「ファミリー・ツリー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週は比較的時間が作れそう。積極的に試写に足を運ぼうと思います!
今週は2本です!



「ザ・マペッツ」は、ディズニーの"アトラクション・ムービー"。

ウォルターとゲイリーは仲良し兄弟。
でもウォルターはマペット、ゲイリーは人間です。
ゲイリーには結婚秒読みの恋人のメアリーがいて、LAに旅行を企画中。
メアリーもウォルターのことを決して嫌いじゃないのですが、いっつもゲイリーと一緒。
今度の旅行にも一緒に来ると知って、ちょっとガッカリ。
一方のウォルターは大喜び。なぜなら"マペットの聖地"マペット・スタジオに行けるから。
ところがマペット・スタジオは、時代の波に押され、廃墟のようになっていたのです。
そのマペット・スタジオを狙う男がひとり。
石油王のリッチマンは、スタジオを救うふりをして土地を買収。
ここを潰して地下に眠る石油を採掘しようとしていたのです。
リッチマンの悪だくみを知ったウォルターたちは、
引退したカリスマ・マペット、カエルのカーミットを探し出して事情を説明します。
スタジオを救うには、昔のメンバーを集めてショーを見せるしかない。
「無理だ」と腰の重いカーミットを懸命に口説くウォルターたち。
遂にカーミットが動きました。必死のメンバー探しが始まったのです…。

マペットとはマリオネット+パペット(操り人形+指人形)の造語。
70年代半ばにカーミットたちが主演する「マペット・ショー」が始まると、
世界100ケ国以上でOAされる人気番組になりました。
それをリアルタイムで見ていた人たちにはたまらないんでしょうね。
意外な大物俳優や女優がゲストで登場。
TV番組を知らない人でも十分楽しめる作品ですョ。
昔の映画「ギャラクシー・クエスト」で図らずもホロリとしてしまった人は、
似たような感覚でぐっときちゃうかも?☆3つ。
「ザ・マペッツ」公式サイト



「ファミリー・ツリー」は、ジョージ・クルーニー主演作。

オアフ島で弁護士として暮らしていたマット・キング。
カメハメハ大王の血を引く彼は、
亡き父からの「つましく暮らせ」という教えをしっかり守っていました。
彼には妻とふたりの娘がいたのですが、ある日のこと、
妻がボートレースで事故に遭い、意識不明の昏睡状態になってしまいます。
仕事優先の生活だったけど、これからはいい父親になろう。
元気になったら妻に贅沢をさせてあげよう。
そう考えるマットでしたが、現実は厳しく。
回復の傾向がまったく見えない中、長女が衝撃の告白をします。
「ママは浮気してたんだよ」。
共通の友人に聞くと、浮気の事実を知らなかったのはマットだけだったのです…。

実はマットにはもうひとつの悩みがありました。
それは先祖代々の土地を売るか否か。
売れば巨万の富が入るとあって、親戚一同はみな売れと焚き付けます。
自分の代で手放していいものか、再開発で美しい自然を失っていいのか、マットは悩むんですね。
でも問題を解決していく過程で、家族の絆が少しずつ強いものになっていくんですね。
ハワイというロケーションが救いにもなるヒューマン・ドラマ。
ある意味、ヒューマン・コメディといってもいい作品です。
ものすごくドラマチックな展開こそないけれど、なんとなくホッとする1本だと思います。☆3つ。
「ファミリー・ツリー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.5.9
「恋と愛の測り方」☆☆☆
「幸せの教室」☆☆☆☆
「ロボット」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写の本数は、今年は平均月7本。
ここで紹介するまではプレス(資料)を決まった場所に積んでおくのですが、
これが少なくなっていくと不安で、不安で(笑)。
今週は3部が一気になくなります(笑)。時間作って見に行かなくちゃ。
さ、今週は3本です!



「恋と愛の測り方」は、大人の揺れる恋の物語。

ジョアンナとマイケルは結婚3年目の共働きの夫婦。
マイケルの仕事関係のパーティーに呼ばれたジョアンナは、
マイケルから同僚のローラを紹介されます。
美人のローラと夫の態度を見たジョアンナにはピンと来るものがありました。
「ふたりの間には何かある…」。
帰宅後、マイケルを問い詰めるジョアンナ。そんなことがあるはずないと否定するマイケル。
しかし翌日、マイケルはローラと一緒にフィラデルフィアに出張だと言います。
疑念と不安でいっぱいになるジョアンナ。
旅立つ夫を見送ったジョアンナの元に、思いがけない人物が現れます。
それは元恋人のアレックスでした。
アレックスとは嫌いになって別れた訳じゃない。
それどころか、まだ彼のことを愛している自分に気づくジョアンナ。
食事に誘われ、夫の留守に心が揺れます。
互いに気になる異性がいる。果たして夫婦がそれぞれにとる行動とは…。

恋人がいて、配偶者がいて、そんな中、もし目の前に恋に堕ちそうな異性が現れたら?
ボクは自分が浮気されるのが嫌だから、
「自分のしていることは相手もしてると思え」の考えから浮気はしないんですよね。
信じるって「目をつぶる」のとはちょっと違うじゃないですか。
でも、疑いのタネに気付いてしまったら、
それをあえて見過ごすのか、納得するまで問い詰めるのか。
それは性格の違いで行動が変わるんでしょうね。
男性と女性で感想の違う映画だと思います。
ラストの小道具に後日談を想像しますが、
このあとのストーリーも、見る側の恋愛観で変わるはず。
可愛いタイトルがついてますが、いやいや、
意外とドロドロの方なラブストーリーだと思いますョ(笑)。☆3つ。
「恋と愛の測り方」公式サイト


「幸せの教室」は、ジュリア・ロバーツとトム・ハンクス主演作。

ラリーはスーパーに勤める独身男性。
優秀販売員として何度も表彰されているにもかかわらず、何とリストラにあってしまいます。
理由は「大学を出ていないからこれ以上の昇進は無理だ」ということ。
傷心の中、次の就職口を探そうにも、中年男性にそう簡単に働き口はありません。
知人のアドバイスで大学に入ることにしたラリーは、
人心をつかむための"スピーチ"の講義を専攻します。
ところが女性教授のメルセデスはあまりにも威圧的で無愛想。
実は彼女、ダメ夫のことで日々悩んでいたのです。
キャンパスライフは想像以上に楽しく、ラリーは別の授業で知り合った若いタリアと意気投合。
オシャレなタリアが、ラリーを今風のオジサマに変えていくんですね。
そんなある日、ラリーはメルセデスの隠れた素顔を垣間見ます。
実は心を痛めた愛おしい女性であることを。
みんな、今の人生を変えたがっていたのです…。

この映画は、リセットとリスタートの映画。
人はいくつになっても、どんな状況からでも、
自らの意思で人生を変えられるんだってことを教えてくれます。
ちょっと前に思ったことがあるんですよね。
ファストフードとかでバイトしてるおじさんとかって、意外と楽しいんじゃないのかなって(笑)。
「犬も歩けば棒に当たる」の裏返しは、「犬は歩かなければ棒には当たらない」です。
積極的に行動して人生楽しまないと。生涯青春ですよっ、ご同輩!(笑)。☆4つ。
「幸せの教室」公式サイト


「ロボット」は、インドの近未来SFアクション映画。

ロボット工学のバシー博士が開発した2足歩行ロボットのチッティは、
人工知能を持つ驚きのロボットでした。
博士にそっくりの容姿を持つチッティ。
ところが善悪の判断がないとのことで、国の評価委員会は開発を認めません。
そのため博士は人間の複雑な感情を理解できるよう、改良を加えます。
バシー博士には恋人のサナがいたのですが、研究が優先でサナのことはそっちのけ。
その不満をチッティにこぼすサナ。
すると、人の感情を持ったチッティはサナに恋心を抱いてしまいます。
様々な不具合が重なって、仕方なくチッティを破壊するバシー博士。
ところがその残骸を狙っていた人物がいたのです。
教え子であるバシー博士に先を越されたことを面白く思っていなかったボラ教授です。
ボラ教授はチッティに戦闘用チップを埋め込み、
好戦的な新型チッティを作ってしまったのです…。

インド映画ですから、歌って踊って、金銀キラキラのそれはそれはド派手な映画。
カーチェイスで車がヘコんでも、次のシーンでは元に戻っていたり。
そのあたりは気にしない、気にしない(笑)。
ただ、正直139分もこれを見せられるとちょっと疲れますが(苦笑)、
インド映画マニアにはこのテイストがたまらないんだと思います。
マニアではないボクらには、
サナ役のアイシャワリヤー・ラーイが本当に美しいのが救いかな。☆3つ。
「ロボット」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.5.2
「宇宙兄弟」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GW、どこに行っても人、人、人。心身共にちょっと休みたい時に映画はいいですョ。
意外と穴場の劇場があって、同じ作品でもゆったりと見られるところがあったりもします。
探してみて下さい!
さ、今週は1本です!



「宇宙兄弟」は、大人気コミックの映画化。

宇宙大好き少年のムッタとヒビトの仲良し兄弟。
夜になると団地の裏に飛んで行っては探検をし、望遠鏡で夜空を見るのが日課でした。
ある夜、ふたりはUFOを目撃するんですね。
その時、兄弟は約束をします。
「ふたりで一緒に宇宙飛行士になろう」。
大人になって、弟ヒビトは約束通り、宇宙飛行士に。
今まさに月に向かって旅立とうとしており、世界中が熱い視線を送っていました。
一方、兄ムッタは会社員に。車の設計をしていたのですが、上司とぶつかってクビ。
無職になってしまったのです。
そんなムッタの元にJAXAから『宇宙飛行士書類選考通過』の手紙が届きます。
約束を忘れているかのような兄に替わって、ヒビトが勝手に応募していたんですね。
幼い頃を思い出し、一念発起するムッタ。
最終選考に残ったのは6名。そこから宇宙に行けるのは多くて2名。
厳しい選考試験の最中に、月面に辿り着いたヒビトが消息不明になったとの報せが入ったのです…。

小山宙哉の大ヒットコミック。
漫画は週刊モーニングに連載され、この春から日テレ系でアニメもOA。その実写版です。
夢と人情と兄弟愛と。
無くなってしまったとは言わないけど、
随分と形を変えてしまったはずのこれらの要素をうまく取り入れながら、物語は進みます。
宇宙が大好きな兄弟は、何回も何回もJAXAの見学ツアーに参加する。
案内役のおねーさんの解説をすべて覚えてしまったのを微笑ましく見つめるJAXAの職員たち。
この流れが、ムッタが夢を叶えるのに大きな影響を及ぼすんですね。
よく言うところの「神様は見てる」です。この場合は人だけど(笑)。
ひとつのことに邁進している姿をきっと誰かが見ててくれる。それはいいことも、悪いことも。
そう思いながら日々を過ごすことの大切さを教えてくれる1本でもあります。
ボクがうるっと来たのは、たぶんみんなとは違うシーンだと思います(笑)。
今の話を頭の片隅に置いて、よかったら探してみて下さい!☆4つ。
「宇宙兄弟」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.4.25
「孤島の王」☆☆☆
「テルマエ・ロマエ」☆☆☆☆☆
「ブライズメイズ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、公開ギリギリの最終試写に駆け込むことが多く。ややもすると見逃してしまいます…。
「テルマエ・ロマエ」は、かろうじてセーフ(笑)。見といてよかったぁ。面白かったですョ。
さ、今週は3本です!



「孤島の王」は、ノルウェーの実話に基づく物語。

1915年のノルウェー。
当時、この国のバストイ島には非行少年の矯正施設がありました。
そこに新たに送られて来たエーリングは"超"のつく問題児。
間もなく退所予定の優等生、オーラヴに教育係を任せますが手に負えず、
暴力はふるうは、脱走は企てるは。
その都度、オーラヴも連帯責任で罰せられます。
反目し合うふたりでしたが、過酷すぎる環境の中、
次第に絆が深まるエーリングとオーラヴ。
実は他の少年たちの中にも不満の要素が溜まっており、
そのパワーは爆発寸前だったのです…。

院長や寮長によるあまりに不当な体罰。中には性的暴行を受ける少年もいて、
自らの命を断ったのにもかかわらず、事件は闇に葬られて。
そんな過去が100年ほど前にあったのかと、
おそらく自国の人には衝撃なのでしょうね。
ただ、ボクら日本人にそこまでのものが伝わるかというと、
やはりそれは異国の話となってしまう内容かもしれません。 この少年たちが社会に復帰した時、更正するどころか、
逆に世の中を憎まないか、心配になってしまいました。☆3つ。
「孤島の王」公式サイト



「テルマエ・ロマエ」は、
2010年の"マンガ大賞"を受賞したヤマザキマリの人気コミックの実写化。

古代ローマ帝国。
ローマの人は風呂を愛し、街のいたるところに公衆浴場がありました。
その浴場の設計技師だったルシウスは、
日々変化していく公衆浴場の在り方に失望していました。
しかし、時代は斬新な風呂を望んでいると。
そしてルシウスは職を失うことになってしまいます。
公衆浴場の湯船で悩んでいると、
突然ルシウスは現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまうんですね。
戸惑いながらも素晴らしい風呂文化に感動するルシウス。
ひょんなきっかけで再び古代ローマに戻ったルシウスは、
見て来たものを活かし、今までになかった公衆浴場を作り、喝采を浴びることに。
すると暴君の名高い皇帝ハドリアヌスに呼ばれ、皇帝のための風呂を依頼されます。
アイデアに詰まっていると、また日本にタイムスリップ。
そこで得た知識が、古代ローマ帝国を、また世界の歴史を守ることになろうとは、
まだルシウスも気付いていなかったのです…。

いやぁバカバカしいけど面白かったですョ。
阿部ちゃん、お尻丸出しの大熱演でした(笑)。
マンガ家志望のさびれた温泉宿の娘、真実のいるところになぜか現れるルシウス。
時空を超えて、恋が芽生えるのもタイムスリップものならでは。
イタリアロケでイタリア人もたくさんいますが、主要なキャストは日本人な訳で。
まぁとにかく、濃い顔の人が集まりました(笑)。
ちなみに日本人は"平たい顔族"ですから。
ぷっと吹き出す笑いが満載の楽しい1本。オススメです!☆5つ!
「テルマエ・ロマエ」公式サイト



「ブライズメイズ」は、30代独身女性がモチーフのドタバタコメディ。

30代で独身のアニー。恋人に捨てられ、開いた手作りケーキの店は潰れ、
ただ毎日を過ごす。そんな生活を送っていました。
そんなアニーの心の支えは、幼なじみで親友のリリアン。
ところがそのリリアンが結婚すると言うではありませんか。
花嫁介添え人(ブライズメイド)のまとめ役を頼まれ、
うれしいような、哀しいような気持ちになるアニー。
式の打ち合わせに行くと、唯一自分が親友だと思っていたのに、
リリアンには新たにできたセレブの友達ヘレンが。
このヘレンが才色兼備の素敵な女性で、
嫉妬心からアニーは何事においても張り合ってしまうんですね。
他にも個性的なメンバーが集まったブライズメイドたち。
果たしてリリアンの結婚式はうまくいくのでしょうか…。

このアニーという主人公が"痛い"女性で。
セックスフレンドの男がいるのですが、いいように抱かれるだけの"都合のいい女"。
それでもその男性にわずかな可能性を抱いていて。そんなの無いのにね。
アニーの行動があらゆる場面で非常識過ぎるから、
それがドタバタだといえばそうかもしれないけど、
笑うというより、眉をひそめる感じになっちゃうんですよねぇ。
ボクが個人的に嫌いなパターン(笑)。
なので評価は低いですが、面白い人には面白いと思いますョ。
または鏡のように自分を映し出す女性ももしかしたらいるかも?☆2つ。
「ブライズメイズ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.4.18
「僕等がいた 後篇」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

家族みんなが映画好きというファミリーがいて、同じ作品を別々に見ることも多いとか。
でもご主人は絶対に感想を家族と話し合ったりしないそう。
なぜなら、「家庭争議のもとになる」から(笑)。
女性の多いご家庭なので、男女の考え方の違いは大きいそう。
違うと思ってもぐっとこらえるとか。それが懸命…なのかな(笑)。
さ、今週は1本です。



「僕等がいた 後篇」は、人気少女コミックの映画化。その後篇。

東京と北海道で離れ離れになった七美と矢野。
あれから5年。
七美は東京で就活に苦戦する女子大生になっていました。
矢野とはある時から連絡が取れなくなり、消息不明に。
失意の七美を支えていたのは、矢野の親友で、ずっと七美に思いを寄せていた竹内でした。
ふたりの仲は徐々に親密なものに。それでも七美の心の中には矢野がいたのです。
念願の出版社に就職し、仕事に没頭する七美に竹内がプロポーズ。
そんな時、七美は矢野が名字を変えて働いていることを知るのです…。

前篇が青春純愛映画だったのに比べると、様相は一変。
恋愛サスペンス的な要素すら呈してきます。
手に汗握るような展開に、かなり引き込まれると思いますョ。
無理やり結びついた感がないのがいいというか、
縁があるとこうして繋がるんだなぁって感じ?
ちょっと竹内が可哀想だけど、
竹内に自身を重ね合わせる男性も多いってことを、女性は知っておくべきだぞっ(笑)。
前篇と後篇でこれだけ色が違って、でも整合性はしっかりあるんだから、
よくできてると思いますョ。☆4つ。
「僕等がいた 後篇」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.4.11
「ジョン・カーター」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ボクの中高の同級生、篠原哲雄監督からメールが届きました。
一部をご紹介しましょう。
『下北沢のトリウッドにて開かれる「篠原哲雄ショートムービーパーティー」は、
ここ二三年やっている俳優のワークショップから作品を作ってきたものを、
ひとまずの集大成としてお届けするプログラムです。
昨年の311に絡めて依頼のあった仙台短編映画祭に出品した「柔らかい土」や、
そこからの発想をさらに広げたコメディ「深夜裁判」。
二年前にアプレのワークショップ作品として発表した
「下校するにはまだ早い」の三本と、プラスαのプログラムです。
柔らかい土は仙台短編映画祭が311にまつわる被災地への応援という意味合いで
3分11秒の映画を撮って欲しいと関係者に依頼。
41人の監督がそれに応え出来上がった「明日」という映画の一本です。
僕はGMB というプロダクションの主宰するワークショップで俳優を集め、
そこに集まった俳優たちともう一本作ってしまいました。
俳優諸氏やスタッフたちの意気込みのかたまり、それが異色な55分の「深夜裁判」。
まだ函館の映画祭でしか上映されていないレアな作品です。
上映は4月21日から5月3日で、毎日16時と20時からな二回上映。
インディペンデントな試みの作品を見に是非、下北沢まで足をお運びください!』
興味のある方は是非!
さ、今週は1本です!



「ジョン・カーター」は、ウォルト・ディズニー生誕110周年記念作品。

1868年、アメリカ。
南北戦争で数多くの武勇を挙げたジョン・カーター。
しかし彼の心の中に残った傷は大きく、二度と戦争にはかかわりたくないと誓います。
ところが軍隊が彼を放っておくはずもなく、騎兵隊に捕らえられるも脱獄。
逃げ込んだ洞窟の中には不思議な模様が彫られていて、
不気味な男が突然襲いかかってきたのです。
その男を倒したカーターでしたが、男の唱えた呪文と男が手にしていた何かに触れたため、
カーターは未知なる惑星バルスームへと瞬間移動してしまうのでした…。

と、序章の"序"ですが、2時間13分の大作。
そこから様々なストーリーが繰り広げられます。
バルスームは地球とは重力が違うので、カーターの運動能力は突出してるんですね。
そこに生命体がいて、人間と同じ風貌の赤色人種、
ヘリウムの民とゾダンガの民が2つの王国を作り、互いに反目している。
他にもサーク族なる牙と4本の腕を持つ部族がいて、
さらに宇宙で最も進化したサーン族がこの対立に乗じて、星を乗っとろうと企てています。
そこにキレイな王女の存在も。恋心も芽生え、人間愛ならぬ宇宙人愛的な話にもなると。
そんな壮大なストーリーです。
ただ、すごく目新しい何かがあるかというと、
残念ながらボクには見つけることができませんでした。
ディズニーの特撮ものですから、楽しめることは楽しめます。
この手のSFスペクタクルが好きな人は是非!☆3つ。
「ジョン・カーター」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.4.5
「アーティスト」☆☆☆
「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」
(満点は☆☆☆☆☆)

今回紹介する「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」は、
☆を付けるべき作品ではありません。
内容は後述しますが、これが放射能の現実なのかと愕然とします。
今の日本に生きるボクらには、見ておく必要があるドキュメンタリー作品だと思います。
今週は2本です!



「アーティスト」は、今年度アカデミー賞で作品賞他5部門を獲得したモノクロ&サイレントムービー。

1927年のハリウッド。
映画が未だサイレントだった頃、人気の頂点にいた俳優のジョージ・ヴァレンティン。
舞台挨拶の日、ジョージを待つファンで会場は大混乱。
ポンと突き飛ばされる形でジョージの頬にキスをした女性がひとり。
女優志望のペピー・ミラーでした。
後日、ジョージの作品のエキストラのオーディションを受けたペピーは、
ジョージから「目立つには特徴がないと」と、
アイライナーで唇の上にほくろを描くようアドバイスを受けます。
するとそれからペピーは大ブレイク。一躍、人気女優の座を獲得したのです。
時代は無声映画からセリフのあるトーキー映画へ。
それでもサイレントにこだわるジョージはすっかり過去の人に。
身も心もボロボロになったジョージを陰からそっと支えたのは、他でもないペピーだったのです…。

こだわりやプライドと悪い意味での執着は表裏一体。
人はなかなか現実を認められないものです。
そんな悲哀が描かれている一方で、
受けた恩と芽生えた愛をしっかり感じている女性がひとり。
いいなぁ、ジョージがうらやましい(笑)。
何かひとつ欠けていると、個性的な面白さが出るのは世の常で。
例えばサッカーは手が使えない。ラグビーは前に進むのにパスは後ろにしか投げられない。
この映画はセリフがないから、このシンプルなストーリーでいいんです。
あとはサイレント映画に慣れていない分、通にはウケて賞をたくさんもらったけれど、
一般のファンの評価がどうかでしょうね。☆3つ。
「アーティスト」公式サイト


「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」は、
広島の原爆で内部被曝をしたひとりの医師のドキュメンタリー作品。

95歳で今も医者として被曝者治療にあたり、
核廃絶運動に献身し、講演会も精力的にこなす肥田舜太郎医師。
広島に原子爆弾が投下された時に現地にいて、
その時の様子を語れる最後の医師でもあります。
当時、直接被曝してなかった人も急に体がダルくなったりの被害が出た。
それが"低レベル放射能"によるものであるということがわかるまでに、
随分と時間がかかったのでした。
原発は通常の運転時でさえ放射能が漏れていて、
その地域の癌の発症率が高いことがアメリカではわかっていると。
そのエリアがどれくらいか、原発を中心にコンパスでグルッと円を描くと、
広大なアメリカならまだしも、狭い国土にたくさん原発のある日本では、
すべてが入ってしまうと言います。
もはや日本で放射能の影響を受けない場所はないと。
特に内部被曝。食べ物しかり、飲み物しかり。
じゃどうしたらいいか、まずは原発を止めなくてはならないと。
そして、子や孫だけじゃない、
ひ孫や夜叉孫の代にいい環境を残してやらなくてはいけないんだと先生は語ります。同感!
人類が地球に誕生した時には、紫外線と自然放射能と闘っていたそう。
生物として、それらを克服してきた遺伝子がボクらには組み込まれているんです。
じゃ、どうすればいい?ヒトの原点に戻れと先生は語ります。
それは同時上映の「311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より」という2012年の短い作品の中で。
ちなみに本編は2006年の作品です。
福島の事故の恐ろしさを予言していたかのよう。
核に対する考え方の指針になることは間違いありません。
「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.3.29
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

午後2回目の試写会というのは大体15時30分開始というのが通常なんですが、
先日、15時開始という試写がありまして。
席がなくて無駄足になるのが嫌なボクは、いつも開場の30分前には開場入り。
この日もてっきり15時30分開始だと思っていたら、担当者がスクリーンの前で前説をしてて。
「おやっ、何しゃべってんのかな」と思ったら、いきなり場内が暗転に。すぐさま上映が始まりました。
いやいや余裕を持って行動してると、こんないいこともあるんだなと。
その後、遅れて入ってくる人の多いこと。先入観は捨てて、確かめる作業の大切さも学んだ気がします。
さ、今週は1本です!



「ヘルプ 心がつなぐストーリー」は、
未だ人種差別が残っていた時代のアメリカ南部の物語。

1960年代前半のアメリカ南部。
スキーターは大学を卒業し、作家を志す白人女性。地元の新聞社に就職をし、
結婚よりもキャリアを選んだ彼女は、周りの友人たちとは一線を画した存在でした。
初仕事が家事についてのコラムの代筆。
知識のないスキーターは実家のメイドで、
育ての親ともいえるコンスタンティンにアドバイスをもらおうと実家に戻ります。
ところがそこにコンスタンティンの姿はなかったのです。
問い詰めても口ごもる家族たち。
友人の雇うメイドのエイビリーンに話を聞いているうちに、
スキーターは自分も含む、白人の上流社会への疑問が涌いてきたのです。
会社の上司に「メイドたちの実態を伝えたい」と話すと、
「きちんと証言が取れるなら本の出版もできる」と言われます。
しかし、雇い主の報復を怖がって、スキーターに協力するメイドは皆無に等しかったのです。
ところが、エイビリーンの仲間のミニーが、雇い主のあまりに酷い仕打ちに遂に我慢できなくなり、
エイビリーンにそれを話したところ、エイビリーンも怒り心頭。
ふたりはスキーターへの協力を決意します。
他のメイド仲間にも声を掛け、スキーターはこっそりと多くの証言を積み重ねていきます。
そして1冊の本『ヘルプ』が出版されたのです…。

テーマは決して軽くないのですが、それを笑いと涙で包んだハートウォーミングなストーリー。
意地悪なスキーターの友達や、白人女性でも出身が上流階級じゃないと仲間外れにされる女性もいて。
勧善懲悪。
日本の時代劇のような"スキッと感"があります(笑)。
主流に逆らうって大変。
でも胸を張って貫き通す"志"の大切さと、一方で黒人女性たちにおいても、
自分たちが変わるんだって思うこと、
自分たちでぶち壊さなきゃって行動することの大切さを教えてくれています。
あなたにも抱えている問題はありませんか?
信念を持って行動したいですねっ。☆4つ。
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.3.15
「種まく旅人〜みのりの茶〜」☆☆☆
「僕等がいた 前篇」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

花粉症の人にはキツい季節になりましたね。
試写室でもくしゃみが聞こえます。
自身は対策を講じても、
みんなが服に着いた花粉をはたいて試写室に入るとかはしないですもんね。辛そう…。
そのうち"花粉マナー"なんてものができたりして。お大事にどうぞ!
さ、今週は2本です!



「種まく旅人〜みのりの茶〜」は、
田舎暮らしや農業の良さにスポットライトを当てた作品。

洋服のデザイン会社をリストラされてしまったみのり。
再就職もままならず気分転換にと、大分に住み、
夢だった自然食カフェを開いた旧友の元を訪れます。
そのついでに立ち寄った祖父・修造の家。
久々の再会も早々に立ち去ろうとしたその時、突然の訪問者が現れます。
修造が"金ちゃん"と呼ぶこの男、全国各地の農家を回っては畑仕事を手伝い、
酒を酌み交わす変わり者。
しかし、その正体は農水省の官房企画官だったのです。
「もっと大局から農業を見ろ」と、省が開発した農薬普及の命を受け、
まず送り込まれたのが大分だったのです。
修造はお茶を作っています。そのこだわりは、無農薬の有機栽培。
手間も費用もかかるけど、安全で美味しいお茶ができるからと、
亡き祖母の思いも引き継いだお茶作り。
金ちゃんも任務に反するけれど、実は大賛成。
ところが次の日の朝、修造は心臓発作で倒れてしまいます。
茶畑の面倒を見られるのはみのりだけ。
しかし、みのりはお茶のことなんてまったく知りません。
それどころか、土さえ触ったことがないのですから。
役所を抜けて手伝ってくれる金ちゃんと、農業素人のみのりの、
悪戦苦闘の日々が始まったのでした…。

"隠密の金ちゃん"なんていうと、肩には桜の入れ墨がありそうですよね(笑)。
もちろん、みのりは金ちゃんの正体は知りません。
都会暮らしではわからなかった、真の豊さを知るみのり。
彼女の中で人生の価値観も変わっていくのです。
一生懸命やっても、ダメなこともある。
でも、挫けずにもう一度、もう一度とチャレンジすれば、
生き物としての農作物たちは、ちゃんと応えてくれる。
もしかしたら農業の魅力って、そんなところにあるんじゃないかなと。
まずは大分と福岡で3月3日先行ロードショー。
ほっこりできる1本ですョ。☆3つ。
「種まく旅人〜みのりの茶〜」公式サイト



「僕等がいた 前篇」は、大人気少女コミックの映画化。

北海道・釧路の、とある高校。
2年生になった高橋七美は、学校で一番の人気男子・矢野元晴と出会います。
顔も頭も良くて、運動神経も抜群の矢野に、
初めはいい感情を抱いていなかった七美でしたが、
天真爛漫なくせに、矢野が時折見せる寂しげな表情が気になっていたのです。
矢野の親友・竹内匡史が七美にその理由を教えてくれました。
実は矢野は年上の恋人と死別するという、悲しい過去と闘っていたのです。
それを知った七美は、矢野への想いが抑えられなくなり、矢野に告白するんですね。
少しずつ打ち解けていくふたりでしたが、どうしても消し去れない矢野の心の中の遺物。
それでも幾度となくぶつかりながら深まる仲。そして誓い合う永遠の愛。
しかし、運命は残酷で、
気ままな矢野の母親が東京へ行くと言い出したのです。
矢野はふたりきりの家族である母親をひとりで東京へは行かせられないと、
東京行きを決意するんですね。
「遠く離れていても大丈夫」と気丈に振る舞う七美。
そして、別れの日がやってきたのです…。

原作は発行部数1000万部を超える、小畑友紀の同名コミック。
普通の映画の尺では収まりきらないからと、前篇と後篇に分けての公開となりました。
それでもどっちも2時間超ですから。いかに大作かがわかるかと思います。
矢野の亡くなった彼女が同じクラスの女子の姉だったり、
人気では矢野と双璧を成す竹内も七美に恋心を抱いていたり。
シンプルなストーリーながら、細部の設定はかなり凝ったものになっています。
前篇は意外や普通の純愛もの。そのピュアな愛に試写室の女性はすすり泣き。
女性の立場に立ったストーリー展開だけに、ちょっと男性は自己投影する場所がなく。
だって、矢野も竹内もカッコいいし(笑)。
そんなメンズに無垢に愛される七美に、女性陣は憧れを持って自分を投影するんだろうなぁ。
みんながみんなハマるかどうかはわからないけど(笑)。
男女で感じ方が全然違う映画だと思いますョ。
そのあたりも念頭に置いて見るといいかも。
後篇を見てるボクから言わせてもらうと、前篇は嵐の前の静けさ。
後篇はサスペンスと言ってもいいくらいの波乱の展開に。
なんて、あんまり言っちゃいけませんね(笑)。
でも後篇を楽しむためにも、前篇は必見です。
浮気をしないことが必須条件のボクには、
七美のような重めの恋愛は大歓迎なんですけどね(笑)。☆3つ。
「僕等がいた 前篇」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.3.7
「へんげ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


人気作品の試写を見に行った時のこと。
狭い試写室の受付に列ができていて、前の作品が終わるのを待っていました。
前の作品の上映が終わり、出てきた関係者の若い男が映写室の扉を開けるために列を割ります。
「すみません」の一言もなし。
少しして中からその男が出てくる時に、扉が勢いよく開き、
並んでいた女性にバンと思い切り当たります 。
それでも「すみません」の言葉はなし。
「ひっでーなぁ。すみませんぐらい言えよ」。
そいつに向かって言ったボクの一言です。
それでも我関せずで…。あり得ませんよね。
何度も言いますが、そんなヤツが映画に携わって、感動もクソもあったもんじゃない。
そう思いませんか?
あ、今週は☆が少ないけど、その作品ではないので誤解のないように(笑)。
それでは今週の1本です!



「へんげ」は、ホラー、スリラー、サスペンスなど多彩な要素が折り混ざった作品。

普通の生活を送り、普通に幸せだった恵子と吉明夫婦。
ところがある時から、夫の体に異変が起こります。
夜中になると突然苦しそうに叫び、身をよじって暴れまわるのです。
一時的なものだろうと思っていたのですが、容体は悪化するばかり。
そして、さらなる恐怖がふたりを襲います。
なんと夫の身体が異形のものへと変化していったのです。
始めは手、腕、そして全身へ。
それでも恵子は献身的な愛で、吉明を支えようとするのですが…。

とにかく"ごった煮"的な映画です。
でもその"ごった煮"が美味しい煮物になることもある訳で。
この作品のどこを取って、どう評価するか。それは箸でつまんだものによって違うかも。
最大のスパイスは「究極の愛」?
ただ、好き嫌いの多いボクは、ちっちゃな桜海老がひとつ入っててもダメなんですョ。
だからこの"煮物"はちょっと頂けなかったかな。B級映画のいい味は出てましたョ。
好きな人は好きなんでしょうけど…。☆2つ。
「へんげ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.3.1
「戦火の馬」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


第84回アカデミー賞が発表され、作品賞は「アーティスト」が獲得。
無声映画としては83年振りの受賞が話題となっています。
他部門の受賞作品も今後日本で公開となって、お客さんがたくさん集まるはず。
もちろんそれはいいことですが、他にもいい作品はたくさんあります。
話題作以外でも、自身の 嗅覚にピンと来たら是非見てみて下さいね。
感性は多数決ではありませんから。
さ、今週は1本です!



「戦火の馬」は、タイトル通り、戦火の中を生き抜いた1頭の馬の物語。

第一次世界大戦直前のイギリス。
小さな村の牧場で、1頭の美しい馬が産まれました。
近くの農場に住む少年アルバートは、誕生の瞬間を見守っていました。
その子馬はセリにかけられ、酒に酔った貧しい農夫がセリ落とします。
その農夫とは、アルバートの父だったのです。
農耕馬を買いに行ったのに、役に立たないサラブレッドを買ってきた夫に妻は怒り心頭。
ところが、アルバートだけは違いました。一目見て「あの馬だ!」と。
アルバートは子馬にジョーイと名付けてかわいがったのですが、
荒れ地になっていた畑を耕すにはまったく不向きだったのです。
「借金を返せないなら、土地と馬を渡してもらおう」。
実はジョーイを競り合ったのはこの土地の地主でした。
傷つきながら畑を耕すジョーイ。労をねぎらうアルバートとの間に、
心の交流が生まれたようでした。
ところが、遂に第一次世界大戦が勃発。
ジョーイはイギリス軍に軍馬として連れて行かれてしまったのです…。


スピルバーグ監督作品。
その後、ジョーイはイギリス軍のニコルズ大尉の騎乗馬になり、
ドイツ軍の手に渡ると軍の脱走兵を乗せ、
フランス人少女の元で可愛がられ、再びドイツ軍に奪われ…。
ジョーイだけではありません。
いつかジョーイに出会えると信じて軍に志願したアルバートもまた、戦火の中にいたのです。
この困難の中、ふたりは 再び出会うことができるのかというお話。
言ってみれば"サラブレッドのロードムービー"です。
サラブレッドの記憶力は抜群で、人を頼る動物でもあります。
初めての場所に知らない人と行った時の心拍数より、
普段世話をしている人と一緒の時の方が心拍数は少ない。つまり安心してるんですね。
戦争という惨状の中、様々な場面で人々に感動を与え続けたジョーイですが、
やはり一番の幸せはアルバートと再会すること。
ただ、犬などのペットと比べると、馬と人間の心の通い合いがどれくらいなのか。
競馬や乗馬をやらない人には、あまりわからないんじゃないかなと。
馬好きにはたまらない映画。でも満点をつけなかったのはそんな理由からです。
どうでしょう?感想を聞いてみたいものですねっ。
もちろんボクは感動!ボクの中では満点でしたが。☆4つ。
「戦火の馬」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.2.17
「pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」☆☆☆
「ヤング≒アダルト」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)



「pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」は、
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー。

天才舞踏家とうたわれたドイツの女性振付師、ピナ・バウシュ。
親交の深かったヴィム・ヴェンダース監督が、彼女の半生の映画化を企画していたものの、
映画ではダンスの息吹きを表現しきれないと判断。
半ば諦めていたところに3Dという奥行きを出せる技術が誕生。
これで映画が撮れると喜んだ矢先に、ピナ・バウシュは急逝してしまったのです。
主役がいなくなってしまったなら断念せざるを得ないのか。
そんな時、ダンサーたちの後押しもあって映画化に踏み切ったそう。
登場するダンサーたちがピナへの思いを語り、様々な場所で踊る映画です。
舞踏という現代アートが表現するものを、見る側が果たしてどう感じるのか。
ボクには正直、ちょっぴり難解なこのジャンルに感じ入る感性が欠如しているのか、
ちょっとわからなかったかな。
ただ、世界中の文化賞を取っている素晴らしい芸術家です。
「人生が変わった」と表現する人も多く、
人間の肉体を通して訴える彼女の何かを感じ取る人は多いはずです。☆3つ。
「pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」公式サイト



「ヤング≒アダルト」は、シャーリーズ・セロン主演作。

ミネアポリスでひとり暮らしのメイビスは、37歳の自称作家。
その実、しがないゴーストライター。
人気が凋落気味で打ち切りが決まった作品の最終話を書こうとパソコンを開くと、
そこに1枚の赤ちゃんの写真が。
高校時代に付き合っていた元恋人のバディ夫妻から送られてきた、
子供の誕生パーティーへのお誘いだったのです。
自意識過剰なメイビスは、大好きだったバディとよりを戻してもう一度輝きたい、
彼もそう思っているはずと、
故郷の小さな町であるマーキュリーへと車を走らせたのでした…。

タイトルでもある"ヤングアダルト"とは、少女向け小説のジャンルのこと。
大人になり切れない女性を皮肉った言葉としても使われているはず。
美人で男子の憧れの的だったハイスクール時代。
しかし女子からは「鼻にツく」と嫌われていた彼女が、
約20年経っても当時のままの高ビーな性格で戻ってきたからさぁ大変。
幸せなバディの生活を壊してまで彼を奪おうとするメイビスの行動に、
バディも含め大ブーイング。
ここまでヒドいと感情移入も何もなくなっちゃいます(笑)。
キャラクターを誉めるとしたら、最後の最後まで貫き通す、その徹底ぶりかな(苦笑)。
ただ、主演のシャーリーズ・セロンの演技力となると話は別。
この映画は見方次第で評価が変わるんだと思います。
ストーリー重視だと首を傾げちゃうかも。
高校生時代に、バディがお気に入りの曲を編集したカセットテープをメイビスにプレゼントしていて、
その中の曲を何度も巻き戻しては、自分のテーマ曲のように大事に聴くメイビス。
「カセットテープかぁ。作ったなぁ、ボクも」。
なんか甘酸っぱくなっちゃいました(笑)。☆3つ。
「ヤング≒アダルト」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.2.17
「TIME/タイム」☆☆☆
「ピラミッド 5000年の嘘」☆☆☆☆
「メランコリア」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

5月公開の映画をひと足先に試写会で。
飲みの席でその話をしてたら、知人が「あれいいんだよね!」と。
映画関係者や業界の人でもないので知ったかぶりかと思ったら、「飛行機の中で見た」。
海外では既に公開になってるから、確かにそうなんですよね。
彼が話す感想も的確でした。失礼しました!
さ、今週は3本です!



「TIME/タイム」は、時間が通貨になるというSF映画。

科学の進歩で老化がなくなり、人間の成長は25歳でストップする時代。
そこからはすべての人間の左腕に組み込まれたボディ・クロックが動き出し、
余命のカウントダウンが始まるのです。
スラム・ゾーンに住む貧しい人たちの余命は平均23時間。
働いて、働いて、少しでも時間を増やさなければなりません。
逆に富裕ゾーンに住む金持ちたちは永遠の命を持っていました。
このふたつのゾーンを分けるのはタイム・ゾーンと呼ばれる境界線で、行き来は絶対禁止。
厳しい監視体制がしかれていたのです。
ところがある日のこと、スラム・ゾーンに住むウィルは、
富裕ゾーンから来たハミルトンという男をトラブルから救います。
しかし彼は終わりのない人生に絶望していて、
ウィルに116年という莫大な時間を譲り、自殺してしまうんですね。
永遠とも言える時間を手にしたウィルは、
理不尽極まりないこの世界のシステムの謎を解き明かそうと、
富裕ゾーンへと踏み込んでいくのでした…。

発想というか、アイデアがとにかく斬新で。なかなか楽しめました。
ウィルには殺人の嫌疑が掛けられ、時間監視局員に追われます。
逃亡の人質に取ったのが、富裕ゾーンの大財閥の娘。
やがてふたりは恋におちるのですが、果たして運命やいかに。
日本には"時は金なり"という諺がありますが、それを具現化したSF作品。
分刻みで余命を気にするなんて、とてもじゃないけどごめんですけどねっ(笑)。☆3つ。
「TIME/タイム」公式サイト



「ピラミッド 5000年の嘘」は、謎に満ち溢れたピラミッドの知識を検証するドキュメンタリー。

古代エジプト文明の象徴"ギザの大ピラミッド"。
あれはクフ王の墓で、20年の歳月を掛け、
壁画などにあるように原始的な道具を使って人々が巨石を運んで作ったと。
誰もが疑うことをしなかったピラミッドへの知識がすべて嘘だとしたら?
これを37年かけて調査し、研究を重ね、様々な分野の専門家に分析してもらったところ、
「あり得ないことばかり」と判明したのです。
例えば、200万個の巨大な石で作られているピラミッドですが、20年で作るには、365日、
1日12時間休むことなく働いて、2分30秒に1個、あの巨石を積み上げなくてはなりません。
ちなみに1個の重さは車のセダン1台分はあるとか。
20年で無理だとしたら、王墓という説は崩れます。なぜならクフ王は20歳で亡くなっているのだから。
じゃ、一体この建物は何の目的で建てられたらのか?
さらに北を差すこの建物の方位的誤差は100分の5度。
最新テクノロジーを使っても、この巨大建造物でここまでの精度を出すのは不可能とのこと。
ねっ、面白いでしょ(笑)。
他にもたくさんの不可解な謎解きに挑んでます。そして叩き出した答えとは…。
それは見てのお楽しみ!
神様だとか、宇宙人だとか、そんな話じゃないということだけ伝えておきましょう。
あとは映画館で是非どうぞ!☆4つ。
「ピラミッド 5000年の嘘」公式サイト



「メランコリア」は、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督作品。

ジャスティンは、今日、姉夫婦の豪邸で結婚式を行う新婦。
幸せいっぱいのはずの彼女ですが、時折笑顔は見せるものの、どこか浮かない表情。
すべてが虚しいのか、新郎のラブコールにも応えようとしません。
結局"披露宴離婚"。パーティーは最悪の結末を迎えてしまいます。
今、世界はメランコリアの話題で持ち切りでした。
地球に近づく惑星メランコリア。
専門家たちは「地球の近くを通過するものの、衝突はない」と言います。
それでも月より大きくなっているメランコリアの姿に、
人々はパニックになっていきます。
そんな中、ジャスティンは小川のほとりで全裸になってメランコリアを見つめ、
うっとり微笑みかけるのでした…。

ちょっとわかりづらいかな(笑)。
2時間15分の超大作。その大半がわがままなジャスティンの結婚パーティーの模様。
いったい何が惑星メランコリアの話なんだろうって思いながら見てました。
テーマは「世界の終わり」。
これがラース・フォン・トリアー監督流の描き方なんでしょうね。
結末には箝口令がしかれています(笑)。
これもまたどうぞ映画館で確かめてきて下さい。
なかなかの衝撃ですョ!☆3つ。
「メランコリア」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.2.9
「逆転裁判」☆☆
「ポエトリー アグネスの詩」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

寒いですねっ。
2月2週目に入れば寒さが緩むと言っていたのに、まだまだ凍えるような日が続きます。
心ぐらいはポッと暖かくなりたいものです。
風邪など引かれませんように。
さ、今週は2本です!



「逆転裁判」は、人気ゲームソフトの映画化。

近未来の日本。凶悪犯罪の増加に裁判が追いつかない状態。
そこで取り入れられたのが"序審裁判"という制度。
検事vs弁護士の直接対決で、完全に無駄を省き、3日で判決を下すもの。
互いの腕がモノを言います。
新米弁護士の成歩堂(なるほどう)龍一は、先輩弁護士の綾里千尋から電話をもらいます。
以前から追っていた事件の重大な証拠を見つけたから今から事務所に来て欲しいとのこと。
慌てて事務所に向かうと千尋が殺されていたのです。
逮捕されたのは千尋の妹で霊媒師の真宵(まよい)。
真宵の無実を信じていた成歩堂は、真宵の弁護を引き受けることに。
しかし、戦う検事は若手天才検事の御剣(みつるぎ)だったのです。
激しい弁論の末、なんとか無実を勝ち取った成歩堂でしたが、
驚きのニュースが成歩堂の耳に飛び込んできます。
なんと御剣が殺人容疑で逮捕されたというのです。
今度は御剣の弁護を申し出るのですが、相手検事は、
御剣の師匠で40年間無敗の実績を持つ"伝説の検事"狩魔(かりま)豪だったのです…。

ゲームが映画になるとは、やはり時代ですね。監督は三池崇史。
さまざまな思惑が渦巻くこの事件。
千尋の死や、御剣の逮捕には、千尋が追っていた、とある事件が絡んでいたのです。
なんて展開に、シリアスな映画なのかなと思ってると、突然ギャグが入ってきたり。
その突飛さにちょっと付いていけなかったかなぁ。
あちこちに突っ込みどころが満載なのも、細かい性格のボクには違和感があって。
ゲームソフトの映画化なんですから、もっとエンタメとして見ればよくて、ボクの見方が違うのかも(笑)。
でもここは過去の"判例"からも手厳しく。
「判決を言い渡す」(笑)。☆2つ。
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「ポエトリー アグネスの詩」は、韓国映画。

釜山で働く娘に代わり、中学生の孫息子・ジョンウクを育てている初老の女性・ミジャ。
ある日のこと、ミジャは近くの女子中学生が自殺したことを知ります。
そのことをジョンウクに聞いても「知らない」と返されるだけでしたが、
後日、ジョンウクの友人の父兄の集まりに呼ばれて愕然とします。
なんと女子中学生は性的暴行を苦に自殺。その加害者の中にジョンウクもいたというのです。
慰謝料を出し合おうと言われても、
介護ヘルパーとしてわずかの収入があるだけのミジャには無理な話。
習い始めた詩作教室で"人生で一番大事なのは見ること。
世界を見ること"と学んだミジャは、自殺した女子中学生の足跡を辿ってみるのでした…。

実は初期の認知症だと診断されていたミジャ。
66歳のミジャが介護ヘルパーをする。そんな高齢者問題もそうですが、自分が罪を犯し、
その被害者が自殺したにも関わらず、顔色ひとつ変えないジョンウク。
様々な現代韓国の病巣が描かれている1本。
逆に一番訴えたかったのが何か、監督が観客の感性に多くを委ねてるのもあって、
それがちょっとぼやけてしまっていた気がします。
自国の人にはもっとリアリティを持って伝わるのかな。
過去を振り返って幸せだったと涙を流すより、
年を重ねても今がとても幸せだと笑える人生が素敵なのは、
韓国でも日本でも同じなんでしょうけどね。
最後に読むミジャの詩をどう感じるかがカギだと思います。☆3つ。
「ポエトリー アグネスの詩」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.2.2
日本列島いきものたちの物語
(満点は☆☆☆☆☆)

昨年よりさらに忙しくなってしまい、なかなか試写に足を運べなくなりました。
たくさん届く試写状の中から、優先的に行こうと思うのは正直話題作だったりします。
でもそれじゃダメなんですよね。
興行的肩書きの無い小さな映画にもいい作品がたくさんあるのは、
これまでの経験から知っていること。
映画も人と同様に"出会い"です。今年もたくさんのいい出会いがありますように。
そう願ってやみません。
今週は1本です!



「日本列島いきものたちの物語」は、ネイチャー・ドキュメンタリー。

東西3100キロ、南北3000キロ。亜熱帯から亜寒帯までが存在する日本列島。
ここには9万種類ものいきものたちが生きています。
そんな中から、鹿児島県屋久島のニホンザル、青森県下北半島のサル、
兵庫県六甲山のイノシシ、北海道知床半島のヒグマ、
北海道釧路湿原のキタキツネ、その他、海のいきものから不思議な動植物まで、
その生態を、日本を代表するネイチャー・カメラマンたちが追っています。
今作のテーマは"絆"そして"家族愛"。
時に厳しい現実を目の当たりにさせられますが、これも自然の営み。
しっかり直視しなくてはなりません。
生まれてすぐに立てない動物は人間ぐらいだって知ってましたか?
野生を生き抜くのって大変なんです。
この手の映画が最近増えてますが、日本に特化してるのがいいかも。
家族内の話の輪が広がりますからねっ。☆3つ。
「日本列島いきものたちの物語」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.1.20
「DOCUMENTARY of AKB48
 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」☆☆☆☆☆
「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」☆☆☆
「しあわせのパン」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

映画の中の名セリフ。
特に自分が欲している時はグググッときますね。
ダメ主人だけど信念に生きる夫の「別れたいなら出て行っていいぞ」の言葉に、妻はこう言い捨てます。
「まったく。憎しみはどんどん増えていくけど、愛は減らないのよ」。
くぅ〜っ。どっかにいませんかね、こんな女性(笑)。
さ、今週は3本です!



「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on
少女たちは傷つきながら、夢を見る」は、AKB48のドキュメンタリー映画第2弾。

人気絶頂のアイドルグループ、AKB48。
彼女たちの2011年を追ったドキュメンタリーなんですが、"3.11の未曾有の大災害に際して"
"AKB総選挙""初のドーム公演となった西武ドームでのステージの舞台裏"、
この3つが柱になっています。
特に西武ドームに臨む彼女たちを見て、ボクは正直、打ちのめされました。
20歳そこそこの彼女たちの、いったい何分の1の努力をしてきたんだろうって。
50オヤジが超反省です(笑)。
人はみんな頑張ってるんですよ。
それぞれに器の大きさがあるから、頑張ってるってこと自体を否定はできない。
でも「あなたは限界を超えたことがありますか?」って聞かれた時、
いったいどれだけの人が胸を張って「はい」って言えるでしょう。
そこなんだな、彼女たちのすごいところは。本当に叩きのめされました。
そんなこと考えて発言してないと思うけど、インタビューでもかなり深いこと言ってます。
これこそが"リアリティ"。
この世界に詳しい人は、「うまくいいところを編集してるよな」と言います。
ボクはそれでもいいと思うのです。
この映画を見て、「負けちゃいられない。頑張らなきゃ」って思う人がいればいいのだから。
若者も、大人も、絶対に見た方がいい。そして感じてみて下さい。
何も感じなかったら、感じない自分を省みた方がいいと思います。☆5つ!!
「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」公式サイト



「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」は、東野圭吾原作の人気シリーズ、初の映画化。

東京・日本橋で起きた殺人事件。
金属会社の本部長・青柳武明が何者かに腹部を刺され死亡するという事件が起きます。
容疑者として逮捕されたのは青柳のバッグを持っていた無職の八島冬樹。
しかし八島は逃走中に車にはねられて意識不明の重体となってしまうのです。
直前に震える声の八島と携帯電話で話した恋人の中原香織は、
八島の無実を信じ、そのことを懸命に訴えるのですが、
警察は生活に困っていた八島が金銭目当で青柳を殺したとの見方を強めます。
しかし、青柳にとって日本橋は縁もゆかりもないはずの地。
さらに刺されてから8分もの間、誰にも助けを求めず歩き続けたのはなぜか。
日本橋署の刑事・加賀恭一郎は独自の捜査を進めていくのでした…。

TBSドラマでも人気の"加賀恭一郎シリーズ"、初の映画化です。
単なる物取りの犯行ではなく、そこに家族の、社会の病巣がある。
惹きつけられるのはそんな時代へのVIVID感でしょうね。
すごくピンと来るかどうかは、やはりその登場人物や設定に、
自分を投影できるキャラまたは環境があるかどうかかな。
日本橋には本当に翼の生えた麒麟の像が立ってるんですよね。
初めて見た時はちょっとゾッとしたのを覚えてます。
知らない人も多いでしょうから、東京の新名所になるかもしれませんね。☆3つ。
「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」公式サイト



「しあわせのパン」は、原田知世、大泉洋主演の心暖まるストーリー。

北海道洞爺湖のほとりにある小さな町、月浦。
そこに宿泊もできるパンとカフェの店『マー二』はありました。
夫婦で営むこのお店、水縞くんがパンを焼き、りえさんがコーヒーを入れ、料理を作る。
ここにはたくさんのお客さんが訪れます。
彼に沖縄旅行をすっぽかされたOLのカオリ、北海道を出られない青年トキオ、
母親が家出してしまった少女未久とパパ、病気と闘う老夫婦など。
巡る季節の中で、みんながそれぞれにしあわせを探していたのです。
水縞くんのパンと、りえさんのコーヒーが、そっとその手助けをしてくれるのでした…。

北海道では1週早く公開になっているこの作品。
大上段に振りかぶらないタイプのほわっとした映画です。
スクリーンいっぱいに映るパンや料理が本当に美味しそうで(笑)。
それだけで心は満たされるかも。そんな意味でも、どちらかというとターゲットは女性かな。
またロケ地の月浦がすごくいいっ。
この映画を見て月浦に行ってみたいと感じる人はたくさんいるはず。
ボクもそんなひとりですから。☆3つ。
「しあわせのパン」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.1.20
「ALWAYS 三丁目の夕日′64」☆☆☆
「グッド・ドクター〔禁断のカルテ〕」☆☆☆
「ピアノマニア」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、眠い目をこすりながら、朝10時からの試写へ。
ものすごく感動…。
前日が遅く、寝てようかどうしようか迷ったのですが、行ってよかったです。その作品の紹介は近々!
やっぱり迷ったらGOですねっ。
さ、今週は3本です!



「ALWAYS 三丁目の夕日'64」は、5年振りとなるシリーズ3作目。

昭和39年の東京、下町・夕日町三丁目。
オリンピック開催に湧く東京は、活気に溢れていました。
この映画は、そこに住む住人たちの物語。
売れない小説家の茶川とその家族。
向かいに住むいつも賑やかな鈴木オート。
タバコ屋のおばちゃん、小児科医の先生。
たくさんの温かい人たちが暮らしていたのです。
時代の波に乗り損ねそうな茶川の作品、鈴木オートに勤める六子が抱く淡い恋心。
夕日町三丁目には今日も様々なドラマが繰り広げられているのでした…。

いくつものドラマが混在する内容なので、あらすじを細かく書くと、
野暮な映画評になっちゃいそうでやめときました(笑)。
人が人と関わりをちゃんと持っていた時代。それが昭和の良さじゃないかなって思うんですよ。
ボクはこの昭和39年には3歳ですから、"昭和"はリアルタイム。
「お節介があったかい」とでも言うのかな。あの頃「ウザい」なんて言葉は無かったはず。
気の合う人だけ選んで付き合うようでは、視野は狭くなる。
PCの画面からじゃなく、直接人からたくさん吸収して、学ぶべきなんですよね。
嫌なヤツがいたとしても、反面教師として、ねっ。
ちなみにこの映画は3Dです。その必要性にはちょっぴり疑問かな。☆3つ。
「ALWAYS 三丁目の夕日'64」公式サイト



「グッド・ドクター〔禁断のカルテ〕」は、オーランド・ブルーム主演のサスペンス映画。

研修医として病院にやってきた若き内科医のマーティン。
周りの評価ばかりを気にし、やることはすべて空回り。
そんな中、ダイアンという18歳の美少女が入院してきます。
担当医となったマーティンを信頼し、
すべてを委ねる彼女にマーティンは特別な感情を抱くんですね。
順調に回復し、ダイアンは無事退院したのですが、マーティンは心にポッカリ穴が開いたよう。
お礼にと招かれたダイアンの家での食事会で、ダイアンの部屋に忍び込むマーティン。
後日、再び訪れた時に、マーティンはダイアンの飲んでいる薬に細工をし、
病気を再発させてしまいます。
再入院となったダイアンをずっとそばに置いておきたい。
マーティンはあらゆる手段でダイアンの回復を妨げようとします。
そして事態は最悪の結果を招いてしまったのです…。

ボクらは医者を信じるしかないですもんね。恐ろしい。
実はこの悪事に気付いた人間がいて、マーティンを脅迫するのですが、
それに対してマーティンはどんな行動を取るのか。
完全犯罪は成立するのかというストーリー。
ラストはたぶん賛否両論かな(笑)。
個人的見解を言ってネタバレになっちゃうのでこれまたやめておきます。
劇場で確かめて下さいねっ。☆3つ。
「グッド・ドクター〔禁断のカルテ〕」公式サイト



「ピアノマニア」は、ピアノの調律師を追ったドキュメンタリー。

ドイツの老舗ピアノメーカー、
スタインウェイ社の技術主任であるシュテファン・クニュップファー。
ピアノはギターなど違って、個人が自分のものを持ち運ぶことができないので、
そこで調律師が登場。ピアニストの要望に沿った調律をする必要がある訳です。
"超"のつく一流であればあるほど、その要求は高く、
互いに完璧を求めるがゆえに調律師の仕事は困難を極めます。
そんなシュテファンの仕事にスポットを当てたこの作品。
職人技のすごさ、こだわりにただだ脱帽。神経をすり減らしてるんだろうなという感じです。
ピアノに詳しい人はもちろん、そうでなくても引き込まれると思いますョ。☆3つ。
「ピアノマニア」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2012.1.12
「デビルズ・ダブル―ある影武者の物語―」☆☆☆☆☆
「ヒミズ」☆☆☆
「ロボジー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

映画好きのみなさま、今年もよろしくお願いします!
何の映画を見ようか迷った時、どうしても話題作をチョイスするもの。
でも"No.1"の肩書きだけに魅かれることなかれ。小さな映画にも、いい作品はいっぱいあるのですから。
ここではあくまでボクの主観ですが、そんな作品を見るきっかけになってもらえればと思い、
映画評を書いてます。
☆の数は個人の感想ですから、見方が変われば評価も変わる。
いつも言うことですが、あなた自身が自分の目で確かめて下さい。
「へぇ、こんな映画やってるんだ」と思ってもらえるだけで意味があるコラムだと思います。
2012年もご愛読下さいねっ。
さ、今週は3本です!



「デビルズ・ダブル―ある影武者の物語―」は、実話を元にしたストーリー。

イラクの大統領だったサダム・フセインの長男ウダイ・フセイン。
あのフセイン大統領をして「生まれた時に殺すべきだった」と言わしめたウダイの極悪非道振りは、
"狂気のプリンス"と呼ばれるほど。
町を歩く女子高生や結婚式さなかの新婦を手にかけ、気にいらなければ感情に任せて殺してしまう。
そんなウダイには、父同様に"影武者"が必要だったのです。
選ばれたのは高校時代の同級生だったラティフ。
当時から似てると評判だったラティフには選択の余地などありません。
断れば自分はもちろん、愛する家族の命も無いのですから。
整形をし、仕草をまね、ウダイになり切ろうとするラティフ。
しかし"本物"のあまりの冷酷さに次第に心身共に壊れていくのでした…。

ラティフは正義感の強い真面目な男で、父親の事業を継ぐという夢があったのですが、
それも瞬時に無くしてしまいました。
ウダイのあまりにも非人道的行為を間近で見、反対勢力から命を狙われ、
気持ちをなんとか保っていたラティフでしたが…。
事実は小説より奇なり。
面白かったですョ。
特に一人二役を演じたドミニク・クーパーの演技が素晴らしい!
真反対の性格、表情、
とにかく内側から滲み出るものが勝負のこの演じ分けを、ものの見事にやってのけました。
ロンドン出身の33歳。彼の今後が楽しみです。☆5つ!
「デビルズ・ダブル―ある影武者の物語―」公式サイト



「ヒミズ」は、01〜03年 に週刊ヤングマガジンに連載されていた古谷実のコミックの実写化。

15歳の少年、住田祐一。
実家の貸しボート屋に住むも、父は多額の借金をして雲隠れ。
たまに来ては暴力を振るう父を、祐一は心から憎んでいたのです。
父も祐一に向かって「オマエなんかいなかったらよかったんだ」と吐き捨てる関係。
一方の母も若い男と夜逃げ。15歳の少年は孤独の身となってしまいます。
そんな中、クラスメートのは茶沢景子は祐一にゾッコン。
似たような境遇に強い共感を抱いていたのです。
景子を疎しがる祐一でしたが、徐々に景子の押しつけの優しさを受け入れるようになります。
そんなある日のこと、闇金融のヤクザが祐一の元を訪れます。
子供だろうが容赦なく暴力をふるうヤクザたち。
糞のような人生を辞めたいと思っていた矢先に父親が現れ、祐一は遂に父を殺害してしまったのです。
「もう普通の生活は送れない」。
祐一はある決意を胸に抱いたのでした…。

うーん、書き切れない(笑)。ま、書かなくていいんですけどね。
「普通の生活がしたい」。
それだけを夢見ていた15歳の祐一が、もう無理だとなった時、
残りの人生を"オマケの人生"として生きる。
そこには彼なりの大義名分があるのですが、神様はそれを許すのか。
今から10年前のコミックを映画化するにあたり、園子温監督は東日本大震災も描きたかったと。
直線的、間接的に散りばめられているその思いは十分に感じることができるはず。
どの場面でもおそらく議論、討論に花が咲く、そんな深い1本だと思います。
なんかメーターの針が振り切れちゃってる感がいいのかも。☆3つ。
「ヒミズ」公式サイト



「ロボジー」は、矢口史靖監督・脚本の壮年コメディ。

小林、太田、長井は、木村電気のダメ社員3人組。
社長からロボット博に出展するための二足歩行ロボットの開発を命じられていたのですが、
ロボット博開催の1週間前に、なんと開発していた"ニュー潮風"を粉々に壊してしまったのです。
彼らが考えた緊急措置は、中に人間を入れてとりあえず誤魔化そうという陳腐なアイデアでした。
ロボットらしい動きのできる人間を探すため、架空のオーディションを開いたところ、
なんと合格したのは暇を持て余していた73歳の老人、鈴木重光だったのです。
しかしこの頑固爺、このことを表沙汰にできないのをいいことに、わがまま三昧。
ロボジーの暴走が始まったのでした…。

ロボット博では絶賛を浴びたロボジー。
ロボットおたくで、ロボット通の女子大生の葉子がロボジーに夢中になり、
彼女も絡んでドタバタ劇はさらに激化していきます。
普通簡単に気付くでしょってとこに目をつぶってるあたりがどうかと思うけど、
コメディと割り切ればまぁ…(笑)。
往年の大スター、ミッキー・カーチスが五十嵐信次郎の名前で頑張ってるところに敬意を表し、
☆ひとつオマケかな(笑)。☆3つ。
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