週末公開の映画……2011.12.22
「宇宙人ポール」☆☆☆
「ルルドの泉で」☆☆☆☆
「ワイルド7」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今年もいよいよカウントダウン。「もういくつ寝るとお正月?」。
そんな時期になりました。
今年の10大ニュースならぬ、映画ベスト10を振り返ってみるのもいいかなと。
時間があったら思い出して発表したいと思います。
さ、今週は3本です!



「宇宙人ポール」は、英米合作のSFコメディ。

1947年のこと。アメリカの郊外に暮らすひとりの少女が、怪しげな飛行物体を発見。
その光が少女の愛犬に向かって墜落してきたのです。
あれから60年余、イギリス人SF作家のクライヴとイラストレーターのグレアムは、
夢だったアメリカ西部のUFOスポット巡りの旅に出ます。
ところが、ネバダ州にある有名なエリア51のあたりで、自動車事故に遭遇。
すると突然後ろから宇宙人に声を掛けられたのです。彼の名はポール。
60年前に地球にやってきたものの、アメリカ政府によって拘束され、
やっとの思いで逃げてきたと言います。
かかわっちゃまずいと、その場から逃げようとするふたりにポールは言います。
「頼む。故郷へ帰る手伝いをしてくれないか。このままじゃ死んでしまう」。
渋々了承したクライヴとグレアム。
しかし、追っ手はすぐそこまで迫っていたのでした…。

宇宙人を交えての奇妙なロードムービー。
途中で敬虔なクリスチャンの娘も乗せることになり、
ちょっぴり恋愛映画のエッセンスも加わります。
追ってくるのは警察や政府の秘密捜査官だけじゃなく、
町のゴロツキや娘の父親も(笑)。
加えてこの宇宙人が人間臭いのが面白くて。
いろんなエイリアンもののパロディが入っているそう。
マニアックなファンにはたまらないかも?☆3つ。
「宇宙人ポール」公式サイト


「ルルドの泉で」は、世界最大の巡礼地、
ルルドを舞台にしたヒューマン・サスペンス。

不治の病で車椅子での生活を余儀なくされている若い女性のクリスティーヌ。
彼女の唯一の楽しみは、奇跡を求めた巡礼ツアーへの参加でした。
今回は年間600万人もが訪れる世界最大の聖地、ルルドへの旅。
参加者は同じように多くの苦悩を抱いた人々。
そんな中、クリスティーヌに奇跡が起こります。
なんと自身の足で立ち上がり、歩くことができたのです。
普通の女性として振る舞えることの幸せを噛みしめるクリスティーヌ。
しかし、周りの人たちは複雑な心境でした。
彼女を見る目には様々な思いが入り乱れ、またクリスティーヌ自身も、
いつまた歩けなくなるかもしれないという恐怖に襲われるようになっていたのです…。

思わずう〜んと唸ってしまうような作品です。
祈り。奇跡。何かに頼りたい時に、人が求めるもの。
本当にあるかどうかはわからないけど、
例えば人生の選択のすべてをそういうものに委ねてしまっては面白くないと思うんですよね。
わからないから人生は面白い。間違えた選択をするから人は学び成長する。
でもこの映画の登場人物たちの事情はそんな尺度では計れないんだろうなと。
同様にこの映画に出てくる、健常者と言われる人たちの行動は?
クリスティーヌはその両方を行き来した訳で。
いやぁいろんなことを本当に考えさせられる1本でしたョ。
特にボクはスピリチュアルな世界(宗教じゃないですよ)にも興味があるので。
☆4つ。
「ルルドの泉で」公式サイト


「ワイルド7」は、望月三起也の約40年前の人気コミックの映画化。

警視庁の超法規的警察組織、それが"ワイルド7"。
メンバー7名はすべて元犯罪者。
自分の居場所を見つけられずにいた彼らが正義の名の下に集まり、
極悪犯を"退治する"のでした。
その行動はあくまで陰。
報道にもまったく取り上げられることなく、その存在は無きものとされていたのです。
人質を虫ケラのように殺害する銀行強盗、バイオテロ犯。
次々現れる犯罪者たちを消し去るワイルド7たち。
しかし、本物の巨悪は思いもよらないところにいたのです…。

約40年前の人気コミックの映画化と言っても、舞台はもちろん現代。
そのキャラクターの設定に面白さを見いだし、
スクリーンに甦らせたということでしょう。
"犯罪者が正義の味方"という、交わらないはずの両面を内包する登場人物たち。
逆もまた真なり。正義の傘に隠れた悪もある訳で。
笑顔の裏の哀しみや、孤独の中の温もりなど、
相反するものの存在がこの映画の中心にあるような気がします。
ど派手なアクションもウリのひとつ。スカッとしたい人にはオススメです。☆3つ。
「ワイルド7」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.12.16
「friends もののけ島のナキ」☆☆☆
「ロンドン・ブルバード」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

年間試写100本に向け、追い込んでます。
先日は朝イチの試写に眠い目をこすりながら行ってきました(笑)。
でも全然眠くならず。あまり面白くない作品は、
睡眠をたっぷり取ってても眠くなるものです。
次回更新時はまだ目標に届いていないかも。頑張ります!
さ、今週は2本です!



「friends もののけ島のナキ」は、3D・CGアニメ。

霧に隠されたもののけ島には、その名の通り"もののけ"が住むと言われ、
村の人々は近づくことさえしませんでした。
ところがある日のこと、
誤って人間の赤ん坊であるコタケが迷い込んでしまったのです。
しかし、コタケは怖がるどころか、もののけが大好き。
特に赤鬼のナキが大のお気に入り。
実はもののけたちの方も人間を恐れて生きていて、
コタケが来たことで逆にパニックになっていたんですね。
日に日に仲良くなっていくコタケともののけたち。
しかし、別れの日がやってきます。
コタケは、母が待つ村へ帰らなくてはならなかったのです…。

コタケが村に帰ってからというもの、ポッカリ心に穴が開いてしまったナキは、
相棒の青鬼のグンジョーが制止するのを振り切って、
コタケに会いに行ってしまいます。
そこでひどい仕打ちに合うナキ。
人間ともののけは一生交わることができないのか。
友情は成り立たないのでしょうかというお話。
テイストとしては、昔ばなしを現代版3Dにした感じ。
キャラクターが可愛いので、幅広い年齢層に受け入れられそう。☆3つ。
「friends もののけ島のナキ」公式サイト



「ロンドン・ブルバード」は、スタイリッシュなギャング映画。

3年間の刑務所暮らしを終えて出所したばかりのミッチェル。
もう二度と悪の道は歩むまいと決めた彼は、ひょんなことがきっかけで、
引退したばかりの若手女優のボディガードに就きます。
しかし昔の仲間が放っておくはずもなく、何かとちょっかいを出してくる。
仕方なしに彼らの仕事も手伝っていると、
その仕事振りをギャングの大ボスのギャントが気に入ってしまうんですね。
破格の条件も足蹴にするミッチェル。
これが欲しいものは何でも手に入れないと気が済まないギャントの逆鱗に触れ、
ミッチェルのみならず、周りの人間も巻き込む大騒動になるのでした…。

望むと望まないにかかわらず巻き込まれる運命の渦。
想像できるかと思うけど、ミッチェルと女優さんは恋に堕ちます。
守るものができて、命を懸けて運命を切り開こうとするミッチェル。
その姿は男が見てもカッコいいなと。
結末は言わないけど、そっか、そうなるのかって感じ。
これもまたドラマチック。☆4つ。
「ロンドン・ブルバード」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.12.9
「源氏物語‐千年の謎‐」☆☆☆☆
「マイティ・ウクレレ」☆☆☆☆
「リアル・スティール」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

寒いですね。風邪など引いてませんか?
試写会場で隣りにマスクの人が座ると、
申し訳ないけど正直「うわっ」と思っちゃいます。
だって、これから2時間近くそばにいる訳ですもんね。
風邪が移らないといいなぁと。
逆のパターンもあり得る訳ですから、
ボクも迷惑を掛けないように気をつけないと。
さ、今週は3本です!



「源氏物語‐千年の謎‐」は、壮大な歴史絵巻。

時代は1000年前の平安王朝。
時の権力者、藤原道長は更なる栄華を求め、
一条天皇に嫁いだ娘・彰子にお世継ぎが生まれるようにと、
なるべく帝の気持ちを彰子のそばに置いておくため、
紫式部に物語を書くよう命じます。
こうして誕生したのが、
絶世の美男である光源氏を主人公とした「源氏物語」でした。
帝はもちろん、宮中の皆が虜になった「源氏物語」。
道長の狙い通り、彰子は男子を身ごもったのです。
本当ならばお役御免なのに、物語を書き続ける式部。
その心中にはある思いがあったのです…。

生田斗真、中谷美紀、東山紀之、田中麗奈、真木よう子…、
超豪華出演陣による作品です。
映画として面白いのは、紫式部の思いと、
「源氏物語」の中で繰り広げられる愛憎劇がリンクして、
物語を飛び越えて現実と一体化するあたりでしょう。
陰陽道をあやつる安倍晴明が道長のそばにいるのがミソ(笑)。
セットや衣装も含め、見所満載です。☆4つ。
「源氏物語‐千年の謎‐」公式サイト



「マイティ・ウクレレ」は、ウクレレにスポットを当てたドキュメンタリー。

1800年代の後半に、ポルトガルからハワイに渡った4弦の小さな楽器。
それがウクレレ。
当時の王様がその音色を気に入り、宮廷音楽に取り入れたことで、
ハワイの音楽を象徴する楽器となり、今では世界中に波及しています。
その手軽さと、裏側にある奥深さとを、
世界中のウクレレ奏者たちの話を交えて紹介するドキュメンタリー映画なんです。
何か楽器はやりたいけど難しそうだからと諦めていた人、
これを見ると、ウクレレを始めたくなりますョ。
ボクがそうでしたから(笑)。仲間もたくさんできそうだもんなぁ。
温もりのある音色に魅せられて下さい。☆4つ。
「マイティ・ウクレレ」公式サイト


「リアル・スティール」は、
スピルバーグ率いるドリームワークスとディズニーの夢のコラボレーション。

格闘技をやるのが高性能ロボットに変わっていた近未来。
元ボクサーのチャーリーは、家族を捨て、
多額の借金を作ってまでも戦闘ロボットを購入。
賭け試合に夢中でした。
そんなある日のこと、別れた妻が亡くなり、
ひとり息子のマックスが彼の元に来ることになったのです。
ギクシャクしていた父子関係を修復したのが戦闘ロボットの存在。
マックスはチャーリー以上にこの競技が好きだったのです。
そしてスクラップ同様のスパーリング用旧式ロボット、
ATOMとの出会いが運命を変えていきます。
打たれても打たれても、立ち上がり、
立ち向かうATOMの姿に、自分を重ね合わせたチャーリー。
マックスもそんな父に心を開いていくのでした…。

実はマックスの親権は、マックスの叔母夫婦にあります。
それもチャーリーが金で譲ったようなもの。
マックスはそのことに気づいてもいます。
それでも父子に流れる血の妙というか、
戦闘ロボットを通じて気持ちは通い合う。
ボクと親父の競馬みたいなものかな(笑)。
ATOMとの出会いもドラマチックで、
負けて一文無しになったふたりがゴミ捨て場でパーツを集めていたところ、
誤ってマックスが滑落。
マックスをラッキーにも引っ掛けてくれたのがATOMの腕だったのです。
どうしようもないクソ親父の再生の物語(笑)。
マックスくんも、そこは似ちゃダメだぞって、ボク自身の経験から忠告したくなります。
あ、うちの父はこんなにひどくはないですからね。誤解無きよう(笑)。
幅広い年齢層に受け入れられそうな1本だと思います。☆4つ。
「リアル・スティール」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.12.2
「クリスマスのその夜に」☆☆☆
「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」☆☆☆
「50/50」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

年間100本試写が危うくなってきました。
11月いっぱいで93本。
師走の12月は何かと忙しく、あまり時間がないのが実情。
果たしてどれだけ見ることができるか。いい"出会い"を逃さぬよう頑張ります!
さ、今週は3本です!



「クリスマスのその夜に」は、ノルウェー、ドイツ、スウェーデンの合作映画。

ノルウェーの小さな町にもクリスマスがやってきました。
妻と妻の新恋人に追い出されたパウルは、
サンタに変装して2人の子供に会いに行こうとします。
不倫関係にあるカリンとクリステン。
今日こそ「奥さんと別れる」という言葉を聞きたかったカリンでしたが、
クリステンの口から出たのは「妻とは別れない」でした。
ホームレスのヨルダンは、偶然昔の恋人ヨハンヌと再会。
医者のクヌートは、
故国コソボを捨ててひっそり暮らす若いカップルの出産に立ち会います。 幸せでありたいクリスマスの夜。
たくさんの人々が、それぞれのさまざまな人生を生きていたのです…。

いくつものドラマが交錯する、オムニバス感覚の映画。
ちょっと思ったのは、宗教(キリスト教)的な部分やお国柄が違うと、
価値観も少し変わってくるんだろうなということ。
人としての根源や、家族愛、淋しさ、優しさは変わらないんでしょうけどね。
そのあたりまで読めると面白いのかも。
ものすごい感動を期待していくと、正直、肩すかしを食らうかも?☆3つ。
「クリスマスのその夜に」公式サイト



「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」は、スティーヴン・スピルバーグ監督作品。

記者のタンタンと相棒の白い犬のスノーウィ。
ふたりが連れ立って、町の露天を見て回っていると、
ユニコーン号という船の模型にグッと惹かれてしまうんですね。
模型を買い取るタンタンでしたが、
途端にいろんな男がやってきて、模型を高額で譲って欲しいと言います。
これは何かあると睨んだタンタンは、早速ユニコーン号について調べてみます。
すると、ユニコーン号は想像もつかないほどの財宝を積んで、
忽然と姿を消した"伝説の軍艦"であることが判明します。
家に帰ると、部屋の中はメチャクチャ。模型が姿を消していたのでした。
「これはすごい秘密がある」。
タンタンとスノーウィは、ユニコーン号の謎に迫るのでした…。

3Dのアニメ作品なんですが、
さすがスピルバーグ、その映像技術には驚かされます。
パフォーマンス・キャプチャーという新技術を使って、
生の役者の演技をデジタル映像化しているそう。
一瞬、実写なの?って思っちゃいますから。
ジェットコースタームービーとも言うべきスピード感。
ただ、息つく間もない1時間47分。たまに休憩しないと目が回っちゃうのも事実。
それでも新しい世界ですから、体感しておく必要はあると思いますョ。☆3つ。
「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」公式サイト


「50/50」は、ガンを宣告された若者の物語。
実際にガンを克服した脚本家の手によるストーリー。

ラジオ局に勤めるアダムは、タバコも酒もやらない真面目な27歳の男性。
腰の痛みが引かないので病院に行ったところ、検査の結果は"ガン"。
それも難しいガンで、5年後生存率は50%だとか。
その日からアダムの生活は一変します。
同棲していた彼女の本音、明るく励ます親友、
痴呆症の父を看病しながら心配してくれる母、ガンの患者仲間、そして若きセラピスト。
「絶対に生きなきゃ」。
そう誓ったアダムは、懸命に病魔と闘うのでした…。

と、ストーリーだけ書くと、すごくシリアスな話のようですが、
実はかなりコメディタッチな映画なんです。
とはいえ"50/50"の生存率を言われて普通でいられるはずもなく。
アダムの立場で見ると、やっぱりいたたまれないですよね。
誰の立ち位置で見たらいい映画なのか、それがちょっと難しかったかも。
正直ボクはあまりケラケラとは笑えませんでした。☆3つ。
「50/50」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.11.25
「寄性獣医・鈴音 GENESIS」☆☆
「映画 怪物くん」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、イベントの司会をやってる時に、お客さんから映画の鑑賞券を頂きました。
「RAILWAYS〜愛を伝えられない大人たちへ」。
試写を見られなかった作品なので、ありがたかったです!劇場に行くのが楽しみです。
さ、今週は2本です!



「寄性獣医・鈴音 GENESIS」は、人気携帯コミックの映画化。

美少女ドクター、有薗鈴音。
彼女の仕事は"寄生虫ハンター"。
街では、体内に入ると激しく欲情するという謎の寄生虫が猛威を奮っていて、
それを駆除するのに必死の毎日でした。
その寄生虫の発生源を辿るうちに、悪の組織である鬼頭財閥の影が見え、
そこには幼い頃に失踪した鈴音の父が関わっているよう。
その陰謀を打ち破り、父に会って失踪の真相を確かめるべく、
鈴音は巨悪に立ち向かっていくのでした…。

実は"GENESIS"の他に"EVOLUTION"というのもあって、こちらは1週遅れでの公開となります。
テイストとしてはVシネマ。
かなりエッチなシーンも出てきます(笑)。
完全にそんな娯楽作品として見れば楽しめるかな。
鈴音が医療用のゴム手袋で被疑者の家のあらゆるところを触ったあとに、
冷蔵庫の中の食材を次々触っていくんだけど、
おいおいそりゃ医療関係者としてマズくないかいって、ツッこんじゃいました(笑)。
☆2つ。
「寄性獣医・鈴音 GENESIS」公式サイト



「映画 怪物くん」は、人気TVドラマの映画化。

怪物ランドの新大王就任式。怪物くんがいよいよ大王にというその時、
あまりのワガママ振りに国民から大ブーイングが起こるんですね。
ならばとスネて再び人間界へ行こうとした怪物くん一行でしたが、
突然の竜巻が目的地の日本ではなく、
"カレーの王国"へとみんなを運んでしまったのです。
国の権力者ヴィシャールは、怪物くんたちを「伝説の勇者だ」と持ち上げて、
反乱軍にさらわれた王国の姫を助けて欲しいと頼むのです。
しかし、これには裏がありました。
実はヴィシャールは怪物界を飛び出した岩石男。
カレーの王国を乗っ取ろうと企てていたのです。
怪物くんたちはこの国の平和を守ることができるのでしょうか…。

1965年から「少年画報」で連載が始まった人気漫画。
ボクは漫画の怪物くんやTVアニメがリアルタイム。
今回は3Dでの映画化ですから、時代は変わったなぁと(笑)。
今流行りの泣ける内容じゃなかったけど、理屈抜きで楽しむにはいいんでしょうね。☆3つ。
「映画 怪物くん」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.11.20
「新少林寺」☆☆☆☆
「指輪をはめたい」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

グッと寒くなりました。
心がぽっと暖かくなるような映画を見たいですね。
さ、今週は2本です!



「新少林寺」は、香港の人気スターが集まったアクション映画。

20世紀初頭の中国。
海外の列強に国を侵食され始めていた中国国内は、様々な欲望の渦巻く戦乱の世。
そんな中で民衆の味方として施しを与えていたのが少林寺の僧侶たちでした。
ある日のこと、冷血でしられる候将軍が、
義兄弟の契りを結んでいた宋将軍を亡き者にしようと企てるも、企みが発覚。
銃撃戦に発展し、さらに腹心の曹蛮の裏切りもあり、候将軍は命を狙われます。
さらにこの騒動の途中で愛娘が事故で瀕死の重賞を追ってしまいます。
少林寺に駆け込み、娘の命を助けてくれと懇願する候将軍。
しかし、娘は息を引き取ります。
悲嘆に暮れる候将軍を救ったのは少林寺の厨房係、悟道でした。
少しずつ心を開き始めた候将軍は、これまでの自身の生き方を改めようと誓うのでした…。

最愛の娘を失い、妻にも悲劇が襲い、部下にも裏切られ、
改心して少林寺に入門した候将軍の物語。

その後は将軍の地位に就き、
まるで昔の自分を見ているかのような曹蛮を目覚めさせようと務めるのですが、
これがそう簡単にはいかない訳で。
とにかくスケールの大きな作品です。
アンディ・ラウ、ニコラス・ツェー、ジャッキー・チェンの競演と聞けば想像に難くないかと思います。
アクションと情。バランスの取れたいい映画でした。
2時間11分がまったく長く感じませんでしたから。☆4つ。
「新少林寺」公式サイト


「指輪をはめたい」は、山田孝之主演の恋愛映画。

製薬会社の優秀な営業マンの輝彦。
ところがある日、営業先のスケートリンクで転倒して頭を打ち、
記憶がなくなってしまったんですね。
鞄の中には婚約指輪が。
果たして誰に渡すはずだったのか。
輝彦の前にはそれぞれにタイプの違う3人のそれらしき女性がいました。
才色兼備の職場先輩、智恵。
公園で紙人形芝居をしている和歌子。
風俗嬢のめぐみ。
指輪をはめるべき女性は誰なのか。
輝彦はそれを思い出すべく、スケートリンクに通うのでした…。

そのスケートリンクでいつも滑っているエミという女の子がいて、
そのコがどうやらカギを握っているよう?
輝彦がそんなにモテるのかいって言いたくなるくらいのキャラで。
なんだかグダグダうじうじしてるうちに話が進んで行くんですね。
誰が選ばれようが、結局他は傷つく訳じゃないですか。
もちろんセイフティーネットは張られてるけど、でもこんな男で?って感じ。
ヤキモチじゃないんですよ(笑)。すごく男目線の勝手な映画のような気がして。
記憶を辿るプロセスにもいい話は少なかったし。
個人的には面白さがわかりませんでした。ごめんなさい、☆2つ。
「指輪をはめたい」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.11.3
「ハラがコレなんで」☆☆
「ラビット・ホール」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今年は10月末までに見た試写が87本。近年ではものすごく少ない本数です。
別にサボってたとかじゃないんですけどね…(笑)。本当に時間がなくて。
追い込んで100の大台には乗せたいですねっ。
さ、今週は2本です!



「ハラがコレなんで」は、仲里依紗主演の人情コメディ。

妊娠9ケ月の光子。お腹の子の父親とはとっくに別れ、生活費も底をつき、
住んでいるアパートも出ていかなくてはならない始末。
それでも彼女は言います。
「大丈夫、風向きが変わったら、そん時どーんと行けばいいんだから」。
足の向くまま、気の向くまま向かった先は、昔、両親と夜逃げして暮らしていた長屋でした。
貧乏人ばっかり、だけど義理と人情に溢れていたこの長屋もすっかりさびれ、
威勢のよかった大家のおばちゃんも今じゃ寝たきり。
そこで光子は決意します。
「おばちゃんの面倒を見ながら、ここで子供を出産しよう」と…。

"粋"であることを最も大切にする光子の、ちょっぴり変わった人情物語。
登場人物はもちろん他にもいっぱい。
例えば、ずっと叔父と定食屋を続けている光子の幼なじみの陽一。
ちっちゃい頃、光子に「お嫁さんにする」と言った約束をずーっと覚えていて、
お腹のおっきな光子を見てショックを受けても、それでも守ろうとする一途な男。
そんな登場人物が他にもわんさかいて、かなりのドタバタ劇なんですが、
さすがにボクらの現実とはかなりかけ離れ過ぎちゃってるから、
個人的には正直入り込めなくて。
映画なんだから、それでももちろんいいのでしょうが、
監督の意図した部分が果たして伝わるかどうかが、ちょっと心配かな。☆2つ。
「ハラがコレなんで」公式サイト


「ラビット・ホール」は、ニコール・キッドマン主演作品。

幸せに暮らしていたベッカとハウイーの夫婦。
しかし、突然の不幸がふたりを襲います。
4歳の息子が交通事故で亡くなってしまったのです。
その日から、夫婦の心には埋めようのない穴がポッカリと開いてしまいます。
そんなある日のこと、妻のベッカがひとりの少年と遭遇するんですね。
それは愛する我が子を車で跳ねた高校生のジェイソンだったのです。
ジェイソンの家を突き止めたベッカは、思い切って彼に話し掛けます。
そしてあの事故の話、事故のあとの彼の気持ち、生活の変化などを聞くんですね。
不思議な感情が湧き上がるベッカ。
夫に内緒で、ジェイソンと語り合う日々が始まったのです…。

誰にでも起こらないとは限らない設定です。
ベッカとは対照的に、前を向いて、新たな人生を送ろうじゃないかと明るく頑張る夫ハウイーも、
当然愛息の思い出に浸って悲しんでいる訳で。
悲しみや、憎しみとどう対処していけばいいのか。
これはこういう経験をされた方にしかわからないのかなって気がしました。
最後にベッカの母親がベッカにある言葉を掛けます。
それは彼女自身の体験から出た言葉。
そこにこの映画のすべてが集約されていると思います。
同じような経験のある人には、
もしかすると漢方薬のようにジワッと効く1本かもしれません。☆3つ。
「ラビット・ホール」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.10.29
「ステキな金縛り」☆☆
「マーガレットと素敵な何か」☆☆☆
「ミッション:8ミニッツ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

22日から始まった「東京国際映画祭」。
昨年まではマスコミ用の登録申し込み書が届いていたのですが、
登録しても行かないんじゃ悪いなと思い、ずっと返信していなかったら今年は来ませんでした。
来なきゃ来ないで寂しいんだから、人って勝手ですよね(笑)。
さ、今週は3本です!



「ステキな金縛り」は、三谷幸喜監督作品。

エミはドジで失敗だらけのダメ弁護士。
そんなエミに仕事の依頼が来ます。
資産家の妻殺しの容疑者として捕まった矢部五郎の弁護です。
彼にはアリバイがありました。
実は事件当夜、山奥の旅館「しかばね荘」に泊まっていて、
金縛りにあっていたと言うのです。
矢部の無実を証明できるのは、
彼の上に乗っていたという落ち武者の幽霊だけだと考えたエミは、
早速「しかばね荘」に向かいます。
するとエミも金縛りにあったのです。
幽霊の名は更科六兵衛。
エミは六兵衛に、裁判所に来て、証言台で証言して欲しいと依頼したのでした…。

三谷幸喜作品らしいユニークな着眼点と、豪華な出演陣。
西田敏行扮する更科六兵衛は421年前に無実の罪で処刑され、
無念を晴らせないまま成仏できないでいる霊。
幽霊ですから、見える人と見えない人がいる。そのやり取りがまた面白い。
たくさんの登場人物がそれぞれのキャラクターを生かしつつ、
いい味付けをしてくれているのですが、2時間22分。正直ちょっと長く感じたかなぁ(笑)。
いつまでも"三谷作品"の世界観に浸っていたい人にはうれしい時間かもしれませんが。
話題の1本だけにあえてちょっと厳しい評価で、☆2つ。
「ステキな金縛り」公式サイト



「マーガレットと素敵な何か」は、ソフィー・マルソー主演作。

仕事一筋に頑張ってきたキャリアウーマンのマーガレット。
40歳の誕生日に突然、公証人だという男性が現れ、
マーガレットに一通の手紙を手渡します。
それは7歳の自分が未来の自分に送った手紙。
懐かしい写真や思い出がいっぱい詰まっていたのでした。
それからもちょくちょく手紙が届き、
幼い頃の自分からいろんなことを問い掛けられるマーガレット。
実はマーガレットにとって、幼少時代は忘れ去りたいつらい思い出だったのです。
生活は貧しく、家庭環境にも恵まれなかったマーガレット。
この手紙が、大人になった彼女に大きな影響を与えていくのでした…。

本当は"マルグリット"というのが本名なのに、
まるで別の人生を生きようとしているかのように、過去を封印していたマーガレット。
手紙のお陰で仕事も身につかず、プロポーズしてくれるパートナーがいるにもかかわらず、
初恋の相手が気になり始めます。
まるで"リアル・フェイスブック"(笑)。
「忘れる」って人間の素晴らしい才能のひとつ。
すべての過去を掘り返して対峙していたら、人のメンタル面は崩壊してしまうんじゃないかと。
ピュアだった頃の自分を思い出すのは大切だけど、汚れてしまった自分も間違いなく自分。
それは前向きに認めないとね。
昔のボクは今のボクに会ったら何て言うかな、なんて考えちゃいました(笑)。☆3つ。
「マーガレットと素敵な何か」公式サイト



「ミッション:8ミニッツ」は、ジェイク・ギレンホール主演のサスペンスアクション。

朝の列車の中、ある青年がふと目覚めると、
前の座席の女性が親しげに話し掛けてきます。
彼は彼女を知りません。それどころか、この通勤、通学の風景に戸惑います。
なぜなら彼の名はコルター、米国陸軍大尉で、
今アフガニスタンで戦闘ヘリを操縦しているはずだったから。
トイレの鏡に映る自分の顔を見て愕然とするコルター。
そこにいたのはまったく知らない男性で、
ジャケットの胸ポケットから取り出した身分証にはショーンという名で職業は教師とあったのです。
自分の身に何が起こっているのかまったくわからないまま、列車は走ります。
終点のシカゴ・ユニオンまであと少しの地点で列車が大爆発。
コルターは炎に包まれてしまいます。
ふと気付くとそこは暗いコックピットのような場所。
モニターには軍服姿の女性が映っています。
「コルター大尉、何を見たか報告して。爆弾犯人は誰?」。
状況を理解できないまま、コルターにはすぐさま次の指令が言い渡されます。
「もう一度行って。今度も時間は8分よ」。
ハッと気付くと、コルターは再び朝の列車の中にいたのです。
そして8分後、また列車は大爆発を起こすのでした…。

この映画のキーワードは3つ。
"時空超え""パラレルワールド""ループ"。
特殊プログラムの特別任務に就かされたコルター大尉。
次なるテロを阻止するため、
何度も過去にさかのぼって犯人を突き止めてこいというミッション。
しかしそこには重大な秘密が隠されていたのです。
人生がやり直せるならって思ったことってありませんか?
でもそれがわずか8分という時間だとしたら何をします?
お酒を飲みながら話が盛り上がりそうなテーマですよね(笑)。
矛盾をはらむのがタイムトラベルものですが、
この映画は素直に特別な設定に入り込むことができました。
途中で仕掛けに気付く人は気付くかも。それもまた一興です。
サスペンスでありながら、恋愛ものとしてもよくできてましたョ。
見たあとは居酒屋でいっぱい話してみて下さい(笑)。☆4つ。
「ミッション:8ミニッツ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.10.20
「カウボーイ&エイリアン」☆☆☆☆
「東京オアシス」☆☆
「ランゴ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

芸術の秋。ホント、いい季節になりました。
この時期は感性が敏感になっているはず。
たくさん映画を見て、刺激を与えて、感性のアンテナをさらにグッと伸ばしましょ。
さ、今週は3本です!



「カウボーイ&エイリアン」は、
スティーブン・スピルバーグ制作総指揮のSF超大作。

1873年、アリゾナの荒野。
ひとりのカウボーイが目を覚まします。
記憶を失くしていて、自分が誰かもわからない。
ふと左腕を見ると、そこには銀の腕輪がはめられていたのでした。
西部の町に辿り着くと、そこではまさに"外様"。
しかしひとりの見知らぬ女が話し掛けてくるんですね。
「あなた、何も覚えてないの?」。
その夜、見たこともない巨大な飛行物体がやって来て、町を襲います。
男の腕輪から放つ光線だけが、未知の敵を倒す武器。
この敵の目的は何なのか、記憶喪失のカウボーイは一体誰なのか。
何もわからないまま、壮絶な戦いが始まったのです…。

タイトルだけ聞くとギャグみたいだけど、これが面白い!
意外な食材を組み合わせたらメチャメチャ美味しかった、みたいな感じ(笑)。
記憶喪失のカウボーイと、彼の過去を知る女、そして町を牛耳る独裁者のボス。
話の中心にいるのはこの3人なんですね。
まずこの倒れてる男は誰なんだと、謎解きから入るから、見ているボクらに先入観がなく、
そこにエイリアンが現れても不思議と違和感がないんですよねぇ。
とにかく突拍子もない設定ですから、多くは語りません。
プリンに醤油をかけるとウニになるみたいな、ちょっと違うか(笑)、
意外な組み合わせの妙を楽しんで下さい。☆4つ。
「カウボーイ&エイリアン」公式サイト



「東京オアシス」は、都会のロードムービー。

コンビニで買い物を済ませたナガノの前に、喪服の女がひとり。
突然国道に飛び出そうとする彼女をとっさの機転で助けるナガノ。
すると女が車に乗せて欲しいとせがみます。
女の名はトウコ。女優だと言います。今も撮影現場を抜けてきたと。
どこまでがホントで、どこまでがウソなのか。
実はそんなことはどうでもよく、ふたりはひたすら国道を走り続けたのでした…。

主人公はトウコ。
その後、彼女は町の映画館で旧友でシナリオライターだったキクチと、
動物園で美大を目指す浪人生のヤスコと出会います。
そんな偶然の出会いの中で、捜していた自分に出会っていくといったストーリー。
トウコには小林聡美が扮していると言えば、
何となくそのふんわりした空気感が伝わるでしょうか。
でも描いている世界が抽象的すぎて、ボクは個人的には苦手なタイプの作品。
昔の日本映画によくあった手法ですよね。
ボンヤリした中から実像を(掴めるなら)掴みなさい的な、
見る側に委ね過ぎる作品はちょっと…。
でも話題のバロメーターでもある試写室の混み具合はかなりのものだったので、
好きな人には好きなのかも。
あなたの心は掴むことができるのか、自身で確かめにいってみて下さいね。☆2つ。
「東京オアシス」公式サイト



「ランゴ」は、ジョニー・デップが主役の声を務めるアニメーション映画。

外の世界など見たこともない、ペットのカメレオンのランゴ。
ところがハイウェイを走る車から投げ出されてしまいます。
そこは灼熱の砂漠。
いくつもの危険を回避して、やっとの思いで辿り着いたのはダートタウンという町。
よそ者に冷たい視線を送る住人たちに、
ランゴは水槽の中から見ていたTVのヒーローになりきり、
「俺は西部から来た怖い者なしのヒーローだ。1発の銃弾で7人の悪党を殺した」
とうそぶきます。
すると町の荒くれ者との決闘を余儀なくされるてしまうのですが、
いくつも偶然が重なって、町の脅威だった鷹を1発でやっつけてしまうんですね。
本物のヒーローだと町中が湧く中、町長はランゴを保安官に任命します。
しかし、この町にはとてつもなく大きな陰謀が渦巻いていたのです。
本当は気の小さなペットのカメレオン。
そんな"偽ヒーロー"のランゴに、この町を救うことはできるのでしょうか…。

この作品は、俳優の表情や動きをそのままキャラクターに投影できるという
"エモーション・キャプチャーアニメーション"。
様々なキャラクターが登場するので、思わずニヤリとしてしまいます。
ただ、いかにも西部劇といった渇いた感じがあるので、
日本人気質に合うかどうかはちょっぴり心配。
昔、午後2時ぐらいから東京12チャンネル(現テレビ東京)でやってた
"B級西部劇"のテイストっていうんですか?
一緒にすんなってそれぞれから怒られちゃうかな(笑)。
でもそんな感じが正直否めませんでした。
いつの世も、どこの町にも悪いヤツはいるもので、だからこそヒーローが成り立つんですね。
「カウボーイ&エイリアン」と見比べてみるのも一興かも?☆3つ。
「ランゴ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.10.14
「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)
「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」は、
マーベル・コミックの実写化。

第二次世界大戦真っ直中のアメリカ。
やせ細った小柄な青年のスティーブは、
早くこの戦争を終わらせて平和な世の中を取り戻したいと兵役に志願するも毎回不合格。
それでもめげずに何としても軍隊に入ろうとするスティーブの姿を、
軍医のアースキン博士が見ていたんですね。
アースキン博士に声を掛けられたスティーブは、博士からある計画を聞かされます。
それは"スーパーソルジャー計画"。
肉体的には劣っているスティーブでしたが、正義感と誠実さ、
そして本物の勇気を持つ若者だと博士は見抜いていたのです。
秘密の研究所で"超人血清"を打たれたスティーブの体は見る見るうちに変化を遂げ、
完璧な超人へと変身したのです。
しかし研究員になりすまして潜入していたナチスのスパイが発砲。
博士の命を奪い、逃走します。
果たして『キャプテン・アメリカ』となったスティーブは、
世界を救うことができるのでしょうか…。

マーベル・コミック初期の伝説的ヒーロー『キャプテン・アメリカ』。
その誕生秘話を映画化です。
意外と庶民的な苦悩も抱く場面が出てきますが、彼は自身の信念、
志でそんな逆境も打ち破っていきます。
ちなみに映画は3D。
映画が終わったあとに、とある映像が流れるのですが、
思わずニヤリとしてしまうはず。
最後の最後まで席を立たないようにして下さいねっ。☆4つ。
「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.10.7
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

高倉健さんの久々の映画出演が話題になってます。
動き続けることで存在をアピールするのが普通なのに、
出ないことでその価値が上がっていくなんてすごいことだと思いませんか?
6年振りの主演作『あなたへ』。
来秋公開予定だそう。今から楽しみです!
さ、今週は1本です!



「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」は、人気シリーズの"起源"を探った作品。

製薬会社の若き研究員、ウィル。彼が開発していたのはアルツハイマー病の新薬でした。
薬を投与されたチンパンジーの目覚ましい効果を上司の前で発表していたところ、
チンパンジーが突如暴れ出し、研究所内はパニックに。
そしてチンパンジーは射殺されてしまいます。
研究は中止。しかし、チンパンジーのお腹の中には子供がいたのです。
生まれたばかりのチンパンジーを家に連れて帰るウィル。
シーザーと名付け、我が子のように育てているうちに、
まるで人間のような意思の疎通ができるようになっていたのです。
これは間違いなく投薬を続けた母チンパンジーの特殊な遺伝子がもたらしたもの。
そう確信したウィルは、研究所から新薬を持ち帰り、
アルツハイマー病の父に投与します。
すると見る見る生気を取り戻していくではありませんか。
そんなある日のこと、ウィルの父が隣人になじられているのを見たシーザーが、
それを助けようと隣人を襲ってしまうんですね。
保護施設に入れられてしまうシーザー。
霊長類ばかりがいる施設では、人間による虐待が彼を待っていました。
絶望の日々。それでも彼はボスを倒し、すべての猿を統率。
高い知能を駆使して施設からの脱出に成功します。
その頃、研究所では再びパニックが
。より強力な薬を開発中に、誤って薬を浴びた研究員が、
おびただしい出血でウイルスを撒き散らしながら死んでしまったのです。
この時、まだ誰もこの副作用の脅威には気付いていませんでした。
一方のシーザーは、仲間のチンパンジーたちと自由を求めた戦いに身を投じていきます。
こうして猿と人間との全面戦争が勃発したのです…。

いやぁよく出来てましたョ。
「猿の惑星」が初めて公開になったのが1968年。
「自由の女神かっ」と誰もが驚いたあのラストシーンは絶対に忘れませんからね。
あ、見てない世代がいるから言っちゃダメかな(笑)。でもあまりにも有名だもんね。
後追いのストーリーなのに、無理矢理な部分がなくて、
ある意味こちらのラストシーンも衝撃ですョ。
遺伝子操作は"神の領域"だと思うんですよね。
自然にあるものは必要だから、生まれ、変化し、進化していく。
でも人が自然界に存在しないものを人為的に作ってしまうのはやっぱり違うんじゃないかと。
原子力もしかり。必ずしっぺ返しがきますから。
娯楽映画としてだけでなく、考えさせられる部分も多い作品に仕上がってます。
是非見てみて下さい。☆4つ。
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.9.30
「エンディングノート」☆☆☆☆
「幸せパズル」☆☆☆
「天国からのエール」☆☆☆
「ドッグポリス 純白の絆」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近メチャメチャ忙しくて、試写に全然行けてません。
期限切れになった試写状をまとめて捨てた時、「これも見られなかったか…」と。
そんな作品は、この前の「ゲット・ラウド」のように、劇場に追いかけたいと思います。
さ、今週は4本です!



「エンディングノート」は、ガンで人生の最期を迎える男性のドキュメンタリー。

砂田知昭、1940年、愛知県生まれ。
サラリーマン一筋、日本の高度成長期を支えてきた彼が定年退職をし、
これから第2の人生を楽しもうとしていた矢先に告知されたガンという病。
それもステージ4まで進行しているとのこと。
それから彼が始めたのは、
自分の死の段取りを綴った"エンディングノート"の作成だったのです。
キリスト教の牧師を訪ね、家族で旅行をし、アメリカに住む孫との再会を喜び。
告知から約半年の彼の最期の人生を映し出しています。
カメラを回したのは末娘でこの映画の監督、ナレーションも務めた砂田麻美。
プロデューサーは是枝裕和。
辛くて悲しいはずの映画なのに、試写の会場内からは笑い声が上がって。
それもお別れの直前だったりもするんですから。
気付くと涙をポロポロこぼしながら笑ってた、そんな映画に仕上がってます。
この砂田知昭さん、相当なユーモアのセンスの持ち主。
愛する家族にいっぱい遺して旅立たれましたねっ。
見た後は、両親のことを思いました。もちろん自分も健康でいなくてはいけないなと。
心暖まる1本です。是非ご家族でどうぞ。☆4つ。
「エンディングノート」公式サイト



「幸せパズル」は、アルゼンチン映画。

ブエノスアイレスに住むマリアは専業主婦。
優しい夫とふたりの息子に恵まれ、幸せな日々を送っていたのですが、
平凡な生活にやはり何か物足りなさを感じることも。
ところが、50歳の誕生日に、家族からもらったジグゾーパズル。
これが彼女の人生を変えたのです。
人並み外れた才能を持っていたマリアは、家族に内緒で次々とピースの多いものに挑戦。
難なくこなしていったのです。
行きつけになったパズルの専門店で見た"パズル大会のパートナー募集"の広告。
これまた家族に内緒で応募してみると、
その広告の主は、何と大富豪の独身紳士だったのです…。

平凡な主婦の50歳デビューの物語。
でも50歳だからこそ思い切れないところもあって、
そのあたりが見ている同世代の主婦のみなさんには
共感を得るはずの部分なのかもしれませんね。
熟年男女が部屋の中で、ふたりきりでパズルをする。ねぇ…(笑)。
試写に来ていたそんな層の女性から、「わかるのよね〜」と声が上がってました。
ちょっとエンディングがぼやけた表現に。
アルゼンチン映画とはいえ、フランスとの合作なので、
その辺がフランス映画的になっちゃったかなというのが個人的な不満です。☆3つ。
「幸せパズル」公式サイト



「天国からのエール」は、実話を元にしたストーリー。

沖縄県北部の町、本部町。
大城陽は高校の近くで"あじさい弁当"という小さな弁当屋さんを営んでいました。
ある日のこと、バンドを組む高校の生徒がやって来て、
店の空きスペースを眺めながら、「ここが使えたらいいのに」とポツリ。
聞けば、どこでもうるさいと言われ、練習する場所がないと言います。
「本当にやりたいなら夢を諦めるな」。
そう励ます陽でしたが、
「大人がこんな何もない町にしたくせに、偉そうに言わないで」と返されてしまいます。
すると一念発起、陽は店の敷地を使って、スタジオを建て始めたのです。
それも奥さんに相談もせず、母親からお金を借りて、自らの手で建て始めたのでした。
それを見ていた生徒たちも手伝いに来るようになり、
その数はひとり増え、ふたり増え、最後は何十人が手伝うことに。
こうして"あじさいスタジオ"は完成します。
しかしその頃、密かに病魔が陽の身体を蝕んでいたのでした…。

これは実在した仲宗根陽さんの物語を元にした映画で、
陽さんは劇中同様"ニイニイ"と呼ばれ親しまれていたそう。
ひとついい話。"あじさいスタジオ"からメジャーデビューした
ステレオポニーが主題歌「ありがとう」を歌ってます。
この"あじさいスタジオ"にはルールがあって、破るとニイニイにこっぴどく怒られるんですね。
でもそんな大人が少なくなった今、陽さんのような大人はすごく貴重で大事な存在なんです。
でも天国に旅立っていってしまいました。享年42歳。
悲しいけど、その志はこれからも受け継がれていくはず。
ボクもそんな口うるさい大人でありたいといつも思ってるんですョ。
でも陽さんのように命懸けじゃないとダメなんでしょうね…。
逆に大人が見て、学んで欲しい1本です。☆3つ。
「天国からのエール」公式サイト



「ドッグポリス 純白の絆」は、市原隼人主演作。

早川勇作は人一倍正義感の強い熱血警察官。
ところがその性格が災いして、協調性に欠けるとの評価。
願っていた刑事への昇進ではなく、
警視庁警備部警備二課装備第四係という部署へ配属となります。
ここは警備犬とその犬を扱う部員の部署だったのです。
警視庁に警察犬が導入されて30年。
訓練の日々は続けど、未だに一度も警備出動はなく、
「犬屋」と陰口を叩かれることも。そんな環境に腐る勇作。
そんな勇作とコンビを組んだのは、劣性遺伝のアルビノを持つ真っ白な犬"シロ"。
互いの境遇を重ね合わせ、心を通わせていく勇作とシロ。
そんなある日、凶悪なテロ犯罪防備のため、遂に出動命令が下ったのです…。

試写で拝見しておいて大変申し訳ないのですが、
なんだかすべてが中途半端に感じてしまいました。
勇作の教官役も務める水野夏希巡査に扮するのは戸田恵梨香。
彼女にこういう役は向かないなぁと再確認。
今回ばかりは市原隼人の熱さも空回り。
サスペンスものとしても、感動ものとしてもどうにもピンと来ず。
周りに「あれ見たいんですよね」という人が多いので、
自身で確かめてごらんとしか言いようがありませんでした。
期待し過ぎちゃったからかな。あなたも自分の目で確かめて来て下さい。☆2つ。
「ドッグポリス 純白の絆」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.9.21
「カンパニー・メン」☆☆☆
「スリーデイズ」☆☆☆
「モテキ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

連休の多いシーズンになりました。よかったら1日は映画に使ってみてはいかがです?
面白い映画が続々と公開になりますョ。
さ、今週は3本です!



「カンパニー・メン」は、ベン・アフレックス、トミー・リー・ジョーンズ、
ケヴィン・コスナー、クリス・クーパー、4人のアカデミー賞受賞俳優の豪華競演作。

ボビーは総合企業GTX社のエリート販売部長。37歳で年収12万ドルを稼いでいました。
ところが、08年9月に起きたリーマン・ショックで、GTX社は大規模なリストラを敢行。
ボビーもまさかのクビを言い渡されてしまいます。
会社が与えたのは、12週分の解雇手当と就職支援センターへのあっせんでした。
自分の出張中にリストラを行なったことに怒り心頭の重役のジーンでしたが、
創業仲間であるCEOサリンジャーの「会社は社員よりも株主に対して責任がある」という言葉に、
返す言葉がありません。
さらなるリストラで勤続30年のベテラン重役であるフィルも解雇。
遂にはジーンもクビを言い渡されてしまうのです。
無情にも会社にお払い箱にされてしまった男たち。
この苦境をどう生き抜いていくのでしょうか…。

例えばボビーは、豪邸に住んで、ポルシェに乗って、会社に行く前にゴルフをやる生活。
再就職をしようにもプライドが邪魔をします。
会費が滞り、ゴルフ場でのプレイを断られて怒り、車を売るのも嫌がるボビー。
一方で奥さんはパートに出て、
子どもはボビーからもらったクリスマス・プレゼントのゲーム機をオモチャ屋さんに返品に行く。
その現実を見て、ボビーはようやく気付くんですね。
遅過ぎるって…(笑)。
でもいい家族に恵まれました。うらやましい(笑)。
その他の男たちにもそれぞれにドラマがあるので見てみて下さい。
アメリカはヘッドハンティングも自由なら、
解雇宣告されたら数時間で出ていかなくちゃならないほどドライなんだそう。
お世話になりましたと挨拶回りもできないんですって。
でも日本でも会社は「社員のもの」ではなく、「株主のもの」と言われ始めてますよね。
それじゃ会社と社員との関係が希薄になっていくのは明白。
その"アメリカ化"は日本の風土風習には合わないと思うんだけど。考え方が古い?
自衛策としては会社の肩書きに頼らず、"自分力"を付けること。
そして"評価は人がする"と知ること。自分を過剰評価するような勘違いをしないことでしょうね。
世のサラリーマン諸氏、是非見ておいた方がいいですゾ。☆3つ。
「カンパニー・メン」公式サイト



「スリーデイズ」は、ラッセル・クロウ主演のサスペンス・アクション。
大学講師のジョンは、妻のララと息子のルークとの3人暮らし。
ある日、突然警察がやってきて、ララを殺人事件の容疑者として連行していってしまいます。
無実を訴えるララ。しかし、残された証拠は確かにララが犯人であることを示すもの。
状況は明らかにララに不利だったのです。
妻の無実を信じるジョンは、法に頼れないなら自分でララを救うしかないと、
自らの命を危険にさらし、危ない橋を渡りながらも脱獄計画を練ります。
ララとの面会に行ったジョンは、3日後に彼女が長期監獄に移送されることを知ります。
タイムリミットは3日間。果たしてジョンはララを救うことができるのでしょうか…。

まず、ララは本当に無実なのか?
警察が来る直前に、血の付いたコートを洗い流しているから、まずそこがとてもグレー。
もしかしたら…? それが見ている側をも惑わせるんですねぇ。
ララもジョンも、何度も心が折れそうになる。でも"信じてる"からこそ立ち上がれる。
これまた素敵な夫婦愛。またまたうらやましい(笑)。
終盤は手に汗握る逃走劇。 逃げ切れるのか、ララが無実なのかは見てのお楽しみです。☆3つ。
「スリーデイズ」公式サイト



「モテキ」は、TVドラマでも人気を博した、人気コミックの映画化。 藤本幸世、31歳。
日々ダラダラ過ごし、彼女も仕事も金もないとツイッターでボヤく毎日。
そんなある日、一念発起してとりあえず働こうと決意。
なんとかニュースサイトのライターとして仕事にありつきます。
相変わらずのツイッター三昧の中で、趣味の合うフォロワーと会おうと約束。
すると現れたのは男ではなく、超の付くカワイイ女の子だったのです。
彼女の名はみゆき。雑誌の編集者。彼氏がいるといいながら、幸世とはなんとなくいい仲に。
でもどうしていいかわからない幸世は一線を越えられず。
それでも、それからというもの、幸世の前には次々と美女が現れます。
みゆきの友達で33歳のOL、るみ子。
上司に連れて行かれたガールズバーで働く巨乳の愛。
会社の先輩社員、素子も魅力的。
真の愛どころか、恋さえしたことのない"セカンド童貞"の幸世は、
この"モテキ"をうまく自分のものにすることができるのでしょうか…。

いやぁなかなか面白かったですョ。 懐かしいJ―Popの名曲たちが、効果的に使われていて。
43歳の大根仁監督のセンスの良さが光ります!
他の登場人物もかなり濃くて、
幸世の会社の社長の墨田という43歳の男(リリー・フランキー)がいきずりのセックスをしたあとで、
とあるセリフを言うんですよ。それがもうおかしくて。
「やばっ、似たこと言ってないかなぁ」って、ちょっと素に戻っちゃいましたから(笑)。
ぷぷっどころか、ゲラゲラ笑える作品です。もういいわぁ、るみ子役の麻生久美子!
もちろん、森山未來の奥の深さ、長澤まさみはやっぱり可愛いんだ(失礼!)など、
再発見?もありますョ。☆4つ。
「モテキ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.9.17
「アンフェア the answer」☆☆☆☆
「サンクタム」☆☆☆
「ラビット・ホラー3D」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日久々に劇場で映画を見ました。
上映前にマナーについての啓蒙CFを繰り返し流すのはとてもいいこと。
特に「前の席を蹴らない」はホントです。
もちろん私語、携帯の灯りなども大切なんですけど、「前の席を蹴らない」はその通り!
お陰ですごく快適に映画を楽しむことができました。マナー向上は大事なことですねっ。
さ、今週は3本です!


「アンフェア the answer」は、人気TVドラマシリーズの劇場版第2弾。

警視庁捜査一課のNo.1刑事だった雪平夏見。
今は北海道での勤務に当たっていました。
その頃、東京で起きていたのがネイル(釘)ガンによる連続殺人。
容疑者となる人間が次は殺されるという異常な事件に関心を抱く雪平。
昔の仲間から情報を集めると、
今度の容疑者は元夫のフリーライター・佐藤和夫だと言います。
例に違わず、次に無残な死体で見つかったのは佐藤でした。
動揺する雪平。
すると家のドアがけたたましくノックされます。開けると警察が。
次の瞬間、雪平は警察の言葉に耳を疑います。
「雪平、佐藤和夫の殺人容疑で逮捕する」。
佐藤和夫の殺人現場に、雪平の指紋が残っていたというのです。
これは"予告殺人"?だとすると、次に命を狙われる存在。それが雪平なのでした…。

これまでも破天荒な捜査で敵も多かった雪平ですから、恨まれるのは仕方ない。
しかし、この事件は単なる怨恨ではなく、背後でかなりの大きな力が動いていると。
シンプルに粗筋を書いてきましたが、すごい人間相関図(笑)。
そのため、謎解きにも時間を巻き戻す手法を多用。
見ている側はその度に「なるほど」と溜飲を下げるけど、
「またか…」と思わせるほどに多いのもいかがなものかと。
ま、それほど緻密なストーリーであるということの裏返しなのかもしれません。
ドンデンデンのデンのデン。
飽きることなくスクリーンに釘付けです。☆4つ。
「アンフェア the answer」公式サイト



「サンクタム」は、今年4月に公開予定だった作品。

洞窟探索のベテラン、フランクは、パプアニューギニアにある、
世界最大の洞窟"エスペリト・エサーラ"の全貌解明に取組んでいました。
このチームにはフランクの息子ジョシュも参加。
しかし複雑に入り組んだこの秘境を、そう簡単には解き明かせずにいたのです。
そんなある日のこと、スポンサーである大富豪のカールが、
恋人を連れて現場を訪れます。案内役を買って出るジョシュ。
ところが、突如これらの探索チームと地上との通信が取れなくなるんですね。
実は巨大なサイクロンが発生。
川は逆流し、想像をはるかに超える量の水が洞窟内に流れ込んできたのです。
次々と出る犠牲者。
進むべきか、否か。
命を懸けた潜行が始まったのです…。

ジェームズ・キャメロン監督作品。
大量の水が流れ込んで人の命を奪う表現があるので、ここまで公開が延期となっていました。
ボクは個人的にこういう狭いところや、閉じられた場所に向かっていくのはとても嫌なんですよね。
どうにも息苦しくなってしまいます。
作品としては詳細にまでこだわった、本格的なサバイバル映画。
3Dである必要があるかどうかは別にしても、
この手の作品が好きな人には十二分に楽しめるはずですョ。☆3つ。
「サンクタム」公式サイト



「ラビット・ホラー3D」は、その名の通りの3Dホラー。

絵本作家の父と、10歳の弟の大悟と暮らすキリコ。
キリコはある出来事がきっかけで、長年、失語症を患っています。
父も最初の妻と再婚した二人目の妻を共に亡くし、
現実から逃げるかのように生きている状態。
自分がしっかりしなくちゃと、大悟の母親代わりも務めるキリコでしたが、
ある日、大悟と行った映画のスクリーンからウサギの縫いぐるみが飛び出してきて、
大悟はそれを持ち帰ってしまったんですね。
それが悪夢の始まり。
ウサギに誘われて連れて行かれた先は、恐怖のヘルランドだったのです…。

と書いていて、なんか芯を食っていないなぁと(笑)。
それもそのはず。書けないことがこの映画の"胆"だから。
多くは語りません。心理ホラーです。そういう意味ではストーリーに深みがありました。
3Dはどうかな。見て判断して下さい!☆3つ。
「ラビット・ホラー3D」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.9.3
「カウントダウンZERO」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

3月11日以降、直接的であれ、間接的であれ、
震災をイメージさせるものは公開が自粛されていたのですが、
ここに来てだいぶ緩和されたのか、公開に踏み切る作品が増えてきました。
今週紹介するのも、そんな作品です。
今週は1本です!


「カウントダウンZERO」は、核の脅威を考えるドキュメンタリー。

世界には2万3千を超す数の核爆弾があり、
それが果たして本当に安全に管理されているのかと言えば決してそうではなく。
テロリストたちが核を持てる時代だし、人為的なミスでもボタンを押してしまう危険性があると。
核兵器を量産した、東西冷戦時代のゴルバチョフ元旧ソ連大統領、カーター元米大統領を始め、
核開発関係者、CIA関係者らがゾッとするような証言をしています。
初めは4月の公開予定だったのが、
3月11日の東日本大震災による福島原発の事故の関係で公開が見送られ、
今またこの時期に改めて核の恐ろしさを考えるべきと公開になるよう。
ゼロへのカウントダウン。そのゼロとは、核兵器なのか、それとも我々人類なのか。
世界唯一の被爆国でありながら、再び核の汚染に頭を抱える日本。
原子力発電所の存廃を議論する以前に、間違いなく見るべき1本だと思います。☆3つ。
「カウントダウンZERO」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.8.26
「アップサイド・ダウン クリエイションレコーズ・ストーリー」☆☆☆☆
「インシディアス」☆☆
「神様のカルテ」☆☆☆
「ハウスメイド」☆☆☆
「ホームランが聞こえた夏」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ボクが執筆を担当しているJRAのフリーペーパー『CLUB銀座』。
ウインズ銀座、ウインズ新橋、新橋GateJで配布しているのですが、
8月の"お勧めコーナー"では4週に渡って映画を紹介してきました。
競馬のフリーペーパーですから、馬が登場しなくても、どこか競馬に引っ掛けて話を進める訳です。
無理があると思うでしょ?ところが結構結び付いちゃうんですョ。
何故なら、映画はもちろん、競馬も人生の縮図みたいなところがあるから。
あまり映画を見ない競馬ファンが、映画館に足を運んでくれるようになるといいなぁ。
さ、今週は5本です!


「アップサイド・ダウン クリエイションレコーズ・ストーリー」は、
数々の人気アーティストを輩出してきた、
イギリスのインディーズ・レーベルの歴史を描いたドキュメンタリー。

83年に設立されたインディーズ・レーベル、クリエイションレコーズ。
総帥はアラン・マッギー。
ドラッグに酒。とにかくハチャメチャなレーベルだったけれど、
そこに流れているロックンロール・スピリットは素晴らしく、
オアシス、プライマル・スクリーム、ライド、ジーザス&メリー・チェインなど、
UKを代表するロック・バンドが所属したレーベルでもあります。
「クリエイションなら間違いない」。
そんなブランドイメージがしっかりできていたのですが、とにかく破天荒!
売上のすべては酒やドラッグに消えていく。
でもまた売れるアーティストが出てきて、金が入ってくる。その繰り返し。
結果、メジャーの資本に吸収されていってしまうのですが、
ここまでやれたらすごいよねという、究極の"遊び心"が
この超個性的なレーベルを支えていたのかもしれません。
本人たちが出演して、貴重な映像と共に裏話を表に出しちゃうんだから、
音楽ファンにとっては面白くないはずがない(笑)。
夏フェスを満喫したというあなたなら、きっとわかると思いますョ。☆4つ。
「アップサイド・ダウン クリエイションレコーズ・ストーリー」公式サイト


「インシディアス」は、絶叫系ホラー映画。

ごく普通の夫婦であるジョシュとルネには3人の子供がいて、幸せな生活を送っていました。
ところが引っ越しをし、新居に移ったとたん、
次々とおかしな出来事が起こるようになったのです。
そんなある日のこと、小学生のダルトンが梯子から落ちて、
原因不明の昏睡状態に陥ってしまうんですね。
ジョシュに「とにかく引っ越して」と訴えるルネの願いを聞き入れ、
別の家に引っ越したのですが、怪奇現象は続きます。
そう、その"何か"は家ではなく、ルネたちの一家にとりついていたのでした…。

人気の「ソウ」シリーズと、
大ヒットした「パラノーマル・アケティビティ」のスタッフが手を組んだと話題のホラー作品。
確かに、時間の経過を追う感覚は「パラノーマル・アケティビティ」、
不条理な不気味さは「ソウ」のテイストでした。
ただ、ホラー映画に何を求めるかだと思うんですが、
ボクは個人的にストーリーの深さも欲しがっちゃうんですね。
この作品には正直そこが欠けてたかなぁ。
音で驚かされる場面が結構多くて、「それって力技じゃん」と(笑)。
たぶん、ホラー・マニアの人はまた違った見方をするんだろうなと思いますョ。
これこそ自身の目で確かめてみて下さいねっ。☆2つ。
「インシディアス」公式サイト


「神様のカルテ」は、現役医師が書いた小説の映画化。
櫻井翔、宮崎あおい主演作。

長野県松本市にある本庄病院。
ここに勤める栗原一止は勤続5年目の内科医。
医師不足でキツい勤務条件にもかかわらず、
責任感の強い一止は専門外の診察もこなす、患者さんからも信頼の高い先生でした。
そんな一止を癒してくれるのは、愛妻の榛名と、
同じアパートに住む個性的な住人たちだったのです。
ある日のこと、一止は大学病院から「最新医療の研究をしに来ないか」と誘われます。
ひとりの医師が直接救える患者の数はわずかでも、
研究によって医学を進歩させればより多くの人を救うことができる。
悩む一止。
そんな一止の前に、末期ガンと診断された女性患者が現われたのです…。

最初は正直、櫻井くんの演技がピンとこなくて(笑)。でも時間が経つに連れ、
そのぼくとつとしたセリフ回しが一止のキャラとハマってきたのです。
目標を持って生きること、残り少ない命を生きること、誰かのために生きること。
生きるってホントに難しい。だからこそ意味があるんだって、
命の在り方や、生き様、さらには死に様を考えさせられる1本です。
大きな災害に見舞われた今年、
特にこの映画の存在意義が高まるんじゃないかなと思いますョ。☆3つ。
「神様のカルテ」公式サイト


「ハウスメイド」は、韓国のサスペンス映画。

お金持ちの家でメイドとして働き始めたウニ。
その家の家族構成は、夫のフンと妻のヘラ、6歳の娘ナミの3人家族。
さらにヘラは双子を妊娠していました。
メイドの先輩ビョンシクの厳しい指導を受けながら一生懸命働くウニでしたが、
ある晩、フンがウニの寝室にやってきて、体を求めてきたのです。
それを受け入れてしまうウニ。
翌朝、何も無かったかのように一枚の小切手を渡されます。
そしてわかったウニの妊娠。
人を人と思わないようなこの家の人間たちがウニにした仕打ち。
それは露骨でヒドいものでした。
そして、ウニの復讐が始まったのです…。

ありそうでなさそうな、またなさそうでありそうな舞台設定。
「家政婦は見た!」のセクシーバージョンといった感じでしょうか(笑)。
たまに韓国映画を"エグい"と思う瞬間がありますが、この映画もその類い。
ラストはかなり衝撃的です。
そこまでやらないと"衝撃の問題作"にはならないのかもしれないけど。☆3つ。
「ハウスメイド」公式サイト


「ホームランが聞こえた夏」も、韓国映画。こちらは感動の青春ものです。

聴覚障害者が通うソンシム高校。ここには野球部がありました。
韓国プロ野球最高のピッチャーと言われたキム・サンナム投手が
ソンシム高校野球部のコーチに就任するのですが、それには訳があったのです。
その訳とは、飲酒による暴行事件を起こし、球界追放の瀬戸際に追い込まれており、
情状酌量のパフォーマンスとしてやってきたのです。
部員数も少なく、基礎もできていない。
そんな選手たちを見て、ますますやる気を無くすサンナムでしたが、
中学野球のNo.1ピッチャーで、突然聴覚障害に襲われ野球を断念したミョンジュが、
公園で黙々とボールを投げ込む姿に、少年の頃の自分を重ね合わせたサンナム。
そのミョンジュを野球部に誘い、心を入れ替え、選手たちの指導に力を注ぐのでした。
彼らの目標はひとつ。健常者も出る高校野球の大会「鳳凰杯」で1勝すること。
しかしそれは予想以上に高い壁だったのです…。

2時間24分の大作ですが、夏の甲子園の余韻もあってか、そう長く感じませんでした。
心を入れ替えてからのサンナムが、指導者として偉いなと思ったのは、
自分も一緒にやるということ。
ただ命令するだけじゃなく、過酷な練習を生徒と一緒にやる姿勢が素晴らしい。
聴覚障害者が野球をやるのはボクらが思う以上に大変なんですね。
「オーライ」などの声を掛け合うことができないから、
映画でも出てくるけど、ボールを追って衝突したりする。
他にも、通常は打球音でボールの飛ぶ方向や距離を測るのに、それができない。
でも彼らは大きな目標に立ち向かっていくのです。
じゃそのへんはどうしたの?と聞かれると描かれてはいないんですけど(笑)。
ま、それ以上に感動的な場面の多い映画だったから許しちゃう(笑)。
目標があって、それに向かって頑張るっていいですねっ。
可能性を大人が勝手に柵で囲って決め付けちゃいけないんだなって。
それは障害のあるなしにかかわらず、そうなんだって思いました。
ある意味、現実もしっかり捕らえていて、
綺麗ごとで終わらせてないあたりもよかったと思います。泣けますョ。☆4つ。
「ホームランが聞こえた夏」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.8.19
「シャンハイ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

8月も半ばを過ぎ、学生の夏休みもあとわずか。
半分を過ぎると「まだ…ある」から「もう…ない」に変わるから不思議。
同じ日数でも心持ちが違っちゃうんですよね。
残された夏の日々を無駄に過ごさないよう、映画館に足を運んで、感性を磨いてみてはどうですか?
さ、今週は1本です!



「シャンハイ」は、渡辺謙、菊地凛子出演のハリウッド映画。

第二次世界大戦開戦直前の上海。
イギリス、フランス、アメリカ、日本など、列強と呼ばれる国々が、
それぞれに分割して支配する危険な都市と化していました。
そんな上海にやってきたアメリカの諜報員ソームズは、親友で同僚のコナーが殺されたことを知り、
何とかその真相を究明したいと闇の世界へと入り込んでいきます。
地元のボスであるランティンと、その美しすぎる妻アンナ。
日本軍情報部の田中大佐。
そして謎の日本人娼婦のスミコ。
それぞれにそれぞれが持つ思惑とは?
そして世界は大きな戦争へと突入して行ったのです…。

実はアンナは反日テロ組織のトップで、ランティンとの結婚は莫大な資産を活動資金に使うためのもの。
そのことに薄々気付いていた田中大佐は、捜査を進めるうちに夫であるランティンと対立。
ソームズはアンナの美しさにひかれていく、といった図式なんですね。
そして一気に事態が進展。男と女の物語も同様にクライマックスへというお話。
面白かったですョ。
1941年、この頃の上海は"魔都"と呼ばれていたそう。
英、仏、米、日に加え、伊、独も上陸。
欲望と権力の"魔都・上海"。危険だからこそ魅せられる魅力というのがあるんでしょうね。
緊迫感がスクリーンからヒシヒシと。男儀と女儀と、そして真実の愛と。
是非ご覧になってみて下さい。☆4つ。
「シャンハイ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.8.12
「ツリー・オブ・ライフ」☆☆☆
「ペーパーバード 幸せは翼にのって」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

韓流映画を多く上映している映画館で、
地下から上がってきたエレベーターからどっと出てきたおばちゃんたち。
最後の人は"開"ボタンを押すでもなく、体をよじるようにエレベーターから出てきました。
ボクらが流れに押されてるうちに扉が閉まってしまい、上に昇りたいのにエレベーターはまた下へ。
おばちゃんたちは自分さえよけりゃいいんでしょうね。
韓流スターの「アイシテマス」の言葉は、間違なく自分に向かって言ってると思ってるんだろうなぁ。
そんな他人を思いやれないような人を好きになりませんよっ。いい年なんだから反省しなさい!
さ、今週は2本です!



「ツリー・オブ・ライフ」は、ブラッド・ピット、ショーン・ペン主演、
テレンス・マリック監督作品。

1950年代のテキサス。
厳格な父と、優しい母の間に生まれ育ったジャックは、あまりにも極端な父の教育方針に、
恐怖だけでなく、憎しみをも抱いてたのです。
大人になって成功したジャックでしたが、常に心は満たされず。
何故なんだろうと、ふと少年期を思い返すと、そこには父の大きな影響があったのです…。

家庭環境において、親の影響というのは当然大きく、
その親の思いを、子は良くも悪くも受け継いでいくと。
生命の誕生、宇宙の神秘、神の存在とリンクさせながら、壮大なスケールで描く"継承"の物語。
宗教色も濃く、スピリチュアルな世界に多少の理解があるとわかるかなって感じでしょうか。
フラピ・ファンがそれだけで行くと、ちょっと面食らうかもしれません。
それでも評価は高く、本年度カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞しています。
玄人ウケする映画ということでしょうか。☆3つ。
「ツリー・オブ・ライフ」公式サイト


「ペーパーバード 幸せは翼にのって」は、スペイン映画。

1930年代、内戦時代のマドリード。
喜劇役者のホルヘは、妻と息子と貧しいながらも幸せな日々を過ごしていました。
ところが内戦の爆撃が一家を襲います。舞台を終えて帰宅したホルヘが見たのは、
瓦礫と化した我が家と、そこで息絶えていた妻子の姿だったのです。
一時、マドリードを離れていたホルヘが劇団に戻ったのは内戦終了後。
舞台の相棒だったエンリケは、戦争で両親を失くしたミゲルという男の子を養っていたのです。
自分の息子と同じぐらいの年格好の少年ミゲルに、複雑な思いで接するホルヘ。
しかしこの時、ホルヘは反体制派の反乱分子として、軍部から目をつけられていたのです…。

笑顔を提供する側の喜劇役者の集団が、それぞれに抱える悲しみ。
それがこの物語のひとつの味付けにもなっているはず。
実はミゲルの亡くなった両親もコメディアン。それだけに放ってはおけなかったのでしょう。
ホルヘはミゲルに自分の息子を投影し、ミゲルはホルヘに父の姿を重ね合わせる。
そんな感情を認めたくないものの、徐々に心が繋がっていくふたりでしたが…。
喜怒哀楽すべての感情が織り混ぜられた作品。ラストには感動のシーンが待ってますョ。☆4つ。
「ペーパーバード 幸せは翼にのって」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.8.4
「ヒマラヤ 運命の山」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写室での出来事。
年配の映画評論家らしきふたりが、ある映画について語っていたのですが、
「主人公がなぜその行動に出るのかわからない。もっと動機をハッキリ描かないと」と、かなりの批判。
でも、ボクもその映画は見ましたけど、動機はちゃんと描かれているんです。
短いシーンですが、「なるほどだからか…」と思わせるようにしっかり描かれてました。
見逃したのか、それを些細なシーンとスルーしたのかはわかりませんが、
静かな試写室で大きな声でしゃべってるから見た人はみんな「何言ってんの」と思ったはず。
教えてあげようかなと思ったけど、それも…ねぇ(笑)。
自論をぶつ時には場所と論拠を考えないといけませんね。
さ、今週は1本です!



「ヒマラヤ 運命の山」は、ドイツの登山映画。

ラインホルトとギュンターのメスナー兄弟は、幼い頃から登山が大好き。
ふたりの夢は"運命の山"と呼ばれたヒマラヤ山脈ナンガ・パルバートに挑むこと。
標高8125mのこの山は、幾多の登山家が命を落としてきた前人未到の山だったのです。
大人になって登山家として名を馳せたふたりは、
ナンガ・パルバート遠征隊が組まれると知り、これに参加。
ライバルとも言えるエリート登山家が多数集まった隊の中で、
メスナー兄弟は先陣を切り、見事に初登頂に成功します。
ところが試練はその後に待っていたのです。
弟のギュンターが高山病にかかり、装備も足りなくなり、下山がままならなくなってしまったのです。
後続のチームに助けを求めるも危険過ぎて無理だと断られてしまいます。
予定していたルートで戻れなくなったふたりは、勘だけを頼りに危険なルートで下山を始めます。
しかし意識が薄れていく弟を抱えながら、猛吹雪の中を進むことは不可能だったのです。
そして遂に弟の姿を見失ってしまったラインホルト。
心身共にボロボロになりながら、奇跡的に麓の谷に辿り着きます。
病院のベッドで新聞を見て愕然とするラインホルト。
ナンガ・パルバート初登頂は自分たちではなく、後から来たオーストリアのパーティで、
ギュンターの死は身勝手な行動を取ったラインホルトの責任だと。
弟の遺体を捜すために、そして登山家としての尊厳を取り戻すために、
ラインホルトは再び"運命の山"に挑むのでした…。

この物語は実話で、原作は主人公であるラインホルト・メスナー。
実は1970年に遠征隊を集めたヘルリヒコッファーと裁判になり、
ラインホルトは「初登頂は自分たちで、
弟の死は救助を放棄したヘルリヒコッファー側に責任がある」と主張。
ところが、14件にも及ぶ訴訟のすべてで敗訴。
この映画でその事実を伝えたいという強い意思はあったはず。
しかし、ラインホルトは17年の歳月を掛けて、七大陸最高峰を含む14の8000m峰を完全制覇。
"世界で最も成功した登山家"となったことで、
自らの主張は証明し終えていると言ってもいいのではないでしょうか。
撮影はよりリアルさを求めたため、映像の迫力にはものすごいものがあります。
自然の偉大さ。だからこそ挑む人間の思い。スクリーンに釘付けになって下さい。☆4つ。
「ヒマラヤ 運命の山」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.28
「おじいさんと草原の小学校」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「トランスフォーマー」を見たいんですよねぇ。
試写のご案内は頂戴してたんですけど、完成披露はスケジュールが合わず、
社内試写はあっと言う間に"満席"で予約できず…。
パラマウントの他作品の試写を見ると予告編が流れるんですが、これがすごかった!
で、3Dでしょ!こりゃおっきなスクリーンで見なきゃですよね。
少し落ち着いた頃に劇場に足を運ぶつもりです!
さ、今週は1本です!



「おじいさんと草原の小学校」は、実話に基づいた物語。

03年のケニア。
政府はすべての人に無償で教育を提供すると発表。各地の学校には子供を連れた親が殺到します。
そのニュースをラジオで聞いた84歳のマルゲは、自分も教育を受けたいと地元の小学校へ。
ところが当然のことながら、門前払いにされてしまいます。
「誰もが無償でと言っていたじゃないか」。
諦めることなく、来る日も来る日も、学校の門まで通うマルゲ。
その熱意に折れた校長のジェーンは入学を許可。
しかし、老人が自分たちの子供に混じって授業を受けていると知った親たちは学校に猛抗議。
遂には教育委員会をも巻き込む問題に発展してしまいます。
それでも教育を受けることを望むマルゲ。
彼には読み書きを学ばなくてはならない理由があったのです…。

イギリスの植民地下にあったケニアでは各部族同士の対立が根深く、
豊かになった都市部と地方の貧困の差も大きかったんですね。
マルゲも若い頃は自由のために戦った戦士。
ゆえに自分の目の前で愛する妻と子を虐殺され、反体制派として拷問も受けました。
その精神的、肉体的苦痛は今も消えることがなかったのです。
子どもたちに自身の経験を話し、自由の素晴らしさを説き、
時に本気でしかるマルゲは、"生きる教科書"のような"同級生"でした。
それでもどこの国にもモンスターペアレンツはいるもので。
マルゲはもとより、校長のジェーンまで学校を追いやられそうになります。
老人特有の頑固さというか、
入学を認めてもらったんだからおとなしく勉強だけしてなさいと思う向きもあるでしょう。
でも日本にも昔はいたじゃないですか、他人の子供を叱るおじいちゃん。
子供の目、感性は正直ですョ。
マルゲの瞳もそう。読み書きが徐々にわかっていく時の、マルゲのうれしそうな表情が印象的でした。
人間いくつになっても"学び"は大切です。☆3つ。
「おじいさんと草原の小学校」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.22
「ロック わんこの島」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、ボクの周りは、「コクリコ坂から」の話で持ち切りです。
ボクと同世代の人からは、「いい映画みたいだね。見てみたいね」と。
若い世代からは、「最近のジブリは…。ちょっと怖い(笑)」と。
ボクは若い世代の人たちの感想が知りたいんですよね。
1963年が舞台のあの作品を見てどう感じるか。単なる懐古主義と思うのか、それとも?
よかったらメールフォームから感想を聞かせて下さいね!
さ、今週は1本です!



「ロック わんこの島」は、実話を基にしたストーリー。

三宅島にある民宿"たいよう"。
明るく元気いっぱいの松男と貴子夫婦と、息子で小学生の芯。
そして房子おばあちゃん。家族で仲良く切り盛りをしていました。
房子おばあちゃんが飼っていたハナから生まれた子犬のロック。
芯は「ちゃんと面倒を見るから」と約束をし、自分で飼うことにしたんですね。
やんちゃなロックが巻き起こすドタバタ劇。
それでも笑顔がいっぱいの生活に、まさかの悲劇が降りかかります。
島が噴火したのです。
大量の火山灰に火山ガス。宿泊のキャンセルどころか、
ついには全島民が島外への避難を余儀なくされてしまいます。
ペットは飼えないということで、ロックは動物救護センターへ。
ところがロックは姿を消してしまったのです。
しばらくたってから、島で奇跡的に生き延びていたという1匹の犬が保護されます。
なんとそれはロックだったのです。
奇跡の再会に喜ぶ芯たち。しかし、避難住宅では犬を飼うことはできません。
芯たちは苦渋の決断を迫られるのでした…。

2000年8月に大噴火を起こした三宅島。
その時、愛犬と別れ別れになったものの、後に奇跡の再会を果たした人が
「めざましテレビ」の『きょうのわんこ』に送ったエピソードが基になっています。
ロックは復興の象徴として、地元の人からはもちろん、観光客からも愛されたといいます。
犬と子どもとお年寄り。涙するのは必至ですが、
それよりも風化させてはいけない教訓が自然災害にはあると思います。
故郷を離れたくない気持ちってこんななんだなぁというのも改めて感じる1本です。
東日本大震災の被災者のみなさんにも思いを馳せたい作品です。☆3つ。
「ロック わんこの島」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.15
「コクリコ坂から」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

函館に行った時に、函館で映画を撮影するのには欠かせないという人物と会って話をしてきました。
あの「チャーミーグリーン」のCFで、
おじいちゃんとおばあちゃんが仲良く手を繋いでいたのも函館の坂。
情緒たっぷりで、それはそれはいいところです。
「でもこの街にはスクリーンの数が少な過ぎる。人口5万人に1スクリーンと言われるから、
30万都市の函館なら6スクリーンないといけないのに、4つしかないんですよ…」と。
なるほど。
インスピレーションを与えてくれそうな町に、逆に映画文化が根付いていないなんて。
この人は映画祭を誘致したり、「函館に映画を」と一生懸命でした。
「微力ですが、何かご協力できることがあれば」と再会を約束。頑張って欲しいです!
さ、今週は1本です!



「コクリコ坂から」は、スタジオジブリの最新作。

コクリコ荘は港の見える丘の上に建つ下宿屋さん。
間借り人たちの世話をしているのは3姉弟の長女、16歳の海でした。
彼女が通う高校には古いけれど、文化部の部室が入った"カルチェラタン"という建物があります。
しかし学校側はそれを取り壊して新しいビルを建てようとしていたのです。
学校新聞を発行している俊たちを中心に、
歴史ある"カルチェラタン"を守ろうという運動が起こっていて、
建て替えに賛成の学生と反対の学生とが激しく争っていたのです。
リーダーシップもあり、どこか破天荒な俊に魅かれ、俊の手伝いをするようになる海。
やがて互いに恋心を抱くようになります。
しかしふたりには結ばれてはいけない理由があったのです。それは…。

原作は少女マンガ雑誌「なかよし」に連載されていた同名コミックで、
企画・脚本は宮崎駿。監督は宮崎吾朗。
舞台は1963年の横浜。
海は毎朝旗を上げます。それは船乗りだった今は亡き父に向け、航海の無事を祈る旗。
タグボートで通学していた俊は、それをずっと見ていたんですね。
しかし、海が俊に見せた1枚の写真が、俊に衝撃を与えます。
亡くなった父だと紹介された写真の人物が、実は自分の父親と同一人物だったのです。
ふたりは兄妹?
結末は映画館でどうぞ(笑)。
ボクは1961年生まれなので幼年期が被ります。
トリスのおじさんの楊枝立てなど、懐かしい小道具も描かれていて(笑)。
人々が「上を向いて歩こう」と、活気に溢れて生きていた時代。
学生たちがカルチェラタンを守るのだって、利己主義や個人主義じゃない。
東京オリンピックに湧く世の中で、新しいものばかりを崇拝するような風潮の中、
昔ながらの良さを残そうと闘う彼らにはしっかりとしたイデオロギーがあったのです。
閉塞感ばかりの現代社会。
便利さばかりを追求する我々に、果たしてその主義主張はあるのでしょうか?
自分が幸せならいい。そう思っていませんか?
ボクらはボクらにとっての"カルチェラタン"を、
次の世代に伝えていく義務がきっとあると思うのですが。
古きよき時代との懐古ではなく、今の自分たちに当てはめて見ると、ハッと気付くことがあるはず。
何ひとつ文句を言わず下宿を切り盛りする海の姿には頭が下がります。
「あなたももっともっと頑張って」と尻を叩かれた気がします。☆5つ。
「コクリコ坂から」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.8
「アイ・アム・ナンバー4」☆☆☆
「海洋天堂」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

早いもので7月ですね。今年も半分以上が過ぎたことになります。
今年ここまでで、個人的によかったのは「ブラックスワン」と
「BIUTIFUL」かなぁ。邦画は「奇跡」がお気に入り。
あなたは心に残る作品がありましたか?
さ、今週は2本です!



「アイ・アム・ナンバー4」は、ドリームワークスが送るサスペンス・アクション。

特殊能力を持ちながら、その意味も使命もわからないまま、
正体不明の追っ手から常に逃げる生活を送ってきた9名の若者たち。
ナンバー4は、ナンバー1、2に続き、ナンバー3が殺されたことを知ります。
「次は自分の番だ」。
ようやく住み慣れた海辺の町を出て、守護者ヘンリーと共にパラダイスという田舎町に身を隠します。
ナンバー4は名前を"ジョン・スミス"と名乗り、地元の高校に生徒として紛れ込むんですね。
ところが彼の中の能力がちょうど覚醒を始め、
校内で手が発光するなど、徐々に目立ち始めてしまうのです。
普通の10代のように恋にも落ちるジョン。
しかし彼に平穏な日々などなく、謎の魔の手はそこまで忍び寄っていたのでした…。

プロデュースは「トランスフォーマー」シリーズで知られるマイケル・ベイ。
試写が最終日だったにもかかわらず、かなり空席があったので、
「もしや面白くないのかっ」と心配したのですが、なんのなんの。面白かったですョ。
ナンバー9までいるのですが、今回は殺された1、2、3を除くと、
勝ち気な女性のナンバー6しか出てこない。続編確定です(笑)。
正体を隠し切れずに、クラスメイトも巻き込んでの冒険の始まり。
みんな公認のヒーローになりそうな予感。
まずは第1弾から。見ておいて損はないと思いますョ。☆3つ。
「アイ・アム・ナンバー4」公式サイト


「海洋天堂」は、ジェット・リー主演のヒューマン・ドラマ。

妻に先立たれたシンチョンは、自分もガンに侵され、余命わずかであることを知らされます。
彼の心配はひとり息子のターフー。何故ならターフーは自閉症だったからなのです。
周りのみんなの力を借りて、なんとかターフーに自立してもらいたいと願うシンチョン。
その思いはターフーに届くのでしょうか…。

アクション・スターのジェット・リーが、アクションを封印して臨んだ作品。
ギャラももらわなかったとか。
正直、映画と同じ環境にないとなかなか理解するのは難しいかと思いますが、
知らずに自閉症に偏見を持つよりも、知っていた方がずーっといい訳で。
感動の度合いは人それぞれだと思いますが、子を思う親の気持ちはみんな一緒。
そこには素直に心打たれると思いますョ。☆3つ。
「海洋天堂」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.1
「小川の辺(ほとり)」☆☆☆
「蜂蜜」☆☆☆
「マイティー・ソー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近は試写会場の空調の調整が難しいようで。
駅などから歩いて汗をかいている時は涼しくていいのですが、
暫くするとだんだん寒くなってくる。特に女性は大変みたい。
これからの季節、節電もありますからね、映画館も同様。
暑さ寒さ対策は自分自身で考えないといけないということでしょう。
さ、今週は3本です!



「小川の辺」は、東山紀之主演の時代劇。篠原哲雄監督作品。

海坂藩士の戌井朔之助は藩内でも有数の剣の達人。
その腕を見込まれ、脱藩した佐久間森衛を討てとの命令を受けます。
ところが佐久間は朔之助の旧友で、妹・田鶴の夫だったのです。
佐久間の脱藩は、藩主のずさんな農地改革に苦しむ農民の声をすくい上げたもので、
気丈な田鶴が夫を支持するのはよくわかる。
朔之助が佐久間と剣を交わすことになれば、田鶴も兄に刃を向けるかもしれないと、
朔之助の母は心配するのですが、父は藩命とあらば受けるしかないと。
旅立ちの決意をする朔之助に、戌井家に仕える新蔵が同行を申し出ます。
実は新蔵は幼い頃からふたりと兄弟のように暮らしてきた、いわゆる幼なじみ。
田鶴は新蔵に恋心を抱くも、身分の違いから成就せず、
佐久間のところに嫁いだという経緯もあったのです。
長い旅の道すがら、様々な話をする朔之助と新蔵。
そして遂に佐久間と田鶴を発見するのです。
朔之助、田鶴、そして新蔵にどんな運命が待っているのでしょうか…。

藩命か、家族か、愛か。
今のような自由を謳歌できる時代とは違い、
制約の多い江戸の時代に生きた人たちの生き様を描いた作品です。
原作は藤沢周平。監督はボクの中高同級生の篠原哲雄。
全編山形ロケで、東北の美しい自然がたくさん映し出されています。
時代劇のロードムービーといった感じもあり、景色を楽しむのもよし。
現代人が失ってしまった、"義"の心を始めとする日本人固有の美しい心。
欠片でも残っていればこの映画の奥深さに気付くはず。
完全に無くしてしまっていたとしたら、よさはわからないかもしれませんね。☆3つ。
「小川の辺」公式サイト


「蜂蜜」は、第60回ベルリン国際映画祭で、最も栄誉のある金熊賞に輝いたトルコ映画。

人里離れた森の中に住む少年ユスフ。
父は希少な黒蜂蜜を取る養蜂家で、母との3人暮らし。
ユスフにとって、父の仕事に同行して、一緒に森の中で過ごす時間が何よりの宝物だったのです。
ところが最近急に蜂がいなくなり、蜂蜜が取れなくなってしまいました。
森のさらに奥深くへ蜂を探しに行こうとする父。危険と背中合わせの作業です。
父が家を出てから数日、予定の日を過ぎても帰ってきません。
憔悴する母の姿を見て、ユスフは自分が頑張らなくちゃと心に誓うのでした…。

BGMとしての音楽は一切使わず、映画を覆うのは、
木々のざわめき、鳥のさえずり、動物の鳴き声。まるで森林浴でもしているかのよう。
ユスフは学校にも通い始めるのですが、なかなか溶け込めず、
「よくできました賞」のバッジを自分だけもらえないんじゃないかと焦ります。
家では母を勇気づけなくちゃいけないし、様々な出来事がユスフを大人にして行くんですね。
もうすぐ夏休み。大人になったボクたちには、
あの何とも言えず甘酸っぱかった夏の日々を思い出させる1本かもしれません。☆3つ。
「蜂蜜」公式サイト


「マイティー・ソー」は、マーベル・スタジオが送る、初の3D作品。

神の世界の物語。
神々の王オーディンが君臨する世界で、跡継ぎになるはずの息子ソーは最強の戦士でした。
選ばれし者だけに持つことが許される伝説の武器"ムジョルニア"を得て、
徐々に傲慢な性格になっていったソーは、
父に無断で"氷の巨人の世界"に攻め入ってしまい、平和の均衡を壊してしまったのです。
王である父の逆鱗に触れたソーは"ムジョルニア"を剥奪され、
地球へと追放されてしまったんですね。
実はソーには弟のロキがいたのですが、ある時、ロキは自分の出生の秘密を知ってしまいます。
そこから神の世界制服を企み出すロキ。
地球に追放されたソーのにも、悪の魔の手が迫っていたのでした…。

マーベル・スタジオは「スパイダーマン」や「アイアンマン」、
「X―メン」で知られるプロダクション。
初の3D作品ということで、既存のものを超えるレベルになければGOは出さないはず。
その通りの迫力の映像でした。
アメコミのヒーローものですが、3D向きの作品であることは間違いなし。
ちなみにソーの仲間、ホーガン役には浅野忠信が。
彼にとって初のハリウッド・メジャー作品への出演となりました。
大人も子供も楽しめる1本ですョ。☆3つ。
「マイティー・ソー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.7.1
「小川の辺(ほとり)」☆☆☆
「蜂蜜」☆☆☆
「マイティー・ソー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近は試写会場の空調の調整が難しいようで。
駅などから歩いて汗をかいている時は涼しくていいのですが、暫くするとだんだん寒くなってくる。
特に女性は大変みたい。
これからの季節、節電もありますからね、映画館も同様。
暑さ寒さ対策は自分自身で考えないといけないということでしょう。
さ、今週は3本です!



「小川の辺」は、東山紀之主演の時代劇。篠原哲雄監督作品。

海坂藩士の戌井朔之助は藩内でも有数の剣の達人。
その腕を見込まれ、脱藩した佐久間森衛を討てとの命令を受けます。
ところが佐久間は朔之助の旧友で、妹・田鶴の夫だったのです。
佐久間の脱藩は、藩主のずさんな農地改革に苦しむ農民の声をすくい上げたもので、
気丈な田鶴が夫を支持するのはよくわかる。
朔之助が佐久間と剣を交わすことになれば、田鶴も兄に刃を向けるかもしれないと、
朔之助の母は心配するのですが、父は藩命とあらば受けるしかないと。
旅立ちの決意をする朔之助に、戌井家に仕える新蔵が同行を申し出ます。
実は新蔵は幼い頃からふたりと兄弟のように暮らしてきた、いわゆる幼なじみ。
田鶴は新蔵に恋心を抱くも、身分の違いから成就せず、
佐久間のところに嫁いだという経緯もあったのです。
長い旅の道すがら、様々な話をする朔之助と新蔵。
そして遂に佐久間と田鶴を発見するのです。
朔之助、田鶴、そして新蔵にどんな運命が待っているのでしょうか…。

藩命か、家族か、愛か。
今のような自由を謳歌できる時代とは違い、
制約の多い江戸の時代に生きた人たちの生き様を描いた作品です。
原作は藤沢周平。監督はボクの中高同級生の篠原哲雄。
全編山形ロケで、東北の美しい自然がたくさん映し出されています。
時代劇のロードムービーといった感じもあり、景色を楽しむのもよし。
現代人が失ってしまった、"義"の心を始めとする日本人固有の美しい心。
欠片でも残っていればこの映画の奥深さに気付くはず。
完全に無くしてしまっていたとしたら、よさはわからないかもしれませんね。☆3つ。
「小川の辺」公式サイト


「蜂蜜」は、第60回ベルリン国際映画祭で、最も栄誉のある金熊賞に輝いたトルコ映画。

人里離れた森の中に住む少年ユスフ。
父は希少な黒蜂蜜を取る養蜂家で、母との3人暮らし。
ユスフにとって、父の仕事に同行して、一緒に森の中で過ごす時間が何よりの宝物だったのです。
ところが最近急に蜂がいなくなり、蜂蜜が取れなくなってしまいました。
森のさらに奥深くへ蜂を探しに行こうとする父。危険と背中合わせの作業です。
父が家を出てから数日、予定の日を過ぎても帰ってきません。
憔悴する母の姿を見て、ユスフは自分が頑張らなくちゃと心に誓うのでした…。

BGMとしての音楽は一切使わず、映画を覆うのは、
木々のざわめき、鳥のさえずり、動物の鳴き声。まるで森林浴でもしているかのよう。
ユスフは学校にも通い始めるのですが、なかなか溶け込めず、
「よくできました賞」のバッジを自分だけもらえないんじゃないかと焦ります。
家では母を勇気づけなくちゃいけないし、様々な出来事がユスフを大人にして行くんですね。
もうすぐ夏休み。大人になったボクたちには、
あの何とも言えず甘酸っぱかった夏の日々を思い出させる1本かもしれません。☆3つ。
「蜂蜜」公式サイト


「マイティー・ソー」は、マーベル・スタジオが送る、初の3D作品。

神の世界の物語。
神々の王オーディンが君臨する世界で、跡継ぎになるはずの息子ソーは最強の戦士でした。
選ばれし者だけに持つことが許される伝説の武器"ムジョルニア"を得て、
徐々に傲慢な性格になっていったソーは、
父に無断で"氷の巨人の世界"に攻め入ってしまい、平和の均衡を壊してしまったのです。
王である父の逆鱗に触れたソーは"ムジョルニア"を剥奪され、
地球へと追放されてしまったんですね。
実はソーには弟のロキがいたのですが、ある時、ロキは自分の出生の秘密を知ってしまいます。
そこから神の世界制服を企み出すロキ。
地球に追放されたソーのにも、悪の魔の手が迫っていたのでした…。

マーベル・スタジオは「スパイダーマン」や「アイアンマン」、
「X―メン」で知られるプロダクション。
初の3D作品ということで、既存のものを超えるレベルになければGOは出さないはず。
その通りの迫力の映像でした。
アメコミのヒーローものですが、3D向きの作品であることは間違いなし。
ちなみにソーの仲間、ホーガン役には浅野忠信が。
彼にとって初のハリウッド・メジャー作品への出演となりました。
大人も子供も楽しめる1本ですョ。☆3つ。
「マイティー・ソー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.6.23
「アンダルシア 女神の報復」☆☆☆☆
「デンデラ」☆☆☆
「BIUTIFUL」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週紹介するのは、いずれも高評価の作品ばかり。
中でも「BIUTIFUL」は148分の大作にもかかわらず、ずーっとスクリーンに釘付けでした。
スペインとメキシコの合作。詳しくは後述します。是非ご覧になって下さいねっ。
さ、今週は3本です!



「アンダルシア 女神の報復」は、大人気"外交官・黒田康作"シリーズ。

国際会議の準備でパリを訪れていた外交官の黒田康作の耳に、
スペインに隣接する小国・アンドラで日本人投資家が殺害されたとの報せが届きます。
現地に向かった黒田よりひと足早く捜査を始めていたのが
インターポール(国際刑事警察機構)の神足捜査官でした。
第一発見者はビクトル銀行行員の新藤結花。
彼女の証言から物取りの犯行が濃厚となったのですが、黒田が不審な点に気付くんですね。
実はこの事件、日本の政府をも巻き込む大きなスキャンダルが隠れていたのでした…。

「アマルフィ」のタイトルなどで、映画やドラマで人気の"外交官・黒田康作"シリーズ。
主演は織田裕二です。

全編海外ロケの映画って、ややもすると名所ばかりを映す観光映画みたいになりがちですが、
これは違いました。
登場人物が抱える心の闇、そして正義。ストーリーも秀逸でしたョ。
他にも、黒木メイサ、福山雅治、伊藤英明、戸田恵梨香など、キャストも豪華!
お金が掛かってる分、興行収入も上がるだろうなって感じの1本です(笑)。
忙しくて海外どころじゃないやって人にお勧めです!☆4つ。
「アンダルシア 女神の報復」公式サイト



「デンデラ」は、姥捨山の物語。

東北のとある山村。
"70歳を迎えたら姥捨山と呼ばれる山奥に捨てられる"。
そんな掟のある村に生まれたカユは今日70歳を迎え、息子に背負われて姥捨ての場所へと向かったのでした。
早く極楽浄土に行きたい。そう祈りながら気を失ったカユでしたが、
ふと目を覚ますと、そこは見知らぬ小屋の中。
そして何と、カユより先に捨てられた老婆たちが周りを囲んでいるではありませんか。
実は彼女たち、「デンデラ」という共同体を作って生き延びていたのです。
彼女たちの目的はひとつ。自分たちを捨てた村人たちに復讐すること。
カユはちょうど50人目のデンデラ入居者。機は熟したと、老婆たちは行動に出るのでした…。

監督は天願大介。あの「楢山節考」の今村昌平監督の息子です。
つまり、その続編的なお話ということになります。
"生き様"と表裏一体の"死に様"の物語。
当然、老婆の中にも様々な考えの人がいます。
自分ならどうだろうと、シチュエーションこそ特殊ながら考えてしまいます。
こちらも出演は、浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子他と豪華女優陣!
老婆役ながら、みなさんキラキラ輝いてました。
人生、懸けるものがあるって素晴らしいなと、こちらには"生き様"を感じたりして。
本筋に行く前に老婆たちをある事件が襲うのですが、必要なプロセスとはいえ、そこがちょっと…かな。
違ったサスペンスアクションっぽくなってしまったのが個人的には残念。
もっと内面に向いて欲しかったかなというのが正直な感想です。☆3つ。
「デンデラ」公式サイト



「BIUTIFUL」は、スペインのバルセロナを舞台とした、
ひとりの父の、そしてひとりの男の物語。

貧富の差が激しい大都会バルセロナ。
裏社会にも手を染めて、それでも懸命に生きている男、ウスバル。
そんなウスバルには大切なふたりの子供がいました。妻は薬物依存で子供を任せられない状態。
そんなある日のこと、病院で検査を受けたウスバルは、
自分がガンに侵されていて、余命が2ケ月であると宣告されてしまうのです。
「子供たちを残して俺は死ねない」。
ウスバルは何とか生きようと、必死にもがくのでした…。

2時間半に渡る大作でしたが、とにかくスクリーンに釘付けで。
不法滞在のアフリカからの移民や、
アジアからの密入国者たちの仕事にもかかわっているウスバル。
彼らもまた懸命に生きているからこそ何とかしてやりたい。でもできないこともある。
してやったことが裏目に出る。裏切りもある。
ウスバルは法律的観点で見ればアウトローです。でも生きていくにはそれしか方法がない。
心の奥底にある優しさが垣間見えるからこそ、見る側は彼に入り込むことができるんですね。
もらったパンフレットに、
黒澤明監督の「生きる」と対比させてこの映画を論じた評が載ってましたが、
見事な文章だったと思います。
事実、この映画のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は19歳の時に、
この「生きる」を見ているんだそう。 駆け抜けてきた最期に知る"生きる"ことの意味。そして"幸せ"の瞬間。
これまた"生き様"と"死に様"の映画です。深いです。☆5つ!
「BIUTIFUL」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.6.15
「飯と乙女」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、試写に行けないと、DVDを送って頂いたりします。
ありがたいことです。
そんな厚意に応えるべく、また紹介する場面を作らなくてはと切に思います。
頑張らないといけませんね。
さ、今度は1本です!


「飯と乙女」は、一風変わった食の映画。

ダイニングバーの厨房で働く砂織は、
自分の作った料理を美味しく食べてもらうことが生き甲斐の女性。
しかし常連の九条は一度も砂織の料理を食べたことがありません。
実は九条、他人が作ったものが食べられないのです。
もう1人の常連、美江は過食症。
その原因は、同棲中の恋人、小日向が働かないことによるストレスにありました。
ある日のこと、美江が妊娠したことを告げると、小日向は姿を消してしまったのです。
美江が勤める会社の社長の小中は、経営が苦しく、食費すらままならない状態。
大食いの妻と育ち盛りの娘の食事を優先させ、自分は食べたフリをして空腹を耐え忍ぶ毎日。
ところがどうしても我慢ができず、
翌日用に作ってあった妻の弁当を狂ったように食べてしまいます。
自分を責める小中は、断食したまま死んでやると河原で段ボールの中に身を潜めたのでした。
そう、それぞれが食に悩む日々を過ごしていたのでした…。

シューベルトの「死と乙女」。
ブッダの"食べることは楽しみでもあり、苦しみでもある"という言葉。
そこに"食"を組み合わせ、3つをテーマにこの映画は作られたとのこと。
空腹の社長が即神仏になろうとするあたり、そんな影響があったのかもしれません。
率直な感想を言えば、もっとシンプルに作った方がわかりやすく、
見る側も入りやすかったんじゃないかなと。
身近なものをテーマにしたにもかかわらず、リアリティが欠けてしまうと、
観客はその世界から離れていってしまいますもんね。
スクリーンというよりは、舞台の方が似合いそうな作品だと思います。☆2つ。
「飯と乙女」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.6.9
「奇跡」☆☆☆☆☆
「さや侍」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ブログにも書いたけど、試写室のマナーが悪過ぎます。
飲食、携帯、いびき。
睡眠不足で寝ちゃうことはボクもあるけど、いびきをかいてたら近くの人が起こさなきゃ。
離れていたら注意しようがないんだから。
繰り返しになりますが、マナーを守れない人間に、映画を語る資格などないと心からそう思います。
さ、今週は2本です!


「奇跡」は、是枝裕和監督作品。

航一と龍之介は仲良し兄弟。でも今は鹿児島と博多で離れて暮らしていました。
何故かというと、両親が離婚したから。
兄は母と一緒に和菓子屋を営む母の実家に住み、
弟は売れないミュージシャンの父と一緒に暮らしていたのです。
家族4人でもう一度一緒に生活がしたい。
そう願っていた航一は、学校である噂を耳にします。
「もうすぐ開業する九州新幹線の上下線が、260キロのスピードで最初にすれ違う時に奇跡が起こる」。
調べてみると、一番列車が最初にすれ違うのは熊本だと判明。
航一は龍之介に電話をし、『奇跡』を起こしに行こうと誘うのでした…。

どちらかというと、お兄ちゃんより弟の方が大人だな(笑)。
この兄弟を演じるまえだまえだのふたりの演技が抜群に光ってました。
航一も、龍之介も、それぞれに悩みや夢を持つ友達を誘って、
熊本までの旅費を何とか作り、時に大人の力を借りながら、
『奇跡』の瞬間に立ち会います。
人生は結果じゃなく、プロセス。
そのプロセスを経験するためには行動を起こさなくてはならない。
小さな冒険者たちは、それをしっかりわかったはず。
振り返ってごらん。気付いてないかもしれないけど、
熊本に行こうと決めてからのひとつひとつの出来事が、みんな『奇跡』なんだから。
大人も童心に帰って、心だけでもリセットしてはどうですか?
ものすごくあったかい映画でしたョ。☆5つ。
「奇跡」公式サイト

「さや侍」は、松本人志監督作品。

戦うことが嫌になり、刀を捨て脱藩した野見勘十郎は、
娘のたえと流浪の旅を続けていました。
今では賞金首になっていた勘十郎に追っ手が迫ります。
それでも戦わず逃げてばかりの父に、たえは言うのです。
「父上!いつまで逃げてるおつもりですか!それでもお侍ですか!」。
そんな勘十郎父娘も遂に捕らえられてしまいます。
多幸藩の殿様が下したお沙汰は「三十日の業」。
母を亡くした悲しみからまったく笑わなくなった若君を、三十日間、
一日ひとネタで笑わせよという命令で、できなければ切腹を申し付けるというもの。
勘十郎はその沙汰に、命を賭けて挑むのでした…。

以前、松本人志が映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を絶賛していたのが
ずーっと印象に残っていて。
ナチスに捕まったユダヤ人一家の父親が、息子を心配させまいと、
これはゲームなんだと諭し、笑いで息子を救う映画です。
自分の職業である"お笑い"が、自分の宝物とも言える家族を救えるというところに、
まっちゃんは自分の"志"とシンクロするところがあったんじゃないかと、
ボクはずっと思ってました。
そして今作品。まさにそんな世界観です。
刀のさやのみを腰に差す「さや侍」。誰が見ても戦いは放棄している。
でも侍の心は捨ててはいない。その象徴がさやなのでしょう。
「それでもお侍ですか!」と叱責されようとも、だんまりを決める勘十郎。
でも笑いの戦いには真正面から挑むのです。
父の生き様を受け取って欲しいと最期まで侍であることを貫き通す勘十郎に、
松本人志監督を重ね合わすことはそう難しいことではないと思います。
笑えるかどうかは置いといて(笑)、
あとでじっくり考えてみるとジワッと感動が湧いてくるような作品です。☆3つ。
「さや侍」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.6.3
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ボクの中学、高校の同級生で映画監督の篠原哲雄が新しい映画を完成させました。
東山紀之主演の「小川の辺(ほとり)」です。
7月2日公開の藤沢周平原作映画。試写に行くのが楽しみです!
さ、今週は1本です!


「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」は、
AKB48の前田敦子主演の青春映画。

都立程久保高校の野球部は弱小チーム。
それもそのはず、部員にやる気は無いし、監督もチームに無関心。
唯一熱心だったマネージャーの夕紀が病気で入院してしまい、チームはガタガタになってました。
親友のみなみが病床の夕紀を励まそうと、
夕紀の代わりに野球部のマネージャーを引き受けることに。
さらに「野球部を絶対甲子園に連れていく」と誓ってしまうのです。
ところがマネージャーといっても何をどうしていいかわからない。
本屋さんで何か参考になるものをと探していると、勧められたのが経済のマネジメント本でした。
もちろん書店の主人の勘違い。
しかし、よくよく読んでみると、ドラッカーなる人の書いたこの経済本が
野球の戦術やチーム作りに活かせるのではないかと。
みなみの奮闘がスタートしたのです…。

原作は250万部を売った岩崎夏海の超ベストセラー小説。
AKB人気にもあやかって、この映画もきっと大成功すると思います。
ただ、経済の理論も野球もどっちも薄いんですね。
「難しいことを抜きにして楽しむ」という映画の楽しみ方を考えたら、これでもいいのかなと。
この映画のターゲットがどこにあるかと言えば、AKB48のファンでしょうから。
まずは彼らを満足させること。そう割り切って見ることをお勧めします。
ま、前田敦子と峯岸みなみが可愛いから、ちょっとオマケで☆3つ(笑)。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.5.31
「クロエ」☆☆☆
「プリンセス トヨトミ」☆☆☆
「マイ・バック・ページ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

5月20日に「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」が公開となり、
一層の盛り上がりを見せている映画業界ですが、
こういうシーンを牽引していく作品があるっていいことですね。
あまり映画を見に行かない人が面白さを知れば、
また自ずと別の作品も探してみようかなという気になりますもんねっ。
入口はどこでもいいのです。あなたも積極的に劇場に足を運んで下さいね。
さ、今週は3本です!



「クロエ」は、ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド主演の官能サスペンス。

キャサリンとデビッドは熟年夫婦。キャサリンは産婦人科医、デビッドは大学教授で、
一人息子のマイケルと高級住宅街に暮らします。
一見、幸せな家庭生活を送っているように思えたのですが、
デビッドの誕生日にサプライズパーティを企画したのに夫は帰ってこない。
聞けば「飛行機に乗り遅れた」と言います。
しかしキャサリンは翌朝、若い女学生から夫あてのメールを見てしまうのです。
「ゆうべはありがとう」。
夫の浮気を疑い始めたキャサリンは、たまたまレストランで知り合った若い娼婦クロエに、
デビッドを誘惑するよう依頼します。
しかしそのことが、思いもよらぬ事件の弾きがねになろうとは、知るよしもなかったのです…。

クロエはデビッドを誘惑し、その結果を逐一キャサリンに報告します。
それは虚なのか、実なのか。
キャサリンには判断がつかなくなっていたんですね。
さらに、クロエの本当の狙いがだんだんと明らかになっていきます。
面倒なことに足を突っ込んじゃったなぁという感じ。
だから人の携帯なんて覗いちゃいけないんだって(苦笑)。
独り相撲で幸せを壊していくキャサリンを見て、
同じようなことをしてるなと思う人は反省して下さいねっ。☆3つ。
「クロエ」公式サイト


「プリンセス トヨトミ」は、万城目学の人気小説の映画化。

東京から大阪にやってきた会計検査院の3人の調査官。
"鬼の松平"と呼ばれる松平元、部下で女性調査官の鳥居忠子、
そして日仏ハーフの旭ゲーンズブールの3人は、
国家予算が正しく使われているかを調べるために大阪に出張してきたのです。
いくつかの調査を終え、向かったのは財団法人「OJO(大阪城趾整備機構)」。
少し変わった雰囲気だけれど、不正らしきは認められず、建物を後にした3人でしたが、
正面にあるお好み焼き屋『太閤』で食事をしている時に、
松平が携帯電話を忘れたことに気付くんですね。
機構に戻るとなんとそこはもぬけの殻。
何かがおかしい。松平の直感が働きます。
その勘は正しく、実はこの裏にはとてつもなく壮大な計画が隠されていたのでした…。

「大阪が全停止した」。
このキャッチフレーズの意味が、見ているうちにわかります。
昔から大阪が"国"として独立するという発想はありますが、
それをさらに奇抜な理由づけで描いたストーリー。
松平元に扮する堤真一のシリアスな演技とは対照的な、
ちょっぴりバカバカしい演出もありますが、それがこの映画の魅力のひとつでもあります。
未曾有の国難に瀕しているにもかかわらず、政局に走る下衆な政治家たちに、
この大阪府民の"守る"ための団結力を学ばせてやりたい。
そう思う人も少なくないはずでしょうね。☆3つ。
「プリンセス トヨトミ」公式サイト


「マイ・バック・ページ」は、妻夫木聡、松山ケンイチ主演作。

東大安田講堂事件のあった1969年。
学生運動が盛んだったこの時、
ある大学の教室で"哲学芸術思潮研究会"なるサークルの討論会が行われていました。
「行動しない組織はナンセンスだ」。
過激な行動を取れと熱弁を振るう片桐に、数名の学生は惹きつけらていきます。
一方、「週刊東都」の記者になったばかりの沢田も、ジャーナリストとしての使命は何か、
取材対象者にどこまで入り込むのが正しいのか、日々考えながら行動する熱い男でした。
ある日、過激派のリーダーを名乗る男から「週刊東都」にタレ込みが入ります。
すわスクープか。
上司と共にその男と会ってみる沢田。それが片桐と沢田の出会いだったのです…。

出会った時に上司は片桐を"偽者"だと判断するのですが、
沢田は片桐に何かを感じてしまうんですね。
「深入りするのは止めておけ」という上司の忠告に耳を傾けることなく片桐を追う沢田。
そこには"突っ走ること"が生きることという、あの時代特有の何かがあったのでしょう。
時代の流れに乗ることはいい。
でも立ち止まって考えること、また引き返すこと、それもまた大切なんですよね。
でも生きている証しが欲しいから、"若さ"が突っ走らせるから、止まれないんです。
これは間違いなく青春映画。ひとつの特異な時代を切り取った青春映画です。☆3つ。
「マイ・バック・ページ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.5.19
「ゲンズブールと女たち」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今年ここまでの試写の数を数えたら37本。年間100本ちょいペース。
ここ1、2年と比べると、随分減っちゃいました。
裏を返せば忙しくて時間が割けないということなんですけどね。
仲良しの宣伝会社さんにはDVDをお借りして、時間のある時に見るようにしています。
1本でも多くの作品に触れるのは大切なこと。頑張ります!
さ、今週は1本です!



「ゲンズブールと女たち」は、
没後20周年となる個性的なフランス人アーティストの伝記映画。

1941年のパリ。
ロシア系ユダヤ人の両親の元に生まれたリュシアンは、芸術的才能に恵まれた少年でした。
父親からピアノを叩き込まれ、大人になってからはバーでピアノを弾きながら
美術学校で絵画を学んでいたのですが、ある日のこと、絵画をあきらめ音楽で生きていこうと決意。
最初の結婚もし、パリの有名なキャバレーでピアニスト兼シンガーとして働き始めます。
この頃からゲンズブールと名乗るようになった彼に、メジャーデビューの話が舞い込みます。
そのデビュー曲が大ヒット。瞬く間にスターダムにのし上がったのです。
作曲もしていた彼の元には、当時の人気シンガーたちが曲を書いて欲しいと殺到。
ゲンズブールは一躍時代の寵児となったのですが…。

ナチスの支配下にあったパリで、彼のコンプレックスはユダヤ人であることと、容姿の醜さ。
しかしそのコンプレックスに対する反骨精神が、
彼の個性的な芸術的センスを磨いていったのかもしれません。
ダリの愛人に始まる女性遍歴もゲンズブールを語る上では欠かせないポイントで、
ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキンら超人気女優たちと浮き名を流し、
中には結婚をした女性もいて。
「酒と煙草、音楽と自由をこよなく愛し、コンプレックスを抱えながらも数々の美女たちを虜にした伊達男」。
そんなキャッチフレーズを聞くと、男性諸氏はハウトゥを学びに見に行きたくなりませんか?
謙虚なだけじゃダメみたいですョ(笑)。男には内面から滲み出る自信が大切なようです。☆3つ。
「ゲンズブールと女たち」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.5.12
「大木家のたのしい旅行」☆☆
「ブラック・スワン」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

私事で恐縮ですが(笑)、ドドッと仕事が忙しくなりました。
今までの分がまとめて来てくれた感じで、うれしい悲鳴をあげています。
そんな中、「パイレーツ・オブ・カリビアン-生命の泉-」の完成披露試写が。
行けないのです…。う〜ん、残念(>_<)。
さ、今週は2本です!



「大木家のたのしい旅行」は、竹野内豊、水川あさみ主演のコメディー映画。

大木信義と咲は新婚夫婦。
ところが同棲生活が長かったせいか、新婚気分はまったくなし。
そんなある日のこと、近所のスーパーに買い物に行った咲は、
怪しげな占いコーナーの怪しい女性に声を掛けられます。
「探し物なら地獄にあるわよ」。
渡されたのは"地獄ツアー"のチラシでした。
翌日、信義も連れて占いコーナーを訪ね、ツアー参加を決めてしまったふたり。
果たして地獄はどんなところなのか。
ふたりはこちらの世界に戻って来られるのでしょうか…。

他にも樹木希林、柄本明、片桐はいり、荒川良々など、個性的ないい役者たちがズラリ。
ただ、この遊び心は正直ボクにはピンと来ず(笑)。
ただ、笑いはツボが違うと面白い人には面白いですからね。
何かを求めてとかじゃなく、
テーマパークのアトラクションだと思って見るといいかもしれませんョ。☆2つ。
「大木家のたのしい旅行」公式サイト


「ブラック・スワン」は、ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞に輝いた作品。

名門ニューヨーク・シティ・バレエ団。
シーズン最初の演目は「白鳥の湖」に決まったのですが、
名プリマだったベスが引退することになり、新たなプリマを選ぶことになりました。
これまで、人生のすべてをバレエに注いできたニナは、このチャンスに賭けていたのです。
監督であるルロイが求めるのは、華麗で繊細な白鳥と、
奔放で邪悪な黒鳥の両方を演じられる演技力の高いダンサー。
真面目なニナは白鳥なら完璧なのですが、
対極にある黒鳥の激しい感情を演じることは難しいと、ルロイに宣告されてしまいます。
ライバルたちの踊りが素晴らしく見え、落ち込むニナ。
ところがキャスト発表の日、なんと主役に選ばれたのはニナだったのです。
喜びも束の間、どんなに頑張っても満足に黒鳥を演じることができないニナは、
様々なプレッシャーに押し潰されそうになるんですね。
心を病み始めるニナ。
どこまでが現実でどこまでが幻想なのか。
苦悶の日々が過ぎる中、遂に初日の幕が開いたのでした…。

最初、この映画がどんなジャンルに属する作品なのか、
まったく見当がつかないまま試写に行ったんですね。
いやぁ、終盤は固まりました。
肩にギュッと力が入って、そのまま微動だにできずにスクリーンに釘付けでした。
「怖かった…」。
場内が明るくなった時、ボクの前に座っていた女性がポロッともらした感想です。
確かに怖かったです。
天才と××は紙一重と言いますが、
芸術家という意味でのアーティストが一線を超えるとこんな狂気が待ってるんだなと。
ナタリー・ポートマンがたくさんの賞で主演女優賞を獲得したのも納得です。
久々に凄い演技を見たなという気がしました。
まぁとにかく見てみて下さい。久々の超お勧めです!満点の☆5つ!
「ブラック・スワン」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.5.4
「4月の涙」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先月は忙しさが戻ってきたというか、ドドッと仕事がきたので、うれしい悲鳴。
あまり試写を見ることができませんでした。
GW中は試写がないので、明けたらまた積極的に足を運びたいと思っています。
さ、今週は1本です!



「4月の涙」は、フィンランド、ドイツ、ギリシャの合作映画。

1918年、内戦状態にあったフィンランド。
赤衛隊と白衛隊が戦闘を繰り返す中、赤衛隊の女兵士たちが白衛隊に捕まってしまいます。
乱暴されて、殺される女兵士たち。
唯一逃げ延びたリーダーのミーナでしたが、白衛隊の准士官アーロに見つかってしまうのです。 再び囚われの身になったミーナでしたが、アーロは白衛隊のやり方に疑問を感じていて、
「公平な裁判にかけたい」とミーナを離れた場所にある裁判所に舟で連れて行こうとします。
ところがミーナの抵抗にあって舟は転覆。ふたりは孤島に漂流してしまいます。
弱っていくミーナを懸命に助けようとするアーロ。
そんな中で、ふたりの間には特別な感情が芽生え始めたのでした…。

許されざる恋の物語。
ミーナは頑として自分を譲らない強い意思と信念を持つ女性です。
アーロも正義感の強い男で、何とかミーナを救いたいと思う。
クセのある裁判長の存在や、ミーナが仲間と交した約束など、
この物語を深いものにする要素が散りばめられていて、なかなか見ごたえがありました。
ブルジョワ層の白衛隊vs労働階級の赤衛隊。
日頃からの社会的不公平感に不満を募らせていたことから蜂起した赤衛隊には、
ミーナのような女兵士も一部にいたそうです。
顔見知りが銃を向け合う悲惨な内戦。
その歴史的悲劇を知って、後世の人間が学ぶということでも、
こういう作品には意味があるのではないでしょうか。☆3つ。
「4月の涙」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.4.29
「キッズ・オールライト」☆☆☆
「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」☆☆☆
「豆富小僧」☆☆☆
「阪急電車 片道15分の奇跡」☆☆☆☆
「ミスター・ノーバディ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GWの予定は立ちましたか?
どこに行っても混雑の毎日なら、映画でも見ての〜んびり過ごしてはいかがです?
さ、今週は5本です!



「キッズ・オールライト」は、一風変わった家族の物語。

郊外の一軒家に住む4人家族。
この家にはニックとジュールスという母親がふたり。
18歳の姉ジョニと、15歳の弟レイザーはそれぞれの母親が産んだ子供たち。
実はこの家族、精子バンクから提供を受けて子供を作った
同性愛夫婦のファミリーだったのです。
ところが年頃になり、自分の出生を知りたくなったジョニとレイザーは、
精子を提供した男性、ポールを探し出し、母親たちに内緒で会いに行ってしまうんですね。
それを知ったニックとジュールスはショックを受けながらも、
事が大きくならないようにとポールを食事に招きます。
父親がいなかったジョニとレイザーにとっては頼れる男性の登場にワクワク。
しかしポールがこの家に関わり出したことで、
微妙な均衡を保っていたバランスが崩れ始めたのでした…。

特殊な環境だけに、なかなか理解しづらい点があるのは確かなんですが、
性別を超えて人として考えるとわかるかなって感じの映画でした。
自分の人生に、突然つながりのあるという人物がカットインしてきたら。そりゃ戸惑いますよね。
長い歳月が築いてきたもの。そちらの方がやっぱり重いんじゃないかとボクは思うのですが。
ニックにはアネット・ベニングが、ジュールスにはジュリアン・ムーアが扮するのですが
、ふたりとも年を重ねてもキレイですョ。☆3つ。
「キッズ・オールライト」公式サイト


「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」は、実話に基づくストーリー。

1970年代、NY。
売れない作家のクリフォード・アーヴィングは、まったく世に出ず、
謎に満ち満ちていた大富豪ハワード・ヒューズのニセの自伝を書くことを思いつくんですね。
まずは出版社にヒューズの筆跡を真似て書いた自伝依頼の手紙を持ち込み、
それが筆跡鑑定でも本物と出たため、出版社が色めきたちます。
嘘がバレそうになる時が何度も訪れるのですが、それを巧みな話術で切り抜けるアーヴィング。
ついには110万ドルもの大金を得ることに成功するのですが、
当然のことながら彼の捏造は徐々にほころびを見せ始めるのでした…。

嘘は嘘でしか説明がつかないから、塗り重ねられた"虚"はどんどんと矛盾をはらみ、
いつかは崩壊するもの。
事実に基づく作品で、なんで大手出版社がこんな詐欺にあったのか。
やっぱりスクープ独占という欲が出版社側にあったからなんでしょう。
小説だって作り物の世界だと言ってしまえばそうな訳で、
これだけの作り話ができるならもっと真っ当に書き続けていたらよかったのにと思ってしまいます。
チャンスにことごとくフラれるとこうなってしまうのでしょうか。
主演はリチャード・ギア。
巧妙なトラップというよりは、コソ泥の一部始終を見てるようで、
「すごいキレ者じゃん!」みたいな感動はなかったかなというのが正直な感想です。☆3つ。
「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」公式サイト


「豆富小僧」は、3Dの妖怪アニメ。

時は江戸時代。人間を怖がらせるのが仕事の妖怪たち。
なのに豆富小僧は怖がらせるどころか、人間に笑われる始末。
今日も父親の見越し入道に怒られていたのです。
傷付いた豆富小僧は別れたお母さんに会いに行こうと決意します。
心配して一緒についてきた達磨と旅に出た豆富小僧でしたが、
長年妖怪と対立している狸一族に拉致されてしまい、
寺のお堂に閉じ込められてしまうんですね。
どれくらいの月日が過ぎたでしょう。
突然お堂が壊れて、豆富小僧たちは外に出ることができたのですが、そこは200年後の現代。
なんとボーッとしている間に長い時間が経っていたのです。
果たして豆富小僧はこの文明社会で、お母さんを見つけることができるのでしょうか…。

妖怪ものと言っても、完全にファンタジーの世界。
キャラが可愛らしくて、そりゃ人間は怖がらないだろうなって感じ(笑)。
現代社会ではひとりの女の子と知り合って、そのコを助けようと奔走するのですが、
いわゆる科学の進歩が産む弊害と、
古き良き時代の温かさの対比みたいな部分も描かれています。
3Dでもあり、大人向けというより、遊園地の子供向けアトラクションのよう。
お子さんを連れていかがです?☆3つ。
「豆富小僧」公式サイト


「阪急電車 片道15分の奇跡」は、有川浩のベストセラー小説の映画化。

宝塚と西宮北口を結ぶ、片道8駅15分のローカル電車。それが阪急今津線です。
たくさんの人が乗り込む電車。
それぞれにそれぞれの生活があって、楽しみがあり、悩みがある。
毎日同じ電車に乗っていたとしても、まず言葉を交わすことのない不思議な空間。
ところが、えんじ色のレトロな内装の阪急電車の中では、
ちっちゃくてあったかい奇跡が起こっていたのです…。

婚約者から突然別れを告げられたOL、
暴力を振るう恋人と別れられずにいる女子大生、
などたくさんの登場人物いて、時に接点を持ち、互いの人生に影響を与えあう。
袖触り合うも他生の縁。
実はいくつものドラマが生まれて不思議のない空間でもあります。
西宮北口から4つめの仁川駅が阪神競馬場の最寄り駅。ボクも競馬場に行く時は利用する電車です。
先日阪神競馬場に行った際、三宮まで足を伸ばして食事をしたのですが、
なんとそのお店のシーンから映画は始まったのです!これも小さな奇跡でしょ(笑)。☆4つ。
「阪急電車 片道15分の奇跡」公式サイト


「ミスター・ノーバディ」は、SFヒューマンドラマ。

2092年。人は細胞の永久再生化に成功し、不死の世界に生きていました。
118歳のニモは、その施術をしていない、人類最後の"死ぬ人間"だったのです。
いよいよ最期の時が近付いてきて、その模様は全世界に中継されていました。
ベッドに横たわるニモの元にひとりの新聞記者がやってきて、質問をします。
「人が死ななくなる前の世界ってどんなだったんですか?」
ニモは記憶をよみがえらせます。
「もしあの時、もうひとつの選択をしていたなら」。
ニモは自分の人生を静かに振り返り始めたのでした…。

いわゆるパラレルワールドもの。何の前知識もなく見ると多少混乱するかも?
ニモの最初の選択は少年期。両親の離婚の際に父か母かの選択を迫られます。
駅のホームから出発する汽車。手を差し伸べる母。行くなと叫ぶ父。
それからも恋愛、結婚など、いくつもの選択が彼を待ち構えていますが、
ま、それはニモに限らずみんな一緒。
また、本当に不死になったら人は頑張らなくなります。
だって時間はたっぷりあるのだから。
ボクらも「もしあの時あっちを選んでたら…」ってことありますよね。
後悔先に立たず。でもそれだから人生は面白くもあるのですョ。☆3つ。
「ミスター・ノーバディ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.4.26
「イヴ・サンローラン」☆☆☆
「GANTZ PERFECT ANSWER」☆☆☆
「抱きたいカンケイ」☆☆☆
「まほろ駅前多田便利軒」☆☆☆
「メアリー&マックス」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ちょっと前の話ですが、食事をしてたら、周りのお客さんの携帯から一斉に緊急地震速報が。
映画館で、上映中に「ギュイッギュイッ」というあの音が流れるとドキッとするんでしょうね。
早く沈静化して欲しいものです。
今回は更新が遅くなってすみません。4月22、23日公開作品の中の5本です!



「イヴ・サンローラン」は、世界を代表するファッション・デザイナーのドキュメンタリー。

1936年生まれのイヴ・サンローランは、21歳の時にクリスチャン・ディオールの後継者となり、
以後50年に渡りフランスの、いや世界のファッションシーンに君臨してきました。
毎年毎年新作を発表しなくてはならず、世間やマスコミの評価も気になる。
気持ちが休まる時のないサンローランを支えたのがパートナーのピエール・ベルジェでした。
イヴ・サンローランの50年を見守り続けた彼が語る、サンローランの知られざる素顔とは。
貴重な資料もたくさん登場します。
ファッションに興味がある人はもちろん、
そうでない人も世界の頂点を極めた"感性"のドキュメンタリー。
是非ご覧になってみて下さい。☆3つ。
「イヴ・サンローラン」公式サイト


「GANTZ PERFECT ANSWER」は、人気コミックの映画化。その完結篇。

死んだはずの人間がマンションの一室で目覚める。
そこには黒い球があって、数名の人間が取り囲むように見つめている。
何が何だかわからないけれど、自分たちの使命は"星人"と戦い、生き抜くこと。
その戦いぶりが採点され、"100てん"になればこの世界から解放されるか、
もしくは戦いに敗れて死んだ人を生き返らせることができる。それがガンツの世界。
地下鉄に跳ねられて死んだはずの玄野と加藤はガンツの世界にいました。
その後、一旦元の世界に戻ったふたりでしたが、度々ガンツの世界に呼ばれ、
そんな暴力の中に身を置くことに嫌気が差した加藤は戦いを拒否。殺されてしまうんですね。
100てんを取って、なんとか加藤を生き返らせたい玄野は戦いを続けていきます。
そんな時、ガンツがターゲットに指定した敵、
それは星人ではなく、玄野に思いを寄せるクラスメイトの多恵だったのです…。

前編はまったく訳がわからず☆2つと酷評させてもらったと思いますが、
こっちはなかなか面白かったです。
不条理というか、"パーフェクトアンサー"と言ってる割には根本はまったくわかりません(笑)。
でも何のために戦うのか、個人的な理由にしろ、それがあるというのはわかりやすかったかな。
加藤には親を亡くして兄弟ふたりきりの弟がいる。玄野も多恵を守りたい。
他の登場人物にも、家族や自分自身など守りたいものがある。
スッキリとはしないけど、それでも前作よりは楽しく見られました。
前編を見てない人でも、こちらからで大丈夫だと思いますョ。☆3つ。
「GANTZ PERFECT ANSWER」公式サイト


「抱きたいカンケイ」は、「ブラック・スワン」で
アカデミー賞主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマン主演のラブ・コメディー。

14歳のエマとアダムが出会ったサマーキャンプの夜。
言い寄るアダムを袖にしたエマ。
それからというもの、運命のいたずらか、
ふたりはしばしば偶然の再会を果たすのですが友達の一線を越えず。
ところがある日のこと、ふとしたきっかけで遂にふたりは男女の仲になったのです。
新しい恋の始まりかと胸をときめかせるアダムとは対照的に、エマは驚くような提案をします。
「ねぇ、私たちセックス・フレンドにならない?」。
この一言から微妙なふたりのカンケイが始まったのです…。

エマは医師として忙しい毎日を過ごしていて、アダムはTV局の下っ端AD。
さらにエマは恋に傷付くのが怖い"恋愛アレルギー"。
互いの自信のなさが、友達以上恋人未満の変な関係を生み出す要因のひとつでもあったよう。
身体の関係も恋愛パズルの大切なピースのひとつなんだから、
そこがハマったら割り切るるのはかなり難しいと思うんだけど。
だってまさに裸の付き合いなんだから(笑)。
当然ヤキモチも焼きつつ、ケンカもしながら、予想を裏切らない着地点にストン。
あ、言っちゃった(笑)。
あの「ブラック・スワン」の狂気とは180度違う
ナタリー・ポートマンの可愛らしさを感じてみてはいかがです?
あ、ある意味こっちも導入は"狂気"だけどね(笑)。☆3つ。
「抱きたいカンケイ」公式サイト


「まほろ駅前多田便利軒」は、瑛太と松田龍平主演作。

東京郊外にあるまほろという名の街。
その駅前で便利屋をやっていた多田は、バスの運行調査中に、
他の依頼人から頼まれて見つけたチワワに逃げられてしまいます。
必死に探していると、バス停に座っていた男が捕まえて抱き抱えているではありませんか。
その男をよーく見ると、中学の同級生の行天だったのです。
久々の再会。
「行くところがないから泊めてくれ」。
そう頼んできた行天を、「1泊だけだぞ」と事務所に連れて行く多田。
ところが行天がそのまま居ついちゃったんですね。
この日から、多田便利軒では奇妙な二人三脚が始まったのでした…。

原作は三浦しおんのベストセラー小説。
架空の街ですが、主演のふたりの名前を聞いただけで、
まほろには不思議な空気が流れてそうなイメージが湧くでしょ?
今風の若者というか、飄々としていながら自分を持っている多田と行天。
ふたりとも人に言えない過去も背負っていたのです。
小学生の塾への送り迎えや、男女の別れ話の仲裁、ストーカーの排除など、
様々な仕事をこなしていくうちに見えてくるふたりの胸の内。
こんな男がモテるんだろうなと思いつつ、ボクにはありえないキャラ。
同じお節介焼きなのにね(笑)。
続編がありそうな感じがする1本ですョ。☆3つ。
「まほろ駅前多田便利軒」公式サイト


「メアリー&マックス」は、オーストラリアのクレイアニメ作品。

メルボルンに住む8歳の少女メアリー。
ちょっぴり変わった両親に育てられた彼女は、
ある日突然、アメリカに住む誰かに手紙を出そうと思いつくんですね。
アメリカに知り合いなんていないメアリーは、
電話帳を開き「変な名前だから」とマックス・ホロウィッツという人を選び、手紙を書きます。
マックスはNY在住の44歳。社会にうまく溶け込むことができず、孤独な日々を送っていたのです。
そこに届いた少女からの1通の手紙。
メルボルンとNY。遠く離れた2つの淋しい心が繋がった瞬間でした…。

クレイアニメーションというのは、
粘土やポリマーをちょっとずつ動かして撮る"ハンドメイドアニメーション"。
1日に4秒分しか撮影ができず、92分の作品を作るのに5年の歳月が掛かったそう!
細かい演出、こだわりの遊び、ブラックな笑い…。大人のためのアニメでもあります。
ストーリーは監督自らの体験を描いたもので、実話に基づくものだとか。
ふたりの関係は20年にも渡って続いたそう。くっついたり、離れたり。
それでも互いにとって大切な心の友だったのです。
ラストはちょっぴりグッときたなぁ。☆4つ。
「メアリー&マックス」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.4.8
「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

節電の影響で映画館の早じまいが目立ってました。
さぞかし客足も遠のいているんだろうなと思いきや、意外や逆で。
「娯楽が映画ぐらいしかない」とたくさんのお客さんで賑わっているそうです。
確かに上映中の館内は電気が消えてますもんね。節電にもなっているのでしょう。
万一何かあったら怖いのでと、
カバンに小さな懐中電灯を入れて劇場に行く人もいるようです。
あったかい気持ちになれる作品に出会えるといいですね。
さ、今週は1本です!



「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」は、フランス映画。

時代は18世紀半頃。
モーツァルト一家は長い演奏旅行に出ていました。
父と母、娘のナンネル、弟のヴォルフガングの4名での旅。
11歳で"天才"と言われたヴォルフガングがバイオリンを弾き、
ナンネルがピアノを弾きながら歌う。
各地で絶賛されたふたりの演奏は、王様や貴族の前でも披露されたのです。
そんな中、王太子ルイと知り合ったナンネルでしたが、
出産で亡くなった妃の喪に服していた王太子に会うには男装をしていかなくてはなりません。
王太子はナンネルが女子だと気付かず、その才能を認め、音楽で親交を深めます。
王太子の要望で作曲を依頼されるのですが、
きちんと曲作りを学んだことのないナンネルは、
理由を言うことなくヴォルフガングと一緒に作曲の勉強がしたいと父に申し出るんですね。
ところが、女性のすることではないと一蹴されてしまうのです。
まだ女性が音楽に没頭できない時代。
彼女の音楽人生に待ち受けていたのはいばらの道だったのです…。

弟のバイオリンを弾いても父にひどく怒られた時代。
その弟が後に音楽家としての名声を得るアマデウス・モーツァルトです。
金銭的に苦しい演奏旅行の中で、
様々な出会いがあり、その出会いが不思議な縁を紡いでいく。
時代さえ違っていたなら、ナンネルの才能は弟以上に評価されていたのかもしれません。
数奇な人生模様は、クラシックの音楽ファンでなくても
興味深く見ることができると思います。☆3つ。
「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.4.1
「高校デビュー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

東京は余震が少し落ち着いてきた感もあり、また試写会に積極的に行こうと思ってます。
たくさんある試写状をスケジュール帳に書き込んだら真っ黒に(笑)。
4月は映画三昧でしょうか。
さぁ今週は1本です。



「高校デビュー」は、大ヒット少女コミックの映画化。

中学時代はソフトボールに打ち込む"スポ根少女"だった晴菜。
高校生になったら恋にすべてをかけると意気込む晴菜でしたが、その気持ちが空回り。
鼻息の荒さに男子はみんな引いてしまっていたのでした。
そんな時、晴菜の前に現われたのが小宮山ヨウ。すべてにおいて完璧なイケメン!
実はヨウは同じ高校のひとつ先輩。そこで晴菜はヨウに、モテるためのコーチを頼むんですね。
あまりのしつこさについに折れたヨウは、
コーチを引き受けるにあたり、ひとつ条件を出します。
それは「俺のことを絶対に好きになるな」ということ。
「はい、絶対に好きになりません!」。
こうして"モテ・レッスン"がスタートしたのです…。

試写終わりでプロモーターさんに、「青春時代を思い出しましたか?」と笑顔で聞かれました。
ボク、まだ青春ど真ん中だと思ってるんですけど(笑)。
ま、設定からして大体ストーリー展開はわかるかと思います。
期待を裏切らないのでご安心を(笑)。
ヨウ役は溝端淳平。ただ、バラエティに出ている彼のイメージがちょっぴり邪魔をしたかなぁ。
ま、裏を返せばそのギャップこそ役者の演技の幅とも言えるんでしょうけど。
晴菜役はこれが女優デビューの大野いと。
最初のうちはその素人っぽい演技に「んっ?」って感じでしたが、
不思議と見てるうちになんだかどんどん引き込まれていくんですね。
もしかしたらこのコ、"持ってる"かも!?
今も昔も恋愛ってベースは"純情"。根底は変わらないんだなって思って、ちょっとホッとしました。
ボク自身、思春期は男子校に通ってて女の子の気持ちがまったくわからず、
情報は妹が買ってきた少女マンガだけだったので、
別冊マーガレットに連載されていたという作品はすんなり入ってきたのかも。
この年になっても純情なボクは、この映画を見て、また恋がしたくなってきたのでした。
誰か"モテ・レッスン"お願いします(笑)。☆4つ。
「高校デビュー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.3.25
「名前のない少年、脚のない少女」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

震災後はマスコミ試写が中止になったり、回数が減ったり。
確かに余震が続くと映画にも集中できない状況になりますもんね…。節電もあるし。
実はこんなところにも影響が出てるということなんです。
今週は1本です。



「名前のない少年、脚のない少女」は、ブラジル映画。

ブラジル南部の小さな田舎町に住むひとりの少年がいました。
"ミスター・タンブリンマン"というハンドルネームで、
インターネットに自作の詩を投稿する毎日。
都会に住むチャット仲間からボブ・ディランのライブに誘われるものの、
「遠いから」となかなか踏み出せません。
そんなある日、少年はひとりの青年と出会います。
彼の名はジュリアン。
恋人のジングル・ジャングルと自殺を計るも自分だけ死に切れず、
町に戻っていたのです。
亡くなったジングル・ジャングルは、インターネットにたくさんの写真を載せていて、
少年はその世界に魅せられていくのです。
虚構と現実の間で少年は揺れ続けるのでした…。

と、書いていて、うまい文章じゃないなと(苦笑)。
それぐらいこの作品を理解できていないんでしょうね。
町を出たいと思ってはいるものの、なかなか踏み出せずにいる少年。
ジュリアンはそのきっかけになりそうな存在。
その葛藤が青春のモヤモヤを表しているのかなとも思ったのですか。
いろいろな行動や思考が何かを比喩的に表現しているのでしょうが、
ちょっと抽象的だったかな。
感性の鋭い方は「なんでこの良さがわかんないの?」と首をひねってるかも(笑)。
ごめんなさい。☆2つ。
「名前のない少年、脚のない少女」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.3.18
「お家をさがそう」☆☆☆
「トゥルー・グリット」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

大変なことになりました。未曾有の大災害です。被災地の皆様には改めてお見舞い申し上げます。
娯楽どころではないと思いますが、
いつかまた笑顔で映画を楽しんでもらえる日が来ると信じてます。
そのためにもこの映画の更新は続けさせて頂きます。
頑張って下さい!
今週は2本です。



「お家をさがそう」は、"監督主義プロジェクト"と銘打って公開される3作品の第3弾。
デビュー作「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞5冠に輝いた、サム・メンデス監督作品。

妊娠6ケ月目のヴェローナと夫のバート。
ある日のこと、バートの両親が突然ベルギーに移住すると言い出したんですね。
困ったバートたち。なぜなら、二人は子どもの面倒はこの両親が喜んで見てくれるはずと、
わざわざ近くに引っ越してきたのだったから。
ならば好き好んで住んでる訳じゃないコロラドを出ようと。
だからと言ってどこに越せばいい?
知り合いなどを訪ねて、バートとヴェローナは住まい探しの旅を始めるのでした…。

フェニックス、ツーソン、マディソン、モントリオール、
マイアミ、サウスカロライナと回るロード・ムービー。
それぞれの場所で待ってる人が、それはそれは個性的で(笑)。
なかなか理想の住みかを見つけられません。
でも「駄作を知って名作を知る」の言葉通り、
自分たちに本当に大切なのは何かを知ることになります。
なかなか自己投影しづらい内容だけど、細かいシチュエーションじゃなく、
大きな意味でみんなに教訓を与えてくれるはず。
大変な時って、必ず何かを教えてくれているんだって信じたいですよねっ。
ちなみにこの"監督主義プロジェクト"、
第1弾は「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督の「ウッドストックがやってくる!」。
第2弾はコーエン兄弟の「シリアスマン」でした。
ラストシーンは確かに気持ちよい風が吹きますョ!☆3つ。
「お家をさがそう」公式サイト



「トゥルー・グリット」は、コーエン兄弟が監督、
スティーブン・スピルバーグが製作に名を連ねた西部劇。

マティは14歳になる牧場主の娘。
ある晩、父親が従業員だったチェイニーに撃ち殺されてしまうんですね。
その動機は、たった2枚の金貨でした。
父の遺体を引き取りにオクラホマ州の州境までやってきたマティは、
なんとしても敵を討ちたいと父の形見の銃に誓ったのです。
自分ひとりではどうにもならないと思ったマティは、
町の人から"トゥルー・グリット(真の勇気)"を持つと言われる
連邦保安官のコグバーンの存在を教えてもらいます。
執念とも言える交渉が実って、力を貸してもらえることになったマティ。
さらには別の容疑でチェイニーを追っていたラビーフも加わり、
マティの仇討ちの旅が始まったのです…。

大人顔負けで、実にしっかりしたマティに対し、コグバーンは大酒飲み。
今回依頼を受けたのも、報酬の魅力が大きかったからのよう。
大丈夫なのかしらといぶかしがるマティですが、頼るのはもうコグバーンしかいない訳です。
一風変わった空気感のある西部劇になっているのはコーエン兄弟の作品だから?
アメリカの人たちにとって西部劇は、日本人にとっての時代劇と同じようなものなのでしょう。
この独特の感覚というか価値観は、もしかするとボクらには正直ピンとこないかもしれませんね。
でもアメリカでは大ヒットとなり、コーエン兄弟作品としても歴代No.1だそうだから、
間違いなく出来はいいのでしょう。
主演のマティ役のヘイリー・スタインフェルドの演技は確かに秀逸!
覚えといて損はない名前ですョ。是非あなたの目で確かめてみて下さい。☆3つ。
「トゥルー・グリット」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.3.13
「SP 革命篇」☆☆☆☆
「台北の朝、僕は恋をする」☆☆☆
「ホームカミング」☆☆☆
「ランナウェイズ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

講師をしている専門学校が春休みに。
生徒から「休み中にたくさん映画を見たいのですが、お勧めのDVDを教えて下さい」と言われ、
あれやこれやと教えたのですが、やっぱり趣味が出ますよね(笑)。
っていうか、19歳の女子が楽しめるかどうかを考えて教えてあげなきゃいけません。
ちょっと理屈っぽいやつばっかりだったかなと心配してます(笑)。でも感想が楽しみです!
さ、今週は4本です。


「SP 革命篇」は人気TVドラマの映画化第2弾にして、完結編。

警視庁警護課第4係"SP"のメンバーたちは、今日も政府要人の警護に当たります。
しかし朝から何かがおかしい。
"シンクロ"という特殊な能力を持つ井上薫の、その嫌な予感が的中してしまいます。
国会議事堂では衆議院本会議がスタートしたのですが、
なんとテロリストたちが巧妙な罠を仕掛けて潜入。
国会議事堂を乗っ取ってしまいます。
驚いたのは、そのテロリストを率いていたのが彼らの上司・尾形だったということ。
尾形にはある野望がありました。
それに呼応した政治家、官僚などがこの計画に荷担、協力をしていたのです。
国会議事堂の中で、孤立無援となったSPの4人は、
果たしてこの危機的状況を打開することができるのでしょうか…。

人気のTVドラマシリーズということなんですが、
前編となる「野望篇」と今回の「革命篇」との間に、
3月5日にOAされた「革命前日」というTVドラマを挟んでいるんですね。
映画とTVのキャッチボール。ここがまた斬新な手法だと思いません?
尾形の野望は"復讐"と言ってもよく、広い意味では確かに日本国民みんなが思ってるはずのこと。
「今の政治は一体どこを向いているんだ」と。
そこに観客が感情を入れ込む部分ができているのです。
よくできた作品だと思いますョ。
公安の冷めた正義にニヤリとし、捨てゼリフにゾッとしますから(笑)。
V6岡田くんの演技も光ってます。いい役者ですねっ。☆4つ。
「SP 革命篇」公式サイト



「台北の朝、僕は恋をする」は、台湾映画。

両親が営む中華料理店を手伝うカイ。
最近、大好きな彼女がパリに留学してしまい、
疎遠になりつつあることが悲しくて仕方ありません。
お金が無いので、彼は本屋さんに行って、フランス語講座を毎日立ち読みしてました。
そんなカイのことが気になって仕方ないのが、本屋で働くスージーでした。
毎日顔を合わせるので、自然と言葉を交わすようになります。
そんなある日のこと、パリの彼女から別れの電話が入るんですね。
いてもたってもいられないカイは、地元のボスからお金を借りてパリへ行こうと決意します。
ところがお金を工面する代わりにある物を運んで欲しいとボスから依頼されるんですね。
そのことが、スージーをも巻き込む大事件に発展するのでした…。

シンプルな恋愛ものかと思いきや、あらぬ方向へ物語は進んだりして、
思った以上にドタバタ劇にはなるのですが、
それでも着地点はしっかり"恋愛"にあるからいいかなと。
こういうのを見る度に恋っていいなぁと思います(笑)。
こんな出会いがもうボクの年齢になると不可能だもんね。完璧に圏外。寂しいものです。
スージーが健気で可愛いですョ。台北に行きたい…(笑)。☆3つ。
「台北の朝、僕は恋をする」公式サイト



「ホームカミング」は、高田純次主演の熟年コメディー。

いよいよ定年退職を迎えた鴇田和昭。
セカンド・ライフは家族と共に有意義に時間を過ごすことが夢でした。
虹の丘タウンという郊外の住宅地に二世帯住宅を建てたものの、
ひとり息子の和弘はここには住まないと拒否。
失意の中、街に出てみると、そこかしこにリタイア組の老人たちが。

昔は希望の街だったこの虹の丘タウンをもう一度活性化させたい。
鴇田は自治会に入り、中止になりそうだったお祭りの実行委員を引き受けるのです…。

こっちの方がボクには現実的?なんてこともまだないんですけどね(笑)。
日本社会が持つ問題のひとつがこれ。いわゆる空洞化です。
それでも悪い方だけを見ずに、自分たちが背負っていかなくてはと、
熟年層が生き甲斐に感じてるなら意味はあるんじゃないかと思うのですが。
ただやっぱり健全な構図じゃありませんよね。
キャストを見てビックリ!ウルトラシリーズの人たちがいっぱい!
ウルトラマンの黒部進、ウルトラセブンの森次晃嗣、ウルトラQの桜井浩子…。
みんなお年を召しました。
懐かしいなぁと感じるボクももちろん、なんですけどね(笑)。
よくも悪くも、この話にリアリティを感じる層向けの映画であることは間違いありません。☆3つ。
「台北の朝、僕は恋をする」公式サイト



「ランナウェイズ」は、70年代に実在したガールズ・バンドの物語。

いまだ女の子がエレキギターを弾くなどもってのほかだった1975年。
15歳の少女、ジョーン・ジェットは、革ジャンに身を包み、
まるでロック少年のように振る舞っていました。
ある日のこと、クラブで音楽プロデューサーのキム・フォーリーと出会い、
商売になると感じたキムから同じ境遇の女の子たちを紹介され、バンドを組むんですね。
ところが、実力はあっても華がない。
そこでセクシーなボーカリストを探すのですが、そこで出会ったのがシェリー・カーリーでした。
みんなと同じように、現状を打破したかったシェリーはバンドに参加。
ここにガールズ・バンド、ランナウェイズが誕生したのです…。

ボクが中学生の時ですね。アルバム買いましたから。
今でこそ当たり前のガールズ・バンドですが、あの頃は本当にセンセーショナルで、
劇中にも出てきますが、本国よりも日本での人気が高かったはず。
解散後にジョーン・ジェットが作ったバンド、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの楽曲は
ビルボードのチャート上位にランク・イン。
その頃、シェリー・カーリーはそんな生活を送っていたのかと、
真実の裏話もこの映画で知ることになります。
シェリー・カーリーに扮するのが、あの天才子役として知られたダコタ・ファニング!
ランジェリー姿で歌う姿はもうひとつのショックかも(笑)。
やっぱりランナウェイズを知ってるほうが楽しめるかな。
ボクにはすごく面白かったです。☆4つ。
「ランナウェイズ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.3.4
「アメイジング・グレイス」☆☆☆
「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

アカデミー賞の作品賞、主演男優賞など4部門に輝き、
今年の主役となったのは「英国王のスピーチ」でした。先週ご紹介しましたね。
ご存じのようにボクは競馬も仕事にしているので、
この映画には試写を見る前からかなり興味があったんです。
というのも、7月にイギリスで行われるG1"キングジョージY&クイーンエリザベスS"の
キングジョージこそがこの映画の主人公だから。
大きなレースに名を残す国王でさえコンプレックスを抱き、
プライドをかなぐり捨ててそれを克服しようと頑張る。
そんな姿に勇気をもらえる人、きっと多いと思いますョ。是非ご覧になってみて下さい!
さ、今週は2本です!


「アメイジング・グレイス」は、誰もが耳にしたことのある名曲に隠された真実の物語。

奴隷貿易が当たり前のように行われていた18世紀のイギリス。
そんな中、裕福な家庭に生まれながら、奴隷制度に疑問を抱き、
心を痛めていた青年がいました。ウィリアム・ウィルバーフォースです。
彼にとって政治家になるという決断はかなり重いものだったのですが、
彼の師でもあり、「アメイジング・グレイス」の作詞者でもある
ジョン・ニュートンの後押しもあって、政治の道を選択したのでした。
奴隷制度を廃止しようというウィルバーフォースの訴えに賛同するのはごく少数。
国益にすら影響すると、その壁は高く、厚いものでした。
それでも決して折れない彼の心を支えたのは、
名曲「アメイジング・グレイス」の歌詞だったのです…。

誰もが知っている曲の名前がタイトルになっていて、
音楽映画や恋愛映画をイメージするかもしれません。
その観点で見に行くとちょっぴり肩透かしかな。
一方で、曲に秘められたパワーが時代を動かしたという意味では音楽映画だと評する人もいるよう。
当たり前のようにあった権益を放棄する、また放棄させるのは至難の業。
それをさせた原動力になったのが1つの曲だったとしたら、確かにすごいことですよね。
映画では歌詞の和訳が流れます。
宗教的背景があるのも確かですが、やはり最後は人の心にあると、
きっと気付かされることでしょう。☆3つ。
「アメイジング・グレイス」公式サイト



「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち」は、
ご存じ人気アニメの映画版。

「どこでもドア」を使って北極に行ったのび太が拾ってきたのは、
巨大なロボットの足と、謎の青い球体でした。
すると次々とロボットの部品がのび太の家の周りに降ってくるではありませんか。
ドラえもんとのび太は、「鏡面世界」で真裏の世界に部品を運び、
組み立てるとザンダクロスという名の巨大ロボットが完成したのです。
青い球体はその頭脳部分。
「おはなしボックス」で球体をヒヨコ型にし、"ピッポ"と名付け、会話ができるようにしたんですね。
すると今度はリルルという女の子が現れ、ロボットは自分のものだと言います。
実はザンダクロスとリルルは、
地球征服を企むロボットの星"メカトピア"から送り込まれたものだったのです…。

いやぁ、泣きました(笑)。
最初は駄々をこねるのび太に腹が立ってしかたなかったのですが(笑)、
みんなの純粋な心が、ロボットの冷たい心にポッと灯りをともしていく姿に感動しちゃいました。
映画のドラえもんは大人が見るべきとの声は確かですね。
一緒に見て、語り合って、そして子どもたちへと伝えるべきものだと思います。
今の世の中は、科学の進化や発達が人に与える悪い部品ばかりが目立ってるけど、
ドラえもん的科学の進歩ならって思いますよね。
その重要なポイントは、"心の成長が伴っているか否か"だと思いますよ。
考えてみて下さい!☆4つ。
「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.2.24
「英国王のスピーチ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

この前、「ドラえもん」の新作試写を見て泣いちゃいました(笑)。
しずかちゃん役のかかずゆみさんとは、昔お仕事をご一緒させて頂いたのですが、
素晴らしいお仕事をされてるなぁと改めて。
技術はもちろん内容も、です。
大きな活躍の場を持つには大変な努力が必要です。敬意を表さずにはいられません。
ボクも頑張らなきゃ!
さ、今週は1本です!


「英国王のスピーチ」は、イギリス国王・ジョージ6世の物語。

イギリス国王・ジョージ5世の次男として生まれたジョージ6世は、
幼い頃からずっと吃音(きつおん)に悩んでいました。
それゆえ人前に出るのが嫌で、どうしても自分に自信が持てなかったのです。
厳格な国王の父は敢えて公の場でスピーチをさせるのですが、
いつも途中でしゃべれなくなってしまうありさま。
たくさんの言語聴覚士に治療を依頼しても良くはなりません。
そんな時、妻のエリザベスが一風変わったスピーチ矯正の専門家を見つけてきます。
オーストラリア人のライオネルという治療士なんですが、
その治療法がとにかく型破りなんですね。
診察室では誰もが平等だと言って王子を友達扱いし、
吃音の原因は心にありとする彼はプライベートについてもズケズケ踏み込んだ質問をする。
確かにライオネルのやり方でジョージ6世はスムーズに話すことができたのですが、
そこは王子と平民。不遜な態度に怒った王子は治療を中断してしまいます。
そんな中、父が亡くなり、
兄のエドワード8世が恋人のために王位を捨てた結果、
ジョージ6世が英国王になることに。
戴冠式のスピーチは大丈夫か?
助けてくれるのは、そう、ライオネルしかいなかったのです…。

この作品、実は実話を元にした映画なんですね。
昔、イギリスはオーストラリアのことを"ダウン・アンダー"と呼び差別していました。
そのオーストラリア人がイギリス王子のスピーチを矯正するというところにも、
ちょっぴり皮肉というか、隠し味的面白さがあるんだと思います。
とは言っても演出ではなく、実話なんですけどね(笑)。
コンプレックスって誰にでもありますよね。
人が「そんなこと気にしなくてもいいのに」と思うことが
本人にとっては大きなコンプレックスだったりする。
このジョージ6世のような立場では、それを全国民の前にさらけ出さなくてはならない訳で。
さぞ辛かったことでしょう。
妻のエリザベス、ライオネル、そして本人の努力。
さらに原因を探るために、過去の忌まわしい記憶を甦らせることも。
そんなすべてを乗り越えて頑張る姿に感動を覚えるはずです。
ジョージ6世は今のエリザベス女王のお父さんにあたる人。
そんな偉い人でも悩みはあるんだなと、違った意味での勇気ももらえるかもしれません。☆4つ。
「英国王のスピーチ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.2.10
「あしたのジョー」☆☆☆☆
「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」☆☆
「洋菓子店コアンドル」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

2月に入って、また精力的に試写を見始めました。1月はちょっぴり出遅れちゃいましたからね。
感じるのは、やっぱり映画っていいなってこと。必ず何かしら刺激をもらいますから。
寒い寒いと部屋で縮こまってないで(笑)、どうぞ積極的に劇場に足を運んでみて下さい!
さ、今週は3本です!



「あしたのジョー」は、人気コミックの実写版。

舞台は昭和40年代の東京の下町・ドヤ街。
毎日のようにケンカに明け暮れていた矢吹丈は、
元ボクサーの丹下段平にボクシングの素質を見出だされ、
ボクサーになることを勧められます。
ところがトラブルを起こして少年院へ。
そこでも悪態をつくジョーでしたが、
チャンピオンクラスの実力を持つ力石徹に叩きのめされてしまうんですね。
段平から届く「あしたのために」と書かれた練習方法を実践し、
いつかあの力石を倒してやると誓うジョー。
先に少年院を出た力石は恵まれた環境の白木ジムで再スタートを切り、連勝街道まっしぐら。
一方のジョーは出所後、
段平の営むおんぼろジムでボクサーとしてのキャリアをスタートさせます。
いつかは倒さなければならないライバル。
ジョーも、力石も、互いに互いをそう認めていたのでした。
そして遂に拳を交える時がやってきたのです…。

ちばてつや作のボクシング漫画、不朽の名作です。
矢吹丈にはNEWSの"やまぴー"こと山下智久が、力石徹には伊勢谷友介が扮し、
このふたりが究極のトレーニングとダイエットで作り上げた
シェイプアップ・ボディはワイドショーなどでも話題になりましたよねっ。
確かにすごいです!
こうじゃなければ実写化の意味はないだろうというくらい、ふたりの役者魂が伝わってくる身体です。
でも、もっと話題になってもいいのにと思うのは丹下段平役の香川照之。
もちろん特殊メイクばりの作りですョ(笑)。でもメチャメチャハマってますって。
有名なストーリーだけに、結末はみんな知っているはず。
それでもグイッと引き込まれるデキです!☆4つ。
「あしたのジョー」公式サイト



「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」は、実話に基づいた戦争映画。

太平洋戦争末期の1944年。
日本にとって南洋の重要拠点だったサイパン島に、ひとりの男が送り込まれます。
大場栄大尉です。
何としてもこの島を死守すること。
大場大尉に課せられた使命はそれでした。
ところが戦況は日本軍が明らかに劣勢。
サイパン島にアメリカ軍の上陸をあっさり許してしまうのです。
次々自決する軍人、そして民間人。
そんな中、アメリカ軍に対し抵抗を続けながらも、
生きることの大切さを噛み締め、それを部下に伝える大場大尉。
自然を読み、運をも味方に付け、簡単には陥落しない敵将にアメリカ軍は敬意を込め、
彼を"フォックス"と呼んだのでした…。

戦争の不条理がここにも描かれています。
個人と個人のレベルでは、決して憎しみ合うことのない人たちが殺し合う戦争。
まさしく悲劇です。
テイストとしては「硫黄島からの手紙」などの名作がありましたからね。
比べてしまうと…というのが正直あるかもしれません。
絶対に起こしてはならない人間の愚行。
その気持ちを継続的に喚起させるという点では意味のある1本かもしれませんね。☆2つ。
「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」公式サイト



「洋菓子店コアンドル」は、江口洋介、蒼井優主演作。

東京で評判の洋菓子店『コアンドル』。
そこに鹿児島弁丸出しの女の子、なつめがやってきます。そして藪から棒に、
「あのぉ、海くんいますか?」。
この店にパティシエ修行に来ていた恋人を探しに来たのです。
「あの子ならもういないよ」。
オーナーの依子に冷たくつきはなされるなつめ。
「そんなはずないっ」と食い下がるのですが、確かに海くんはいませんでした。
彼を探すためここで働かせてと頼むなつめ。
実家がケーキ屋だからと作ったケーキは話にならず。それも断られてしまいます。
ところが『コアンドル』のケーキを食べて目からウロコ。
今度は誠意を持って働かせて下さいと頼みこんだのでした。
厳しい仕事と恋人探しの日々。
そんなある日のこと、『コアンドル』に大変な事件が起こるのです…。

なつめには蒼井優が。じゃ江口洋介は?というと、今は厨房には立たず、
スイーツ評論家や料理学校の講師をしている十村という男性に扮します。
この十村、食べた人すべてを幸せにするという伝説のパティシエだったのです。
依子と古くからの付き合いで、『コアンドル』にもよく顔を出していた十村。
なぜスイーツ作りを辞めてしまったのかは劇中で明らかになっていきます。
色鮮やかなスイーツたちが並ぶ華やかな映像に、女性たちはきっと魅せられるはず。
見た後はケーキの食べ放題に行く人がきっと多いんだろうなぁと(笑)。
厳しい職人の世界を描きつつ、青春と人情の素敵なドラマが展開されていきます。
でもどうしても嫌だったのが、なつめの傍若無人な振る舞い。
『コアンドル』で働く先輩に対して、
また十村に復帰を迫る場面でも、その物言いは礼を失してるだろって感じで。
でもそこにも監督のこだわりがあったようで、
妥協のない演技指導があったと宣伝会社のスタッフ氏が教えてくれました。
ボクは正直そこだけかなぁ…。
バレンタイン直前の公開です。
是非恋人同士で見て、恋愛観や人生観を語り合ってみてはいかがですか?☆3つ。
「洋菓子店コアンドル」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.2.2
「再会の食卓」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近2時間を超える作品が多く、試写会のやり繰りが大変です。
つまり移動時間が無いんですよね。
空いた時間の有効な使い方も考えないと。
さ、今週は1本です!


「再会の食卓」は、中国映画。

上海で暮らす初老の女性、ユィアー。
夫と息子、ふたりの娘、娘婿にふたりの孫。
平穏に暮らしていたユィアーの元に、一通の手紙が届きます。
それは戦争で生き別れた元夫・イェンションからの手紙でした。
40年ぶりに台湾から上海帰って来るというのです。
母の再会を家族は猛烈に反対しますが、夫のシャンミンだけは温く迎えようというのです。
そしてイェンションがやってきます。
「大変だったでしょう」と、豪華な料理で歓待するシャンミン。
他の家族は気まずい雰囲気に。
ユィアーが街を案内していると、イェンションがこう切り出したのです。
「ユィアー、君を台湾に連れて行くために来たんだ」。
幸せだった日々を思い出し、ユィアーの心は揺れ動くのでした…。

正直、この映画は中国と台湾の人の映画です。ボクら日本人にはおそらく理解できない世界。
人の優しさとか、情とか、思いやりとかではなく、
戦争や時代に加え、中国と台湾の間の事情がある。
そこも踏まえて上で、人はどこまで寛大になれるのかと考える作品でしょうか。
監督のワン・チュエンアンが1965年生まれ(45歳?)というところからも、
長い間、広く両国民感情の中に横たわる負の遺産なんだなというのが想像できます。
逆に「わかる」と言うことの方が失礼な気がして、☆は2つに止めておきます。
「再会の食卓」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.1.27
「GANTZ」☆☆
「白夜行」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

3D花盛り。
もちろん素晴らしい技術で"夢"を見せてくれますが、
ボクは平面のスクリーンに拡がるあの映画の感じも好きなんですけどね。
ヴァーチャルだけど、よりリアル。
そこを求め過ぎると根本が違ってきちゃうかも?
あなたはどう感じてますか?
さ、今週は2本です!


「GANTZ」は、人気コミックの映画化。

大学生の玄野が地下鉄のホームで電車を待っていると、酔っ払いが線路に転落します。
助けに飛び降りたのは玄野の幼なじみの加藤でした。
緊急の場面での久々の再会。
ところが手を差し出した玄野共々、加藤は入ってきた電車に轢かれてしまったのです。
気が付くとふたりは見知らぬマンションの一室にいました。
部屋の真ん中にはGANTZ(ガンツ)と呼ばれる黒い玉があります。
そしてそれを取り囲むように座る数名の人たち。
するとGANTZの中から輪切りの人が現れ、人間の形になっていくではありませんか。
彼女もまたこの部屋に転送されてきたのです。
聞けばGANTZは"星人"と呼ばれる敵を倒せとミッションを与えると言います。
目的は何なのか、GANTZとは一体何なのか。
まったく訳がわからないまま、玄野と加藤も命じられるままに、星人との戦いに向かうのでした…。

玄野に二宮和也、加藤に松山ケンイチ。このふたりの共演も話題の1本。
ちなみに戦いに勝つとポイントが与えられ、"100てん"になるとここから解放されるか、
好きな人を生き返らせることができるとか。
ボクは内容がまったくわからず、キョトーンとして見てました(笑)。
たぶんコミックを先に読んでからかな。
単行本は累計で1350万部を突破してるそうだから、面白いんだと思います。
今作がいわば前編で、4月にはパート2の公開が決まってます。
それまでにコミック読んどきます(笑)。☆2つ。
「GANTZ」公式サイト


「白夜行」は、東野圭吾原作ミステリーの映画化。

昭和55年、廃ビルの密室で質屋の店主が遺体で発見されます。
従業員と不倫の噂があった妻のアリバイを証言したのは、
暗く、冷たい目をした10歳の息子、亮司でした。
一方、店主にも愛人がいて、貧しいバラック街に住むその愛人に事情を聞きに行くと、
嘘の証言をしようとする女の言葉を遮ったのは、同じく10歳の娘、雪穂だったのです。
その後、質屋の従業員も、店主の愛人も事故で亡くなり、
結局事件は被疑者死亡のまま、一応の解決を見ます。
ところが担当刑事の笹垣だけは、どうも符に落ちずにいたのでした…。

話はその後に続きます。
親戚の養女として育てられ、名門女子校から女子大に進学し、
資産家の恋人を作り、妻の座に収まった雪穂。
女性の性の相手として金を稼いでいた亮司も、年上の恋人と同棲生活を始めます。
笹垣は幼かったふたりのあの目、あの表情が忘れられず、
出世も捨て、家族も犠牲にして、事件のその後を追うのです。
ストーリーはさすがの東野作品。堀北真希も高良健吾も、そして船越英一郎も、
迫真の演技でそれぞれの数奇な人生を演じます。
よくできてはいますが、本で言うところの読後感があまり心地よくなくて。
裏を返せば、それほどに刺さる作品だと言うこともできるのですが。☆3つ。
「白夜行」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.1.20
「犬とあなたの物語 いぬのえいが」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

年末年始に「何かいいDVDは無いかなぁ」という質問が多かったので紹介したのですが、
その反応が返ってきました。
あったかい気持ちになれるもの、家族の絆を描いたものを勧めたのですが、かなり好評でした。
「西の魔女が死んだ」、「食堂かたつむり」などなど。
あなたもよかったら改めて見てみて下さい!
さ、今週は1本です!



「犬とあなたの物語 いぬのえいが」は、
5年前に公開になった「いぬのえいが」のシリーズ第2弾。

前作同様、犬が真ん中にいる短編オムニバス。
ストーリー仕立てのものから、ショートショートまで、大きく分けると6つの話から成り立っています。
登場する犬は69犬種、107頭。
笑いあり、涙ありのストーリーとなっています。
ただ、ボクは前作、号泣だったんです…。もうヒクヒクッってなりながら。嗚咽ってやつですか(笑)。
たまたま試写で隣りに座った人が、「かなり泣けるらしいよ」って言うのを聞いて、
期待し過ぎちゃったのもいけなかったかなぁ。
ボクは、あくまで"ボクは"ですョ、残念ながら泣けませんでした。
それで☆は厳しくしちゃいましたが、きっと実際に犬を飼ってる方にはリアルに響く部分があるはずです。
どうぞ劇場に足を運んでみて下さい!☆2つ。
「犬とあなたの物語 いぬのえいが」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2011.1.13
「愛する人」☆☆☆☆
「僕と妻の1778の物語」☆☆☆
「ヤコブへの手紙」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今年最初の更新です。2011年もなるべく多くの作品に触れて、
あなたの映画鑑賞の参考になるよう努めたいと思います。
いつもいうように、あくまで映画評論家ではない、映画好きのボクの個人的な感想です。
☆が少なくてもよく出来た作品はたくさんありますから。
自身の目で確かめて下さいねっ。
さ、今週は3本です!



「愛する人」は、母と子の絆を描いた物語。

51歳のカレンは年老いた母の介護をしながら働く女性。
実は彼女には14歳の時に産んだひとりの女の子がいたのです。
ところが若過ぎるからと母親の反対に合い、養子として手放すしかなかったのです。
その娘、エリザベスも37歳。
今は弁護士として辣腕をふるっていた彼女でしたが、会社のボスの子供を妊娠してしまうんですね。
キャリアを捨てて子供を産もうと決意するエリザベス。
その瞬間から見知らぬ母への思いが募ります。
一方のカレンも母親の死がきっかけで、娘を探そうと行動を起こすのでした…。

物語はさらに、望んでも子供を授からない黒人夫婦や、
心を閉ざすカレンを理解しようとする男性なども絡んできます。
カレンやエリザベスの心情がわかるといえば嘘になるけれど、
ずーっと心に抜けないトゲが刺さったまま生きているって、どんな気持ちなんだろうと。
結末に感嘆の声が挙がるかもしれませんが、脚本はよくできていました。
特に女性には思うところが大きいかと思いますョ。☆4つ。
「愛する人」公式サイト



「僕と妻の1778の物語」は、実話に基づく夫婦の感動物語。

SF作家の朔太郎と妻の節子は仲良し夫婦。
ところがある日、節子が腹痛を訴えて病院に駆け込むんですね。そして緊急手術。
医師が朔太郎に伝えたのは、
節子の病気は末期のガンで余命1年という残酷な宣告でした。
「必ず治る」と励ます朔太郎。「自分に何ができるだろう?」と思案した結果、
毎日笑わせて免疫力をあげることだと考えます。
朔太郎の小説のいつも最初の読者だった節子のために、
毎日必ず1編と約束し、短編小説を書き始めるのでした…。

「ねらわれた学園」などの作品でしられるSF作家の眉村卓氏と
亡くなった悦子夫人の実話からできた物語。
ややもすると重くなるテーマを、コミカルな描写を含むことで、
シリアスな中に"楽しい"がテーマの夫婦の闘病生活を描いているような気がします。
ただし逆にそこに違和感を感じる人もいるかも?
"余命1年"が1778日。365で割ってみて下さい。愛の深さは推してしるべしです。☆3つ。
「僕と妻の1778の物語」公式サイト



「ヤコブへの手紙」は、フィンランド映画。

12年の刑期を終えて出所した女囚のレイラ。
身寄りもない彼女はある年老いた牧師の家で、住み込みで働くことになります。
牧師の名はヤコブ。
彼を頼って手紙を送って来る人のために引っ越すこともせず、
朽ち果てた廃屋に暮らしていたのです。
盲目のヤコブ。
レイラの仕事はそのヤコブに届く手紙を読み、ヤコブが話す返事を手紙に書くこと。
ところがある時を境に、何故か手紙が一通も届かなくなってしまいます。
生きていく支えを失ったように弱っていくヤコブ。
そんなヤコブの姿を見て、レイラはある決意をするのでした…。

実はちょっぴり謎解きのようなエッセンスも入っていて。
そのカギを握るのは郵便配達員のよう。
イメージ先行で見ると肩透かしを食うかもしれません。
可能ならばパンフレットを買うなどして、
先に知識を入れておいた方が楽しめるタイプの作品かな。☆3つ。
「ヤコブへの手紙」公式サイト