週末公開の映画……2008.12.25

「ミラーズ」☆☆☆

今年はこれが最後の更新。1年間ご愛読ありがとうございました。
来年は10日公開の作品からご紹介していく予定です。
更新はその直前になるかと思います。
09年も引き続きチェックして下さいね。
さ、今週は1本です!

「ミラーズ」は、“鏡”がテーマのサスペンス・ホラー。
元刑事のベンは、同僚を誤って射殺し、罪悪感から酒に溺れ、妻子とも別居。
なんとか元の生活を取り戻そうと新しい仕事を探し、
巨大デパートの夜警の仕事に就きます。
実はこのデパート、5年前に火災を起こし、
たくさんの犠牲者を出していたのです。
法的手続きの関係でそのままの状態で保存してあり、建物の中は焼け焦げたまま。
そんな中で妖しく光輝く巨大な鏡がありました。
ベンが近付いて行くと、中からうめき声が聞こえ、
焼けただれた人の姿が映るではありませんか。
それからというもの、ベンの周りで残忍な事件が起こり始めます。
正体の判らぬ恐怖は、ベンの愛する家族にまで襲いかかっていったのです…。
鏡は東洋でも霊的現象に関わりの深いツールです。
鏡の向こうにもうひとつの世界があるんじゃなかろうか?
みんな一度は考えたことがあるはずです。
ボク昔、マネージャーをやっていて、
ある女性タレントの大きな姿見を割っちゃったことがあるんですよ。
ひとつの楽屋にたくさんのタレントさんが入っていて、
場所が無かったからドアに鏡を立て掛けてたそうなんです。
知らないからコンコンとノックして「失礼しまーす」と
ドアを押したら鏡がガッシャーン。
そのタレントさんは別の事務所の方だったんですが、
「いいの、いいの。こんなところに立て掛けてた私がいけないんだから」と。
さらにその破片が飛び散ってまた別のタレントさんの衣装箱の中に入っちゃったんです。
最悪でしょ。
それでもその方も、「大丈夫。気にしないで」と優しく笑顔で言って下さいました。
なのにボクの担当していたタレントさんは、「なぁにやってんの〜っ!!!!」。
思い出すとこの映画より怖かったかも(笑)。
まぁそこで怒らないと周りの皆さんに対し、示しがつかないですもんね。
その時、「鏡っていうのは女性にとってすごく大切な縁起物なんだから」と教わりました。
主演は大ヒットTVシリーズ「24」のキーファー・サザーランド。
「24」ファンは必見かも。☆3つ。
「ミラーズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.12.17

「永遠のこどもたち」☆☆☆
「GOTH」☆☆☆
「地球が静止する日」☆☆☆
「PARIS」☆☆☆
「ファニーゲームU.S.A.」☆☆
「40歳問題」☆☆☆☆

もう何年前でしょう。ボクがusenで番組をやっていた頃、
駅からスタジオに向かう途中に映画のセットがありました。
警備員が立っていて、「映画かドラマのセットですか?」と聞くと、
「ハリウッドのラーメン映画です」と。
なんのことやら?とその時は思ったのですが、
先日その映画の試写を見て来ました!
「これかっ」となんだがうれしくなっちゃいました(笑)。
タイトルは「ラーメンガール」。
公開が近付いたらまたきちんとご紹介しますねっ。
さ、今週は6本です!

「永遠のこどもたち」は、スペインの“スピリチュアル・ムービー”。
孤児院出身のラウラには、医者である夫と7歳の息子シモンがいました。
ラウラには、今は閉鎖されてしまった孤児院を買い取り、
シモン同様に障害を持つ子供たちのための施設にしたいという夢がありました。
念願叶って孤児院の跡地に引っ越したラウラたち。
しかしシモンが、いるはずのない友達の話を仕切りとするようになります。
子供の空想だろうと最初は聞き流していたラウラでしたが、
名前をトマスと呼び、だんだんシモンの話はエスカレートするばかり。
ある日のこと、ラウラはイライラからシモンを怒鳴りつけてしまいます。
どこかに走り去ってしまったシモン。
その日から、シモンの姿はどこにも見当たらなくなってしまいます。
必死に探すラウラでしたが、シモンの代わりに現われたのは、
奇妙な布を被った男の子だったのです…。
粗筋もこれだけだとちょっとわかりづらいと思いますが、
スピリチュアル・ムービーとはホラーにも似て。
あまり詳しくは語らない方がいいでしょう。
ラウラが養女としてもらって行かれた後に施設に起こった悲しい出来事が、
実は今回の事件に大きく関与しているのです。
が、それは見てのお楽しみ(笑)。☆3つ。
「永遠のこどもたち」公式サイト

「GOTH」は、乙一のベストセラー小説の映画化。
人の“死”に異様な関心を持つ男子高校生の神山樹。
同じクラスの女子生徒で、
不気味なほど物静かな森野夜も実は同じ嗜好の持ち主だと気付きます。
最近、街で多発している猟奇殺人事件に、
自分たちの感性にも似た芸術性を見出したふたりは、
自分たちでこの事件を解決しようと捜査に乗り出します。
マニアだけが集まるという喫茶店で拾った一冊の手帳。
そこには事件に繋がる驚くべき記述があったのです…。
ひと昔前なら気味の悪い映画だなぁと思ったのでしょうが、
猟奇殺人が日常でもこれだけ多く現実のものとして起こっていると、
スクリーンの中が異世界だと思えなくなるのが逆に怖いかも。
原作は100万部を突破しているそう。
その人たちの興味が“死”じゃないことを祈るばかりです。☆3つ。
「GOTH」公式サイト

「地球が静止する日」は、キアヌ・リーブス主演作。
こちらは19日金曜日公開です。
地球外生物学者のヘレン。
ある日突然、彼女の家に政府の人間がやってきて、
有無を言わさずヘレンを連行していくんですね。
理由を聞いても「非常事態なんです」としか教えてもらえません。
NASAの研究室に着くと、
そこにはあらゆるジャンルのトップの科学者が集められていて、
驚愕の事実を知らされます。
謎の物体が驚くべきスピードで地球に近付いて来ていて、
このままだと衝突は避けられず、地球はすべてが灰になるというのです。
あまりの速さゆえ、ミサイルで撃ち落とすこともできず、
衝突までに残された時間は78分。
そして遂にその時が。誰もが覚悟したその瞬間、
何故かその物体は減速をし、衝突ではなく、地球に着陸したのです。
目も眩むような光を放つ球体から、生命体が現れ、
握手をするかのように手を差し出します。
ところが動揺した兵士が、その生命体に向けて発砲してしまうんですね。
倒れ込んだ生命体を研究室に運び、傷付いた身体を治療するのですが、
様々な分析を加えれば加えるほど、
その生命体の発達した知能や能力がわかってきます。
「私たちの星に何の目的でやって来たの?」。
「君たちの星?地球を救いに来た」。
「私たちを助ける?」。
「いや、君たち人類から地球を助けに来たんだ」…。
試写が行われたのは16日火曜日。マスコミ試写はこれ1回。
このパターンって、話題先行で実はつまんないって作品が多いんですョ。
たぶん「今イチだ」って風評が出回る前に
公開に持ち込みたいんじゃないかなって(笑)。
でもこの作品はまずまずだったと思います。
確かに地球は悲鳴を上げているでしょう。
CO2排出規制に消極的なアメリカで多くの人に見られて、
環境への声が高まって、政治をも動かすといいのに。
以前チラッと話した「ザ・ムーン」という映画と一緒に見るといいかも。
逆に来て叱って欲しいと思いません?☆3つ。
「地球が静止する日」公式サイト

「PARIS」は、フランス映画。
これまで様々な映画の舞台として描かれて来たパリ。
世界中の憧れの街パリの、今の現実の姿を描いたのがこの映画。
登場人物はたくさんいて、
心臓病でムーラン・ルージュのダンサーを辞めたピエール。
そのピエールの姉で、
3人の子供を抱えながら働くシングルマザーのエリーズ。
ピエールの向かいのアパルトマンに住む美人女子大生のレティシア。
そのレティシアに恋する歴史学教授のロラン。
ロランの弟で建築家のフィリップ。
エリーズが買い物に出掛ける市場で働く元夫婦のジャンとカロリーヌ…。
他にもたくさんの人が出てくるのですが、
まったく関係が無いようでいて、
みんなこのパリという街で不思議と繋がっていたのです…。
そんなストーリーの妙に、不法移民問題など
フランスの今が抱える問題もちりばめつつ見せるという作品。
自国の動員はさすがにすごかったようで、大ヒットになったそう。
決して明るい作風じゃないけれど、
そんな中にも見出だせる何かがあるということなんでしょうね。
個人主義の国フランス、その首都パリ。
“フランス好き”や“パリ通”ならすごくよくわかるのかも。
でも“暗さ”もなんだかオシャレに描かれてたところがさすがパリって感じかな(笑)。
☆3つ。
「PARIS」公式サイト

「ファニーゲームU.S.A.」は、
ミヒャエル・ハネケ監督が97年に発表した「ファニーゲーム」の、
監督自身による完全リメイク作品。
ジョージとアンの夫婦に、息子のジョージー。
この3人が夏のバカンスにと訪れた湖の別荘。
すると2人の若い男性が訪ねてきます。
ひとりが中に入って来て、隣りの別荘のイブの使いで来たのだけれど、
卵を分けてもらえないかと。
アンは快く渡すのですが、玄関で若者はその卵をすべて落としてしまいます。
「気にしないで」とアンが割れた卵を掃除していると、
再び卵を欲しいと言うのです。
渋々卵を冷蔵庫から出そうとした時、キッチンにまで入り込んで来た男が、
今度はアンの携帯を流しの中に落としてしまうんですね。
イライラしながら卵を渡し、なんとか男を外に出すのですが、
庭で飼い犬のラッキーが異様に吠えている。
そこへ夫と息子と2人の若者がまた戻ってくるのです。
犬に吠えられて卵を落としてしまったからまた欲しいと。
いい加減にしてと怒るアンに、状況がわからない夫はアンを責めます。
懸命に説明をするアン。
しかし、もうその時点で恐怖のゲームは始まっていたのでした…。
不条理、不愉快、神経を逆撫でするイヤ〜な映画でした。
タイトル通り“ゲーム”として見ればいいんでしょうけど。
ボクは生理的に受け付けませんでした。
仕掛けもあって、高い評価を受けるのも納得なんですが、
まぁ好き嫌いで評価を付けてますから。☆2つ。
「ファニーゲームU.S.A.」公式サイト

「40歳問題」は、3人の40代ミュージシャンの
コラボレーションを追った音楽ドキュメンタリー。
フライング・キッズのボーカル浜崎貴司、43歳。
真心ブラザーズの桜井秀俊、40歳。
モンドグロッソの大沢伸一、41歳。
音楽性もまったく違うこの3人がスタジオに入れられ、
何の打ち合わせもないままに、
「3人で曲を作って下さい」と言われるところから映画はスタートします。
ぎこちなく始まるディスカッション。
浜崎の書く詞に曲を付ける桜井。
どこか冷めたアプローチの大沢。
どうやら大沢が気乗りがしないようなんですね。
そしてカメラに向かってこう言いいます。
「映画のための企画とはいえ、あまりに乱暴でしょ?
正直、浜崎さんの歌だってボクにはピンと来ないし」。
前途多難なんてもんじゃない。果たしてこの3人で曲は作れるのでしょうか…。
パッと聞くと暴言とも取れそうな大沢伸一の言葉ですが、
そこにはプロのクリエーターとしてのプライドがある。
それは残る2人もそう。
生い立ちや私生活、音楽を離れた時の素顔などを織り混ぜつつ、
映画は進んで行きます。
浜崎貴司が言うんですよ。
「これで俺が“辞めたっ”って言ったらこの話は終わっちゃうよ。
でもさ、桜井くんがありがたいことに接着剤の役割を演じてくれてるんだよ」と。
でも浜崎さん、あなた昔だったらもうとっくにブチ切れて、
「ざけんなよっ」って出て行ってるでしょ?
桜井さんがいい接着剤の役回りをしてくれてるのは確かだけど、
その接着剤を塗る面を、ちゃんと出してあげてるじゃないですか。
単に丸くなったんじゃない。
大人になるってこういうことなんじゃないかな。
浜崎さん、ナイスです!
映画の中にはその他にも、
40代やもうすぐ40代の著名人がたくさん出てきて、
それぞれに自身の40代を語ります。
例えば、リリー・フランキー、新田恵利、小川直也、スチャダラパーなどなど。
音楽だけじゃなく、人生も考えさせられます。
“アラフォー”のみならず、
幅広い世代に是非見てもらいたい1本です。☆4つ。
「40歳問題」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.12.11

「TOKYO JOE マフィアを売った男」☆☆☆
「ブロークン・イングリッシュ」☆☆☆

今年の試写本数は例年と比べるとやはり少々少ないようです。
160本に届くかどうかといったところ。
なんとか時間を見つけて足は運んでいるのですが、
1日はやはり平等に24時間ですからね。
最近もタイミングが合わず、
「ワールド・オブ・ライズ」の試写を見ることができませんでした。残念…。
ボクがここに書かない映画は見ていないということですから、
逆にお勧めのものがあったら教えて下さいね。
さ、今週は2本です!

「TOKYO JOE マフィアを売った男」は、ドキュメンタリー。
1919年、カリフォルニア生まれの日系2世、ケン・エトー。
彼こそが「東京ジョー」と呼ばれたシカゴ暗黒街のマフィアの大幹部。
他のボスたちにさえ恐れられていた彼が、FBIに捕まったのが83年のこと。
容疑は“違法賭博開帳容疑”。
ところがマフィアの幹部たちは自分の悪事をしゃべられては困ると、
殺し屋を送り、エトーの口封じを計るんですね。
至近距離から後頭部に3発の銃弾を受けたエトーでしたが、
奇跡的に一命を取りとめます。
組織に裏切られたエトーは、報復を誓いFBIに寝返るのです…。
精神を病んだ母、あまりに厳格な父。
そんな厳しい環境から飛び出したのが14歳の時。
そこから無類の博打好きになっていったといいます。
彼がFBIに協力するようになって出て来た逮捕者は、
組織の人間のみならず、警官、判事、裁判官、州知事などなど。
シカゴという街が、いかにマフィアとの癒着が深いか。
そのすべてが明るみに出たのです。
実はこの映画は日本映画。
ケン・エトーなる人物を知らないだけに、
主人公にどこまで入れ込めるかというと少々疑問ですが、
取材の緻密さはさすが日本といった感じです。☆3つ。
「TOKYO JOE マフィアを売った男」公式サイト

「ブロークン・イングリッシュ」は、大人の恋愛映画。
マンハッタンのホテルで働くノラは30代の独身女性。
結婚願望はあれど、素晴らしい出会いはなし。
宿泊客の映画俳優には言葉巧みに遊ばれ、
母に紹介された男性とのデートには元彼女が現れ
「実はまだ彼女に未練がある」と立ち去られてしまいます。
夢も希望もない、そんなある日のこと。
同僚の開いたホームパーティで、フランス人男性と出会うんですね。
彼の名はジュリアン。
最初は積極的な態度に引き気味のノラでしたが、
次第にそんなジュリアンに惹かれていきます。
ところが仕事でNYに来ていたジュリアンは、
もうパリに帰らなくてはいけません。
「一緒に来ないか」と誘うジュリアン。
しかしノラには、その言葉に首を縦に振る勇気がなかったのです…。
なかなか良縁に出会えないノラに、お母さんが言います。
「女性の社会進出は素晴らしいことだと思うわ。
でもその分、男性の選択肢が増え過ぎたのは不幸なことよ」。
確かに。
いろんな異性を見て、線引きというか相手選びの基準が高くなれば、
それだけ“イイ男”への競争率は高くなる。
ゲットできなければ基準を下げるかといえばそうじゃないから、
女性は結婚をせず、男性は嫁をもらえず。
わかりやすい構図ですよね。日本だけじゃないんだなぁ。
世界共通なんと知りました。
きっと主人公と同じ、女性のほうがピンと来るタイプの映画だと思います。
男性にとっても勉強になる1本ですョ。☆3つ。
「ブロークン・イングリッシュ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.12.4

「ウォーリー」☆☆☆☆
「シャイン・ア・ライト」☆☆☆☆☆
「252/生存者あり」☆☆☆

ある試写会場でのこと。それは劇場で行われた試写だったので飲食もOK。
するとひとりの女性が、片手にビール、片手にポップコーンでやってきました。
大きな劇場の2階席を選んだせいか、
席の両側に空きがあるぐらいの余裕があったのですが、
常識のある女性のようで、比較的静かなトーンの映画の間、
ポップコーンを食べる音は一切聞こえてきませんでした。
ところが映画終盤で感動したのでしょう。仕切りに鼻をすする音が聞こえてきます。
ゆったりとした席で、大きなスクリーンで映画を見て、
ビールを飲んで、感動して涙する。
プチ・ゴージャスですよねぇ(笑)。
超の付く人気作以外は映画館もそう混んでないはず。
ひとり感動に涙して、感情を解放してあげるのもいいかもしれませんョ。
さ、今週は3本です!

「ウォーリー」は、話題のディズニー・アニメ。
こちらは12月5日金曜日の公開です。
29世紀の地球。そこは荒れ果てた星。
空はスモッグに覆われ、もはや人間の存在は皆無。
地上はゴミの山に埋め尽くされ、生物もほとんどいなくなっていたのです。
そんな地球で、せっせと働く1台のロボットがいました。彼の名はウォーリー。
彼の任務はゴミをキューブ型に圧縮して積み重ねる地球の清掃。
これまでなんと700年!太陽電池で動くウォーリーは働き続けました。
すると不思議なことに、いつの間にかウォーリーには感情が芽生えていたのです。
スクラップの中から拾う“お宝”。
ウォーリーのお気に入りは古い1本の映画のビデオでした。
映っているのは手を繋ぎ踊る男女の楽しそうな姿。
ウォーリーは思います。「誰かと手を繋いでみたい…」。
そんなある日のこと、巨大な宇宙船がやってきて、
中から真っ白に輝くロボットが現われます。彼女の名はイヴ。
ウォーリーは一目でイヴに惚れてしまったのです…。
いわゆるイヴはツンデレの女の子。
というかある任務のために地球に下ろされたので、
ウォーリーのことなど構っていられなかったのですが、
ウォーリーにしてみたら千載一遇のチャンス!
あれやこれやと尽くす健気な姿に自分を見るようで泣けてきちゃいました(笑)。
よくできてます。ウォーリーもハイテク・ロボットですが、
イヴはさらに上を行ってるから、まぁローテクとハイテクの恋。
すなわち育った環境が違うふたりの、本当ならば悲恋のパターンが、
果たしてどんな結末を迎えるのか?そちらは見てのお楽しみ!
あ、意外と見た目よりイヴは性格かわいいっす(笑)。☆4つ。
「ウォーリー」公式サイト

「シャイン・ア・ライト」は、マーティン・スコセッシが監督した、
ザ・ローリング・ストーンズの映画。
1962年、ロンドンで結成されたザ・ローリング・ストーンズ。
アメリカのブルースやR&Bの要素を色濃く取り入れた彼らのサウンドは
“不良の音楽”と呼ばれていたのですが、
逆にそれが世界中のファンを魅了し、45年以上経った今も、
ロック界の頂点に君臨しているのです。
メンバーは、ミック・ジャガー(Vo・1943年生)、
キース・リチャーズ(G・1943年生)、
ロニー・ウッド(G・1947年生)、
チャーリー・ワッツ(Dr・1941年生)の4人組。
そう、みんな60歳オーバー!
スコセッシ監督も1942年生でメンバーとは同世代。
自身の作品にストーンズの曲を何度も使うほどのファンだそう。
そんな監督が選んだ手法は、極力インタビューを入れないライブ映像。
そして選んだ舞台は、NYにあるビーコンシアター。
いつもは何万人もの前でパフォーマンスを見せるストーンズですが、
ここはキャパシティー2800人の、彼らにしたら小さな箱。
そこに投入したカメラは18台!
すべて超の付く一流のカメラマンを配置し、演奏する側も見ている側も、
撮影を意識しないようなやり方でという約束の中、映画の撮影はスタートします。
06年10月29日、クリントン元大統領の開演宣言と共に、
熱狂のステージの幕は切って落とされたのです…。
ライブは11月1日にも行われたのですが、ゲストも豪華で、
デトロイトの姉弟デュオ、ザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイト。
伝説のブルースマン、バディ・ガイ。
そして歌姫、クリスティーナ・アギレラが登場。
ミックとクリスティーナの絡みはメチャメチャ格好良かったです!
その一方でスタッフは大わらわ!
何故かと言えば、実はセットリスト(演目表)が
開演30分前になっても出て来なかったから。
せめてオープニング曲だけでもと言ったところで届かない。
ミックのイタズラ心なのか、それともこれがストーンズのやり方なのでしょうか。
慌てるスタッフの姿にも注目です。
この映画を見て思ったんですが、
例えばギターを持つキースの二の腕は、もうしわしわなんですね。
でも人間の体が着ぐるみで、背中のジッパーを下ろしたら中に芯棒があるとしたら、
ストーンズの4人の芯棒はビッカビカに光ってると思うんですね。
逆に、若い人たちの中には、着ぐるみは派手でも中の芯棒はすでに錆ついちゃってる、
なんて人も多いんじゃないかなって。
あなたはどうですか?
なんか年齢を言い訳にしちゃいけないなって、ものすごく勇気をもらった気がします!
最高の映画でした。是非見てみて下さい。もちろん満点の☆5つです!
「シャイン・ア・ライト」公式サイト

「252/生存者あり」は、ハイパーレスキューの物語。
環境の変化と大地震による海底の地殻変動で、
東京に史上最大規模の巨大台風がやって来ます。
銀座の街に巨大なひょうが降る。人々は血まみれになって逃げ惑います。
さらに東京湾に高潮が発生。
ビルや橋をなぎ倒しながら、海水が都心にまで押し寄せて来たのです。
元ハイパーレスキュー隊員で、今は車の販売員をやっている裕司は、
娘しおりの誕生日を祝う約束で、
その日、妻の由美と共に銀座で待ち合わせをしていました。
ところが急に発生したこの大惨事。
由美はパニックになった人々の中で、しおりと離れ離れになってしまうんですね。
実はしおりは耳が聞こえないのです。
妻からのSOSを電話で聞いた裕司でしたが、新橋駅に辿り着くのがやっと。
ふたりがどこにいるかなど、わかろうはずもありません。
するとホームに怯えてしゃがみ込むしおりの姿が。
助けに行こうとしたその時でした。
トンネルの向こうから鉄砲水が流れて来て、すべてを飲み込んでいったのです…。
舞台が銀座、新橋で、セットが忠実だから、なんだがリアリティがすごくて。
うちのマンションも下の方は海水にやられてました。
うちの階は大丈夫かなぁ(笑)。
寸手のところでドアの中に入った5人。
裕司、しおり、関西の中小企業の社長、韓国人ホステス、医療に絶望感を持つ医大生。
彼らが入ったのは今は使われていない旧新橋駅でした。
でもそこだっていつ崩落するかわからない。
そうは言っても下手に動くよりはレスキューを待った方がいい。
だがどうやって知らせるのか。
それは配管を叩くことでした。2回、5回、2回。
それが“生存者あり”のサインなんです。
不協和音は出る、新たな危機は迫る。それでも誰も死なせないと誓う裕司。
果たしてみんなの運命は?
近い将来あり得ない話ではないですからね。
防災意識を高める意味でも見ておくといいかも。☆3つ。
「252/生存者あり」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.11.28

「青い鳥」☆☆☆☆☆
「ソウ5」☆☆☆
「猫ラーメン大将」☆☆
「変態“ピ”エロ」☆
「蘇る玉虫厨子」☆☆

先日、知人宅でTVの映画番組を見てました。
「あれ?これ昔見たかなぁ」とその人。
すると奥さんが、「何言ってるの、もう5回は見てるわよ」。
印象的なシーンになると、「あ、思い出した!で、このあとは…どうなるんだっけ…」。
するとまた奥さんが、「あなたはいいわね。同じ映画で何度も楽しめて」。
爆笑でした(笑)。でもボクもこれだけ見てると意外と覚えてないんですよねf^_^;。
忘れちゃうってことはそれだけ印象が薄いということ。
良くも悪くも記憶に残らないのは、やっぱりダメですよね。
さ、今週は“☆5つ”もありますョ。今週は5本です!

「青い鳥」は、重松清の連作短篇集の、表題作の映画化。
一見、普通の学校に見える東ケ丘中学。
新学期を迎えた今日、生徒たちは笑顔で登校してきます。
しかし、実は前の学期に、イジメが原因でひとりの生徒が自殺未遂を起こしていたのです。
彼の遺書には3人の実名が書いてあり、事件を嗅ぎ付けたマスコミが、
実名こそ明かさなかったもののニュースとして取り上げ、担任は心労でダウン。
クラス中がその3人とは誰なのかを詮索し、学校側は火消しに躍起。
クラスの生徒全員に反省文を書かせ、生徒指導を強化するとアピールし、
内外の批判をかわそうとしていたのです。
自殺未遂を起こしたのは2年1組の野口くん。
家がコンビニエンスストアを営んでおり、あだ名は“コンビニくん”。
店のお菓子などを持って来いと言われ、悩んでいたといいます。
一命は取り留めたものの、野口くんは転校。店も閉まりました。
そんな東ケ丘中学2年1組にひとりの臨時教師がやってきます。
彼の名は村内先生。
自己紹介を聞いて生徒は一瞬黙ります。
なぜなら村内先生は極度の吃音(きつおん)だったから。
うまくしゃべることのできない先生の挨拶を聞いて、沈黙は笑いに変わります。
すると村内先生は、たどたどしくも、しっかり生徒たちを見据えてこう言ったのです。
「わ、忘れるなんて、ひ、ひきようだな」。
そして倉庫にしまっておいた野口くんの机を元の位置に戻させて、
毎朝出席を取る時にこう言うのです。
「野口くん。おはよう」…。
村内先生の行動には生徒や他の教師だけでなく、PTAからも批判が噴出します。
「もう十分に反省したじゃないか」。果たして本当にそうなのか?
物語は遺書に自分の名前があったのではと怯えながら毎日を過ごす
園部くんという男の子もクローズアップしながら進みます。
村内先生はうまくしゃべれないから、本気でものを伝えようとする。
本気を本気で受け止める姿勢を生徒にきちんと学んで欲しいと、
妥協せず、静かに、しかし真正面から闘い続けるんですね。
でも村内先生は臨時教師。学校を去る日が来ます。
きっと教育の現場って、そう綺麗ごとじゃ済まないんだって、
実際の先生方は言うかもしれません。
でも村内先生のような先生にいて欲しいと思う生徒はたくさんいるんじゃないかと思います。
この村内先生の“志”は、教育だけでなく、あらゆる人生の場面に共通するもの。
是非多くの人に見てもらいたい1本です。
ちなみに冒頭からまるでエンドロールで流れるかのようにフルコーラスかかるのが、
女性シンガーソングライター・まきちゃんぐの「鋼の心」という曲。
これがまた素晴らしくいいんです。曲の方にもどうぞ耳を傾けてみて下さい。
満点☆5つです!
「青い鳥」公式サイト

「ソウ5」は、人気シリーズの第5弾。28日金曜日公開です。
04年の第1作目から大ヒットとなった「ソウ」は、
謎の男性ジグソウの仕掛けたパズルのような戦慄の殺人ゲームで
人々に絶望的恐怖を与えてきました。
それでも彼の仕掛けにはほんのわずかながら救いの道もあったのです。
「本当の良心があれば助かったのに」。
そんな余地を残すこと。それがジグソウの殺人美学だったのです。
そのジグソウと弟子のアマンダが死んで、物語は終わったかに思われたのですが、
実はジグソウの遺志を継いだ男がいたのでした…。
詳しくは書きませんが、この「ソウ5」では、その男と、
男を捕らえようとする刑事のチェイスが繰り広げられ、
同時に男とジグソウのエピソードが語られます。
その一方で新たなゲームの餌食が5人。
命を懸けた謎解きにもがきあがく様が描かれていきます。
このシリーズには、思いも寄らない結末が待っているのが常。
今回もエエッというラストがあなたを待っています。痛っ(笑)。☆3つ。
「ソウ5」公式サイト

「猫ラーメン大将」は、そにしけんじの4コマ漫画の映画化。
コマーシャルなどでかわいいと大人気のキャットアイドルの将軍。
その息子が大将。
将軍は大将を自分の跡を継ぐキャットアイドルに育てようとスパルタ教育を施すのですが、
なかなかモノになりません。
嫌気が差した大将は将軍の元を飛び出し、
別の仕事で父を見返してやろうと張り切るのですが、
寿司屋をやればつまみ食い、
タクシーの運転手になれば見つけたネズミを追い掛けて事故を起こす始末。
何をやってもダメだと川に身を投げようとしたその時、
ひとりのラーメン屋の主人が熱いラーメンを食べさせてくれるんですね。
「これだ!」と大将は猛特訓。
遂に自分のお店を出すのですが、
来るのは「猫のラーメン屋?」と珍しがる冷やかしの客ばかり。
そんなある日、大将の店の近くに同じく猫が経営するラーメン屋が開店します。
味もパフォーマンスも大将よりずっと上。
なんとその店の主人は、父・将軍だったのです…。
大将や将軍は特製のパペットが微妙な動きで演技をします。
このB級感がいい人にはいいんだろうけど(笑)。
いろんな場面で、そこおかしいだろって突っ込みを入れられないのがこの映画(笑)。
原作や出演者のファンには楽しいかも。☆2つ。
「猫ラーメン大将」公式サイト

「変態“ピ”エロ」は、フランス映画。
07年のカンヌ映画祭“批評家週間”のオープニング作品。
ピエールはTVの前説を生業とする男。
公開収録に集まったお客さんのテンションを上げるため、
自らがハイテンションになって笑いを取るのですが、
ひとりになれば極度の不眠症に悩む男だったのです。
ある日、ピエールは突然スキンヘッドになり、
幼い頃から大ファンだった国民的歌手のクロヴィス・コスタを誘拐するんですね。
自分の住まいにクロヴィスを監禁したピエール。
ふたりの終わりの見えないやり取りはここから始まるのでした…。
えっと、正直まったくわかりませんでした。
チラシには「かつてこれほどまでに理不尽かつ不可解を極め、
さらには、人間の生理を容赦なく逆撫でした映画があっただろうか…?」
とあるんですが、それってもしそうだとしたら、
ある意味逆説的“褒め言葉”だと思うんですね。
期待して行っちゃっただけに、う〜ん。ごめんなさい、☆1つ。
「変態“ピ”エロ」公式サイト

「蘇る玉虫厨子」は、ドキュメンタリー。
法隆寺の国宝『玉虫厨子(たまむしのずし)』を現代に蘇らせようと、
設計師、宮大工、蒔絵師、塗師、金具師など、
さまざまな職人たちが集まり、最高の技術を駆使して
『玉虫厨子』を作り上げる様を追った映画です。
「1400年前にこんな道具は無かったはず。
 職人たちはどうやってここを作ったのだろう…」と、
飛鳥の時代に思いを馳せる一流職人たち。 歴史の教科書を開いている学生時代の自分を思い浮かべながら見てました(笑)。☆2つ。
「蘇る玉虫厨子」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.11.19

「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」☆☆☆☆
「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」☆☆☆
「バンク・ジョブ」☆☆☆
「ブラインドネス」☆☆☆

“超”の付く多忙な時期を抜けて、
これから年末まではたくさんの映画が見られるかなと思いましたが、
やっぱりなかなかそうはさせてもらえないようf^_^;。
朝10時の回に行けるといいんだけど、そこは眠気に勝てないんですョ…(笑)。
ダメですねぇ。
さ、今週は4本です!

「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」は、
イギリスのベテランバンド、ザ・フーのドキュメンタリー映画。
1964年デビュー、ロンドン出身の4人組、ザ・フー。
メンバーはVo.ロジャー・ダルトリー、G.ピート・タウンゼント、
Ba.ジョン・エントウィッスル、Dr.キース・ムーン。
町の不良だったロジャーが音楽に目覚め、ザ・デトゥアーズというバンドを結成。
そこにピートとジョンが加わり、ザ・フーが結成されます。
64年当時、ドラマーを解雇していたザ・フーのステージに突如現れて、
「そのセッションドラマーよりオレの方がうまい」とドラムを叩き出し、
挙句の果てにドラムセットを粉々にしていったのがキース。
その破天荒な行動がメンバーに気に入られ、
ザ・フーはこの4人がパーマネントメンバーとなりました。
爆発的な人気を得、順風満帆に思えた彼らですが、裏は大変。
最年長でリーダーを自負するロジャーと、ヒットメイカーのピートの確執、
ドラッグとアルコールに明け暮れるキース、浪費癖の治らないジョン。
78年、遂にキースがこの世を去り、82年には正式に解散を発表したのです。
その後、84年のバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」に参加したり、
結成25周年ツアーを組んだりと復活の道を歩むのですが、02年、ジョンが急逝。
逆にこの不幸がロジャーとピートの絆を強め、今もザ・フーとして活動を続けているんですね。
影響を受けたアーティストとして、パール・ジャムのエディ・ヴェダーや、
オアシスのノエル・ギャラガーなどもインタビューに応じており、
この映画では、ファンのお宝も借りて、幻の映像と呼ばれるものがたくさん!
ファン必見の一本です。☆4つ。
「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」公式サイト

「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」は、サバイバル・コメディ。
“落ち目のアクションスター”のダグ、
“おならネタ・コメディアン”のジェフ、
“なりきりやり過ぎ俳優”のカーク。
この3人の訳あり男優が、一本の映画に出演を決めました。
それはベトナム戦争の英雄伝を映画化した
「トロピック・サンダー」という作品でした。
ところが集まった役者もおバカなら、スタッフもおバカ。
制作予算を3日で使い切り、さぁどうしようと。
そこで考えたのは本物の戦闘地帯に役者たちを置き去りにすること。
周りは白人に憎しみを抱くゲリラたち。
そうとは知らずにこれは迫真の演技なんだと芝居を進める3人。
果たして無事生きて帰ることができるのでしょうか…。
なんかありましたね、最近の三谷幸喜作品に似た設定のものが(笑)。
かなりシュールな笑いもあり、3人の人間臭い悩みもこの映画の根っこを支えます。
ベン・スティーラー、ジャック・ブラック、ロバート・ダウニーJrですから、
雰囲気は推して知るべし。
笑いに品なんて不要だぜという方にはお勧めです(笑)。☆3つ。
「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」公式サイト

「バンク・ジョブ」は、実話に基づく
イギリスのスキャンダラスな銀行強盗事件を描いたもの。 1971年のロンドン。
昔はワルだったものの、今は堅気となり、妻子と暮らすテリー。
ところが経営する中古車屋は火の車。借金取りの取り立てが日常茶飯事という状況。
そんなある日、昔の仲間でモデルのマルティーヌが銀行強盗の話を持ち掛けてきます。
「もう足を洗ったんだ」と断るテリーに、
「ロイズ銀行が一週間だけ警報解除になるという確かな情報を掴んだの」
とマルティーヌは言います。
それは間違いの無い情報でした。
彼らは仲間を集め、行動に移ります。
銀行の並びの店を借り、穴を掘ってロイズ銀行の地下金庫に辿りつき、
お金や貸し金庫の中身を奪い放題!
しかしこの話には、裏があったのです。その裏とは?…。
さまざまなスキャンダルが眠る貸し金庫。
知った者は消される運命の秘密もあり、テリーたちは命を狙われるハメに。
その窮地をどう逃れるかがこの映画の見どころなんですが、
事件のあった71年当時、未曾有(“みぞうゆ”じゃないですョ。“みぞう”)の銀行強盗に、
始め毎日のように書き立てていた新聞の報道がある日を境にピタリと止まったそう。
これには政府による報道規制が敷かれたのだとか。
この映画、9割方が事実という声もあるようです。
ワイドショー好きの人はハラハラドキドキかも?☆3つ。
「バンク・ジョブ」公式サイト

「ブラインドネス」は、カナダ、日本、ブラジルの合作映画。
車を運転していたら、突然目の前がまっ白になって視力を失った日本人男性がいました。
眼科に行くも、原因はわかりません。
ところが、この病はアッという間に世界中に広まって行ったのです。
政府は患者の隔離政策に出ます。施設は元精神病棟。
彼の目を診た眼科医も感染し、その粗末な施設に送られるのですが、
眼科医の妻だけは何故か感染を免れ、
目が見えない振りをして夫と共に施設に潜り込むんですね。
次々と送り込まれてくる患者たち。
汚物にまみれ、とても人の生きていく環境ではなくなるものの、
政府の手は伸びるはずもなく。
中では派閥争いが始まり、わずかな食料をも奪い合う。
自分たちはどうなってしまうのか。外は一体どうなっているのか。
軍隊に囲まれている彼らには知る術もなかったのです…。
実は外も皆、視力を失った人ばかりで。その様はまさに地獄絵でした。
それでも何故か眼科医の妻だけは目が見えているんですね。
ラストが気になるでしょ(笑)。
ボクもずっと、この映画はどこに着地するんだろうとそればかり気になって(笑)。
言えないけど、あ、こういうのも手法としてはありかなと思いました。
“承・転”の映画。あ、言っちゃってるようなもんか(笑)。
怒らないで下さいねっ。
スッキリするか否かはまさにアナタ次第の一本です。☆3つ。
「ブラインドネス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.11.12

「ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日」☆☆
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」☆☆

今年10月までに見た映画は137本。残りの日にちを考えると、
今年は例年より少し少ないかも。
それでもかなりいい作品と出会えました。あと2ケ月。
さらにいい映画と出会えるのを楽しみに。さ、今週は2本です!

「ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日」は、イギリスの青春コメディー。
女子高校生のジョージア。
決して美人とは言えないジョージアでしたが、現在青春真っ只中。
ある日、学校に双子のイケメン転校生、ロビーとトムがやってきます。
ジョージアはロビーに一目惚れ。トム狙いの親友ジャスとタッグを組んで、
あの手この手で何とか恋人になろうとするのですが、
ロビーはクラスで一番セクシーなリンジーといい感じ。
果たしてジョージアの恋は叶うのでしょうか…。
ホントにあれやこれやで頑張るんですが、ジョージアはロビーの気を引こうと、
気のない他の男の子と付き合ってる振りをします。
その男の子は実はジョージアのことが好きなんですね。
その作戦がロビーにバレて、ロビーからもその男の子からも
最低のヤツと言われてしまうジョージア。
でもみんなこんな失敗をしながら大人になって行くんだって。
何度も同じ過ちを犯したらおバカさんだけど、青春の失敗はまさに教科書にないお勉強。
恥かいて、涙流して、イイ女になって行くんだから(笑)。
イギリスものと聞くと、過剰に期待しちゃうんですよね。
「ブラス」、「フルモンティ」、「ラブ・アクチュアリー」と
ボクはイギリス映画が好きなので。
そこまでの感動やスカッと感は残念ながら無かったかなぁ。
まだ“青い”ジョージアだから仕方ないか。☆2つ。
「ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日」公式サイト

「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」は、ゾンビ映画の巨匠、
ジョージ・A・ロメロ監督作品。
大学の映画学科のメンバーが、ペンシルバニアの山奥でホラー映画を撮っていると、
スタッフのひとりがラジオから流れる衝撃的なニュースに気付きます。
それは世界中で死体が甦り、人間を襲っているというものでした。
まさかと思いながら撮影を中断。
車で山を下りるメンバーでしたが、
街中ではそのニュース通りに死人が甦り、人を襲っていたのです。
噛まれたものはゾンビと化す。殺すには銃で頭を打ち抜くしかない。
ドキュメンタリー監督を目指していたジェイソンは、
この地獄絵をすべてカメラに収めようと、
片時もカメラを離さずに危険の中に飛び込んで行きます。
次々と仲間がゾンビになって行く現実。ジェイソンの運命は?
また人類は一体どうなってしまうのでしょうか…。
混乱したメディアは嘘の情報ばかりを流し、
まったく鎮静化の方向にないのに事態は収束の方向へと報じる。
ジェイソンは真実を伝えなくてはと使命感に燃え、
インターネットを使って映像を流し続けます。
そこにマスコミによる情報操作の危うさ、怖さも描いているのですが、
この監督の作品は昔から“社会派ゾンビ”ですよね(笑)。
ゾンビを通してメッセージを送るという。
挿入される映像もいわゆる9・11からイラク戦争へのものですから。
この手法も個性なんだろうなぁと。
ジェイソンのサイトのタイトルが「Death of Death」、
“死の死”です。
つまり死ぬことが許されなくなり、人は彷徨い続けるということ。
このサイトのアクセス数がものすごくなり、
次第に世界中が自分の映像に注目してるんだという部分にジェイソンは恍惚とします。
それも実はすごく危険なことなんですよね。
最後はどうなっちゃうのか、もちろん言いませんが、ボク的にはう〜ん(笑)。
好き嫌いだと思うけど、ホラーはホラーで着地してる方が好きかも。☆2つ。
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.11.6

「かけひきは、恋のはじまり」☆☆☆
「ヤング@ハート」☆☆☆☆

先日映画のTV番組に出ていた人のテロップに、
「年間120本の映画、DVDを見る」とありました。
「オレの方が全然多いじゃん」と思ったけど、話してる中身はあっちの方が深い…(笑)。
やっぱり本数じゃないなと思い知りましたf^_^;。
さ、今週は2本です!

「かけひきは、恋のはじまり」は、ジョージ・クルーニー監督、主演作。
舞台は1925年、まだ禁酒法時代のアメリカ。
中年男のドッジは、プロのアメリカン・フットボール・チーム
“ブルドッグス”のベテラン選手。
でも当時のプロはお粗末なもので、統一のルールもなく、
スポンサーも付いては離れの繰り返しでした。
逆に人気だったのがカレッジ・フットボール。
特に“弾丸”の異名をとるカーターは、甘いマスクに加え、
第一次世界大戦の武勇伝も手伝って、全米レベルでの人気者だったのです。
そんな中、遂に解散を言い渡されてしまったブルドッグス。
ドッジは愛するフットボールのためになんとかできないかと、
カーターをスカウトするためにシカゴに向かいます。
カーターの武勇伝、それはたったひとりでドイツ小隊を降伏させたというもの。
ところが、それがでっち上げだという情報が地元紙にリークされるんですね。
ホントなら大スクープ!そこで密着取材を言い渡されたのが美人記者のレクシー。
CCというやり手のカーターの代理人も加わって、
4人がシカゴのホテルで一堂に顔合わせ。
みんなが腹にイチモツ持ってのご対面。波乱の物語はここから始まったのです…。
カーターは都会的美女のレクシーにメロメロ。
ドッジも途中でレクシーがなぜカーターに近づいたかに気づくんですね。
いつの間にか恋の矢印も複雑な方向に向き始めて。
でも、もぐりのバーで酒を飲むのも単に酒が飲みたいからだし、
フットボールで反則をするのもイタズラ心の延長で。
あの頃の“悪さ”って、その裏に人間臭さがありました。
今のような極悪非道とは質が全然違うよなぁと。
ドッジにはジョージ・クルーニー、レクシーにはレニー・ゼルウィガー。
古き良きアメリカが描かれた作品と言えそうです。☆3つ。
「かけひきは、恋のはじまり」公式サイト

「ヤング@ハート」は、アメリカの平均年齢80歳という
コーラスグループを追い掛けたドキュメンタリー。
とは言っても、単なるコーラスグループではなく
、歌うのはロック、パンク、そしてファンクだからビックリ!
マサチューセッツ州ノーサンプトン。
この小さな町の高齢者向け公営住宅に住むおじいちゃん、
おばあちゃんによって1982年に結成されたのが“ヤング@ハート”。
撮影当時、メンバーの最年少は75歳、最年長は93歳。
“やんちゃな年金生活者たち”と呼ばれる元気なおじいちゃん、おばあちゃんですが、
中にはガンを3回手術した人もいれば、世界大戦を2つ共経験した人もいる。
ヤング@ハートは、そんなお年寄りたちにとって、
欠かすことのできない生き甲斐となっていたのです。
地元の劇団ノーシアターの協力で、地元だけではなく、
ヨーロッパ、オーストラリア、カナダでも公演し、
大きな喝采を集めたりもしてきました。
そんな彼らの次の公演が、6週間後に控えています。
新曲を練習するけれど、曲のスピードやリズムの難しさにてんてこまい。
お年寄りだから体調面の問題もある。
果たして次の公演の幕を、無事開けることはできるのでしょうか…。
オープニングでいきなり、
ザ・クラッシュの曲をシャウトするのは93歳のおばあちゃん、
アイリーン・ホール。元気です(笑)。
ただし、この撮影の最中にも、大切な仲間がこの世を去ったりと、
辛く厳しい現実を、観る側も直視させられます。
それでも、「身体は老いていくかもしれないが、
心まで老いることはキッパリ拒否する」と。
素敵じゃないですか。
誰もが迎える老いの現実。生き甲斐を持つことで、
人はこんなにも輝くんだということを教えてくれる1本です。
ちなみにこの映画のサントラは、
11月5日にワーナーミュージックジャパンからリリースされてます。
ロゴマークはローリングストーンズのベロを出したあの口が
入れ歯になったイラストというのも笑えるでしょ(笑)。☆4つ。
「ヤング@ハート」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.10.30

「ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動」☆☆☆
「ハンサム・スーツ」☆☆☆☆

来週号の週刊ギャロップに「この秋見たい馬映画50本」が載るそう。
知ってたら原稿書きたかったなぁ(笑)。
どんな作品が取り上げられるのか楽しみにしたいと思います。
それでは今週の2本です!

「ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動」は、
ウガンダの子供たちを描いたドキュメンタリー。
アフリカ東部のウガンダ共和国。
アミン大統領の独裁が終わり、復興への道を歩み始めたこの国には、
未だ紛争に苦しむ地方もありました。
パドンゴの難民キャンプに集まる子供たち。
彼らが唯一楽しみにしているのが歌と踊りでした。
先祖伝来の伝統舞踊で、祖国と民族への誇りを確かめていたのです。
ウガンダにある2万を超える学校の中から選ばれし代表が参加できるのが全国音楽大会。
そこにパドンゴの学校が出場できることになりました。
この国で最も危険な地域とされるパドンゴの学校が出場できるというのは
画期的なことだったのです。
会場は首都カンパラ。初めて見る大都会の風景。
子供たちの目が光ります。
そんな中で行われた音楽大会。果たして彼らの成績やいかに…。
パドンゴの何人かの子供にスポットライトを当てて映画は進むんですが、
その過酷な運命たるや驚くべきものがありました。
それでも夢や目標があると、子供たちの表情って実にキラキラと光り輝くんですよ。
これこそが、夢や目標を持てる環境作りがすごく大切なんだなと感じました。
こんな国内避難民を援助しているのが、国連難民高等弁務官事務所『UNHCR』。
その日本UNHCR協会のHPはwww.japanforunhcr.org/です。
関心を持った方はご覧になってみて下さい。☆3つ。
「ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動」公式サイト

「ハンサム・スーツ」は、“スーパー・ドリーム・エンターテイメント”。
33歳の独身、大木琢郎。
亡き母が営んでいた庶民的定食屋「こころ屋」を継いで、
日々美味しいごはんを提供する心優しい男。
でも彼にはひとつ“残念”なところがありました。
そう、不細工だったのです。
ある日、「こころ屋」でバイトをしたいと超美人の寛子ちゃんがやってきます。
働き者で性格もいい。胸キュンとなり告白をする琢郎。
しかしあっさりフラれて、寛子ちゃんは複雑な表情を残し、
店を出て行ってしまいます。
失意の中、友達の結婚式に来て行くためのスーツを買いに行った琢郎に、
店員が勧めたのは着ぐるみのようなヘンテコなスーツ。
これこそがハンサム・スーツだったのです。
着れば体にフィットして、顔も体型も見違えるようにハンサムになるという、
夢のようなスーツ。
琢郎は念願のハンサムボーイに大変身!
名前も光山杏仁に変え、人気カリスマモデルとして活躍を始めます。
でも「こころ屋」に帰れば、スーツを脱ぎ、
不細工な琢郎に戻らなければいけないわけで。
数日後、「こころ屋」に新しいバイトのコが入ってきます。
これが不細工な本江ちゃんです。
ところが仕事もできるし、琢郎はこのコといると何より落ち着くんですね。
二足のわらじを履く琢郎が、ある日、究極の選択を迫られます。
お湯に弱いハンサム・スーツを着たまま、
女の子の部屋でシャワーを浴びてしまった琢郎。
もうこんな失敗はしたくないとあの紳士服店に行くと、
出てきたのはさらに完成度の高い“パーフェクト・ハンサム・スーツ”!
しかしこれを着たら、二度と元には戻れなくなってしまうのです。
定食屋の大木琢郎か、カリスマモデルの光山杏仁か。
本江ちゃんか、寛子ちゃんか。さぁ琢郎はどちらを選択するのでしょうか…。
琢郎にはドランクドラゴンの塚地武雅、杏仁には谷原章介が扮します。
不細工役ってどうよって思うけど(笑)、ハマり役!
塚地武雅って役者としてもいいですよね。
映画「キサラギ」でそう感じて、今はドラマ「裸の大将」でも活躍してますからね。
まぁ何をして不細工って言うのかってあると思うんですョ。
あばたもエクボじゃないけど、そんな個性が味だったりもするじゃないですか。
なんて自分を励ましつつ(笑)。
でもボクもこう見えて、
あの人気雑誌の初代ミスター・ポップティーン・コンテスト3位ですからねっ。
あのままの体型を維持してたら…。なんて虚しいからこの辺で(笑)。
この映画、小ネタやサプライズ満載です。
最後の最後まで席立っちゃダメですからね。☆4つ。
「ハンサム・スーツ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.10.23

「ICHI」☆☆☆
「ブロードウェイ・ブロードウェイ」☆☆☆☆☆

試写会場で、おじさん3人が、以前見た作品の悪口三昧。
「ありゃ時間返せって言いたかったよ。でもさ、あれの第2弾ができたんだぜ。
ああいうの好きなヤツがいるんだな。っていうか俺の目が間違えてるのかなぁ。
ハッハッハ」と高笑い。
間違えてるのは、こういう場所でそういうことを言うあなたのセンスとその口ですって。
さぁ今週は2本です!

「ICHI」は、綾瀬はるか主演の女版・座頭市。
三味線を持った盲目の女旅芸人、市。
ある時、男たちに襲われそうになった市を、ひとりの侍が助けようとします。
ところが侍は刀が抜けません。侍の名は十馬。
もたもたする十馬を尻目に、仕込み杖から刀を抜いて男たちを斬り捨てる市。
それが縁で宿場町まで一緒に向かう市と十馬。
ふたりで賭場に行くと、市の耳が丁半を聞き分けて大儲けするのですが、
すぐさま追っ手に囲まれてしまうんですね。
またしても見事な太刀筋で斬り捨てる市。
その騒ぎを聞いた町の親分、白河組の二代目虎次は、
当然十馬が斬ったと思い込み、用心棒として雇います。
用心棒が必要な理由、それは万鬼という荒くれ者率いる万鬼党が
町を乗っ取ろうとしていたからなんです。
ところが十馬には人が斬れません。
万鬼は見抜きます。男たちを斬ったのは十馬ではなく、市だと。
そして市と万鬼の行き詰まる戦いが始まるのでした…。
勝新太郎、北野武で有名な座頭市を綾瀬はるかが演じたと話題の映画。
脚本も「大奥」などを書いた浅野妙子氏。
監督は男性なれど、女性の手による座頭市です。
脇を固めるのも、大沢たかお、中村獅童、窪塚洋介、柄本明など、個性派俳優ばかり。
エンターテイメントとして十分楽しめる作品だと思います。☆3つ。
「ICHI」公式サイト

「ブロードウェイ・ブロードウェイ」は、ドキュメンタリー映画。
16年振りに再演されることになったブロードウェイの人気ミュージカル
「コーラスライン」のオーディションに集まったダンサーたちの、
最終選考までの8ケ月間を追った作品です。
NYの街角にできた長蛇の列。その数なんと3000人。
これすべてあの大人気ミュージカル「コーラスライン」のステージに立ちたいと
応募してきたダンサーたちなんです。夢の切符をつかめるのはたったの19名。
まず行われた第1次審査は、バレエのステップ。
この段階で多くのダンサーが振り落とされます。
4ケ月後の第2次審査。ここではそれぞれの役にあてはめて、
歌とセリフのオーディション。
その役柄の解釈も大切なポイント。
内面をどうとらえているかで、表現もかなり変わってくるからです。
プロ中のプロによる厳しい審査。絞り込まれた数十人の候補者。
まったくの新人もいれば、既に名のあるダンサーもいる。
またひとつの役を、偶数にも親友同士が競い合ったり。
自分こそがアメリカンドリームを掴むんだと、
し烈な戦いはいよいよ最終選考へと入っていくのです…。
1975年5月21日に幕を開けた「コーラスライン」は、1990年4月28日までに何と6137公演!
ブロードウェイのロングラン記録を今なお保持する伝説のミュージカルです。
今は亡き振付師のマイケル・ベネットが、マンハッタンの練習スタジオに仲間を集め、
ダンスへの情熱や、これまでの人生、今まで誰にも言えなかった秘密、
将来の夢などをみんなで語り合い、その12時間にも渡る長い長い録音テープを元に作った、
まさにダンサーによるダンサーのためのミュージカル。
それだけにこの舞台に立ちたいと思うダンサーはものすごく多いのです。
最終選考までくると技術以上に、最後はメンタル面と、
恋愛にも似た出会い、相性がモノを言います。
8ケ月もの間、ひとつのオーディションのために
テンションを保つって並大抵のことじゃありませんからね。
昔、富澤一誠さんに言われました。
「自分から土俵は絶対に割るな。徳俵に足が掛かっていてもそこはまだ土俵の上。
じっと耐えていればいつか押し返す機がやってくるかも知れない」。
これまでのDJ人生で実感することがボクにはたくさんありました。
でもこの映画の中で、ある候補者は自ら土俵を割っちゃうんです。もったいない。
ちなみにこの再演版は、06年10月5日に初日を迎え、上演は続いてます。
実は日本人もひとり。沖縄からアメリカに渡って夢を掴もうと頑張るタカラユカさん。
彼女のパワフルな表情にも注目です。
みんな頑張ったねと拍手を送りたい映画。
結果も大切だけど、もっと大切なのはプロセスだって心から思います!☆5つ!
「ブロードウェイ・ブロードウェイ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.10.17

「マルタのやさしい刺繍」☆☆☆☆

先日、ある映画評論家の方と立ち話。
「長谷川くん、最近映画見てる?」。
「はい。一応年間180本平均ですかね」。
「あ、そう。ボクは350本だよ」。
と、胸を張られてしまいましたf^_^;。すみません、ボクにはこれでもう精一杯でして。
数を競うものではないからね。ボクはボクのペースと立ち位置で。
さ、少ないけど(笑)、今週は1本です!

「マルタのやさしい刺繍」は、スイス映画。
美しい自然に囲まれたスイスの伝統的な村に暮らすマルタは80歳のおばあちゃん。
ところが少し前に夫に先立たれてからは元気がなく、
村の恒例行事である日曜礼拝にも行かなくなってしまったのです。
心配した友人たちは昔マルタが刺繍の仕事をやっていたことを知り、
ハプニングで破れてしまった村の合唱団の団旗の直しを頼むんですね。
友人たちと一緒に首都ベルンの生地屋さんへ足を運んだマルタ。
美しい布や刺繍に囲まれているうちに、若い頃の自分の夢を思い出します。
それはパリのシャンゼリゼ通りに自分のデザインで、
自分が刺繍したランジェリーのお店を開くこと。
友人たちは大賛成!
シャンゼリゼ通りじゃなくてもと、
亡き夫と営んでいた村の雑貨店を改良してランジェリーショップを始めたのですが、
そこはお堅く保守的な村。
いかがわしいだの、ハレンチだのと、マルタは村中から非難の嵐を浴びてしまいます。
ところが決して夢を諦めないマルタの姿に、
ひとり、またひとりと理解者が増えていったのです…。
そもそもマルタのランジェリーショップに大反対だったのは、
教会の牧師で実の息子のヴァルターと、村のリーダーで保守派政党のフリッツ。
そのフリッツのお母さんもマルタの応援団だから、
親世代がタッグを組んでしまうと息子たちはもうタジタジ(笑)。
この映画が現代的なのは、村では1枚も売れないと判断するや、
インターネットを使ってみようと仲間のひとりが
老人会のインターネット教室でパソコンを勉強してくる。
パソコン上でショップを開くと注文が殺到。
新聞も「田舎のおばあちゃんの素敵なランジェリーショップ」と取り上げてくれます。
声高に夢だけ叫ぶのではなく、やっぱり時代に合わせていくのも必要なんですよと。
この原稿をいつも携帯で打ってるボクも、
パソコン勉強しなきゃと改めて思います、ハイ(笑)。
その一方で息子のヴァルターには、
「あたしの人生なんだから、あんたにとやかく言われる筋合いはないっ」とピシャリ!
熟年層はもちろん、ちょっと行き詰まって疲れたというあなた、
見ればあったかい勇気と元気をもらえると思いますョ。☆4つ。
「マルタのやさしい刺繍」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.10.10

「アメリカン・ティーン」☆☆☆
「キング・オブ・トーキョー・オ・フィウミ」☆☆☆
「ゲットスマート」☆☆☆☆

先日見た試写の中で、なかなか結婚できない娘に母親が言います。
「女性に活躍の機会が増えたのは素敵なことだけど、
その分(男性の)選択肢が増え過ぎたのは不幸なことかも知れないわね」と。
裏を返せば、ふるいに掛けられて落とされる男性も増えたということですから。
なんかまたまたいろんなことを考えちゃいました(笑)。
さ、今週は3本です!

「アメリカン・ティーン」は、
アメリカの高校生の“今”を描いたドキュメンタリー。
インディアナ州ワルシャワのハイスクール。
さまざまな環境の家庭に生まれ育った生徒たちの、高校生活最後の1年間が始まります。
主な登場人物は5名。
保守的な町が合わないと、変わり者を自認するハンナ。音楽やアートが趣味。
バスケット部のエースでスター選手のコーリン。
でもスポーツ奨学金がもらえないなら軍隊へ入れと父。
その言葉がかなりのプレッシャーに。
オタクのジェイク。マーチングバンド部所属。恋人が欲しいと悪戦苦闘の日々。
地元の名士でもある医者の娘、メーガン。
かなりのわがままキャラで女王様的存在。
でもその実、彼女も家業がプレッシャーになっていたのです。
イケメンでもてもてのミッチ。
“普通じゃない”ハンナに恋しちゃうけど、果たしてうまくいく?
そんな若者を中心に繰り広げられる青春物語。
制作陣は1年間、この高校に張り付く形でカメラを回したそう。
ドキュメンタリーだっていうけど、
演出はないのかなぁって思うくらい、逆に“自然”です(笑)。
それはさて置いても、リアルさというか生活や価値観が日本とは違うから。
世代もあるのかなぁ、いや、ないと思うけど(笑)。
ボクはあまり感じ入ることができませんでした。
だから客観的にふ〜んって感じ。
典型的で普遍的なアメリカの若者像だとか。
知りたい人は見てみるといいですョ。☆3つ。
「アメリカン・ティーン」公式サイト

「キング・オブ・トーキョー・オ・フィウミ」も、ドキュメンタリー。
こちらはブラジル人Jリーガー、アマラオの物語です。
Jリーグが開幕した92年。ブラジルからひとりのサッカー選手がやってきました。
彼の名はワグネル・ペレイラ・カルドーゾ、通称アマラオ。
JFLの東京ガスフットボールチームに入り、98年優勝。
FC東京としてJリーグ昇格。アマラオは晴れてJリーガーとなりました。
ファンからも選手からも地元からも愛されるキャラで
“キング・オブ・トーキョー”と呼ばれ、
その後数々のチームを渡り歩き、07年4月に現役を引退。
どのチームに行こうとも愛され続けたその訳とは?
アマラオの素顔を数々の証言と共に紹介する1本です。
ボクは正直、あんまりサッカーわからないから、ピンと来なかったんですよ。
ごめんなさい。
でも、彼の人柄の良さはサッカーを知らなくてもわかります。
伝わるものがあるもの。 特に自分と同じように、言葉もわからない国に来た外国人選手への心配りとか、
地元愛みたいな部分はまるで下町人情。日本人の心は掴むよなぁと。
応援してきたファンにはたまらない回顧録なんじゃないですか?☆3つ。
「キング・オブ・トーキョー・オ・フィウミ」公式サイト

「ゲットスマート」は、スパイもののアクションコメディ。
世界征服を企む凶悪な犯罪組織カオス。
そのカオスの陰謀を防ぐべく密かに活動を続けているのが、
アメリカの極秘諜報機関コントロール。
そのコントロールの中にあって、優秀なデータ分析能力を発揮する男、
彼の名はスマート。
でもスマートの望みはエージェント。
つまりあの007のように派手にカッコよく悪を倒すヒーローになりたかったのです。
そんなある日のこと、
コントロールの本部が襲撃され、データが盗まれてしまいます。
もちろんカオスの犯行。
秘密裏に動いていた数多くのエージェントの身元もバレてしまった訳で、
チーフは考えた末、まだ敵に存在を知られていないスマートを
エージェントに昇格させるんですね。
そしてもうひとり、全身整形を施し、
ゴージャスボディに若く美しい顔を作ったばかりのベテラン女性エージェント、
“エージェント99”とコンビを組ませたのです。
刻一刻と進むカオスの陰謀。
果たしてこの即席コンビは地球のピンチを救うことができるのでしょうか…。
スマートは憧れのエージェントになれて、
やること成すことみんなキザに決めようとする。だけどもちろん空回り。
ドジで間抜けなスマートと、
ベテランの敏腕女性エージェントとでは任務もうまく遂行できるはずもなく。
ところが次第にスマートの情熱がいい方へと働いて、
エージェント99の危機を救ったりもするのです。
そして互いの信頼も深まっていくんですね。
子供の頃、特に男の子は、駄菓子屋さんやおもちゃ屋さんで売ってた
スパイグッズを買って遊んだじゃないですか。
それにまるでドリフのようなドタバタ喜劇が加わり、
さらにハリウッドの味付けがなされる訳ですから、
豪華な「8時だョ全員集合!」みたい(笑)。
なんか潜在意識にある笑いのツボを押されたかのような1本。
大いに笑えます。☆4つ。
「ゲットスマート」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.10.4

「三本木農業高校、馬術部」☆☆☆☆

ある映画会社の試写室はロビーに自動販売機があって、
そこで飲む缶ジュースは無料なんです。
でも年配の常連さんが野菜ジュースを何本も出してカバンに入れて行くんですよ…。
見てるとなんだか切なくなっちゃう…。
「ご自由にお飲み下さい」の“ご自由に”の意味は絶対違うんだけどねぇ。
さ、今週は、ジュースじゃないけど1本です(笑)。

「三本木農業高校、馬術部」は、実話に基づく人と馬との物語。
青森県にある三本木農業高校。2年生の香苗はこの学校の馬術部員。
彼女の担当はかつて馬術界で名を馳せた名馬のタカラコスモス、通称“コスモ”。
今は左目を患って一線を退き、この学校にもらわれてきていたのでした。
「プライドばっかり高くって、気性の荒い、扱いづらいだけのバカ馬だぁ」。
香苗はことあるごとに仲間にこうこぼしていたんですね。
ところがある日、香苗はふとした仕草から
コスモの左目がほとんど見えなくなっていることに気付きます。
「怖かったんだね…。コスモ…」。
それを機に献身的な世話をする香苗に、少しずつ心を開いていくコスモ。
ふたりの距離が徐々に縮まり始めた瞬間でした。
そして高校最後の競技会。香苗は監督にコスモで障害飛越に出場したいと訴えます。
無理だと止める監督に香苗はこう言うんですね。
「私がコスモの目になります!」と…。
この映画のサブタイトルは『盲目の馬と少女の実話』。
主役の香苗に扮するのは、父・長渕剛、
母・志穂美悦子という彼女自身もサラブレッドの長渕文音。
乗馬の訓練をみっちりと重ね、スタントを使わずに撮影に臨んだ出演者たち。
落馬をしたり、馬と馬房の間の壁に挟まれたりと
、何でもないようなシーンでさえ、実はかなりの危険を伴います。
だって“馬力”という言葉があるぐらい、馬の力ってすごいんですから。
ボクの仲良しのJRAのある調教師さんが、以前こんな話をしてくれました。
「まだ調教助手の頃、自分の担当していた馬がゴール前でガクンと体が沈んだので、
これはまずいと思い走って行ったら、案の定骨折しちゃっていて。
助からないとすぐわかった。
でも馬は俺を見つめててさ。
その目は『ようやく来てくれたね。痛いよ。助けてよ』って訴えてるんだ。
いつも生意気で言うこと聞かないから、『絶対にコイツ俺のこと嫌いだな』と思って接してたけど、
でもその目を見た時にそうじゃなかったんだなって初めて気付いたんだよ。
馬運車の中で、『大丈夫。絶対助けてやるから』と口で言いながら心の中では、
『ごめんな。ごめん』と何度も何度も謝って。ずっと涙が止まらなかった。
今でも一番印象に残ってる馬は?と聞かれると真っ先にその馬を思いだすんだよね」。
その調教師はG1トレーナー。でも勲章を与えてくれた馬じゃなくて、
不慮の事故で逝ったその馬を思うんだそうです。
たぶん動物と関わるってみんなそうでしょ。
だから競馬ファンだけじゃなく、本当に多くの人に見てもらいたいんですよね。
体当りの演技も感動モノですョ。☆4つ。
「三本木農業高校、馬術部」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.9.26

「最後の初恋」☆☆☆
「女工哀歌」☆☆☆
「トウキョウソナタ」☆☆☆
「ファン・ジニ 映画版」☆☆☆
「ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリー」☆☆☆

試写状を見ていたら、1月公開作品が結構あるんです。
鬼が笑う?いやいや鬼も笑う暇がないほどサイクルは早いってこと。
いい作品や気になる作品もアッという間に公開が終わってしまうことも。
見逃さないようにして下さいね!
さ、今週は5本です!

「最後の初恋」は、リチャード・ギア、ダイアン・レイン主演の、大人の恋の物語。
エイドリアンは2児の母。
思春期の娘と、小児ぜんそくを患う幼い息子がいます。
夫のジャックは家族を捨て、浮気相手と出て行ったにも関わらず、
その女と切れたからと復縁を迫ってきます。
勝手な言い分に腹を立てながらも、
子供のことを考えたら元に戻るのがいいのかなぁと迷うエイドリアン。
親友のジーンが経営する海辺のホテル。
小さいけれど趣きのあるこのホテルに、珍しくシーズンオフの予約が入るんですね。
ところがジーンは他の仕事で出張に行かなくてはならないと。
こんな時はいつものようにエイドリアンがお手伝い。
やってきたのはポールという男性客。
聞けば外科医で、自分が執刀した手術で患者を死なせてしまったと。
その遺族に呼ばれ、釈明のためにこの町に来たといいます。
家族のことを省みず、医者としての使命に一生懸命だったというポール。
しかしそれは家族のためにと自分を犠牲にしてきた
エイドリアンにとっては正反対の生き方。
憧れと反発が交差するふたりの会話、そして行動。
折しも町には巨大なハリケーンが近付いていました。
このハリケーンが、互いの心に、恋の嵐を巻き起こしていくのでした…。
自分の中では夫との復縁は絶対にあり得ないとわかっているエイドリアン。
術後の行動に背を向け去って行った
同じ医者である息子を再び呼び戻したいと願うポール。
ふたりの中に芽生えた大人の恋心が、
これまでの自分にきっちりケリをつけることを決意させてくれます。
そして一度離れて再会を誓うふたり。
そんなふたりをつないだのは“手紙”でした。アナログでしょ(笑)。
メールじゃないんですよ、手紙!
ホテルのBGMもジャズのLP盤にそっと針を落とすんですが、
そんなアナログの暖かさや温もりが、見る側をホッとさせてくれます。
この良さだけは、わかる世代にしかわからないのかもしれないけど(笑)。
結末は劇場で確かめて欲しいんですが、
いずれにしても年齢に関係なく、やっぱり恋愛はいいよなぁと。
本当の、素のままの自分でいられる相手と出会うことがどれほど大事か。
ボクもどこかにチェックインしたくなりました(笑)。☆3つ。
「最後の初恋」公式サイト

「女工哀歌(エレジー)」は、
中国の工場勤務の若い女性たちを追いかけたドキュメンタリー。
ジャスミンは四川省の農村に生まれた16歳の女の子。
家計を助けるために彼女は家を出て、都会のジーンズ工場で働きます。
1部屋に12人が寝泊まりする狭い部屋に暮らし、忙しい時に徹夜は当然。
それどころか、朝8時から翌日の午後3時までという想像を絶する長時間労働もある。
にも関わらず給料は遅れる。でも社長は儲かってるみたいだし。
と、急成長を遂げる中国の現状を描いた作品です。
安い労働力と言っても、決して権利や制度に守られたものじゃなく、
泣く泣く働かざるを得ない実情がある。
一人っ子政策の影響もあるのでしょう、
偽の身分証明書で働いてる子もいるぐらいだから。
こんな形での労働力が約1億3000万人いて、人口の約10%に当たるとか。
数だけで言うなら、日本人全員が出稼ぎ労働者ってこと?すごっ。
そう考えたら、北京オリンピックのコンパニオンも美人揃いな訳だ。
だっていったい何億人の中から選んでんのって話でしょ(笑)。
それだけの人数に隅々まで倫理上の教育を施そうとしても確かにこりゃ大変ですよね。
ほんの一部が犯したルール違反が、
結局中国産全体のイメージになっちゃうんだから。
根は深そう。でも映画に出てくる子たちの頑張りはピュアでした。
なんだか幸せになって欲しいなと願ってしまいます。☆3つ。
「女工哀歌(エレジー)」公式サイト

「トウキョウソナタ」は、家族の崩壊と再生の物語。
線路沿いの小さなマイホームに暮らす4人家族。
父は健康機器メーカーの総務課長、佐々木竜平。
母は専業主婦の恵。長男は大学生の貴。次男は小学六年生の健二。
リストラされたものの、それをまだ妻に言えず、
会社に行くふりをしてハローワークに通い、
昼はボランティアの炊き出しに並ぶ父・竜平。
長男・貴はバイトをしているとかで連日の朝帰り。
ある日、急にアメリカ軍の外国人部隊に入隊すると言い出し、
手続きを済ませてきてしまいます。
次男・健二は近所のピアノ教室の先生に一目惚れ。
親にナイショで教室に入会。給食費を月謝にと払ってしまうんですね。
さらには母の恵までもが家族に秘密を持ってしまう。
そんな佐々木家に明日はあるのでしょうか…。
と、出来事だけを書きましたが、
それぞれにいろいろ伏線というか物語はあって、
映画の中ではもちろんそれがしっかりと描かれてます。
モデルはごく普通のサラリーマン家庭なのに、
起こる出来事はちょっと“普通”を飛び越えていて。
それを面白いと思うか、あり得ないと思うかで
この映画の評価は変わるんじゃないかなって思います。
ボクはう〜ん、映画だからこれくらいはいっかって感じ(笑)。
小泉今日子、香川照之らが出演。
「グーグーだって猫である」でもそうだけど、
キョンキョン、最近素晴らしいと思います!☆3つ。
「トウキョウソナタ」公式サイト

「ファン・ジニ 映画版」は、
16世紀の朝鮮王朝時代に実在した妓生(キーセン)の物語。
男が尊く、女が卑しいとされていた時代。
貴族の娘に生まれ、詩、歌、琴、絵、書などに秀いでていたチニ。
縁談も決まり、さぁいよいよ結婚という時に、
突然破談となってしまいます。
実はチニには本人も知らない出生の秘密がありました。
父が下女を手ごめにし、生まれたのが自分だと知るのです。
そうと知ってはこの家にはいられないと、
実の母が辿った道を生きようと決意します。
それは、芸はもちろん、体をも売って生きる妓生の道だったのです…。
小さな頃からチニを見つめてきたノミという男性がいて、
互いになんとなく恋心もあると。
そんなノミにチニは自分のこれからの人生の3つの選択肢を言うんですが、
「ええっ?他にあるでしょうが…」っていうくらい
すべて“不幸”にベクトルは向いてて、そんな中でも妓生を選んでしまう。
時代も国も違えばそういうことなんだろうかと思うしかないんですけどね。
まぁ美人で教養があって、遊廓では大人気。
でもそうそういいことは続かないのが人生なんですよねぇ。
韓国でファン・ジニの物語は、TVドラマはもちろん、
書物にもたくさんなっているそうです。
韓国人男性に「歴史上の女性で一番会ってみたい人は?」と聞くと、
トップはファン・ジニなんだそう。
映像も華やかで、綺麗で。だからこそ彼女の人生がより物哀しく映るのです。☆3つ。
「ファン・ジニ 映画版」公式サイト

「ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリー」もドキュメンタリー。
ドイツ南部にあるドンツドルフという村のお話。
今や世界屈指のヘビメタ・レーベルに成長した「ニュークリア・ブラスト」。
創始者でGMのマルクス・シュタイガーは
趣味が高じてひとりでレーベルを立ち上げたんですが、
ジャーマン・メタルが大当たり。
村の主婦たちはこの会社で通販の社員として働いていて、
世界中にヘビメタ・グッズを送っているんですね。
他にもTシャツを作ってる会社があったり、
とにかく村の主要産業がヘビメタという変な村がドンツドルフ。
ヘビメタ・ファンならずともちょっぴり気になりませんか?
笑顔でドクロの置物を包んでる奥さん、違和感ありあり(笑)。☆3つ。
「ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.9.18

「幸福」☆☆
「東南角部屋二階の女」☆☆☆
「ベティの小さな秘密」☆☆☆
「蛇にピアス」☆☆☆

さぁ“芸術の秋”です。映画を見るにはいい季節になりました。
あなたは映画を誰と見ますか?
複数で見ればあとでワイワイ語り合えますが、ボクはひとりで見ることもお勧めします。
ボクは、私は、映画はひとりですョという人も多いんじゃないですか?
誰にも気を遣わずにスクリーンの世界に浸るのもいいものですよね。
さ、今週は3本です!

「幸福(しあわせ)」は、“訳あり”中年男女の物語。
北海道の勇払駅。ボロボロの格好をしたひとりの男が降り立ちます。
男は町外れの公園に辿り着くと、突然眠るように倒れ込んでしまうんですね。
それを見つけたひとりの女。
彼女もまたこの町でようやくスナックでの働き口を見つけたばかり。
それでも見過ごすわけにはいかないと、男を介抱します。
ここから、ふたりの奇妙で微妙な関係がスタートするのでした…。
他にもスナックのマスター、マスターの恋人であるホテトル嬢、
「心凍らせて」しか歌わない常連客などが登場。
夢や希望を抱くのが難しい町で、それぞれの運命に翻弄されていきます。
☆が少ないのはね、ボクはラストがちょっと気に入らないんです。
個人的な思いですけど。
書くとストーリーの結末がわかっちゃうから書かないけど、
それって勝手過ぎません?“幸福”ってそれですか?って、
特に女に問いただしたい気分です。
ごめんね。まったくわからないですね(苦笑)。
独特の空気が流れる作品。アングラな匂いも漂わせつつ。☆2つ。
「幸福(しあわせ)」公式サイト

「東南角部屋二階の女」は、27歳の女性監督、池田千尋監督作品。
野上、三崎、アヤ。3人の男女がひょんなことから出会い、
同じアパートのそれぞれの部屋で暮らすことになります。
4世帯しかないその古いアパートは、野上の祖父の持ち物。
野上の父は莫大な借金を残して死んでしまい、
それを返すにはこのアパートを売るしかないと。
それまでのつなぎにとみんなで住んでいるのですが、
売却に対して頑として首を立てに振らない祖父。
何にもしゃべらないので、その真意がわからない野上。
ある日のこと、強烈な台風が上陸。
アパートの雨戸は外れ、雨が二階の“開かずの部屋”に降り込みます。
これはまずいと部屋に入った3人はあるものを発見するのです…。
こちらも訳ありの20代後半から30代の男女を描いた作品。
こういう映画が多いということは、
今の世の中、やっぱり生きづらいのかなぁ。
でもこの3人は、いろんな人と関わっていく中で、
視野が広がり、視点自体が変わっていく。
この古いアパートも、
祖父にとってどんな意味を持つのか理解できるようになるのです。
回転寿司じゃないけど、今の人は他人と関わるのを面倒くさがるでしょ?
確かに面倒だけど、でもそれってすごく大切なんだって。
きっとそんなことを教えてくれる1本だと思います。☆3つ。
「東南角部屋二階の女」公式サイト

「ベティの小さな秘密」は、小さな少女が主人公のフランス映画。
ベティは10歳の女の子。
パパは精神病院の院長さん。
お家は病院と隣接していて、壁で隔てられた向こうにありました。
大好きなお姉ちゃんは寄宿学校に行ってしまい、
パパとママはケンカばかり。
どうやら原因はママの浮気らしいのです。
収容所にいる犬のナッツがかわいくて引き取りたいのだけど、
パパは消極的。
もうすぐ安楽死処分の日がやってきてしまいます。
ベティには悩み事がいっぱい。
そんなある日、自転車をしまいに小屋へ行くと、
若い男性が震えながら隠れていたのです。
彼の名はイヴォン。パパの病院から脱走してきたのでした。
ベティはイヴォンといると何故か落ち着くんですね。
不安そうなイヴォンをかくまうベティ。
この日から、ベティの秘密の毎日が始まったのです…。
子供の頃の、おままごとのお母さん役のようなベティがかわいかったです。
おままごとのお母さんって、
別の側面から見れば恋する女性が内包されているでしょ?
おませなベティにとってはこれは初恋じゃないのかなぁ。
カラフルな色づかいと、毛糸の暖かさみたいなのが特徴。
ベティにとってはすべてが大冒険!
微笑ましく、童心に帰って見てみてはいかがですか?☆3つ。
「ベティの小さな秘密」公式サイト

「蛇にピアス」は、金原ひとみの芥川賞受賞小説の映画化です。
生きて行くことに何の目的も見出だせず、
心にポッカリと穴の開いたまま単調な毎日をただ過ごすだけのルイ、19歳。
ある日、フラッと入った渋谷のクラブで、
個性的なルックスの男性と出会います。
赤毛のモヒカン、眉と唇にピアス、背中に龍の刺青。彼の名はアマ。
アマがルイに尋ねます。「スプリット・タンって知ってる?」
そう言って舌を出すと、その先は蛇のように2つに割れていたんですね。
それを見たルイの中で何かが目覚めます。
アマに連れて行ってもらったのは、
全身タトゥ、顔中ピアスのシバが営業する怪しげな店。
そこでルイも舌にピアスを開け、徐々に大きなものにして、
自分もスプリット・タンにしようと決めたのです。
アマと付き合い始めた一方でシバとも関係を持つルイ。
ルイは背中にタトゥを入れることも決意します。
アマの背中にある龍と、シバの右腕にある麒麟。
その2つが絡み合う絵を彫って欲しいと。
「でも目だけは入れないで。飛んで行ってしまうから」。
ふたりの男性と関係を持つことで生じる心の痛みと、
ピアスを開け、刺青を彫ることで感じる体の痛み。
生きていることを実感させてくれるのはこの“痛み”だけ。
ところが、アマの起こした傷害事件がきっかけで、
3人の関係は思いもよらぬ方向に進んで行くのでした…。
04年に綿矢りさと共に芥川賞を受賞した時、
最年少記録を大幅に更新したと話題になりましたよね。
そんな彼女の作品を手掛けたのは72歳の蜷川幸雄監督。
50歳以上の年齢差がこの若者の世界をどう描くのか?
興味は尽きなかったのですが、尖った個性を演出させたら日本屈指の演出家でもあります。
この選択は大正解だったに違いありません。
とにかく異様なルックスのアマとシバ。違う生き物を見ているようでもあり、
そっちの方向に向かって行ってるルイに、
つい「もう少し自分を大事にさぁ」なんて言葉を掛けたくなりますが、
そんなこと言ったら「うっせーよっ、おっさん!」と
間違いなく怒鳴られるんだろうなぁ(笑)。
へなちょこなボクには本当に痛い映画でした。☆3つ。
「蛇にピアス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.9.12

「あぁ、結婚生活」☆☆
「おくりびと」☆☆☆☆
「フライングラビッツ」☆☆
「フロンティア」☆☆
「ヨコヅナマドンナ」☆☆☆

今回は全体的に評価が低めですが、かなり個人的な見解での評価です。
「違うじゃん」とか、「ダメだよ、そんなの」とか。
腕組みをして、しかめっ面で試写を見ていたような気がします(笑)。
ま、あくまでボクの価値観ですから。
あなたにはどう響くのか。逆に感想も聞きたいところです。
それでは今週の5本です!

「あぁ、結婚生活」は、タイトル通り、ある夫婦の結婚生活を描いた物語。
舞台は40年代のアメリカ。
会社社長のハリーは、高級住宅地に妻のパットと暮らしています。
熟年夫婦であるふたりの価値観は少々違っていて、
ハリーは本当に自分を愛してくれる人と一緒にいたいと。
パットはその愛情がセックスだと思っているんですね。
そんな時、ハリーに若くて美しい恋人ができます。彼女の名はケイ。
ケイは夫を戦争で亡くした若き未亡人。
でも経済的な面とかではなく、心底ハリーを愛していたのです。
「どうしたものか」。
ハリーは悩み、親友のリチャードに相談します。
ケイを紹介されたリチャードはビックリ!
「こんなにキレイな若い女性がハリーの恋人とは」。
しかしハリーは自分のことを愛しているはずの妻パットのことを考えると、
離婚を切り出すことができません。
ところが、リチャードがハリーの別荘に行くと、先に来ていたパットが浮気の真っ最中。
そんなこととはつゆ知らず、ハリーは離婚を言い渡すより
殺してしまった方が彼女も幸せだろうと、パットの毒殺を計画します。
一方のリチャードも、なんとかケイをハリーから奪い取りたいと画策をするのです。
果たしてこのドロドロした関係の行き着く先とは…。
ボクも結婚失敗してますからなんとなくわかるけど、
でも、嘘で保てる幸せなら、そんな幸せは絶対いらないって。
「嘘も方便」。わかりますョ。
でも、枝葉ならまだしも、根っこの部分が嘘だったら、その木は腐りますから。
クリス・クーパー、ピアース・ブロスナン、パトリシア・クラークソンら、
一流どころが出演している作品。
見る人の心に波風立てるという意味ではもちろん面白い作品でしょうが、
ボクはイライラしてしまいました(-_-;)。
ねっ、見解が個人的過ぎるでしょ(笑)。☆2つ。
「あぁ、結婚生活」公式サイト

「おくりびと」は、納棺師の仕事を描いた、本木雅弘主演作。
東京でチェロ奏者としてなんとか食い繋いできた大悟。
ところが楽団の解散もあり、音楽家としての自分にピリオドを打ち、
妻の美香と一緒に、生まれ故郷の山形に帰ります。
故郷とは言っても、母を早くに亡くし、父も30年以上前に失踪。
なんとか仕事を探さなくちゃと新聞の求人欄に目を凝らす大悟。
そんな彼の目止まったひとつの求人広告。
「旅のお手伝い」。
旅行代理店かと思って向かった事務所には、何故か棺桶が立て掛けてある。
おかしいなぁと思いつつも、高額の給料を提示され、
今日の分と日当を手渡された大悟は断り切れずに就職を決めてしまうのです。
「あ、“旅のお手伝い”。これ間違えてるなぁ。
 “安らかな旅立ちのお手伝い”だ」。
そう、ここは亡くなった人を棺に納める、納棺師の会社だったのです。
妻の美香には冠婚葬祭の仕事と言っておいたのですが、
それもすぐにバレてしまう。
「汚らわしいっ」。と罵られ、実家に帰ってしまう美香。
でも仕事をしながら大悟は、人生の在り様を、
そして納棺師の意義を学んでいくのでした…。
出て行ったあとにわかった美香の妊娠、
幼なじみのお母さんの死、そして行方知れずだった父の死。
美香も間近で大悟の仕事を見る機会があり、先入観を覆していきます。
生も死も、本当に身近に存在するんだということ。
大人になるにつれ、これってみんな実感することですよね。
敢えて積極的に知ろうとはしない世界の物語。
でも誰かがやってくれているんですって。
モントリオール映画祭で、この「おくりびと」がグランプリを獲得しました。
日本の文化、伝統が海外で評価されるって、素敵なことだと思いません?☆4つ。
「おくりびと」公式サイト

「フライングラビッツ」は、実在のバスケットボールチーム
『JALラビッツ』をモデルにした青春スポーツ映画。
小さい頃からの夢だったCA(キャビンアテンダント)になるため
JALに入社した早瀬ゆかり。
同姓同名が2人いたため、間違えてバスケット部の寮に入ることになったゆかりでしたが、
監督は彼女の素質を見抜くんですね。
「バスケットなんてやったことないのに」。
戸惑いつつ、迷惑を掛けつつ、それでも練習に励むゆかりには唯一の強みがありました。
それは父から習っていた合気道の極意。
そうはいっても、バスケばかりに熱中もしていられない。
CAの仕事もあるし、学生時代から付き合っていた彼とは突然遠距離恋愛になるしで、
ゆかりの生活はてんてこまい。
果たして新米CAの明日やいかに…。
フィクションですから、初心者が社会人リーグのバスケット部に入って
選手として活躍できるようになるというのはまだ許しましょう。
でも、体をボロボロにして引退を決意した先輩に、
自分の仕事も投げ出すような責任感の無いゆかりが
偉そうに物言いをするシーンが我慢ならんのです(-_-;)。
おまえ、絶対にダメだろっ。そんなこと言えないだろっ。
本当なら☆1つにしたいぐらいでしたが、
主役の石原さとみがあまりにカワイイので、え〜い仕方ない、☆2つ(笑)。
「フライングラビッツ」公式サイト

「フロンティア」は、フランスのサイコホラー。
大統領選挙で保守派と極右勢力が激しく対立。
各地で暴動が起きるフランスの混乱に乗じて、移民系の若者5人が強盗を計画。
ところが失敗に終わり、警察に追われることになります。
「いくつかに分かれてオランダに逃げよう」。
車を走らせる途中に1軒の安宿がありました。
一息つけると安堵の息を漏らした彼らでしたが、
実はとんでもない場所に足を踏み入れてしまったのです。
そこはナチスの狂信的信奉者とその子供たちが営む、殺人ホテルだったのです…。
リュック・ベッソン一派のザビィエ・ジャンのメガホン。
“ハードコア・サバイバル・ムービー”とキャッチコピーが付いていて、
好きな人にはたまらないはずのコアな世界。結構行き切っちゃってます。
あまりにすごいのでボクはちょっと…。ごめんなさい。☆2つ。
「フロンティア」公式サイト

「ヨコヅナマドンナ」は、韓国の一風変わった青春コメディー。
ドングはポッチャリ体型の男子高校生。でも心の中は女の子。
机の引き出しにはメイク用具がいっぱい。
いつか憧れのあのマドンナのようになるんだと、
肉体労働のアルバイトをしては性転換手術用の費用を貯めているんですね。
父は元ボクサーだけど、今は酒浸りの日々。
母はそんな父に愛想を尽かし、家を出て行ったっきり。
そんなある日のこと、ドングは500万ウォンの奨学金が出るという
韓国相撲シルムの高校生大会の存在を知ります。
バイトで培った筋力には自信のあったドングは、高校のシルム部の門を叩くのでした…。
ポッチャリ系の10代オカマちゃん物語。
ドングが思いを寄せる日本語教師になんと草薙剛!
一瞬試写室がどよめきました(笑)。
なんかドングがいじらしくって。
韓国は儒教の国だから親子関係は厳しいんだろうけど、
あんなクソ親父の暴力にもじっと我慢してさ(T_T)。
頑張れって応援したくなります。
でも芯の強さはそんな逆境が作ってくれたのかもしれないなぁ。
そう考えると、それもまた必然?
自分の人生に照らし合わせてみたら何か見つかるかも?☆3つ。
「ヨコヅナマドンナ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.9.7

「イントゥ・ザ・ワイルド」☆☆☆☆
「グーグーだって猫である」☆☆☆☆
「幸せの1ページ」☆☆☆
「シャカリキ」☆☆
「シャッター」☆☆
「ストリート・レーサー」☆☆☆
「LOOK」☆☆☆

今回☆は相対的に付けました。
本当はみんな☆3つでよかったかなぁって感じ(笑)。
でも3.5コと2.5コの差をつけたくてあえて星の数を変えてみた次第です。
でも言えるのはどれもすごく個性的だということ。
あなた自身で感じてみて下さい!
さ、今週は7本です。

「イントゥザワイルド」は、ショーン・ペンの監督最新作。
22歳のクリスは、エリート一家に育ち、親の期待を一身に背負った若者。
それを裏切るまいと優秀な成績で大学を卒業します。
しかし、彼が両親の期待に添うようにと頑張ったのはここまで。
卒業後は黙って家を飛び出し、ひとりアラスカを目指すんですね。
途中、知り合う人々との触れ合いを通じて、
彼は様々なことを体験し、学びます。
それでも目指すは“北の荒野”。
彼が探しているものとは一体何だったのでしょうか…。
92年の夏、アラスカの荒野でひとりの若者の遺体が見つかります。
マスコミがこのことを大々的に報じたのには理由がありました。
それは、恵まれた環境に育ちながら、なぜこんな場所で
こんなふうに命を落としたのかが、あまりにも“謎”だったから。
この事件を取材し、それを解き明かしたノンフィクション小説が「荒野へ」。
そのベストセラーの映画化が「イントゥ・ザ・ワイルド」なんです。
誰もが一度は考える人生の意味。
自ら命を絶とうとは思っていなかったクリスに何があったのか?
クリスは命と引き換えに、何かを見つけることができたのか?
答えは映画の最後にわかります。
ボクはそんなこと改めて言われなくたって知ってましたよーだ(笑)。
ま、22歳じゃ、わからなかったな。
ただひとつ、クリスの行動力には拍手です。☆4つ。
「イントゥザワイルド」公式サイト

「グーグーだって猫である」は、
少女漫画家・大島弓子の自伝的エッセイ漫画の映画化。
人気漫画家の小島麻子。
今日も4人のアシスタントと締切りに追われてました。
いつものように多忙な仕事場を覗き込む愛猫のサバ。
その時、サバはこう呟いたのです。
「さようなら」。
徹夜で原稿を上げ、麻子はサバに声を掛けます。
「さ、ごはんにしよ」。
ところがサバは冷たく、動かなくなっていたのです。
サバを亡くした悲しみから漫画も描けなくなった麻子。
アシスタントは心配でたまりません。
そんなある日、麻子はペットショップで
一匹のアメリカンショートヘアーの子猫と出会います。
「名前はグーグーとします」。
麻子とアシスタントとグーグーの新たな生活が始まりました。
元気を取り戻した麻子。恋を予感させる出会いもあり、
公私共に順調な生活に戻るのですが、
アシスタントのナオミの元に麻子がやってきて、
「しばらくグーグーの面倒を見てくれないかしら」と言うんですね。
「どうしたんですか?」と聞くと、
麻子の口から耳を疑うような言葉が返ってきたのです。
「入院しないといけないの。卵巣ガンだって」…。
ペットはまず飼い主より先にこの世を去りますからね。
でも人間にだって寿命はある。
命の大切さを、まるで何も考えてないかのように丸まってる猫を通して描いた1本。
「普通に生活していることがこんなに幸せなんだ」と教えてくれた気がします。
麻子に小泉今日子、アシスタントに上野樹里と森三中の3人。
“吉祥寺の映画”と言ってもいいぐらいいっぱい吉祥寺の日常風景が出てきます。
ほわんとした気分にさせてくれるいい映画。どれくらいいいかって、
森三中がかわいく見えちゃうぐらいかな(笑)。☆4つ。
「グーグーだって猫である」公式サイト

「幸せの1ページ」は、ジョディ・フォスター主演作。
海洋生物学者のジャックとニムは南の無人島に暮らす父と娘。
このふたり以外、誰も上陸したことのない島で暮らすニムにとって、
唯一の楽しみは、定期便が運んでくる大好きな冒険小説を読むことでした。
主人公のアレックス・ローバーは無敵のヒーロー。まさにニムの憧れ。
その小説の作者はサンフランシスコに住む、
女流作家のアレクサンドラ・ローバー。
ところが彼女、極度の潔癖症で外出恐怖症。
郵便を取りにポストに行くのすら怖い。
そんな彼女がネタに詰まってネットを見ていたところ、ジャックのことを知るんですね。
火山について教えてもらおうとメールを送るアレクサンドラ。
そのパソコンを開いたのはニムでした。
なぜならジャックは新種のプランクトンを探しに海に出て行ったから。
ニムは大興奮!だって大好きなヒーローからのメールだもの。
アレクサンドラもニムをジャックの助手と勘違いして
メールのやり取りが始まるんですね。でも何かが違う。
すると海が荒れ始め、予定の日になってもジャックは帰ってこない。
ニムはアレクサンドラに助けを求めます。
ニムが実はまだ幼い少女だと知ったアレクサンドラは一大決心。
遠い南の無人島まで、ニムを助けに行こうと決めたのです。
この何年、家さえ出たことがないというのに、果たして大丈夫なのでしょうか…。
ジョディ・フォスターだから、タイトルからして
女流作家と読者かなんかとの恋物語かなと思ったらさにあらず。
コメディーでした。ビックリ!
ある意味、冒険のお話ですから子供向けの感じでしたが、
その一方でジョディと同世代の女性たちに、
「運命なんて自分で変えられる。踏み出す一歩こそが大切」
とメッセージを送っているようです。
間違いなくジョディにとっては新境地を開拓。
メグ・ライアンでもいいような役どころだしね(笑)。☆3つ。
「幸せの1ページ」公式サイト

「シャカリキ」は、スポ魂青春映画。
転勤生活で友達ができなかったテルにとって、自転車は唯一の仲間。
山のてっぺんはオレのものと、坂道を漕がしたら天下一品。
そんなテルが高校生になって、亀ケ丘高校にやってくるんですね。
そこには廃部になりかけの自転車部がありました。
通学バスを自転車で追い抜いていくテルを見て、
こいつはすごいと目をつけられ、スカウトされるテル。
ところがチームワークで走る自転車ロードレースにとって、
テルの性格はあまりにも自分勝手過ぎたのです。
それでも鳳皇高校のユタというライバルと出会ってからは、
本気で自転車に取り組むようになります。
シャカリキになって頑張る亀校自転車部。
果たして部の存続は叶うのでしょうか…。
ルールを説明しながら映画は進むので、
自転車競技自体は少しずつわかっていきます。
チームワークと自己犠牲のスポーツなんですね。
なんて、あまりわかってなくても
いくらなんでもそりゃ絶対無理でしょうってところがあって、
そこがちょっぴり残念だったかなぁ。
フィクションだと割り切れなくて。ごめんなさい。☆2つ。
「シャカリキ」公式サイト

「シャッター」は、ハリウッドのホラー映画。
カメラマンのベンとジェーンは新婚夫婦。
仕事とハネムーンを兼ねてやってきた日本。
ところがいきなり車の運転で事故を起こしてしまうんですね。
「白い服の女性を避けようとして」。
ところがそんな女性はいなかったのです。
ベンがクライアントに依頼された撮影を終え、暗室で現像をしてみると、
すべての写真に白いものが写っている。
「おかしいなぁ」。
おかしかったのは写真だけではありません。日本に来てからというもの、
ベンは首が、頭が、重く、痛くなっていたのです…。
奥菜恵のハリウッド進出作としても話題のホラー作品。監督は落合正幸。
悪魔がホラーの主役たるアメリカだと、
こういう情念の世界というのは新鮮に映るのかもしれないけど、
ボクら日本人には少々斬新さに欠けるかも。☆2つ。
「シャッター」公式サイト

「ストリート・レーサー」は、ロシアのカー・アクションもの。
ロシアの戦車部隊を無事除隊となったステパンは、
父親の経営する自動車整備工場で働き始めるんですが、
サンクトペテルブルグで行なわれる賭けレース、“ストリート・レース”を知り、
そこでドッカーという男と出会います。
ドッカーから借りた車でレースに出るステパン。
ところがこの車で事故を起こしてしまうんですね。
ドッカーに大きな借りを作ってしまったステパンでしたが、実はこれはドッカーの罠。
ドッカーにはもうひとつの裏の顔がありました。
それは高級外国車盗難グループのリーダーだったのです。
こうしてステパンも犯罪の片棒を担がされることになるんですが、
そこに弟や恋人が絡んでくる。
ドッカーの後ろにはさらなる大物の影がチラホラ見えたりもする。
ステパンは犯罪組織から抜けることができるのでしょうか…。
面白いのは、アメリカのカー・アクションものと違って、車が地味(笑)。
なんたって日本車大活躍ですから。スバルのインプレッサなんて渋いでしょ?
ボクらにとっては身近に感じられるかも。
でもギャグはさすがにロシア。“極寒の地”だけに寒かったです(笑)。☆3つ。
「ストリート・レーサー」公式サイト

「LOOK」は、監視カメラの映像が主役の映画。
アメリカではテロ対策として、全国に3000万台以上の監視カメラがあるんだそう。
アメリカ人はひとり当たり1日平均200回以上、
どこかの監視カメラに映っているのだとか。プライバシーはどこへ?
この映画はオムニバス形式で監視カメラの映像を紡いでいきます。
強盗、殺人、幼児誘拐、セクハラ、不倫、淫行、同性愛、交通事故などなど。
ひとつひとつ掘り下げていく中で、
やっぱり病んだアメリカというものが見えてくる気がしました。
もちろんフィクションなんですけど、
ノンフィクションだと思い込んで見ると面白いかも?
あ、あなたも見られてますよ。☆3つ。
「LOOK」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.8.28

「コッポラの胡蝶の夢」☆☆☆
「パンダフルライフ」☆☆☆

9月になると専門学校の授業が再開。
試写に行くチャンスが減ってしまいます。
1本1本、大切に見ないとねっ。
さ、今週は2本です!

「コッポラの胡蝶の夢」は、
フランシス・F・コッポラの10年振りとなる監督、脚本作品。
1930年代末のルーマニア。
年老いた言語学者のドミニクには、
最愛の女性だったラウラを捨ててまで進めたかった研究がありました。
ところがそれをもまっとうできず、
彼は死を決意して見知らぬ駅に降り立ちます。
すると突然の落雷がドミニクを襲うんですね。
気が付くと病院のベッドの上。
奇跡的に一命を取り留めたドミニクでしたが、驚異的な回復を見せ、
さらには驚くことにどんどんと若返って行くではありませんか。
見た目は30代に。知的能力も向上していきました。
落雷による電気ショックが肉体に何かを起こしたのか?
ドミニクの存在はヒトラーの知るところとなり、ナチスの尾行が始まります。
そこで彼は別の人間になりすまし、
ナチスの目を盗むように幾度となく亡命を繰り返すんですね。
そんなある日のこと、スイスの山奥で、
最愛の恋人だったラウラに瓜二つの女性と出会うのでした…。
と、書いてもあんまり本質的な面白さは伝わらないでしょうね。
「地獄の黙示録」や「ゴッドファーザー」の監督が描く
“知的ミステリー”とでも言いましょうか。
原作は著名な宗教学者の小説だそうで、宗教観はもちろん、
数多くの古代言語、時間軸のとらえ方などが結構複雑に描かれてはいるのですが、
そこはさすがに巨匠。
見ている方にはわかりやすく、スクリーンに釘付けになります。
派手な作品ではありませんが、大人が楽しめる映画って感じ。
興味のある方は是非!☆3つ。
「コッポラの胡蝶の夢」公式サイト

「パンダフルライフ」は、パンダのドキュメンタリー。
日本の和歌山県南紀白浜にあるアドベンチャーワールドと、
中国の成都にあるパンダ繁育研究基地。
このふたつの施設は互いに“パンダ交流”があるんですね。
アドベンチャーワールドでは、中国以外では異例の、
6頭ものパンダを飼育しています。
生ませて、育てて、里帰り。
そしてまた中国から新しいパンダがやってくる。
そんな繁殖交流なんです。
人間の森林伐採により、絶滅の危機にあるパンダ。
その生態や誕生の歴史についても勉強できる映画です。
遠い昔、パンダは肉食獣だったんですって。
目だけ見ると確かに怖いのはその頃の名残かもしれません(笑)。
そんなパンダも笹を食べるようになってからはホントかわいい!
コロコロ転がるのも好きみたい。
見ていて思わず顔がほころんでしまいます(*^_^*)。
ナレーションは管野美穂。
眠くなったら寝ちゃっていいんじゃない?って感じの癒しの映画です!
☆3つ。
「パンダフルライフ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.8.21

「言えない秘密」☆☆☆☆
「SEX AND THE CITY」☆☆☆☆
「小さな赤い花」☆☆☆
「R246 STORY」☆☆☆

お盆休みも終わり、帰省などで遠出していた方、
今週末あたりは近場で過ごしたいでしょうね。
そんな時に映画はピッタリ!今週も個性的な作品が揃いましたョ。
それではご紹介しましょう。今週は4本です!

「言えない秘密」は、台湾映画。
音楽学校に転校してきた男子生徒のシャンルン。
古い校舎のピアノ室から聞こえてきた幻想的な旋律。
覗いてみると、そこにいたのはシャオユーという女子生徒でした。
音楽を通して、互いに魅かれ合うふたり。
帰り道を自転車で送るなどして、その仲はどんどんと深まっていきます。
ところがシャオユーには重い喘息の持病があり、
学校も休みがちだったんですね。
久々にシャオユーが学校にやってきた時、
ふたりはピアノ室で待ち合わせるのですが、
シャンルンに恋心を抱くクラスメイトのチンイーがやってきて
シャンルンにキスをしてしまいます。
それを目撃したシャオユーはショックで学校を飛び出して行ってしまうのです。
それからまったく学校に来なくなったシャオユー。
心配になったシャンルンは、シャオユーの家を訪ねます。
そこでシャンルンは衝撃の事実を知ることになるのです…。
最初はいわゆる“お腹いっぱい”の悲恋ものかなと思ったんですが(笑)、
いやいや全然違ったのでビックリ。ホラー?SF?
さまざまエッセンスを織り混ぜ、いい意味で期待を裏切ってくれる恋愛物語。
台湾の人気No.1俳優のジェイ・チョウがシャンルン役を演じているんですが、
実は彼が監督、脚本、音楽も手掛けているんですね。
ピアノを弾くシーンでは見事な演奏を聞かせるなど多彩な才能を披露しています。
以前、日記に書いた「恋してぇ〜!」の映画はこれ(笑)。
互いの気持ちはわかってるのに、何となく探り合うふたり。
でもその恋愛の初期衝動がピークに達した時に、
シャオユーはシャンルンのホッペにチュッとして走って行く。
たまらなく恋してぇ〜!でした(笑)。
よくできてましたョ。☆4つ。
「言えない秘密」公式サイト

「SEX AND THE CITY」は、
アメリカの超人気TVドラマの映画化。
主人公は4人の女性。
キャリーはフリーのライターで、女性のSEXと恋愛を描いたコラム
「SEX AND THE CITY」が大ヒット。
本にもなり、今ではVogueにコラムを書くほどの人気ライターに。
数々の恋愛を経て、今は年上のジェントルマン、ミスター・ビッグと恋愛中。
サマンサは広告代理店を営むヤリ手の女社長。
とにかくパワフルで恋愛の方も自由奔放。
しかし、乳がんがわかった時に優しく支えてくれた
年下の俳優スミスと交際を始めてからは少々落ち着いた感もあり。
シャーロットは恋に恋するタイプのお嬢様。
一度離婚を経験し、二度目の結婚相手はお世辞にも
ハンサムとは言えないけど真摯なユダヤ人弁護士。
不妊に悩むも、中国から養女を取ってお母さんに。
今では安定した結婚生活を送っています。職業はアートディーラー。
そして最後に、ミランダ。
地に足のついた女性弁護士で、夫スティーブとの間に男の子がひとり。
義理の母がアルツハイマーを患っているのですが、献身的に世話をする彼女。
妻として、母として、仕事に、介護に、いっぱいいっぱいの生活。
ストレスもかなり溜まっています。
この4人は以前からの親友。
ミスター・ビッグとそろそろ結婚したいと願っていたキャリーが
思い切ってそのことを切り出すと、彼はあっさりとOK。
それを知らされたシャーロットは自分のことのように大喜び。
サマンサとミランダに連絡をして、みんなで久々の再会を果たします。
でもそう簡単に行かないのが結婚。
いろんなすれ違いが起こり、なんとご破算になってしまいます。
サマンサも年下の恋人のことを考えると本当にこれでいいのかと悩み、
ストレスいっぱいのミランダは夫の浮気が発覚。
果たして、この4人の女性たちを待つのは一体どんな未来なのでしょうか…。
98〜04年まで放映され、毎年のように賞を総嘗めにした大人気TVドラマの
まさに待望の映画化とあって、
アメリカでは「インディージョーンズ」を押さえ、堂々の初登場第一位となりました。
ロケ地巡りツアーなども大盛況だそうですから、その人気の高さは推して知るべし?
登場する4人の女性は個性的でありながら、
どこかに見る側が自己投影できる隙のあるキャラ設定。
そんな彼女たちがオシャレにカッコよく、でも人間臭く悩むから、
まるでファッショナブルに変身した自分目線で見ることができる。
それがヒットの要因じゃないかと思います。
男性は女性心理を学ぶいい教科書になるかも知れませんョ。☆4つ。
「SEX AND THE CITY」公式サイト

「小さな赤い花」は、中国映画。
チアンは4歳の男の子。
父親の仕事の関係で全寮制の幼稚園に預けられるんですね。
規律の厳しいその幼稚園では、
誉められると赤い花がもらえて、叱られると没収される。
それが壁にグラフのように貼られているのです。
最初は赤い花をもらおうと頑張っていたチアンでしたが、
幼心にだんだん違うんじゃないかと考えになっていくんですね。
先生に反抗し、友達さえもいなくなったチアンは幼稚園を飛び出すのですが…。
中国ですから、全体主義というか、みんなと同じであることが称賛される。
でもそれは違うんじゃないかというのを、
ある意味、ピュアな4歳児の視点を通して訴えた作品。
北京オリンピックで様々な素顔が見え隠れする中国。
あの開会式も偽装?演出?で意見が割れました。
そんな中国に興味を抱いたら、こんな映画もあるのかと、
劇場に足を運んでみて下さい。
きっちり批判的に結論づけられないがゆえに、
ラストは若干食い足りない気もしますが、それは仕方ないかな。☆3つ。
「小さな赤い花」公式サイト

「R246 STORY」は、6名の監督による6本のオムニバス作品。
その監督は、中村獅堂、須藤元気、m-floのVERBAL、
RIP SLYMEのILMARI、浅野忠信、そしてユースケ・サンタマリア。
役者、ミュージシャンから格闘家まで幅広い人材が集まりました。
短編集ですから、どうしても本人のやりたいことが全面に出てき過ぎて、
ポピュラリティの欠如という事態になりやすいのですが、
この映画もちょっとそんなところがあったかも。
それぞれのファンにはそれでいいのかも知れませんが。
個人的にはVERBALの、日本のヒップホップの明日を考える
「DeadNoise」は好きでしたね。
インタビュー中心のドキュメンタリーものだったからかも知れませんが、
個人的には興味深く見ることができました。
ILMARIの「CLUB246」もきちんとストーリーがあってまずまず。
あとは正直よくわかりませんでした(笑)。
監督さん、ファンのみなさん、ごめんなさい。
“R246”は青山や表参道を通る、国道246号線のこと。
でもなんとなく、そんな都会の匂いはちゃんとしてました。
そこを評価して☆3つ。
「R246 STORY」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.8.13

「同窓会」☆☆☆

部屋の掃除をさぼっていて、ある映画の試写状が山と積まれた紙資料の下から出てきました。
既に最終試写も終了…。見たかったのに。掃除しなきゃ(笑)。
さ、今週は1本です!

「同窓会」は、夫婦のリセット物語。
映画制作会社社長の克之には、雪という妻がいました。
雪は高校時代の同級生。克之の初恋の相手でした。
ところが克之は女優のめぐみと不倫中。
雪との間に望んでいた子供もできないことから、
克之はめぐみとの生活を選び、雪との離婚を決意するんですね。
それを知って怒り心頭なのが地元・長崎に住む文太。
元番長の文太も雪に恋をしたひとり。
親友の克之ならばと結婚を許したのに離婚とは何事だと、
帰省していた克之にワンパンチ。
雪も意外にあっさりと離婚に同意。
そんな姿を見て、克之の頭には高校時代いつも雪の近くにいた
中垣という同級生のことが過ぎります。
彼からもらったとかいう万年筆を大切そうに今も持っているし、
雪は本当は中垣と結婚したかったんじゃないかと。
そして開かれる久々の同窓会。
ここである衝撃の事実が判明するのですが、驚いている克之に、
さらに衝撃の報せが届きます。それは雪の入院でした…。
監督は「花より男子」シリーズの脚本で知られるサタケミキオ。
実は彼こそが主演男優の宅間孝行。
劇団「東京セレソンデラックス」を主宰する彼はふたつの顔を持つ男。
映画初監督、初主演作となりました。
ボクの経験から言うとね(笑)、愛情は薄れるものではないけど、
時の積み重ねと共に形は変わって行くと思うのです。
そのことを誤解すると薄れていない愛も崩壊するんですよ。
超能力者じゃないんだから、大切なことは口に出して言わなきゃ相手はわかんないって。
いや、言わなくてもわかるよって人たちが長く続くのかな(笑)。
この映画の夫婦は、互いに封じていた心の奥底を知る
偶然の出来事が起こるから修復できるんだけど、
まぁドラマですよね(笑)。
でもこういう偶然こそが“縁”なんだと思います。
黄色い信号が点ってるかなと危機感を感じてる夫婦は、
赤信号に変わってしまう前に見ておくといいかも。☆3つ。
「同窓会」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.8.7

「アクロス・ザ・ユニバース」☆☆☆☆
「俺たちダンクシューター」☆☆☆
「ダークナイト」☆☆☆
「ひゃくはち」☆☆☆
「ビューティフル・ルーザーズ」☆☆☆

北京オリンピックに甲子園と、スポーツが熱い夏ですが、
今週はそんなスポーツものもあれば、芸術ものや、ビートルズも。
さらにバットマン・シリーズも今回はかなりタイトル通り“ダーク”だし。
なんとなくテーマは「大人の夏休み」って感じでしょうか。
ではその5本を紹介していきましょう。

「アクロス・ザ・ユニバース」は、ビートルズ・ミュージカル。
1960年代のイギリス、リバプール。
造船所で働くジュードは母とのふたり暮らし。
米兵だった父を捜しにアメリカへ渡ることを決意したジュード。
初めて会った父にはやはりというか、すでに新しい別の家庭がありました。
失意の中、ジュードはいかにもアメリカンな大学生、マックスと出会います。
酒を飲み、仲間も増えるジュード。
その中には美しいマックスの妹、ルーシーもいました。
NYへ行こうとジュードを誘うマックス。
言われるがままにNYの街へとやってきたジュードは、
個性的なメンバーの住むアパートでルームシェアでの生活をスタート。
みんなそれぞれに夢と傷を持っていた若者との共同生活は刺激的なものでした。
そんなある日のこと、ルーシーが兄のマックスを訪ねてやってきました。
手にはベトナム戦争への召集令状が。
ルーシーは恋人をベトナムで亡くしているんですね。
その上、兄までもと泣きじゃくるルーシー。
優しく接するジュードとの間に、恋が芽生えるのは時間の問題でした。
しかしルーシーが反戦運動に加わると、考え方の違いから、
ジュードとの間に揉め事が多くなります。
ある反戦デモで警察に連行されそうになるルーシー。
それを助けようとして逆に捕まってしまうジュード。
彼は不法滞在者と見なされ、リバプールに強制送還されてしまいます。
あんなに熱かった仲間が、みんなバラバラになってしまう。
以前のように、またみんなが心をひとつにできる日はやってくるのでしょうか…。
ビートルズの曲って、時代や国境、言語や思想を超えて愛されてきました。
普遍的なものではあるけれど、でもいわゆる“リアルタイム”の、
メンバー4人が曲を作ってきた時代背景、
社会の様子ってどんなだったんだろうというのを
再検証している映画のように思えました。
33曲のビートルズ・ナンバーをピックアップ。
「初めに詞ありきだった」と語るのは、女性監督のジュリー・テイモア。
あのブロードウェイの「ライオン・キング」を演出した彼女の、
映画初監督作品なんです。
ベトナム戦争、ドラッグカルチャー、黒人解放運動など、
60年代のNYにリバプールの青年が飛び込んで行くという設定も面白く。
ビートルズ・ファンならずとも必見です。☆4つ。
「アクロス・ザ・ユニバース」公式サイト

「俺たちダンクシューター」は、バスケットを題材にしたコメディー映画。
1970年代のアメリカ。当時は2つのバスケット・リーグが存在していました。
NBAとABA。
競技としてのバスケットに重きを置くNBAに対し、
ABAはエンターテイメント性を重視した団体。
その中で抜けてダメなチームが、ミシガン州フリントを本拠地とする
フリント・トロピックスでした。
オーナー兼コーチ兼選手のジャッキー・ムーンは一発屋のソウル・シンガー。
プラチナ・ディスクに輝いた「ラブ・ミー・セクシー」を売りに
客を呼ぼうとしますが、既に“懐メロ”で会場は閑古鳥が鳴く始末。
そんな時、コミッショナーからABA解散の報が届きます。
上位4チームはNBAに吸収合併も、
それ以外のチームはバスケットができなくなってしまうというのです。
ジャッキーはNBAの優勝チームにいた、
ベテランのモニックスをチームに招きますが、
よくよく調べたら彼は万年ベンチの控え選手。
チームの中にも不協和音が響き始めます。
果たしてトロピックスはチームを存続させることができるのでしょうか…。
アフロでバスケットをする選手たち。おバカで面白かったです(笑)。
実際にABAは67〜76年まで存在した団体だそう。
また「ラブ・ミー・セクシー」は、「おしゃれフリーク」などのヒットで知られる、
chicのナイル・ロジャーズがこの映画のためにプロデュースした新曲。
70年代ソウルのバタ臭さがいい感じです。
最後は勝利を目指してのスポ魂もの。
感動まで至るかどうかはわかりませんが(笑)、大いに笑える作品ではあります。
☆3つ。
「俺たちダンクシューター」公式サイト

「ダークナイト」は、バットマン・シリーズ最新作。
ゴッサム・シティーに突如現れた史上最強の“悪”、ジョーカー。
彼の狙いは金でも名誉でもなく、正義を嫌い、
高潔とされる人間の堕落する姿を見て楽しむことでした。
人々の希望は“ホワイトナイト”と呼ばれる地方検事、ハービーの存在。
彼はバットマンであるブルースの元彼女、
レイチェルを恋人に持つ正義心の強い男。
ブルースも複雑な心境ながら、彼にならこのゴッサム・シティーの街を託せる。
そう考えるようになっていたのです。
しかし、ジョーカーの魔の手はバットマンに、またハービーに、
さらにレイチェルにまで伸びるのでした。
執拗な攻撃に、ハービーの心は正義を保てるのか。
バットマンを必要としないゴッサム・シティーは実現するのでしょうか…。
ヒーローものとして子供を連れて見に行くと、子供は間違いなく泣き出します(笑)。
今作はすごく哲学的なテーマで、人の心理を試すような場面があちこちに出てきて、
全編暗いトーンで進むのですが、その都度いろんなことを考えさせられます。
悪魔というのが存在するとしたら、まさにジョーカーがそれ。
彼の望みは物質的欲望じゃないですからね。
でも確かに面白かったですョ。完全に大人向けの作品。
テロとの戦争以降のアメリカが生んだ、
象徴的作品と後に言われるかもしれません。☆3つ。
「ダークナイト」公式サイト

「ひゃくはち」は、高校野球の補欠選手にスポットを当てた作品。
甲子園の常連、神奈川・京浜高校。雅人とノブはその京浜高校の野球部員でした。
先輩が抜ける時期、それでもレギュラーになれるかどうか
ギリギリのところにいるふたりは、一緒にベンチ入りを果たそうと誓い合う親友同士。
互いに切磋琢磨する毎日だったのです。
ところが活きのいい新入生が入ってくると。
レギュラー枠はこれで間違いなくひとつ減ると。
その新入生に監督は言います。「ファーストをやってみないか」。
動揺を隠せないノブ。なぜならノブのポジションはファーストだから。
自分だけでなく、親を始め、地元の期待も背負ってやってきた野球名門校。
その時ノブは決意するのです。
「レギュラーに最も近いのはサードのポジション。
雅人の守るサードしかない」と…。
えっと思うかもしれませんが、これも現実?当然友情にもヒビが入り、
互いがライバルとして正三塁手のポジションを競い合うのです。
寮の屋上でタバコを吸うは、レギュラーがひとりケガをすれば両手を挙げて喜ぶはと、
さわやかとは言い切れない高校野球の描き方ですが(笑)、
なんかそれも許せちゃうのは、ノブも雅人もその他の部員も、
とにかく頑張ってる。
努力して、汗をきちんと流してるってことがちゃんとわかるからかな。
タイトルの「ひゃくはち」は、ボールの縫い目の数でもあり、
人間の煩悩の数でもあります。
“感動作”という謳い文句はいかがなものかと思うけど(笑)、
違った視線で高校野球を見るのもまた新しいかもしれません。☆3つ。
「ひゃくはち」公式サイト

「ビューティフル・ルーザーズ」は、ストリート・カルチャーの聖地、
NY・イーストビレッジが生んだアーティストを取り上げたドキュメンタリー作品。
12名の若きアーティストたち。
型にはまらない彼らの作品は、遊び心から生まれたものもいっぱい。
壁の落書きで警察と揉めることもしばしば。
そんな作品を果たして“芸術”と呼ぶのか?
答えはこれまでのアート同様、時間が出してくれるはず。
言えるのは多くの若者がそれを求めているということ。
日本の街角でもよく見る、あの顔の絵も登場します。
タイトルの意味は「美しき落ちこぼれたち」。
人の可能性は無限だと気付くはずです。☆3つ。
「ビューティフル・ルーザーズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.7.23

「スカイ・クロラ」☆☆☆

実は「崖の上のポニョ」はまだ見てないんです。
試写状の来るものとそうじゃないものがあって。
でもあれだけの話題作。正直気になります。
さ、今週末公開の映画の中から、もうひとつのアニメ作品を1本ご紹介しましょう!

「スカイ・クロラ」は、押井守監督作品。
時代設定はいつなのか。それでもこの時代は永遠の世界平和が約束されていたのです。
ところが人間というヤツは、平和を実感するためにはどこかに戦争が必要ということで、
ショーとしての戦争をプロデュースする会社がありました。
そこで闘うのは「キルドレ」と呼ばれる少年たち。
彼らは自ら大人にならないことを選択し、
思春期のまま年を取らずに永遠の命を生きるのでした。
ただし、唯一死ぬのは戦争でだけ。しかしその“死”にも秘密がありました。
ユーイチはヨーロッパの前線基地、ウリスに配属となります。
ユーイチには不思議なことにそれ以前の記憶がありません。
なのに与えられた戦闘機の操縦席は実にしっくりくる。
女性司令官のスイトを始め、仲間はみんな意味ありげな顔でユーイチを見るけれど、
ユーイチにわかっているのは、自分が「キルドレ」であるということだけ。
戦争が激しくなり、仲間のユタガワが撃墜されてしまいます。
代わりにやってきた若者。彼は読み終えた新聞を几帳面に折りたたみます。
実はそれは死んだユタガワのクセでもあったのです。
「キルドレ」の宿命に気付くユーイチ。自分にとっての死とは、生きるとは。
ユーイチはある行動に出るのでした…。
死生観が描かれたりと、ちょっぴり難しいテーマのアニメではありますが、
でも監督がこの映画に込めたメッセージは、今のこの時代に生きる若者に向けたもの。
ニートだ、フリーターだと、まるで病名のように若者を言葉の定義でくくったところで
何の根本的解決にもならないと、大人にも警鐘を鳴らします。
「それでも…昨日と今日は違う。今日と明日もきっと違うだろう。
いつも通る道でも、違うところを踏んで歩くことができる。
いつも通る道だからって、景色は同じじゃない」と語ります。
今日の終わりが明日の始まり。つまり、エピローグがプロローグ。
“変われるんだよ”というメッセージじゃないかとボクはとらえましたが。☆3つ。
「スカイ・クロラ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.7.23

「敵こそ、我が友」☆☆☆
「天安門、恋人たち」☆☆☆

19日に公開となった「チェブラーシカ」。
各劇場、初日先着300名に(当たりには)激レアもの入りの
“チェブラーシカ福袋”プレゼントがあると知り、朝早起きして映画館へ。
しかしすでにチケットは完売、グッズ配布は完了。ガックリ…。
でも大人気だね、チェブくん!
「アラフィフ(around50)が何言ってんの」と言うなかれ。
ホントに癒されるんですから(笑)。
福袋には何が入ってたんだろう…。気になるっ。知ってる人がいたら教えて下さいね。
さ、今週は2本です!

「敵こそ、我が友」は、実在の元ナチスの親衛隊員、
クラウス・バルビーを追ったドキュメンタリー。
クラウス・バルビーは、22歳でナチスの親衛隊員となり、
ドイツ占領下のフランスで残虐の限りを尽くしたとされる男。
罪の無いユダヤ人の子供までをも強制収容所にまで送ったという彼が、
終戦後50数年もの間、戦犯として捕まることもなく、
なぜ自由の身でいられたのか。驚愕の事実を追った映画です。
タイトルを見ると、何となく人情や友情が生み出す美談を想像させますが、
さにあらず。
第2次世界対戦後、アメリカが共産主義の国々と睨み合いに入った時、
ヨーロッパ各国の情報はゲシュタポが一番持っていると。
そこでアメリカ諜報部は、バルビーを仲間に引き入れようとしたんだそう。
“ビンラディンはアメリカが生んだ化け物である”というのは有名な話。
武器を与えたのはそもそもがアメリカですから。
皮肉にもアメリカは自らが育てたそのテロリストと戦うことになりました。
このクラウス・バルビーについても同様で、
隠されていた裏話が次々と出てくるのです。
「事実は小説よりも奇なり」。戦争ですから、みんなおかしいんですけどね。
それでも唖然とさせられます。☆3つ。
「敵こそ、我が友」公式サイト

「天安門、恋人たち」は、87年の中国が舞台の青春映画。
中国と北朝鮮の国境の町に父と暮らすユー・ホンは、
北京の大学から合格通知を受け取ります。
地元の恋人と最後の夜に結ばれて故郷を後にしたユー・ホン。
大学の寮でできた親友のリー・ティから彼女の恋人の友達、
チョウ・ウェイを紹介されると、一目で惚れてしまうユー・ホン。
毎日のように愛し合うふたりでしたが、
いつか来る別れの日を考えると耐えられないと、
自分から別れを切り出すユー・ホン。
その考え方についていけないチョウ・ウェイ。
折しも学生たちは自由と民主化を求めて闘う日々。
チョウ・ウェイは仲間と共にベルリンへ渡り、
ユー・ホンは大学から姿を消してしまいます。
それでも互いの心の中には、互いの存在を忘れられずにいたのです。
そして10年の歳月が流れ、偶然にも再会を果たすふたり。
果たして昔のあの激情は甦るのでしょうか…。
中国ではいまだタブーとされているテーマとしての天安門事件と、
こちらもタブーである激しいラブシーンが描かれた話題の作品です。
直情型でありながら抽象的というか、主張はありながらあえてぼやかすというか、
なんかひと昔前の日本映画を思いました。
中国作品って、香港のものもあれば、まさにこのような中国本土のものもあって、
これまでの発展の経緯同様、
同じ国とは思えないまったく異質なものが横たわっているのが面白いなぁと。
これが香港映画の描くような先進文化を一足飛びに取り入れようとしたならば、
それは無理がかかるのは自明の理。だってプロセス抜きなんだから。
環境汚染や貧富の差など、真剣に考えなければいけない問題山積の中国で、
こういう映画から始まる“何か”というのが逆に大切なんじゃないかと思いました。
決してスッキリ終わる映画ではありませんが、この方が等身大だと思います。☆3つ。
「天安門、恋人たち」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.7.16

「チェブラーシカ」☆☆☆☆☆

今週は日露キャラクター戦争(笑)。あのポニョの歌は頭を巡るけど、
ロシアからもカワイイのがやってきました。それでは早速ご紹介しましょう。

「チェブラーシカ」は、ロシアで古くから愛されているキャラクター。
南の国からミカンの箱に紛れ込んでロシアに着いたチェブラーシカ。
言葉もわからないけれど、新しい仲間たちに助けられて過ごす毎日を描いたお話。
人形を少しずつ動かして撮影するパペットムービー。
01年に一度日本で公開されているのですが、あの時は3本オムニバス。
今回は4本の完全版だそう。
まるっこくて、癒しのキャラ。
チェブはロシアの国民的キャラクターで、06年のトリノオリンピックでは
ロシアのマスコットとして白バージョンで登場。
今年の北京オリンピックでは赤バージョンで登場するとか。
チェブ・マニアにはたまらないです。
うちには初期のぬいぐるみがあります。バランスから何からこれが一番。
親バカならぬ“チェブバカ”ですね(笑)。
個人的思いをたっぷり込めて☆5つ。
「チェブラーシカ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.7.11

「闘茶」☆☆☆
「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」☆☆☆

梅雨明けしてないのに真夏のような暑さ。
涼を求めて映画館なんていうのもいいですね!
さ、今週は2本です!

「闘茶」は、日本と台湾の合作映画。
京都の老舗茶屋『八木茶舗』。実は長いこと休業中なんです。
それには訳がありました。
この家は、父の八木圭と娘の美希子のふたり暮らし。
母はその昔、圭が究極のお茶作りに没頭している時に亡くなってしまったのです。
それを悔いる圭。そしてそれが、八木家に代々伝わるある因縁に基づくと信じ、
一人娘の美希子の身を案じてお茶に関わることを封印していたのです。
その因縁とは。
古代中国には“雄黒金茶”と“雌黒金茶”があったのですが、
八木家の先祖が留学した際に発した不用意なひと言から争いとなり、
雌黒金茶側は人も木も滅亡。
それ以来、八木家には呪いが掛かったというのです。
しかし、父の目を盗んで茶道を学び、
その日暮らしの父をなんとか立ち直らせたいと願っている美希子は、
呪いを解くには宿敵・雄黒金茶を倒すしかないと知り、台湾へと向かいます。
それを知った圭は美希子の後を追うのですが…。
と、その先にまたお話が広がってて、日台合作だけあって、
ストーリーは言ってみれば2部構成に。
後半の“台湾サイド”がどうも今ひとつかなぁ。
若き起業家みたいな兄さんが、茶葉の闇市場を仕切ってるんだけど、
そのあたりからちょっと違う方向に展開していってしまうのです。
“闘茶”という品のありそうなグルメ対決だけで見せてくれた方が良かったかも。
ただし、古代中国のお話は4℃のアニメ描写になっていて、
イントロダクションとしては興味をそそる演出に。
これがトータルのイメージ作りに成功しています。
アイデアとしては大正解ではないでしょうか。☆3つ。
「闘茶」公式サイト

「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」は、アニメ映画。
ジャングルヌールに住むゾウのホートンは人気者。
話を聞かせてとたくさんの子供たちが集まります。
そんなある日のこと。ホートンの前を小さなホコリがフワフワ。
なんとそのホコリの中から声が聞こえるではありませんか。
実はそのホコリの中には、ダレダーレたちの住むダレダーレの国があったのです。
以前はヒマワリの花にくっついて安定していたのですが、
突然の大風で吹き飛ばされ、空中をフワフワ。
ダレダーレの国では地面が揺れたり、妙な渦巻雲が現れたり。
ところがそれに危機感を感じていたのは市長のダレダーレだけ。
人に言えず、大声で叫んだ声をホートンが耳にしたのです。
ホートンが大きな声で話し掛けると、ホコリの中から返事が。
状況を知ったホートンは、何とか安住の地へ送り届けたいと、
クローバーの花の上にホコリをちょこんと乗せて、
ヌール山の頂上にある割れ目を目指します。
ところが、「目に見えないものは存在しない。
子供に変な妄想癖がついたらどうする?」と、
カンガルーのお母さんが邪悪なオオワシのプラドに依頼して、
クローバーの花を奪い取って欲しいと頼むのです。
果たしてホートンはダレダーレたちを救うことができるのでしょうか…。
実はボクがまだちっちゃな頃、ボクらの宇宙は細胞のひとつで、
その向こうにはまたこんな世界が広がってるんじゃなかろうか、
逆にボクらの細胞の中にも宇宙があるんじゃないのか?
なんて考えたことがあったんですね。
子供なりの“無限”に対する考えだったと思います。
だから比較的スッとこのファンタジーには入っていけました。
周りがNOと言っても必ずホートンの味方をしてくれるネズミのモートンがいたり、
ダレダーレにも心を開かない息子のジョージョーがいたり。
ホートンの誠実で勇気ある行動がみんなを幸せにできるかどうか?
結末は劇場で。☆3つ。
「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.7.3

「クライマーズ・ハイ」☆☆☆☆☆
「スピードレーサー」☆☆☆
「火垂るの墓」☆☆☆
「ホットファズ」☆☆☆☆
「メイドインジャマイカ」☆☆☆

先日試写で見た映画が、たまらなく「恋したい〜っ」ってなる映画で(笑)。
出会って、徐々に気持ちが高ぶって、
お互いに気があるのにカマかけながら相手の心を探ったりして、
あるタイミングで女の子が彼の頬にチュッとキスをして逃げる。
ねっ。恋してぇ〜ってなるでしょ(*^_^*)。
さ、そんなことばっかり言ってないで、現実を見つめなきゃ(笑)。
今週は5本です!

「クライマーズ・ハイ」は、横山秀夫のベストセラーの映画化。
1985年8月12日、群馬県の新聞社・北関東新聞に、
通信社からの一報が響き渡ります。
「東京発大阪行き日航123便が横田基地の北西数十キロの地点で
レーダーから姿を消しました。
長野、群馬の県境に墜落した模様。繰り返します…」。
同僚で販売局の安西と「後で合流しよう」と登山の計画を立てていた
一匹狼的存在の悠木は、社を出ようとした直前にそれを耳にします。
紙面作りのすべてを任される“全権デスク”は、
ワンマン社長・白河の鶴の一声で悠木に決まります。
そこから悠木の、長く熱い闘いの日々が始まったのです…。
サラッと粗筋書きましたが、これは面白かったですよ。
未曾有の航空機事故を報道の側から追ったその目線も新鮮だったし、
とにかく様々な要素が絡んでいて、グイグイ引き込まれてしまいました。
地元新聞社としてのプライドで全国紙には負けられない。
でも社内においても権力闘争がある。編集と営業しかり、編集部の内部でもそう。
若手部員の頑張りを、何とか反映させてやりたいができない虚しさ、悔しさ。
あまりの壮絶な事故現場に正気を失う部員もいる。
全権デスクはとにかくすべてを判断し、決断しなければならないのです。
“クライマーズ・ハイ”とは、
「登山時に興奮状態が極限にまで達し、恐怖感が麻痺してしまうこと」を言うんだそう。
悠木は報道と活字の恐怖も知りながら、
でもプライドを持って重大な決断をひとつひとつ下していくんですね。
毎日が軋轢の連続。そんな中、悠木が取る行動とは?
プロフェッショナルとはどういうことかを教えてくれる1本。お奨めです!☆5つ。
「クライマーズ・ハイ」公式サイト

「スピードレーサー」は、あの懐かしのTVシリーズ「マッハGOGOGO」を
「マトリックス」のスタッフが手掛けた近未来的レース映画。
レース一家に生まれたスピード。父はレーシングカーの設計者、
兄はレース界にその名を轟かせたトップレーサーのレックス。
スピードは寝ても醒めてもレースのことばかり。
今日も兄レックスと一緒にコースに向かうのでした。
ところがある日のこと、レックスが悪質なレース妨害の疑いを掛けられてしまい、
ヒーローから一転、非難の的となってしまいます。
さらにレックスはその後に出場したレースで命を落としてしまいます。
悲しみにくれるスピードでしたが、レックスが言い残した
「世間が何を言おうと、お前だけはこの俺を信じてくれ」という言葉を胸に、
兄の遺志を継いでレーサーになります。
地元のレースで派手に優勝したスピードに、たくさんのスカウトがやって来たのですが、
中でもローヤルトンは破格の待遇でスピードを迎えると言うのです。
一時は迷ったスピードでしたが、やっぱりこれまで通り、
家族でレースに参戦する旨を伝えるや態度が豹変!
「これからは優勝どころか、完走すらできないだろう」と脅してきたのでした…。
ローヤルトンはレース界すべてを我が物にしたかったんですね。
妨害の手は父にまで及び、こうなったら自身の腕で優勝をもぎ取るしかないと、
兄が命を落としたレースに参戦を決めるスピード。
同じくローヤルトンの手から逃れたいと思っているレーサーのテジョや、
謎の覆面レーサーXなんかの力も借りて、スピードはローヤルトンに立ち向かいます。
ボクら「マッハGOGOGO」がリアルタイムの世代には面白かったです。
弟のスプライトルにチンパンジーのチムチムもいて(笑)。
何と言ってもテーマ曲がすごい!
あの“マッハGO〜GO〜、マッハGO〜GO〜、マッハGOGOGO〜”というやつが
サンプリングされてヒップホップ調にアレンジされてますからね。
こちらも必聴です!☆3つ。
「スピードレーサー」公式サイト

「火垂るの墓」は、67年発表の野坂昭如作品の実写版。
スタジオ・ジブリの高畑勲監督の手によりアニメ映画にもなったあの物語です。
1945年の神戸。大空襲で壊滅的な打撃を受けた町に、
何とか難を逃れたふたりの兄妹がいました。
国民学校に収用されていた母の変わり果てた姿にショックを受けた清太は、
妹の節子を連れ、母から言われていた伯母の家へと向かうのですが、
この伯母がまた曲者で。
結局兄妹ふたりで暮らすことになる清太と節子。
幼い兄妹の行く末やいかに…。
ストーリーはみなさん、よく知ってるはず。
戦争の理不尽さ、残酷さが、嫌になるぐらい描かれてます。
そんな中で、何としても生き抜こうと頑張る兄と妹。
ボクにとっては、痛々し過ぎて、哀し過ぎて泣けないこともあるんだなって感じでした。
節子役の6歳・畠山彩奈の熱演、頑張りにも注目です。☆3つ。
「火垂るの墓」公式サイト

「ホットファズ」は、イギリスのポリス・アクション。
エンジェル巡査はエリート中のエリート。
犯人の検挙率も何もかもすべてトップの超優秀な警察官。
ところが、優秀過ぎるがゆえに、署内すべてから妬まれ、
イギリスで最も安全でいい村に何年も連続で選ばれているド田舎の村、
サンフォードへと左遷されてしまうのです。
そこでコンビを組まされたのは、いかにも平和ボケしたトロい若手警察官のダニー。
ところが、平和なはずの村に事件らしきことが起こるんですね。
残虐な事件にも関わらず、署員も村の人々もニコニコ知らん顔。
さらに起こる事件、事件。それでも人々は無関心。
「おかしい…」と感じたエンジェルは、
どこか違和感のあるこの村の秘密を探り始めるのでした…。
さすがイギリス映画、ブラックな笑いもちりばめつつ、
最後までしっかり楽しませてくれました。
終盤の銃撃戦はすごいですからね。
それまで静かに進んでいた空気がガラリ一変!
見てる側は笑い声も出つつのマシンガンの撃ち合いですから、期待して下さい(笑)。
なんとなく途中からカラクリはわかってくるかなっていった感じだけど、
それでもスクリーンから目はまったく離せません。
そんなストーリーもよく練れていて、よくできてました!☆4つ。
「ホットファズ」公式サイト

「メイド・イン・ジャマイカ」は、フランス人監督が撮ったジャマイカ映画。
ドキュメンタリー作品です。
05年1月、ジャマイカの人気男性ダンサーのボーグルが、
船上パーティの帰りに、何者かに殺害されてしまいます。
この映画はその事件を起点として、今のジャマイカの現状を、
そして時代に合わせ変化していくレゲエ・ミュージックの今を描いています。
ボブ・マーリィとの活動で知られるウェイラーズ唯一の生き残り、
バニー・ウェイラーや、バウンティ・キラー、サード・ワールド、
エレファントマン、グレゴリー・アイザック、スライ&ロビーなどなど、
数多くの新旧人気レゲエ・ミュージシャンが出演。
ライブはもちろん、信念や信条、音楽への熱い思いを語ります。
ジャマイカの黒人には“アフリカ回帰思想”があります。
奴隷として連れてこられ、世界中に散らばった黒人だけど、
エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエ1世を唯一神であるジャーとして崇め、
いつかはジャーの元、皆がアフリカに帰るんだという思想です。
ドレッドヘアーのラスタファリアンと呼ばれる人たちは、どちらかというと思想家、
宗教家としての側面が強いんですが、そんなラスタのレゲエよりは、
どうせいつまでたっても貧困から抜け出せないのなら楽しくやろうよ的な
“お下劣レゲエ”が幅をきかせてるのも事実。
フランス人監督ならではの客観的な目で見ているのが面白いというか、
対比させて並べてくれているのがわかりやすいんですね。
“ワン・ラブ”の精神ったって、体と心じゃ大違いですもんね(笑)。
これからレゲエの季節です。メッセージの向こう側がしっかり見えるよう、
こういう映画で予習しておいてはいかがですか?☆3つ。
「メイド・イン・ジャマイカ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.6.24

「告発のとき」☆☆☆
「バグズ・ワールド」☆☆☆

先日ある女の子に「ぐっと泣けちゃういい映画があるんだよ。
試写で見たんだけどもう一度見たいから一緒に行かない?」って誘ったら、
「あたし泣いてるところ見られるの恥ずかしいから、そういうのは一人で行きたいな」だって。
ホラーでも誘えば良かった?いや、きっと何誘ってもダメだったな…(笑)。
さ、今週は2本です!

「告発のとき」は、アカデミー賞受賞者たちによる、イラク戦争の闇を描いた作品。
ハンクは引退した元軍人。息子2人も軍人という軍人一家でしたが、
次男のマイクが無許可離隊をして行方がわからなくなったとハンクの元に一報が入ります。
どうにも信じられないハンクは帰還場所のフォート・ラッドに向かいます。
すでに帰還していた仲間や地元警察と息子の行方を探すハンク。
そんな折、マイクが焼死体で発見されます。
息子の死の原因は何なのか。真実を探るうちに、
ハンクは思いもよらなかったマイクの心の闇に遭遇するのでした…。
以前も「最近多いんですよね」とご紹介した、アメリカがアメリカを省る1本。
これはプレイボーイ誌に掲載された実話記事の映画化だそう。
2年連続でアカデミー賞作品賞に輝いたポール・ハギスの脚本を、
助演男優賞受賞のトミー・リー・ジョーンズと、
主演女優賞受賞のシャーリーズ・セロン、
スーザン・サランドンが演じるという話題作。
この哀しい現実に、重みと深みをもたせる演技が光ります。
こういう映画を我々日本人が見ても、正直ピンとは来ないかも知れません。
ですが対岸の火事とせず、しっかりと考えておくことこそ重要なのではないでしょうか。
そりゃ戦争ですもの、おかしくもなりますって。
アメリカはベトナムから何も学ばなかったのだろうかと改めて思ってしまいます。
でも日本の政治も一緒。
政治家や官僚は生活に心配が無いんだから、末端の国民の痛みなんてわからない。
だから痛みを分かち合えなんて簡単に言うんです。
戦争も国のお偉いさん同志でやってごらんなさいって。
コロッセウムあたりで堂々1対1でね。
どっちかが死ぬとなったら怖くて仕方ないでしょ。☆3つ。
「告発のとき」公式サイト

「バグズ・ワールド」は、アリの世界を描いたフランス映画。
女王アリと王様アリ、働きアリに兵隊アリ。
種を守るために自分の役割をただただ黙々とこなすアリたち。
出産マシーンと化した女王アリなんて、まるでホラーの世界。
そうしてコツコツ築いたアリの王国も、
外敵や思わぬ自然の猛威に崩壊の危機もやってきます。
この映画はミクロを超えた映像物語。
完全なドキュメンタリーではなく、
ほんの少しのフィクションも加えられているようですが、
見事なカメラワークがアリの知られざる生態を映し出しています。
クライマックスは、
200万匹のオオキノコシロアリvs2000万匹のサスライアリ。すごっ。
虫が苦手という向きにはちょっとリアルで辛いかも(笑)。
でも見る価値は十分ですョ。☆3つ。
「バグズ・ワールド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.6.18

「西の魔女が死んだ」☆☆☆☆☆
「屋敷女」☆☆
「1978年、冬。」☆☆☆

チェックが甘くてすみません。「1978年、冬。」は先週の公開でした。
今週はそれを合わせて3本です!

「西の魔女が死んだ」は、発行から十数年、
今なお読み継がれている梨木香歩のミリオンセラーの映画。
中学生になったまいは学校の雰囲気が合わずに不登校になってしまいます。
両親共に仕事を持ち、父は単身赴任という環境の中、
母は自分の母、すなわちおばあちゃんのところにまいを預けることにします。
おばあちゃんはイギリス人。
自然を愛した日本人のおじいちゃんと暮らした田舎の一軒家に
今も独りで住んでいたのです。
おばあちゃんは“魔女”だと言います。
草木についての知識や知恵を持ち、先々を読む。
まいはおばあちゃんのような“魔女”になりたいと、
魔女修行を始めるんですね。
でもその修行とは、“早寝早起き”、“よく運動をする”。
そんな規則正しい生活と、もうひとつ“何事も自分で決める”という
いたってシンプルなものだったのです。
庭のハーブや畑の野菜で食卓を彩る。そんな生活に明るさを取り戻すまい。
おばあちゃんはことあるごとに、まいの頭を撫でながら、
「私はまいのような子が生まれてきてくれたことを本当に感謝しているんです」と、
まいに伝えるんですね。
そんな温かいふたりの関係でしたが、ひとつだけ、
まいにはどうしても許せないことがありました。
それは近所に住む言動の粗いゲンジを、おばあちゃんが何故かかばうこと。
ある日それが原因でふたりは大喧嘩になります。
仲直りをする前に、まいを両親が迎えにきます。
修復ができないまま、あれから2年。
おばあちゃんの家に向かう車の中、母がまいに言うのです。
「魔女が倒れた。もうダメみたい」…。
この文章を書いててもウルウルしてきちゃう。ボクもおばあちゃん大好きだったから。
あるじゃないですか、大切な人にもっとこうしてあげておけば良かったって後悔。
たぶん人ってそんな経験をするからこそ今、
できる人に優しくなれるんじゃないかなって。
おばあちゃんは、まいがおばあちゃんのことを
本当に嫌いになったなんてきっと思ってやしない。
それは最後にしっかり確信できます。
まいがおばあちゃんに聞くんですね。「人は死んだらどうなるの?」って。
その答えをちゃんと残しておばあちゃんは旅立ちます。
号泣のラストシーン。もうすべてもって行かれちゃう(笑)。
こんな殺伐とした世の中だからこそ、
人の行動の根底にあるものをきちんと考えるためにも、
こういう映画は必要なんだと思います。
いい涙で心の汚れを洗い流して下さい。☆5つ。
「西の魔女が死んだ」公式サイト

「屋敷女」は、フランスの過激なサイコスリラー。
車を運転していたサラは交通事故を起こしてしまいます。
助手席の夫は即死。辛うじてお腹の中の赤ちゃんは無事。
サラも命を取りとめます。
4ケ月後のクリスマスイブの夜、大きなお腹をさすりながら、
帰宅すると誰かが家のドアをノックするんですね。
「電話を貸して欲しいんですが」。
声の主は女性。サラがドアを開けることを拒むと、急に態度が豹変。
女は裏口に回って家の中に入ってこようとします。
サラが警察に電話をすると、姿を消した謎の女。
しかし、ここから恐怖の一夜が始まるのでした…。
設定は推測可能というか、誰もが考える通りなんですが、
まぁとにかく描写が暴力的で。
ボクはあんまり好きじゃないなぁ、こういうの。
ちなみにサラにはヴァネッサ・パラディの実の妹、アリソン・パラディが。
これが映画初主演だそう。そのお祝いに☆1つプレゼントで☆2つ。
「屋敷女」公式サイト

「1978年、冬。」は、先週すでに公開になっている中国映画。
中国北部の小さな町、西幹道に住む、ふたりの兄弟がいました。
兄スーピン18歳、弟ファントウ11歳。
軍医の父と、しつけに厳しい母との4人暮らし。
彼らの向かいの家に、北京からひとりの少女がやってきます。
彼女の名はシュエン。踊りが上手で、都会の香りを漂わせるシュエンに、
スーピンは恋をし、ファントウは憧れを抱きます。
工場の仕事をさぼるスーピン、学校ではいじめられていたファントウ。
彼らの心の中に、それぞれの形で、
シュエンの存在が大きくなって行くのです…。
スーピンは仕事をさぼって廃墟の中でラジオを直し、外の世界を知るのが好き。
何かとシュエンにちょっかいを出しては気を引こうとするのですが、
なかなか振り向いてはもらえません。
時に道を外れるようなことまでしてしまうのですが、
不良の魅力があったのか、知り合いのいない淋しさからか、
徐々に接近するふたり。
ファントウはそんなふたりの関係にショックを受けます。
舞台は今から30年前の中国の田舎町ですから、劇的なことも起こらずに物語は進みます。
いや、起こっていることは当時にしたら劇的なことなのかも知れません。
お隣り中国は、映画も二極化。
CG使いの超豪華絢爛ものもあれば、こういう作品もあるという。
大きな感動を期待したりしないで、
それでも見ておく価値はある1本といったところでしょうか。
☆3つ。
「1978年、冬。」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.6.13

「イースタン・プロミス」☆☆☆☆
「JUNO」☆☆☆
「1000の言葉よりも―報道写真家ジブ・コーレン」☆☆☆
「REC」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

水野晴郎さんがお亡くなりになりました。たまに試写室でお見掛けしていましたが…。
いわゆる個性を前面に出しての映画評論。独自のスタイルで一時代を築いた方でした。
いつも言うように感性のものに正解なし。
だからこそ自論に説得力を持たせるには相当の努力と愛情が必要だったと思います。
ご冥福をお祈り致します。
さ、今週は4本です。

「イースタン・プロミス」は、ロンドンに住むロシアン・マフィアの物語。
アンナはロンドンの病院で働く助産婦。
ある日、身元不明の少女が運び込まれ、女の子を出産して死んでしまいます。
バッグの中にはロシア語で書かれた日記が1冊。
赤ちゃんのためにもアンナは日記を手掛かりに少女の身元を探ろうとするのですが、
その日記に書かれていたことはロシアン・マフィアの行なってきた卑劣な行動の数々でした。
「関わるのはよせ」という周りの声に耳を貸さないアンナの身に、
徐々に危険が及んで行くのでした…。
ロシアからの移民が多く住むイギリス、ロンドン。
実はアンナもロシア人とのハーフなんですが、でも彼女はロシア語が読めません。
少女の日記に挟まれていたカードからロシア・レストランを訪ねると、
初老の男性が出てきて優しく対応してはくれたのですが、
実はこの男こそマフィアのボス。
このように、さまざまな人物がそれぞれに裏の顔を持って物語に登場してきます。
マフィアといえば、まずイタリア、アメリカで、ロシアのマフィア、
それもイギリスに住むロシアン・マフィアを扱ったものは初めてだったので興味津津。
どんでん返しもあって面白かったですョ。
重く、暗く。独自の世界観にグイグイ引き込まれるはず。
ボクはお奨めです。☆4つ。
「イースタン・プロミス」公式サイト

「JUNO」は、今年度アカデミー賞の最優秀脚本賞受賞作。
16歳の女子高生ジュノは、興味本位でしてしまった
クラスメイトとのたった1度のセックスで妊娠。
中絶しようと病院に行くのですが、「もう爪だって生えてるんだから」と、
“中絶反対”のプラカードを持つ同級生の言葉に一転出産を決意するんですね。
両親にも告白し、里親探しを始めるジュノ。
見つけたのは、郊外の素敵なお金持ちカップルでした。
最初は産まれた赤ちゃんをあげるだけのドライな関係にしたかったのですが、
旦那さんがジュノと同じギター好きとあって、意気投合。
この夫婦に関わるうちに、16歳のジュノの考え方はまた変わっていくのでした…。
何度も妊娠検査薬で調べるけど答えは毎回もちろん“陽性”。
いわゆる「10代の望まない妊娠」の物語なんですが、
それでも10月10日、自分のお腹に宿せば意識は変わります。
契約書1枚でジュノはある意味無かったことにしてリセットしたかったんだろうけど。
そこは母性も働き始めます。
この映画、見ていて思ったのは、
父親たるジュノの同級生の男のコがなぁんにもできないってこと。
男目線で見ると情けないほどにわかる。
「わかったよ、ママ。」なんて言ってるようじゃダメだよなぁ(笑)。
この辺がそもそもの男と女の違いでしょう。
脚本を書いたディアブロ・コディは
元ストリッパーでブログの女王という異色の経歴の持ち主。
一風変わった目線がアメリカでは大ヒットに繋がったよう。
初めはわずか7スクリーンで公開スタートだったというから驚きです!
日本の若いコも見たらきちんと避妊はするようにねっ。☆3つ。
「JUNO」公式サイト

「1000の言葉よりもー報道写真家ジブ・コーレン」は、ドキュメンタリー映画。
写真家ジブ・コーレン。
彼は紛争中のパレスチナに、敵国イスラエル人でありながら入って行き、
取材を続けるカメラマン。
美人モデルの妻とかわいい娘がいるにも関わらず、
何故か自ら危険な環境を選んでいるジブ。
死と常に隣り合わせでいることで、強力な生を感じているのかも知れませんよね。
命の危機にも幾度となく遭遇してるのですが、彼はニュートラルな立場で、
報道写真家として今起こっていることを伝えようとしているのです。
「1000の言葉よりも」のタイトルが示すように、
1枚の写真が表すものの大きさ、重さに気付かされるはずです。☆3つ。
「1000の言葉よりもー報道写真家ジブ・コーレン」公式サイト

「REC」は、スペインのホラー・サスペンス。
ローカルTV局の女性リポーター、アンヘラは、地元消防士の取材の真っ最中。
すると緊急出動の命令が出て、アンヘラも救助現場に同行することになりました。
そこは古めかしいアパート。1Fロビーに集まる住人たち。
上の階に住む老婆がおかしいと言うんですね。
恐る恐る上がってみると、老婆の表情がにわかに豹変。
同行した警官に噛み付いてきたのです。
ふと外を見ると、アパートはバリケードが張られ、完全封鎖。
外には出られなくなってしまったのです。
アンヘラを始め、出してと叫ぶアパートの中の人々。
完全封鎖には理由がありました。それは、噛み付かれたら伝染し
凶悪な悪魔のように変わってしまうウイルスの存在が判明したからだったのです…。
吸血鬼のように噛まれては変わっていく人々。
それをアンヘラと同行したカメラマンが逃げながらもカメラに録っていくのですが、
これがハンディだから揺れる揺れるf^_^;。
後頭部のあたりが痛くなってしまいました(苦笑)。
スペインの国民性なのか、最初から最後までハイテンションでうるさい、うるさい(笑)。
自国じゃ大ヒットらしいけど、ラストも「それで終わるんだ…」って感じで今ひとつでした。
このテンションでずーっと演技をしている役者さんたちは大変だったろうな、
なんて途中から冷静に外側から見始めちゃう始末。
ボクには合わなかったです。好きな人にはたまらないんでしょうけど。☆2つ。
「REC」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.6.5

「美しすぎる母」☆☆
「築地魚河岸三代目」☆☆
「リボルバー」☆☆☆
追加:「幻影師アイゼンハイム」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ごめんなさい。「幻影師アイゼンハイム」は紹介が遅れました。失礼しました。
今週はそれも加えて4本です!

「美しすぎる母」は、実話に基く原作「野蛮な優美さ」の映画化。
ジュリアン・ムーア主演作。
貧しい家庭に生まれながら、美貌と明るい性格を持ち、
社交的だったバーバラは、大富豪ベークランド家の跡取り息子ブルックスと結婚します。
息子アントニーも生まれ、幸せなはずの結婚生活だったのですが、
バーバラの成り上がりの上流階級意識がブルックスにはどうにも許せず、
ブルックスは他の若い女性、
それも成長した息子アントニーの恋人と暮らし始めるのです。
バーバラはアントニーと共に夫と別居。しかしどうしても満たされない心。
アントニーへの歪んだ愛情。そして引き起こされる悲劇。
物語は衝撃の結末へと進んで行くのです…。
ドロドロの映画です(笑)。ただ、それがとてもファッショナブルに、
スタイリッシュに描かれているのが救いというか、うまいというか。
ただ、いくら美人とはいえ母親と成人した息子と、
そのどちらとも関係を持つ(!!)男の3人が同じベッドに寝ている絵は
どんなに美しくたって、う〜んって感じ(苦笑)。
映画としてはありなんでしょうけど、ボクはう〜ん(笑)。☆2つ。
「美しすぎる母」公式サイト

「築地魚河岸三代目」は、ビッグコミックに連載中の人気コミックの映画化。
旬太郎は商社勤めのエリートサラリーマン。
ところがある日、リストラの陣頭指揮を任されるんですね。
リストラを宣告しなくてはならない人の中には、
ずっとお世話になってきた先輩社員もいたのです。
悩みに悩む旬太郎の前を、恋人で服飾デザイナーの明日香が自転車に乗って、
それもTシャツ、ジーンズ、長ぐつという姿で通り越していくではありませんか。
後を追う旬太郎。行き着いた先は築地の魚市場。
実は明日香の実家は魚河岸の仲卸の店“魚辰”。
お父さんが倒れ、旬太郎に内緒で出勤前に店を手伝っていたのです。
それを知った旬太郎は明日香を助けるために会社に辞表を提出。
“魚辰”で働こうと勝手に決意します。
しかし“魚辰”には古くから働く職人さんたちがズラリ。
明日香の反対も聞かずに、邁進する旬太郎。
さらにそこには明日香のまるで許婚のような英二兄さんもいて。
ふたりは、“魚辰”は、一体どうなっちゃうのでしょうか…。
「俺ぁ、跡は継がなかったけど、こちとら寿司屋の息子だからよぉ、
簡単にゃわからねぇ魚河岸の事情ってもんを知っちゃってっからよぉ。
どうにも旬太郎ってヤツの土足で踏み込んでく態度がさぁ、
一生懸命なのかも知れねえけど、ダメなんでぃ。
てやんでぃ、べらぼうめぇ」って感じかな(笑)。
なんか自分の正義、自分の価値観、自分の物差しでグイグイ進む旬太郎に、
正直共感できませんでした。みんなはどうなんだろう?
意見を聞いてみたい作品です。☆2つ。
「築地魚河岸三代目」公式サイト

「リボルバー」は、ガイ・リッチー監督作品。
ジェイクは凄腕のギャンブラー。
以前はマカの経営するカジノで働いていたのですが、
ある傷害事件の罪を被せられ投獄。
独房の両隣りには、詐欺の天才とチェスの天才が。
謎の隣人たちに教えられた奥義で、
ジェイクは“究極の勝利の方程式”を身に着けるのです。
出所後、真っ先に向かったのはマカのカジノ。
ジェイクはマカに勝負を挑み、大金を巻き上げるんですね。
怒ったマカは“完全無欠な殺し屋”ソーターを雇い、ジェイクの暗殺を命じます。
しかしジェイクは、危機一髪のところを突如現われた
2人組のザックとアヴィに救われるんですね。
彼らは言います。
「ソーターに狙われたら命は無い。全財産を預ければ、俺たちがオマエを守ってやる」。
選択の余地などなかったジェイクは言い分を飲み、
いぶかしがりながらもふたりと行動を共にするのでした。
ある日、ザックとアヴィは巨大な金庫からある物を盗み出します。
それはマカが、“謎の権力者”サム・ゴールドと取り引きをするためのドラッグだったのです。
「これをしくじったなら自分の命が危ない」と焦ったマカは、
敵対する中国マフィアのジョンからドラッグを仕入れようとするのですが、
そこにもザックとアヴィがある仕掛けをして、抗争が勃発。
まるでゲームのようなこの混乱の常に真ん中にいることに気付くジェイク。
「一体これは何なんだ?」。
果たしてどんな結末が待っているのでしょうか…。
この映画、映画自体が心理戦というか、謎が謎を呼んで面白いのですが、
勘の鋭い人なら途中で「ん?」と気付くかも知れません。
気付いたらその仮説に基いてその先を見てみて下さい。
気付かなければパンフレットを買うことをお奨めします(笑)。
引き込まれますよ。
さすがにあの“世界の歌姫”マドンナを射止めた(旦那さんです!)だけあって
魅力的な作品を作りますよね。☆3つ。
「リボルバー」公式サイト

「幻影師アイゼンハイム」は、天才イリュージョニストのお話。
舞台は19世紀末のウィーン。
絶大な人気を誇っていた幻影師アイゼンハイムのイリュージョンを一目見ようと、
オーストリアの皇太子がショーを観覧に来ました。
ところが、隣りにいた皇太子の婚約者はアイゼンハイムの幼なじみで、
互いに恋心を抱いていたソフィ。
ふたりは身分の違いから逢うことを禁じられ、15年の月日が過ぎていたのです。
再び高まる熱い思い。そのことが皇太子の知るところとなり、
皇太子はアイゼンハイム潰しに躍起になります。
婚約者の不貞疑惑に怒り狂う皇太子の元を飛び出したソフィ。
後日彼女は変死体で発見されることに。
悲しみに暮れるアイゼンハイム。その頃からでした。
彼のイリュージョンに“死者を甦らせる”という演目が加わったのは。
アイゼンハイムは舞台にソフィの魂を呼ぶようになったのです…。
紹介が2週間遅れてすみませんでした。だから言う訳じゃなく(笑)、面白かったです。
「目に見えるものばかりがすべてではない」。
ニール・バーガー監督のこの言葉がこの映画の鍵を握ります。
あまり多くは語れませんが、最後はモヤモヤを吹き払ってくれるので、安心して下さい。
そんな意味でもよくできてましたョ。☆4つ。
「幻影師アイゼンハイム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.5.30

「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」☆☆☆
「おいしいコーヒーの真実」☆☆☆
「幸せになるための27のドレス」☆☆
「縛師」☆☆
「フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石」☆☆☆
「僕の彼女はサイボーグ」☆☆☆
「山桜」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週はドドッと7本。久々の満点もあります。どうぞお楽しみに!
では早速ご紹介していきましょう!

「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」は、老人性認知症を扱った作品。
結婚44年の夫婦、グラントとフィオーナ。
ふたりは互いに尊敬し合い、愛し合う最高のパートナーでした。
ところがフィオーナに異変が起こります。
認知症の兆候が見え始めたのです。
その後、徘徊するなどして
命の危険にさらされることも多くなったフィオーナを見て、
グラントは彼女を施設に入れることを決断するのです…。
徐々にグラントのことがわからなくなるフィオーナ。
それどころか、他の入居男性に恋をしてしまうんですね。
愛する女性が変わっていってしまう現実にうろたえるグラント。
そりゃそうですよねぇ。でも最愛の妻が生き生きとできるならと許すのか、
いや他の男を愛するなんて許せないと切り離そうとするのか。
これって究極の選択でしょう。
いやいや他人事では無いかも知れません。
全編を通して暗いというか、重苦しいトーンですが、
ガツンと来る1本です。☆3つ。
「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」公式サイト

「おいしいコーヒーの真実」は、アフリカの現状を訴えるドキュメンタリー。
エチオピアのコーヒー産業にスポットを当てて物語は進みます。
あれだけの生産量を誇っても、不公正な貿易システムで、
農民に行く利潤はほんのわずか。
教育も受けられず、日々食べていくことすらままならないのが現実。
資料によると、エチオピアでは毎年700万人が緊急食料援助を受けていると。
でもアフリカの輸出シェアが1%増えれば、年間700億ドルを創出でき、
この金額はアフリカ全体で受け取っている援助額の5倍に相当するそう。
ビックリです!
折しも、今日本ではアフリカ開発会議が行われており、
福田首相はアフリカ向けのODAを
2012年までの5年間で倍の2000億円にすると約束。
でもこの映画を見るとやっぱり思うんですよ。
お金の使い方が違わないですかって。
鉱石もそう。大国の思惑で援助だなんて、本当の援助じゃないでしょう。
ちょっと現行のシステムを変えるだけで、アフリカは自立できるのに。
その上での援助じゃないのかなぁと。
知ること、考えること、行動することの大切さを教えられるはずです。☆3つ。
「おいしいコーヒーの真実」公式サイト

「幸せになるための27のドレス」は、
「プラダを着た悪魔」のスタッフが作ったラブ・コメディ。
小さい頃から結婚式に魅せられ、
“花嫁付き添い人”の仕事に生き甲斐を感じたジェーンは、
プライベートのほとんどを花嫁に捧げる生活。
衣装合わせの代行、パーティの会場探しと、
本番の掛け持ちもこなす、大忙しの毎日でした。
ところが自分の幸せは?というと、そっちのけ。
片思いの彼を妹に会わせたら、ツルッと持っていかれる始末。
そんなジェーンに目を付けたのが、地元新聞記者のケビンでした。
ケビンは結婚記事の担当記者。
たまたまタクシーの中で拾った手帳を開いてジェーンに興味を持ち、
素性を隠して会うようになります。
最初は互いに噛み合わなかった価値観でしたが、
真っ直ぐに花嫁の幸せを願うジェーンに惹かれ始めるケビン。
彼女の部屋のクローゼットを開けると収められていたのは
これまでに手伝った27の結婚式の衣装たち。
ひとつひとつの思い出を語るジェーン。写真に写すケビン。
それらをまとめたものが、ケビンの意思とは裏腹に、
地元新聞の紙面を飾ってしまったのです…。
すっごく惹かれるはずの設定で、
幸せな結末を想像できるシンデレラストーリーなんですが、
つなぎの部分でリアリティを欠くことが多かったのが残念でした。
ボクにとっては話の展開につなぎのリアリティは不可欠で、
AからBへ行く理由が「え〜っ、それかい」って思ったら覚めちゃうんですね。
「プラダを着た悪魔」は大好きな1本だったからちょっと残念だったかな。
あくまで個人的な感想ですが。
でもファッショナブルで華やかな作品です。女性は見てて楽しいはず。
もしボクの言ってることが気になる方は、是非自身の目で確かめて来てみて下さい。
辛口でごめんなさい。☆2つ。
「幸せになるための27のドレス」公式サイト

「縛師」は、SMの世界に生きる人々のドキュメンタリー。
資料によると、SMの起源は19世紀。
フランスの嗜虐嗜好の小説家マルキ・ド・サドと、
オーストリアの被虐嗜好の小説家ザッヘル・マゾッホの名前に由来するとか。
映画では、日本を代表する縄の達人が女性を縛りつつ、
その愛情表現やSMの奥深さについて語ります。
たぶん興味のある無しで感想は違うはず。
振り切れた嗜好って確かに奥が深いから、マニアックに描かないと意味ないですしね。
この☆の数じゃ好きな向きからは怒られちゃうかな。
ムチで叩かれたりして(笑)。あ〜れ〜(笑)。☆2つ。
「縛師」公式サイト

「フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石」は、アドベンチャー・コメディ。
財宝探しに人生を懸けるベン。でもそのロマンも善し悪しで。
いつまでたっても現実を見ようとしないベンに、
愛する妻テスも愛想を尽かし、離婚を言い出される始末。
ところが、今度こその情報をベンが仕入れてくるんですね。
これにはテスももしかしたらという気にさせられます。
しかし、その財宝を狙っていたのはベンだけではなかったのです。
ベンの師匠のモー、ギャングのビッグ・バニーも虎視眈々。
果たしてベンとテスはお宝を手に入れることができるのでしょうか…。
この映画もわかりやすい娯楽作品。難しく考えずに身を任せればいいって感じです。
おバカブームですが、“フールズ・ゴールド”と言ってもおバカの意味がちょっと違う。
女性がよく言う、「もぉーっ、バカッ」のニュアンス(笑)。
その言葉の裏には愛がある。
確かにベンという男は母性本能はくすぐるようです。学ばないとね(笑)。☆3つ。
「フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石」公式サイト

「ボクの彼女はサイボーグ」は、綾瀬はるか、
小出恵介主演のSFラブ・コメディ。
寂しい生活を送っていた冴えない大学生のジロー。
今日はそんなジローの20歳の誕生日。
そこに突然現われた破天荒なひとりの女の子。
「わたしも今日誕生日なの」。
共にハチャメチャな夜を過ごすんですが、意味深な言葉を残して消えて行った彼女。
そんな彼女と再び出会ったのは翌年の今日、21歳の誕生日でした。
またもやさまざまなハプニングが起こる中、彼女が衝撃の告白をします。
実は彼女、未来の自分が今の自分に送り込んだサイボーグだと言うのです…。
と、そこから始まる奇妙な共同生活。未来の自分が彼女を送り込んだ理由とは?
果たしてサイボーグとの恋愛は実を結ぶのでしょうか?というお話。
こちらはちょいとひと捻り。
時空を超えた映画ならではの“ねじれ”というか
“よじれ”が、そう違和感もなくいい味付けになっています。
これだけカワイイならサイボーグでもいいやと思ったボクもそろそろ限界点?(笑)。
笑ってる場合じゃないぞ。☆3つ。
「ボクの彼女はサイボーグ」公式サイト

「山桜」は、藤沢周平原作、篠原哲雄監督初の時代劇。
舞台は江戸後期の庄内地方、今の山形県。
ここに暮らすまだ若い武家の娘、野江がいました。
実はこの野江、最初の結婚で夫に先立たれ、再婚相手は金に執着心の強い嫌な男。
それでも2度目だからと耐え忍ぶ毎日だったのです。
ある日のこと、叔母の墓参りを済ませて帰る道すがら、
たくさんの花を付けた堂々たる山桜の木に出会います。
あまりの美しさに枝を分けてもらおうと手を伸ばすのですが、高くて届かない。
すると後ろから優しい声がしたのです。
「手折ってしんぜよう」。
声の主は手塚弥一郎という武士でした。
実は弥一郎、野江の最初の結婚前に縁談を持ち掛けていたのですが、
手塚の家は母ひとり子ひとり。
嫁いでも苦労するだけと、深く考えることもせずに野江は断っていたのでした。
「今はお幸せでござろうな」。
自分の境遇を言えるはずもなく、「はい」と答えてしまう野江。
「それは何より」と笑顔で立ち去る弥一郎。野江の心が揺れた瞬間でした。
しばらくすると、夫から驚愕の報せを聞かされます。
弥一郎が藩の重臣、諏訪平右衛門を討ったというのです。
この諏訪という男、豪農と組んで、貧しい農民から田畑を没収。
私腹を肥やして来た悪い役人。それでも強い権力に誰も何も言えずにいたのです。
弥一郎の正義の行動を鼻で笑う夫に遂にキレた野江は、
意を決して離縁をし、実家に戻ります。
そしていつ帰るとも知らない弥一郎を、ずっと待とうと心に決めるのでした…。
野江には田中麗奈、弥一郎に東山紀之。
他にも、富司純子、壇ふみ、篠田三郎、村井国夫といった豪華キャストが脇を固めています。
弥一郎のセリフ、実は紹介したぐらいで、あとはほとんどありません。
ところが、その凜としたたたずまいや表情が言葉以上のものを語ってくるのです。
おしゃべりが仕事のボクはちょっぴり打ちのめされてしまいました(笑)。
寡黙な真っ直ぐさがカッコよかったです。
また野江にも、野江の母が言うんですね。
「あなたは幸せに向かってちょっぴり遠回りをしているだけだから」と。
この言葉にぐっとくる人、今の世の中、きっと多いはずです。
「真面目に一生懸命生きているけど、ちょっと…」と感じてる人、勇気をもらえますョ。
ボクは野江と同じタイミングで、野江と同じように涙がこぼれました。
あの時代ですから、弥一郎が無罪放免になるかどうかはわからない。
でも多くの観客が、明るい将来に希望を見出しながら席を立つはずです。
文句なし。☆5つ!
「山桜」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.5.25

「今、愛する人と暮らしていますか?」☆☆☆
「パリ、恋人たちの2日間」☆☆☆
「ランボー 最後の戦場」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週は3本。「今、愛する人と暮らしていますか?」だけが25日日曜日の公開、
他の2本は24日土曜日の公開です。お間違いのないように。
それでは早速ご紹介して行きましょう。

「今、愛する人と暮らしていますか?」は、韓国映画。
建設会社の取締役ヨンジュンと、
インテリアショップのオーナーを務めるソヨンはセレブな夫婦。
一方、ミンジェとファッションアドバイザーのユナも恋人同志のような夫婦。
この2組の夫婦が共通の知人のパーティで出会います。
最初はヨンジュンの失礼な態度に腹を立てたミンジェとユナでしたが、
ユナはそんなヨンジュンに次第に惹かれていってしまうんですね。
実はヨンジュンとソヨンの夫婦仲はすでに冷め切っていました。
また、ミンジェも香港出張の際に偶然ソヨンと出会い、関係を持ってしまいます。
2組の夫婦に期せずして現われた転機。
それぞれの夫婦は互いの夫婦生活に、一体どんな結論を出すのでしょうか…。
すでに壊れている仲なら仕方ないかなと思うけど、
壊れるきっかけになるとしたら嫌だなというのが率直な感想。
恋愛は理屈じゃないからしょうがないんですけどね。
因果応報という言葉があります。略奪愛はまた略奪されたりするものです。
この映画は後日談を知りたくなるかも。☆3つ。
「今、愛する人と暮らしていますか?」公式サイト

「パリ、恋人たちの2日間」は、パリが舞台のラブ・コメディー。
アメリカ人インテリアデザイナーのジャックと
フランス人フォトグラファーのマリオンは、NY在住の交際歴2年のカップル。
ベネチア旅行の帰りに寄ったパリのマリオンの実家。
そこでジャックはマリオンの知らなかった素顔をたくさん知ることになります。
ちょっぴり変わったマリオンの両親。街を歩けば昔の恋人らしき男が現れ、
カフェに入ればマリオンのトラウマの元になった男とトラブル。
さらに携帯に届くエロチックな言葉のメール。
「もしかしてコイツはヤリ××?」
喧嘩になるのは当たり前の成り行き。
果たしてふたりはこのまま別れてしまうのでしょうか…。
出自というか、文化が違うんだから、そりゃいろいろあるのも仕方ない。
わかっちゃいても直視できないのがジャックの本心。
そりゃそうですよね。知らない方がいいこともあるって。
監督のジュリー・デルピーは女性監督。自身もLAに住んだのちにパリに戻ったら、
「パリらしいイヤな出来事が立て続けに起こった」とか。
アイデアはそこから生まれたそうです。
見る側にとっても国民性の違いで、ツボが若干違うかも知れないけど、
万国共通の笑えるネタも散りばめられてます。
ボクは笑うより、なるほどうまいこと言うなぁと感じたことの方が多かったかな。
またまた感じる男と女の仲の難しさ。あぁ…(笑)。☆3つ。
「パリ、恋人たちの2日間」公式サイト

「ランボー 最後の戦場」は、シリーズ最終章。
元グリーンベレーでベトナム戦争の英雄、ジョン・ランボー。
今はタイ北部のジャングルに暮らし、
ボートで人や物の運搬をするなどして生計を立てていました。
ここはタイとミャンマーの国境付近。紛争の多い地帯です。
特にミャンマーの軍事政権がキリスト教徒の多いカレン族を迫害。
土地や天然資源を奪うだけでなく、女性も子供も構わず殺害していったのです。
そこにアメリカからやって来たのがキリスト教支援団。
薬などの支援物資を届けたいとランボーに船での案内を頼みます。
「危険過ぎるから止めた方がいい」。
そんな忠告にも耳を貸さない支援団。
途中、海賊の襲撃にも遭い、本当に危険な地域であることを知る彼ら。
「それでも行かなくてはならないの」。
紅一点のサラの純粋な瞳に、ランボーもそれ以上は言えず、
無事を祈り、陸地へと送り届けたのです。
ところが不安は的中。
サラも含め、支援団の一行は残忍な軍隊に捕らえられてしまいます。
救出のためにアメリカからさらに送り込まれた5人の傭兵部隊が、
同じようにランボーに道案内を頼みます。
サラが気になるランボーは、一緒に戦闘に参加したいと伝えますが、
傭兵たちにとってはただの案内人。足手まといだと簡単に断られてしまうのです。
ところが、この傭兵部隊にも危険が及ぶんですね。
それをひとりで救ったのがランボーでした。
「あいつは一体何者なんだ」。傭兵たちは目を丸くするのでした…。
初めてR指定(R15)が付いた“ランボー”となりました。
聞けばスタローンは、ミャンマーで起こっている現実に、世界中から目を向けて欲しいと。
ゆえに残忍なシーンは残忍に描いたのでしょう。
正視できないような描写もかなりありました。
ストーリーはシンプルな救出劇でも、
そこには根の深い問題がずーっと横たわっているということなんでしょうね。
タイトルからして“最終章”のはずなんですが、
来日したスタローンは次回作じゃランボーに家族を持たせたいと話してました(笑)。
果たして次があるのか否か?気になるところではあります。☆3つ。
「ランボー 最後の戦場」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.5.17

「Joy Division」☆☆☆
「マンデラの名もなき看守」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先週はいつも以上に忙しく、珍しく1本も試写に行けませんでした。
見れないと見たくなるものですね(笑)。やっぱり映画好きなんだなと実感。
さ、今週は2本です!

「Joy Division」は、伝説のUKロック・バンドのドキュメンタリー映画。
今なお人気のエレクトリック・ロック・バンドとして活躍をするニュー・オーダー。
その前身がジョイ・ディヴィジョン。
セックス・ピストルズのライブに衝撃を受けた若者たちが作ったパンク・バンドでした。
出身地マンチェスターの暗い影を体現するかのような独特のパフォーマンスと歌詞で、
ぐんぐん人気を上げていき、レコード会社との契約を勝ち取り、
遂には全米ツアーに出発しようとしたその直前の1980年5月18日、
ボーカルのイアン・カーティスは、23歳の若さで自らの命を断ったのでした。
若くしての結婚、子供の誕生、愛人の存在、離婚問題、
ステージ上でも襲ってくる突発性の発作など、
急変した彼を取り巻く環境に、彼自身が一杯いっぱいだったのかも知れません。
そんなイアンの人生を描いた映画「コントロール」というのを先日紹介しましたが、
こちらはそのドキュメンタリー版。
今もニュー・オーダーとして活躍するバンドのメンバー、
バーナード・サムナー、ピーター・フック、スティーヴン・モリスや、
ファクトリー・レコードのオーナーだった故トニー・ウィルソン、
イアンの愛人だったアニーク・オノレ、映画「コントロール」のアントン・コービン監督などが、
あの頃を振り返り、コメントをしています。
愛人が出てきちゃうんだから、生々しいです。
ニュー・オーダーやジョイ・ディヴィジョンを知らないと
なかなか足が向かないかも知れないけれど、
70年代末のイギリスにパンクが生まれた理由とか、当時のUK事情がよくわかる1本。
幅広く音楽ファンに見てもらいたい作品です。☆3つ。
「Joy Division」公式サイト

「マンデラの名もなき看守」は、実話に基づく物語。
アパルトヘイト政策(人種隔離政策)の渦中にあった1968年の南アフリカ。
刑務所の看守、ジェームズ・グレゴリーも他の白人同様、人種差別主義者でした。
反政府運動の首謀者として捕らえられているのがネルソン・マンデラ。
グレゴリーは、たまたまマンデラの生まれ故郷の近くで育ったため、
彼らの言葉であるコーサ語がわかるのです。
そこでマンデラの担当看守に任命され、家族との面会の際などに、
コーサ語で危険な会話をしたら報告せよとの任務を与えられます。
超大物の担当看守となれば出世も確実。グレゴリーの妻も大喜びでした。
ところが、実際にマンデラに会ってみると、
噂で言われているような危険なテロリストなどではなく、
逆に彼の掲げる理論は、実現すれば確かに皆が幸せになる仕組みだと知るのです。
だんだんマンデラに傾倒していくグレゴリー。
しかし、そんなことがバレたならば、
家族全員が周りから白い目で見られることに。 グレゴリーは自身の心の葛藤に悩むのでした…。
南アフリカ初の黒人大統領、ネルソン・マンデラ。
そのマンデラ氏の偉業ではなく、ひとりの“名もなき看守”にスポットを当てた作品。
グレゴリーもマンデラ氏と出会って、ある瞬間、ハッと気付く訳です。
純真な子供の頃、一番の親友は黒人の男の子だったじゃないかと。
でも、世間体や出世を考えるととても口に出せない。
いつの世も、自身の正義を貫き通すというのは大変なこと。
周りに流されない強い自我を持つのはなかなか難しいですよね。
でもそれが“歴史のひとコマになる”ほどの陰なる働きに繋がるのですから。
ボクらもそこまでは望まなくても、やっぱり自分には正直でいたいと思いますよね。☆3つ。
「マンデラの名もなき看守」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.5.10

「最高の人生の見つけ方」☆☆☆☆☆
「ハンティング・パーティ」☆☆☆
「ひぐらしのなく頃に」☆☆☆
「P2」☆☆☆
「ミスト」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GWは映画館に足を運ばれた方も多いはず。面白い作品に巡り逢えましたか?
さ、今週は5本です!

「最高の人生の見つけ方」は、
ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン主演の感動作。
家族を養うために自分の夢を捨て、勤勉な自動車整備工になった黒人男性のカーター。
その甲斐あって、子供たちは立派に成長し、今では可愛い孫もいます。
そんなカーターが体調を崩し、検査をしたところ、
なんと末期のガンを言い渡されるんですね。
入院した病室は2人部屋。 隣のベッドにやってきたのは
カーターと同じ末期のガンに侵された熟年白人男性のエドワードでした。
実は彼はこの病院のオーナー。
ところが自らが掲げた「誰でも平等に相部屋」の標語に逆らえず、カーターとの2人部屋に。
大金持ちと庶民。
最初はギクシャクしていたふたりですが、時間を持て余してるから会話も始まります。
秘書以外には見舞い客の来ないエドワード。実は彼にも娘と孫がいるのですが、
ある一件があって以来、親子の断絶が続いていたのです。
ある日のこと、エドワードがカーターの書いた1枚のメモを見てしまいます。
それは“棺桶リスト”。棺桶に入る前にやっておきたいことを書き記したものでした。
「荘厳な景色を見る」、「赤の他人に親切にする」、「涙が出るほど笑う」など、
カーターの書いたリストにエドワードは、「スカイダイビングをする」、
「ライオン狩りをする」、「世界一の美女にキスをする」と書き加えるんですね。
残りわずかな人生。カーターも意を決し、家族の反対を押し切って、
エドワードと一緒に“棺桶リスト”実践の旅に出るのでした…。
さすが名優のふたり。笑って泣ける表情豊かな演技が、
余命半年を告げられながらも人生の最期を楽しむ複雑なはずの胸中を見事に表現しています。
監督は「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー。
博学で雑学王のカーターと、少年がそのまま大人になったようなエドワード。
互いが互いに無い部分を持ち合わせ、年老いてできた大親友。
でもきっと若い頃に知り合っていたら、友情は芽生えなかっただろうなと思います。
きっとここでも、人生は慌てなくたって来るべき時が来たらちゃんと出会えるんだよって、
教えてくれてるんじゃないかと思うんですね。
ひとつひとつリストに“完了”のチェックをしていくふたり。
もちろん楽しいことばかりじゃありません。
これまで真正面から見据えることのできなかったことだってある。
ケンカもしながら、互いのお節介に背中を押されて成し遂げていくふたり。
最後にいいシーンが待ってますョ。泣けたなぁ。
ハンカチ用意して、是非見に行って下さい。☆5つ!
「最高の人生の見つけ方」公式サイト

「ハンティング・パーティ」は、リチャード・ギア主演作。
サイモンとダックは、元戦場のリポーターとカメラマン。
どんなに危険なところだろうと飛び込んで行ってはスクープをモノにした名コンビでした。
ところが、今は危険な生き方は辞めてNYで出世街道まっしぐらのダック。
それに対し、今だに危険地帯を歩いては安く情報を流しているサイモン。
ふたりは対照的な人生を送っていたのでした。
そんなふたりが久々の再会を果たしたのが、
ボスニア紛争終結から5年たったサラエボの記念式典でのこと。
サイモンはダックにこう囁きます。
「ブッ飛ぶようなネタがある」。
それは国連やNATO、CIAがやっきになって探している
重要戦争犯罪人フォックスの潜伏先でした。
このフォックスという男、民族浄化の名のもと、ボスニア紛争中に大虐殺を行い、
妊娠していたサイモンの恋人をもレイプの後に殺害。
サイモンは直後の生放送のリポートで、
涙ながらに真実を見ようとしないマスコミや世の中を批判。
その結果、仕事を干され、転落人生を送るハメになったんですね。
サイモンの言葉に、眠っていた何かが目覚めるダック。
この時、取材に同行してたのが新米プロデューサーのベン。
彼はTV局の副局長の息子。スクープをモノにして、
父の七光りじゃないところを見せたいと、危険な取材にヤル気まんまん。
果たして3人はフォックスに接触することができるのでしょうか…。
この映画を一言で言うと“エッジの効いた珍道中”って感じ(笑)。
それはそれはいろんなことが起こるんだけど、
捨て身の戦場ジャーナリストの肝っ玉のデカさというか、
度胸の座り方を、時にユーモラスに、時にシリアスに描いている1本。
“パーティ”とタイトルにあるぐらいだから、
肩に力を入れないで見ることのできる作品だと言っておきましょう。
えっ?って感じのラストですが、これも実話に基づくストーリーだとか。
事実は小説より奇なり、です。☆3つ。
「ハンティング・パーティ」公式サイト

「ひぐらしのなく頃に」は、大人気サウンドノベルゲームの映画化です。
昭和58年、東京から人里離れた鹿骨市雛見沢に引っ越してきた圭一。
学校も雛見沢分校に転入し、1ケ月もすると周りとも仲良くなり、
特に女の子の多い環境の中、圭一は楽しい生活を送っていました。
ところが、この村には奇妙な出来事がたくさん起こっているんだと、
村の外からやって来たカメラマンに聞かされたんですね。
学校の友達に確かめてもみんなは否定します。
でもその噂はどうやら本当のよう。
なぜならそのカメラマンが死体となって発見されたからなのです…。
サウンドノベルゲームというのは、PC版の小説のようなもので、
絵やBGMが付いていて、ページをめくるように読み進めるものだとか。
圭一の周りには純真無垢な女子生徒たちがいるんですが、
話が進むに連れ、彼女たちの意外な素顔もわかってきます。
ゲームで魅せられた人にはたまらない1本かも知れませんね。☆3つ。
「ひぐらしのなく頃に」公式サイト

「P2」も、不気味なサイコ・サスペンス。
クリスマス・イブの夜、ひとり残業をしていたアンジェラ。
実家のホームパーティに急ぎたい一心で仕事を片付け、
さぁ帰ろうと地下2Fの駐車場に下りたら、車のエンジンが掛からない。
困ったアンジェラは警備室に助けを求めに行きます。
出て来たのはトム。バッテリーじゃないかと言われ、ケーブルを繋いでもエンジンは掛からず、
タクシーで帰るからとトムにお礼を言ってエレベーターに乗ろうとするアンジェラ。
その時、トムは冗談めかしてこう言います。
「せっかくのイブなんだから、ボクとディナーでもどう?」。
もちろん断って1Fに上がり、電話でタクシーを呼ぶアンジェラ。
ところが今度はビルのドアが開きません。
再び地下2Fの警備室に駆け込むアンジェラでしたが、突然電気が消えて辺りは真っ暗に。
すると何者かが彼女の口に麻酔薬を嗅がせたのです。
朦朧とした意識の中、気が付くと鎖に繋がれていたアンジェラ。
そこはあの警備室の中。目の前にはごちそうを並べ微笑むトムの姿があったのです…。
いわゆるストーカーのお話。妄想癖のある狂気の男、トム。
このあとアンジェラは恐怖の時間を過ごすことになります。あぁ恐ろしい…。
“P2”は地下2Fのパーキングの意。
駐車場だけで話が進むあたり、ありそうで無かったタイプのサスペンス・ホラー。
でも映画より、現実にありそうな今の世情の方が怖いかも。☆3つ。
「P2」公式サイト

「ミスト」は、スティーヴン・キング原作のこれまたサスペンス・ミステリー。
激しい嵐が過去った翌日、デヴィッドは妻に頼まれた買い物のため、
息子ビリーと一緒に町のスーパーへと車を走らせます。
実は朝から不気味な霧が発生していて、それがどんどん広がっていたんですね。
スーパーに入って買い物をするデヴィッドたち。
顔見知りと挨拶を交わすなど、それは普段と何ら変わらぬ風景でした。
そう、深い霧以外は。
その時です。血まみれになった男がスーパーに飛び込んできたのです。
「霧の中に何かいる!」。
するとみるみる店が完全に霧に飲み込まれ、
大きな音と共に、壁や窓が割れ始めたのです。
店内はパニックに。
騒ぎはいったん落ち着いたようで、停電になった店内を復旧させようと、
デヴィッドを含む数人が裏の倉庫の発電機のところへ向かいます。
すると若い店員が制止を振り切りシャッターを開け、外の様子を伺ったのです。
その直後、なんと見た事もない不気味な触手に彼は食いちぎられてしまったんですね。
「霧の中には一体何がいるんだ…」。
果たしてみんなの命は助かるのでしょうか…。
見どころは、売り文句でもある“驚愕のラスト15分”。
スティーヴン・キングの作品ってかなり宗教色が強いじゃないですか。
パニック状態における人間の精神状態とか、正解だと思ってとる行動が実は正解ではなかったりとか、
ちょっと“結果論的神様目線?”だったりもしますよね。
うまい喩えと言えるかどうかわからないけど、
ゴルフで言うと、カップイン先にありきで、「あそこでさぁ…」と、
ティーショットからを語るみたいな(笑)。
ただ、登場人物のキャラは今回それぞれに凄まじく濃いし、
最近の彼の作品の中では面白かったと思います。
霧の中の存在は実は別にどうでも良くて(笑)、それによってとる人間の行動がね。
いかにもスティーヴン・キングだなと思いつつ、
ボクは個人的に面白かったです。☆4つ。
「ミスト」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.5.1

「アイム・ノット・ゼア」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

この作品も実は4月26日公開でした。失礼しました。
では早速ご紹介していきましょう。

「アイム・ノット・ゼア」は、ボブ・ディランの半生を、
トッド・ヘインズ監督が独自の視点で描いた作品。
フォーク・ロックの人気シンガー、ボブ・ディラン。
詩人、アウトロー、映画俳優、革命家、放浪者、ロックスターなど、
さまざまな顔を持つ彼を、ならばそれだけのキャラクターとして
描き分けようじゃないかというアイデアが斬新な1本。
まるでオムニバスのように、6人の人物がそれぞれに名前を持って登場。
それぞれの個性的な生き様が展開していくのですが、これ実はみなボブ・ディランのこと。
中でもロックンローラーのジュードに扮しているのはケイト・ブランシェット。
そう、ここでは男装で登場。
少し前に「ファクトリー・ガール」という映画を紹介しましたが、
あの中でも描かれていたように、
イーディ・セジウィックという女性とボブ・ディランとは一時恋仲にあったと。
そのイーディらしき女性もこの映画には当然出て来ます。
両方見てるとよりわかりやすいかも知れません。
とにかく監督のアイデアが素晴らしい!
ボブ・ディランファンは必見です。☆3つ。
「アイム・ノット・ゼア」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.4.24

「紀元前1万年」☆☆☆
「さよなら。いつかわかること」☆☆☆
「スパイダーウイックの謎」☆☆☆
「NEXT」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、「コラムを読んで映画を見に行きました」と言われてすごくうれしかったです。
それと同時に文責というか、やはり責任もずしっと感じて。
ただ、いつも言ってるように、感性のものに“正解”はありませんから。
正でも負でも、何か「ん?」と感じてくれたら是非劇場に足を運んで、
ご自身で確かめてみて下さい。GW、絶好のチャンスですョ!
さ、今週は4本です!

「紀元前1万年」は、「インデペンデンス・デイ」、
「デイ・アフター・トゥモロー」のローランド・エメリッヒ監督最新作。
昔むかし、貴重な食料である巨大なマンモスを倒すことが英雄であった時代、
ある村にデレーという若い男がいました。
たくさんのライバルがいる中、美しい娘、エバレットと結ばれて村のリーダーになるには、
誰からも英雄と認められなければならなかったのです。
今年もやってきた狩りの季節。
デレーは偶然が重なって、ひとりでマンモスを倒すんですね。
みんながデレーを褒めたたえます。
しかしデレーは自分が実力でマンモスを倒した訳ではないとリーダーになることを拒むのです。
実は幼い頃から互いに魅かれ合っていたデレーとエバレット。
エバレットにはデレーの気持ちが理解できません。
そんな時、見知らぬ集団が彼らの村を襲います。
エバレットはこの連中に連れ去られてしまうんですね。
追いかけるデレー。
その道にこそ、デレーが真の勇者になるための多くの試練が待ち受けていたのでした…。
マンモス、サーベルタイガーなどの動物や、外界で初めて見る他の部族たち。
エバレットを追っていく中で、見聞を広げるデレー。
最後にたどり着く場所が、なるほどここかというところで。
未来ばかりがSFじゃないという逆転の発想が面白く、
それだけさかのぼるって実はすごく未来に行くのに近い作業なんだなと思ったりもしました。
☆3つ。
「紀元前1万年」公式サイト

「さよなら。いつかわかること」は、戦争の悲劇をある視点から見つめた作品。
シカゴのホームセンターに勤務するスタンレー。
妻とふたりの娘との4人家族なんですが、妻のグレイスは陸軍の女性軍曹。
イラク戦争のため戦地に赴いていて、
12歳の長女ハイディと8歳の次女ドーンの面倒はスタンレーが見ていました。
戦争のニュースは見ない。それが父と娘の約束だったのですが、
しっかりもののハイディは父の目を盗んで、こっそりニュースをチェックする毎日。
どことなくギクシャクしている一家に、グレイス戦死の報せが届いたのです。
幸い娘たちは学校で不在でしたが、この辛い事実をどうふたりに伝えたらいいものか。
スタンレーにはわからなかったのです…。
全米では昨年12月末に公開になっているんですが、
この映画、大きなヤマ場や見せ場がある訳でもなく、
まるで隠しカメラで日常を追うかのように淡々と進んでいきます。
父は娘ふたりを食事に誘うけど、やっぱり話を切り出せない。
そこでドーンが昔から行きたがっていたフロリダの遊園地に行こうと誘う。
学校も休めるし、はしゃぐハイディとドーン。
長いドライブの中、絆は深まる父娘でしたが、
いつかは彼女たちに辛い事実を伝えなければならないのです。
スタンレーは、妻の声で録音されている
家の留守電の応答メッセージを聞くために何度も電話をし、
まるで会話をするように娘との現状を残します。グッときちゃいました。
アメリカの多くの家庭が体験したはずの悲劇。
何のために命を落とすのか、何の正義のための戦争なのかを、
アメリカがアメリカ自身に問う自省の1本。
でもボクら日本人だって
実はしっかり考えなければならない問題なんだって、思いませんか?☆3つ。
「さよなら。いつかわかること」公式サイト

「スパイダーウイックの謎」は、ファンタジー・アドベンチャー。
森の古めかしい屋敷にやってきた、母と姉マロリーに双子の兄弟ジャレッドとサイモン。
両親の不仲が原因の引っ越しだけに、気まずい雰囲気は当然で、喧嘩ばかりの子供たち。
今日も「あたしの物が無くなった」とマロリーとジャレッドは口喧嘩。ため息をつく母。
そんなある日のこと、ジャレッドは壁の中で変な音がすることに気付きます。
壁を叩くと穴が開き、中には上に昇れるリフトが1台。
上がってみると、そこは何かの研究室でした。
木箱を開けたジャレッドは、一冊の図鑑を見つけます。
「絶対に開けてはならね」と書かれた封印を破るジャレッド。
実はその本、80年前に大伯父のアーサー・スパイダーウイックが書いた妖精図鑑で、
それが悪の妖精の手に渡ってしまったならば、
人類は滅びてしまうという危険な本だったのです…。
封印を破ってから、ジャレッドには妖精が見えるようになる。
物が無くなったのも妖精のいたずら。
でもカワイイ妖精ばかりではなく、邪悪で巨大な力を持った連中もいるんですね。
家族はジャレッドの言葉を信じるはずもない。
ところが不思議なことが次々起こって、徐々に妖精の存在がわかってくる。
さぁ悪の妖精から「妖精図鑑」を守れるかというお話。
よくできてました。大人でも十分楽しめましたョ。
夫婦の不仲という設定がこの映画を見る層の子供たちにどうなの?とも思いましたが、
これも現代社会なのかなと(笑)。
夫婦生活の方がかなりのアドベンチャーだったりして。☆3つ。
「スパイダーウイックの謎」公式サイト

「NEXT」は、ニコラス・ケイジ最新作。
クリスは未来を見ることのできる超能力者。しかしその時間はわずか“2分”。
自分に関わる2分先のことだけがわかるのです。
FBIは彼のそんな能力を把握していました。
アメリカがテロの重大な危機にさらされている。
FBIはクリスの予知能力を借りて、テロリストの行動を読ませ、
逮捕しようとするのですが、クリスにとっては他人事。
自分に関わることでなければ見えないと拒絶します。
核を使ったテロの危機からアメリカは逃れることができるのでしょうか…。
クリスの仕事はカジノのマジシャン。収入はカジノで2分先を読めばいい。
そんなある意味人生を達観していた彼にも、気になる女性の存在がありました。
彼女に会うことを楽しみにダイナーのカウンターで“2分先”を読むクリス。
事件にはそんな彼女も巻き込まれて、他人事ではなくなり、
クリスも関わらざるを得なくなって行くのですが、描き方として、
現実と思って見ていたら、それが実は“2分先”。
だから回避しようとやり直すと。
ん?今度はどっち?的なタイムトラベルものの厄介さが、ボクには正直苦手でした。
わかりづらさはまったくないんですけどね。
だからラストもちょっと、う〜んって感じ(苦笑)。
逆に気になるでしょ(笑)。是非自身で確かめてきて下さい。☆2つ。
「NEXT」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.4.18

「大いなる陰謀」☆☆☆
「銀幕版スシ王子!〜ニューヨークへ行く〜」☆☆
「ファクトリー・ガール」☆☆☆
「譜めくりの女」☆☆☆☆
「ラフマニノフ ある愛の調べ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週は5本。「大いなる陰謀」だけが18日金曜日公開。
他の4本は19日土曜日の公開です。さ、それでは早速紹介していきましょう!

「大いなる陰謀」は、ロバート・レッドフォード監督・主演、
メリル・ストリープ、トム・クルーズ主演作。
物語は3つの場所で、同じ時間に進行します。
ワシントンD.C.では、次期大統領候補との呼び名も高いアーヴィング上院議員が、
ベテラン女性政治記者のジャニーンを呼んで、異例とも言える1時間の時間を取って対談をしていました。
その内容は、対テロ戦争中のアフガニスタンにおける新たな戦略についてでした。
ジャニーンはアーヴィング議員を「共和党のホープ」と記事で称えたこともあり、
アーヴィング議員はこの話を彼女にリークすることで好意的な記事を書いてもらい、
世論を味方に付けたかったのです。
しかしジャニーンには、話を聞けば聞くほど多くの疑問が浮かび上がっていたのでした。
同じ頃、カリフォルニア大学では、マレー教授がひとりの学生を教授室に呼び出していました。
彼の名はトッド。成績はいいのに、最近授業をサボりがち。
才能と将来性を見出だしていたからこそ、マレー教授はトッドをたしなめます。
そして同じように才能のある2人の学生が、
「世界で起こっている今一番重要なことに関わりたいから」と兵役に志願した話をするのです。
でも勘違いをするなと。大切な教え子を戦場になんかやりたくない。
そうじゃなく、こんな社会の現状に無関心でいることが愚かなことなんだとトッドに伝えるのです。
その時、アフガニスタンではそのふたりの教え子が、生死を賭けた攻防戦の中にいたのでした…。
話題はビッグネームの競演についつい向きがちですが、アメリカ人がアメリカ人に疑問を投げ掛けることで、
対テロ戦争の正当性をもう一度自分たちに問うてみようとした作品。
以前も話した、ある種の自省の映画。最近、アメリカ映画に着実に増えています。
面白い、面白くないで評価できるタイプの映画ではありません。
こういう目線できちんと戦争を捉える正義があるんだなというところにホッとしつつ、
その反面、政治家の思惑にゾッとし、命を落とす若者たちに
「一体何のために死にに行くのか」と声を掛けたくなります。
ボクら日本人だって、本当はきちんと考えなくちゃいけないんですよ。そう思いません?☆3つ。
「大いなる陰謀」公式サイト

「銀幕版スシ王子!〜ニューヨークへ行く〜」は、
堂本光一主演の人気TVドラマの映画版。
祖父から3代続く寿司職人の家系に生まれた米寿司(まいず・つかさ)。
その祖父と父を魚絡みの不慮の事故で亡くし、単身NYに寿司修行にやってきた司。
目指すはしゃりの達人、俵源五郎の営む寿司店「八十八」。
やっとの思いでたどり着いたものの、源五郎には弟子入りを拒まれてしまいます。
しかしこの「八十八」、マフィアのペペロンチーノたちによる
乗っ取り計画の危険にさらされていたのでした…。
「お前なんか、にぎってやる!」を決めゼリフに、司が舞い起こすドタバタ喜劇。
寿司の修行をしながら、意外な人物が黒幕の買収劇に、
たくさんの犠牲を出しながら立ち向かって行くというお話なんですが、
残念ながら売りのバカバカしさがボクのツボではありませんでした。
うちの実家が寿司屋だから、寿司モノに関しちゃちょいとうるさいのかも知れません。
「ネタが今ひとつなんだよ」なんてね(笑)。
ごめんね。☆2つ。
「銀幕版スシ王子!〜ニューヨークへ行く〜」公式サイト

「ファクトリー・ガール」は、
60年代のNYアンダーグラウンド・カルチャーを駆け抜けた実在の女性の物語。
60年代のNYポップ・アートの第一人者、アンディ・ウォーホル。
彼のスタジオは“ファクトリー”と呼ばれ、
まるでサロンのように前衛的アーティストが集まっては創作活動にいそしんでいました。
そこにひとりの女性が現れます。彼女の名はイーディ。
名門セジウィック家の令嬢でありながら、
その複雑な生い立ちから美術学校を中退して、NYへとやってきたのです。
その美貌はウォーホルをも一瞬にして虜にし、彼女は常にウォーホルの隣にいる存在となるのです。
ウォーホルの前衛的映画で裸になることもあったイーディ。
ドラッグにもハマり、目の前の楽しさだけを追求し続ける彼女の前に現れた、
まったくウォーホルとは別のタイプの男、それがボブ・ディランだったのです…。
実在の女性。わずか28歳の若さでこの世を去ったイーディ。
時代の特異性と言ってしまえばそれまでですが、逆に彼女のそれまで、
すなわち生い立ちがそこにハマったというか、
NYに惹かれて行ったのは必然だったのかも知れません。
しかしアンディ・ウォーホルはかなりひどいヤツとして描かれてますョ(笑)。
訴訟にならないのか、そっちが心配。
流行は巡ります。ファッション、音楽など、この時代に興味のある方は是非。☆3つ。
「ファクトリー・ガール」公式サイト

「譜めくりの女」は、フランス映画。“譜めくり”とは、
ピアニストの脇に座り、タイミングをよく譜面をめくる役割のこと。
ピアニストになりたい。それが物静かな少女メラニーの夢でした。
学校に入るための試験を受けることになったメラニー。
審査員長は人気女性ピアニストのアリアーヌ。
メラニーが演奏を始めたその時でした。受験生の父兄でしょうか、
アリアーヌのサインを求めてひとりの女性が受験室まで入ってきたのです。
そしてアリアーヌは渋々サイン。
ところがこの行動に集中力を欠いたメラニーは演奏を失敗。
一度狂ったリズムはもう二度とは戻はなかったのです。
メラニーは不合格でした。そして自ら大好きなピアノを封印したのです。
10数年後、メラニーは有名な弁護士ジャンの事務所で実習生として働いていました。
ジャンが、子供の世話をしてくれる女性を募集していると知るや、名乗り出るメラニー。
そう、ジャンの奥さんは、あのアリアーヌだったのです。
ピアノの覚えがあると知るやアリアーヌはメラニーを譜めくりとして雇います。
もちろんアリアーヌはメラニーがあの時の少女だなんて知るよしもなく。
信頼を勝ち得たその時から、メラニーの復讐劇が始まるのです…。
怖いですよ〜。ホラーと言ってもいいぐらいの怖さ。
メラニーは表情がほとんど変わらないんです。
だから何を考えているのか、心の中が読めないし、見えない。
ただ、昔、試験を失敗した時に、
練習場で練習している女の子のピアノの蓋をバンッと閉めたぐらい、
実は気性の荒いところがあるのは確か。
その女の子はサッと手を引いたので惨事には至らなかったのですが、
その時もメラニーは表情ひとつ変えることなく。
あなたも気をつけないと。自分は気付いていないうちに人を傷付けていて、
やられた方はどんどん恨みを膨らませてるかも知れませんョ。
話にグイグイ引き込まれちゃいました。“怖面白かった”です!☆4つ!
「譜めくりの女」公式サイト

「ラフマニノフ ある愛の調べ」も、ピアニストの話。
こちらは実在の亡命ロシア人ピアニストの生涯を描いた作品です。
1880年代から1920年代にかけてのお話。
人間離れしたテクニックを持つ、天才ピアニスト、セルゲイ・ラフマニノフ。
幼少期に両親が離婚。彼の才能を見出だした音楽教授のスヴェレフが彼を育てます。
ところが、演奏家たれというスヴェレフと、
作曲の魅力に魅せられてしまったラフマニノフの間に溝は深まるばかり。
恩師との関係は壊れてしまうんですね。
ちょうどその時、恋に溺れていたラフマニノフ。
愛しき人、アンナに捧げた「交響曲第一番」は、指揮者の失態で最悪の演奏に。
冷たく彼の元を去るアンナ。そう、アンナはラフマニノフを愛してはいなかったのです。
そんな彼を救ったのが従姉妹のナターシャでした。
自分の婚約を破棄し、ナターシャは一生をラフマニノフに捧げようと決意するのでした…。
男と女の思いのぶつかり合いみたいなのがあちこちに描かれている1本。
それは主人公たるラフマニノフとナターシャだけでなく、
登場人物たちみんなを巻き込んでの恋愛絵巻というか、人生絵巻というか。
恋愛って、成就する側としない側で、どっちが愛情深いかなんて比べられないんだよなぁ。
あえて言うなら、うまくいかない側は“深く”、うまくいく側は“強い”のかも。
なんて定義づけることが愚行かな(笑)。
大人な映画ですが、若い人だって何かを感じるはずです。
ピアニストの芸術作品としてだけでなく見ることのできる1本です。☆3つ。
「ラフマニノフ ある愛の調べ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.4.11

「王妃の紋章」☆☆☆
「ヒットマン」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GWの予定は立てましたか?どこに行っても混んでるからなぁと
半ば“完全休養”を決め込んでる人もいるかも知れませんね。
映画館も大きなところは混んでるけど、ちょっと郊外に出るだけで、
全然空いてたりするものです。
小さな街の映画館で映画を見て、
その街の歴史のありそうなお店でお茶を飲んだり、食事をしたり。
そんな連休の過ごし方もいいかも知れませんね。
さ、今週は2本です!

「王妃の紋章」は、豪華絢爛な中国映画。
唐王朝後期の中国。絶対的権力を持つ王には、王妃と3人の王子がいました。
9月9日の菊の節句に王家が一堂に会するため、
遠征に出ていた王と、第二王子のジェ王子が王宮に戻ります。
第一王子のシャン王子、第三王子のチョン王子と久々の再会を喜ぶジェ王子でしたが、
母の王妃の様子がおかしい。
実は、王宮の中ではドロドロの人間模様が渦巻いていたのです。
王と王妃の間の愛はとうに冷め、王妃は血の繋がっていないシャン王子と関係を持ち、
そのシャン王子は宮廷医の娘とデキている。
王は宮廷医と結託して王妃に飲ませる薬に毒を盛っていて、
王妃はそれを毒と知りつつ飲み続けている。
王妃が密偵として雇った女も、ある事情で王を憎んでいる。
そして王妃は震える手で、黙々と菊の紋章を刺繍し続けているのです。
王妃を実の母に持つジェ王子は、その姿にただならぬものを感じ取ります。
そして迎える9月9日。一体、王家に何が起ころうとしているのでしょうか…。
監督は「HERO」、「LOVERS」でおなじみ、チャン・イーモウ監督。
そう、数で圧倒するタイプの中国映画の代表的監督です。
今回もすごいですョ。宮廷が金ピカなのはもちろん、庭には300万本の菊の花、
長さ1キロ以上の絹の絨毯、兵士の数は数え切れないほど。
このチャン・イーモウ監督、北京オリンピックの開閉会式の総合演出を務めるそうで、
その任命にも納得のスケールの大きさです。
ストーリー自体は“昼ドラ”チックなドロドロさですが、映像がかなりSEXY!
女性の胸元が揺れまくります(笑)。このあたりでも文化的開放を言いたいのかなぁと、
ちょっぴり穿った見方もしてしまいますが。
中国映画史上No.1の興行収益だとか。見る価値は十分でしょう。☆3つ。
「王妃の紋章」公式サイト

「ヒットマン」は、人気ゲームの映画化。
国外追放された僧侶たちによる暗殺者育成組織がありました。
そこに集められていたのは身寄りのない子供たち。
巣立っていったスナイパーたちはスキンヘッドで、
後頭部にバーコードのタトゥーが彫られていて、
名前は無く、その末尾2ケタの番号で呼ばれるのです。
その中に“エージェント47”という男がいました。
彼は組織の中でも超一流のスナイパー。
新たな標的は、共産主義の復興を目論むロシアの政治家。
ところが、いつものように完璧に仕留めたはずの標的が“生きていた”のです。
警察に追われる身になった“47”。
「何かがおかしい」。
そう感じた“47”には、本当の敵が存在していたのでした…。
その独特のルックスと生い立ちから、“47”にはグッと興味を抱くはず。
冷酷非情、感情を押し殺した彼が、人間として目覚めるのが、
ニカというやはり孤独な若い情婦の存在。
永久凍土ような氷の心がそんなに簡単に溶けるものかと、
少し納得のいかないところはありますが、北極の氷も溶けちゃうご時世ですから、
そんなものかなと(笑)。
ただし、日本には“ゴルゴ13”という徹底したキャラがいますからね。
彼を超えるには笑顔は封印かな(笑)。☆3つ。
「ヒットマン」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.4.3

「黒い家」☆☆☆
「恋の罠」☆☆☆
「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近ドキュメンタリー映画が増えました。
“事実は小説より奇なり”。
映画になる題材が今の世の中、ゴロゴロ転がっているということでしょうか。
今日行った試写も2作品共ドキュメンタリーでした。
さ、今週は3本です!

「黒い家」は、韓国ホラー。
生命保険会社の査定員に転職したばかりのジュノ。
ある日、女性客から1本の相談の電話が入ります。
「自殺の場合…、保険金は受け取れますか…」。
まるで自分がこれから死を選ぶかのような声に、マニュアルを無視して、
自分の名前も、辛い自分の生い立ちも話して同情してしまうジュノ。
それがジュノにとっての災いの始まりでした…。
チュンベという見知らぬ客から指名されて家を訪れるジュノ。
そこで見たのは男の子の首吊り死体でした。
死んでいたのは妻イファの連れ子で、7歳のポフン。
チュンベという男は昔、自分の指を切り落として保険金を請求してきた過去があり、
ブラックリストに載っている男。
死んだ義理の息子のポフンはもちろん、妻のイファにも多額の保険金が掛かっていると。
そこでイファにもそのことを伝えて「気をつけて」と言ってしまう。
関わっちゃいけないのに、関わっちゃう。みんなが駄目だって言ってんのに。
そして自らが命の危険にさらされて、初めてわかる衝撃の事実。
なんかホラーというよりはサスペンス。
音で驚かすというよりは、きちんとストーリーで怖がらせる1本でしたョ。☆3つ。
「黒い家」公式サイト

「恋の罠」も、韓国映画。
時代は李朝。ユンソは司憲府に勤める真面目な官吏。
名画贋作事件の捜査のために町の食器屋に踏み込むユンソ。
すると、店の奥で初老の男性が卑猥な小説を書き写しているではありませんか。
それを読んだとたん何かに目覚めたユンソ。
「自分にも書けないだろうか」。
真面目一筋の男の中で、何かが弾けた瞬間でした…。
実はユンソは美貌の王妃チョンビンに惚れられていて、
命懸けの密通をしてるんですが、それも官能小説の題材にしてしまう。
大胆な発想、設定に大衆はドッキドキ。一躍超人気作家になってしまいます。
王妃との関係は何のため?純粋な恋?それとも小説のため?
物語の結末も気になるところでしょうが、これってソフトポルノなのかなぁ。
それともエロティックコメディー?
韓国ではいろんな賞を取ってるようですが。
イメージ以上にバカバカしい作品でもあります(笑)。☆3つ。
「恋の罠」公式サイト

「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」は、人気ブログ小説の映画化。
舞台は1979年の、のどかな田舎町。
イタズラの天才と呼ばれた通称“ママチャリ”率いる7人の高校生がいました。
ある日、この町にひとりの熱血漢がやってきます。そう、駐在さんです。
畑に囲まれた見通しの良い、広い1本道をバイクで走っていた“エロガッパ西条”。
ほんのちょっとのスピード違反で捕まり、
「こんなところでネズミ捕りやってんじゃねーよっ」と怒ったことから遺恨戦争が勃発。
7人で駐在さんにイタズラを仕掛けるんですが、
この駐在さんも負けていないどころか、1枚も2枚も上手。
喫茶店で働く、この町イチの美人の加奈子さんが、
駐在さんの妻だと知って若い7人の嫉妬心にもメラメラと火が着きます。
こうして始まった、やってはやり返されのイタズラ戦争は700日にも及んだのでした…。
半分実話だという、超人気ブログ小説「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の映画化。
連載は06年3月からスタートし、500話以上、
100万以上のHITを記録しているとか。すごっ。
ママチャリたちと駐在さんの“戦争”の一部を紹介すると、
スピード違反で捕まったと聞けば、検知機の前を金属を持って全力で走り、
加奈子さんが奥さんと知るや、駐在所の中にエロ本を隠し置くとか。
ホントにおバカ(笑)。
でも最後には感動のドラマも待っていて、笑って泣いての1本です。
音楽も79年のものを使い、あちこちに当時の流行が映像でカットイン。
懐かしかったり、逆に新鮮だったり、幅広い世代に楽しめる映画化かも。
人間味あるっていうか、高校生のかわいいイタズラに
真正面から立ち向かう駐在さんとのやり取りを面白いと感じる人が多いっていうのは、
逆に殺伐とした時代だからなのかも知れませんね。
ちょっと考えちゃいました。☆3つ。
「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.3.28

「タクシデルミア ある剥製師の遺言」☆☆
「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週は2本ともかなり個性的。好きか嫌いかはハッキリわかれそう。
ボクの☆も“好み”ですから。
それではその2本です!

「タクシデルミア ある剥製師の遺言」は、ハンガリー映画。
祖父、父、息子と、3代に渡って展開するストーリー。
祖父ヴェンデルは第二次世界対戦中のうだつの上がらない当番兵。
妄想癖の持ち主で、快楽の世界に溺れるタイプ。
最後は上司の妻と関係を持ち、上司に撃たれてしまいます。
こうして生まれた息子のカルマンは超巨漢。早食い大会のハンガリー代表で、
同じ早食いの女性選手ギゼラと結婚します。
そして生まれたラヨスはガリガリの男。
剥製師として生計を立てるかたわら、 現役時代以上に太り、
寝たきりならぬ座ったっきりの生活となった父カルマンの面倒を見る毎日でした…。
と、物語は3世代に渡って続くんですが、奇想天外。
あまりに突飛な発想で正直よくわかりませんでした。
理屈抜きに楽しむには哲学的な部分もありそうだし。国民性?
誰か見て教えて下さい(笑)。☆2つ。
「タクシデルミア ある剥製師の遺言」公式サイト

「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」は、
孤高のアーティストのドキュメンタリー作品。
1892年に生まれ、1973に亡くなったヘンリー・ダーガー。
友達も身寄りもなく、雑役夫として働いていた病院と、
ミサに通う教会以外は外出もせず、貧しい暮らしを送っていたといいます。
そんな彼がこの世を去った後、部屋の整理をしていて発見されたのが、
15000ページにもおよぶ小説と数100枚の挿絵だったのです。
タイトルは「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、
子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリニアン戦争の嵐の物語」。
神と妖精と幼子たち。独特の世界観を持ったこの小説と絵が、
彼の死後、評価されていくことになります。
ダーガーを知るわずかな人の証言を交えて映画は進んでいくんですが、
こちらもある意味、妄想の世界。
芸術性は高いものの、芸術と奇癖の境目って紙一重。
本能や感性が生み出すものだから、確かにそうなのかも知れないけど…。☆3つ。
「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.3.20

「Sweet Rain 死神の精度」☆☆
「デッド・サイレンス」☆☆☆☆
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「西の魔女が死んだ」という映画の社内試写を見終えたら、
外で紅茶のおもてなしが待っていました。
作品の中ではハーブティーがアクセントになっているんだけど、
あったかい気持ちで頂きました。
なかなかいいアイデアですよね。作品はまた公開週にご紹介しましょう。
今週は3本です!

「Sweet Rain 死神の精度」は、金城武主演作。
人が死ぬ運命の日の7日前に現れる死神。
ターゲットと接触して、実行か見送りかを判断するという。
千葉という男もそんな死神のひとりでした。
1985年、電器メーカーの苦情処理係として働く一恵が、千葉の今回のターゲット。
幸せ薄い、地味な女性でした。
偶然を装い接触する千葉。
最初は当然いぶかしがる一恵でしたが、徐々に心を開いていきます。
今で言うストーカーのようなクレーマーに悩まされていた彼女。
数日後、その男が一恵の前に現れたのです。
追い詰められた彼女に、男はこう言ったのです。
「歌うために生まれてきた本物の声だ」。
男は人気の音楽プロデューサー。
一恵を指名して苦情を伝えていたのは、その声を確認するためだったのです。
「もう少し様子を見るか」。
千葉の出した答えは“見送り”でした…。
ちなみに一恵役には小西真奈美。歌ってます。癒し系かな。
3本のオムニバスっぽくなっていて、
このあと千葉が接するのは、07年のチンピラの阿久津、
28年の美容室を経営する70歳のかずえと、時代も40年ぐらい進みながら話は展開していきます。
当然“運命のリンク”といった感じの登場人物の関わり合いも出てきます。
金城武の日本語はどうしてもちょっぴり不自然でしょ(笑)。
死神という設定だから許せちゃうのかな。
全体的にファンタジー色が強過ぎちゃった感じがして、
残念ながらボクはあんまり入り込めませんでした。
演出が多くてお芝居って感じが好き嫌い別れるところかも。☆2つ。
「Sweet Rain 死神の精度」公式サイト

「デッド・サイレンス」は、「SAW」シリーズを手掛けた
監督ジェームズ・ワンと脚本家リー・ワネルによるホラー映画。
ある日のこと、ジェイミーとリサの家の玄関前に、
差出人不明の大きな箱が置かれていました。
開けてみると中には腹話術の人形が。名前はビリーだそう。
不審に思いつつも、喜んで遊ぶ妻を残して買い物に出るジェイミー。
帰宅した彼が見たのは、
ベッドの上で舌を抜かれて死んでいる無惨なリサの姿だったのです。
警察の事情聴取を受けながら思い出した妻の口ずさんでいた詩。
「メアリー・ショウにご用心。子のない彼女は人形が好き。
 夢で彼女に会っても叫んじゃダメだ。舌を抜かれるぞ!」。
それはジェイミーの故郷に古くから伝わる詩でした。
今回の事件に何らかの関係があると感じたジェイミーは故郷へと車を走らせます。
実の母が自殺をし、2番目の母は家出。
すべて父親のせいだと思っていたジェイミーは父を嫌ってました。
今は3番目の若い妻と暮らす父。ところが、車椅子姿の父に驚きを隠せなかったのです…。
何かを知っていそうな故郷の葬儀屋夫婦、執拗にジェイミーを追う刑事など、
他にもいろんな登場人物がいて、腹話術の人形が起こす不可解な殺人事件の謎に迫るんですが、
これかなり面白かったです!
ラストシーンは「ええーっ!」って感じで、怖いというより、
ニヤッとしちゃうようなうまさがある。
「SAW」シリーズにも人形が出てきましたが、
人形本来の不気味さをよくわかって、上手にその味を出してるなって感じ。
満点あげてもいいくらい。☆4つ。
「デッド・サイレンス」公式サイト

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は、ウォン・カーウァイ監督の初英語作品。
ノラ・ジョーンズとジュード・ロウ主演作。
NYで小さなカフェを経営するジェレミー。
彼はカウンター越しに、たくさんの男女の愛憎劇を見てきました。
そしてまた彼も別れた彼女を忘れられずにいたのです。
ある晩のこと、店のドアを開けて入ってきたエリザベスは、
つい先日この店に別の女性とやってきた自分の恋人についてあれこれジェレミーに問いただします。
どうにもならないことだとわかっていながら、そうせずにはいられないエリザベス。
それから何度も店に足を運ぶようになる。
彼女を癒してくれたのは、ジェレミーが焼いた自慢のブルーベリーパイでした。
このままじゃいけないと、エリザベスは旅に出ます。あてのない放浪の旅。
メンフィスで出会った哀しい一組の元夫婦、
ラスベガスで出会った人間不信の若くて美しい女性ギャンブラー。
さまざまな出会いと、彼らの人生が、エリザベスに気付かせるんですね。
人を愛し、人を信じるってどういうことなのかを…。
こういう映画を見ると、やっぱりお店やりたくなっちゃう(笑)。
昔、小さな喫茶店のマスターになりたかったんだよなぁ。
お客さんと語れるような雰囲気のね。今はBARやりたいってすごく思ってます。
パイは焼けないけど(笑)。勉強するかな。
エリザベスは芯の強さが、ジェレミーには本物の優しさがある。
このふたりのキス・シーンはたまらなくよかったね。おそらくみんなそう言うでしょう。
ボクの大好きな曲に、織田哲郎プロデュースのBAJIーRというバンドの「愛してる」って曲があって、
寝てる彼が愛しくて愛しくて仕方ない。キスがしたいんだけど、起こしたら悪いと思ってる。
そんな彼女が、「そっとそっと寝顔にキスをする」んですよ。
チュッとしたくて仕方ないんだよね(笑)。起こさないようにそーっとね。
歌詞の中の“そっと”を2度繰り返すところにそんな気持ちがよーく表れていて、
たまらなく好きな1曲でもあります。
それを思い出させるようなキス・シーン。最近ないなぁ(笑)。
対して、エリザベスが旅の途中で出会う人たちはまた別の意味でキャラが強いし、人生が重い。
逆境でもがいている姿に関わりつつも客観視してる彼女がいます。
客観視してたからこそ大切なことに気付いたんだと思います。
ジュード・ロウはカッコいい!
職人さんぽくなくパイ焼いちゃう姿が似合う男ってそういないんじゃない?
ノラ・ジョーンズはご存じ、02年のデビュー・アルバムでグラミー賞8部門を獲得し、
その後も大活躍の女性シンガー。初挑戦の映画でも見事な演技を見せています。
すべてにおいてよかったですョ。満点の☆5つ!
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.3.14

「犬と私の10の約束」☆☆☆
「コントロール」☆☆☆
「ビルマ、パゴダの影で」☆☆☆
「ブラブラバンバン」☆☆
「魔法にかけられて」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

またこのところ「ザ・グレイテスト・ヒッツ!」用に、
積極的にプレゼントグッズをもらうようにしています。
よかったらNACK5かUNIQueを聞いて、ガンガン応募して下さいね。お待ちしてます!
さ、今週は5本です!

「犬と私の10の約束」は、タイトル通り、犬と人間の絆を描いた感動作。
函館に住む14歳のあかりには、優しい両親がいました。
ところが母が体調を崩して入院してしまいます。
自分の命がそう長くないと悟った母は、あかりのために、
近所のコンビニのおじさんに頼んで、
ゴールデンレトリバーの子犬を庭に放ってもらうんですね。
案の定、子犬を飼いたいと言い出し、ソックスと名付けたあかり。
そんなあかりに母は、
「犬を飼う時には『10の約束』をしないといけないの」と教えるのです…。
あかり14歳と22歳、場面は大きくふたつに分かれます。
14歳のあかりを演じるのは福田麻由子。
あの「L change the world」にも出ていた女の子です。
22歳のあかりは田中麗奈。
このふたり、以前から思ってたけど、本当によく似てるんですよね(笑)。
お母さん役には高島礼子。目の表情としゃべり方にアクが強い女優さんですが(失礼!)、
でも最近母親役多いですよね。
その母親が語る、犬との『10の約束』というのが泣けるんですよ。
あかりは獣医になって家を離れ、動物園で働いてるからソックスと疎遠になる。
でも年老いたソックスが危ないと父親から連絡が入り、慌てて帰ってくる。
そんなあかりが改めて思い出す母の言っていた『10の約束』。
犬を飼ってる人にはたまらないはず。
ボクは正直「いぬのえいが」の方が泣けたかな。☆3つ。
「犬と私の10の約束」公式サイト

「コントロール」は、イギリスの伝説のバンド、
ジョイ・ディヴィジョンのボーカル、イアン・カーティスの波乱の人生を描いた話題作。
イギリス北東部のマックズフィールドに生まれ育ったイアン・カーティス。
夢見ることさえ困難な街で、16歳の彼が拠り所にしてたのは大好きな音楽でした。
デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド。
貪るように聴いていたイアンは、ミュージシャンになろうと決意します。
イアンにはデボラという彼女がいました。19歳で結婚、子供も授かるんですが、
生活をしていくためには収入を得なくてはいけないと、バンド活動の傍ら、
地元の職業安定所の職員として働くんですね。
一方でバンドも順調。やり手のマネージャーが付き、人気テレビ番組にも出演、
レコード会社との契約も実現するなど順風万帆に見えたのですが、
若いイアンにとっては、派手な音楽の世界にいる自分と、
ごく普通の夫であり父親である自分とのコントロールが効かなくなっていたのでした…。
イアンはベルギーから来た女性インタビュアーのアニークと恋に落ち、
ふたりは愛人関係になる。田舎街の妻デボラには何ら魅力を感じなくなってしまう。
でもイアンの人間臭いところは、
そこでデボラとキッパリとは別れられないところなんでしょうね。
またイアンには持病があって、よく発作を起こして倒れるんです。
もちろん舞台でもそう。ところがパンクバンドだから、
皮肉なことに観客はそれでさらに盛り上がる。
イアンの苦悩がすべてバンドを上へ上へと持ち上げていったんですね。
アメリカツアーに出発するその日に、イアンは自ら命を断ちます。
享年23歳。残されたメンバーで作ったのがニューオーダーというグループで、
その日のことを歌ったのが大ヒット曲「ブルー・マンデー」なんですよね。
5月にはドキュメンタリーでジョイ・ディヴィジョンを追った映画が日本で公開予定だとか。
彼らは今年再び脚光を浴びるかも知れません。☆3つ。
「コントロール」公式サイト

「ビルマ、パゴダの影で」は、ビルマの暗部を描き出した作品。
黄金の国・ビルマ。
しかし、民主化の象徴であるアウンサンスーチー氏の軟禁や、
日本人カメラマン長井健司氏の銃撃など、軍事政権による抑圧はすごいものがあると。
それを暴こうと危険を覚悟で奥地に潜入したスイス人監督のアイリーヌ・マーティ女史。
彼女が撮影した、迫害され、生き延びてきた少数民族たちの
生の声が聞けるドキュメンタリー作品なんです。
一番ショックだったのは子供の顔でした。笑顔がない。
瞳の奥に希望がまったくない。
日本なら、子供にカメラ向けたらピースとかしながら、
我も我もと笑顔で集まるじゃないですか。そんな“子供らしさ”は微塵もない。
そして将来の夢はと聞くと、兵士になって復讐することだと言うのです。
愕然としますよ。でもこういう現実を知るのもまた大切なことなのです。
一見の価値ありです。☆3つ。
「ビルマ、パゴダの影で」公式サイト

「ブラブラバンバン」は、人気マンガの映画化。安良城紅主演作です。
中学3年生の白波瀬(しらはせ)歩はブラスバンド部でトランペットを担当していました。
ある夜、彼は不思議な光景に出会います。
うっとりとした表情でホルンを吹く女性に合わせ、
トランペットを吹いたところ、その女性が天に舞い上がっていったのです。
高校に進学した白波瀬は、教室でひとりホルンを吹く彼女と再び遭遇。
またまたトランペットを合わせると、上気した顔で白波瀬に覆い被さり、
制服を脱がそうとしてくるではありませんか。
そう、彼女は素晴らしい音楽に触れると我を忘れ、
ハレンチな行動に出てしまう女子高生だったのです…。
なんてすごい設定でしょ(笑)。彼女の名は芹生(せりゅう)百合子。
彼女がきっかけで辞めようとしていたブラバンをもう一度始める白波瀬。
ヤキモチを焼くクラスメイトがいたり、学園モノですから、
いろんなキャラが出て来て、一応ブラバンの甲子園とも言うべき普門館を目指します。
ただちょっとやっぱり設定が突飛ですよね。
マンガを読んでた人なら楽しいかも知れないけど。
一連の真面目なブラバン系青春モノを期待して行っちゃったから、アレって感じ。
勝手な肩透かしでごめんね、☆2つ。
「ブラブラバンバン」公式サイト

「魔法にかけられて」は、ディズニー映画。
ディズニーがディズニー自身にツッコミを入れるという、ある意味画期的な作品です。
初めはアニメの世界。
アンダレーシアに住む美しい娘ジゼルは、
森の動物たちと“真実の愛のキス”を交わす運命の王子さまとの出会いを待つ毎日。
そんなある日のこと、怪物がジゼルを襲います。
美しい歌声が悲鳴に変わったのを聞いて駆け付けたのはエドワード王子でした。
怪物を退治したエドワード王子。ふたりは恋に落ちます。
しかしお城には意地悪な継母のナリッサ女王がいて、
もし王子が結婚したら自分の地位が危ないと、
お城に来たジゼルを井戸の中に突き落としてしまうんですね。
実はその井戸、現代のNYと繋がっていたのです。
で、ここからは実写。NYのド真ん中のマンホールからポンと飛び出したジゼル。
迷惑なコスプレ女だと人々の冷たい視線を浴びながら、なんとか探し出したお城。
それはカジノの看板でした。
そんなこととはつゆ知らず、なんとか登って、開くはずのない扉を叩くジゼル。
足をすべらせ落下する彼女をキャッチしたのは、
自身もバツイチの離婚専門弁護士ロバートだったのです…。
ロバートにはモーガンというひとり娘がいて、
さっさとどっかに追いやりたいロバートとは逆にモーガンはジゼルが大好き。
そんなこんなでドタバタやってると、おとぎの国からエドワード王子に、リスのピップ、
女王の側近、はたまた女王まで、ジゼルを追いかけてやってくるんですね。
そこから始まるありえないドタバタ劇!
あんまり期待しないで行ったのですが、逆にそのせいか、ゲラゲラ笑っちゃいました。
もらった資料に「ファンタジーの世界お約束」というのがあって、
1:プリンセスの親友はかなりおせっかいな森の動物たち。
2:プリンセスと王子は初対面なのにいきなりデュエットで歌える。
3:歌い終わったふたりは瞬時に恋に落ち、結婚の約束を交わす。
4:魔女は魔法が使えるのにプリンセスに使うのはなぜか毒リンゴ。
5:真実の愛のキスはどんな呪いも打ち砕く最強の魔法。
ね、ツッコミどころ満載でしょ(笑)。
白雪姫と眠れる森の美女とシンデレラを合わせたようなお話に、
ディズニーが自らツッコミを入れちゃうんだから最高に面白かったです。
大人も子供もと言ってしまいがちな作品ですが、敢えて大人だけでと言っておきましょう。
存分に楽しんで下さい。☆5つ!
「魔法にかけられて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.3.6

「アメリカを売った男」☆☆☆
「ジャンパー」☆☆☆
「接吻」☆☆☆☆
「ダージリン急行」☆☆☆
「裸足のギボン」☆☆☆
「花影」☆☆
「プライスレス・素敵な恋の見つけ方」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近アメリカの戦争映画が増えていて、
そのほとんどがイラク戦争への自省というか、一石を投じる内容です。
「大いなる陰謀」、「告発のとき」、「さよなら。いつかわかること」などなど、すごく多いです。
公開の時期が来たらまたここで感想を書きたいと思います。
日本も反省すること、いっぱいあるんじゃないかなぁ?
さ、今週は7本です!

「アメリカを売った男」は、実際に起きたスパイ事件の映画化です。
FBIの訓練捜査官であるオニールは、たいくつな監視任務ばかりを担当。
「早く一人前になりたい」。
そう思っていた矢先に、新設部署“情報保護部”への転属を言い渡されます。
出世欲の強いオニールは異動を喜んだものの、そこでの仕事は、
彼の上司となる「ロバート・ハンセンを徹底的にマークせよ」というものでした。
「ハンセンの行動をとにかく逐一報告すること」。
単なる堅物の変人といった感じのハンセンですが、怪しいところは微塵も感じられない。
指令に納得ができないオニール。
ところが、上層部に監視の理由を問いただして返ってきた答え、それは耳を疑うものだったのです…。
そう、20年以上に渡り、ハンセンがアメリカの機密をロシア圏に売っていたと。
そこからオニールとハンセンが互いの家族も巻き込んで、騙し合い、探り合っていくストーリー。
2001年2月18日、実在のロバート・ハンセンはスパイ容疑で逮捕されています。
一方のエリック・オニールもまた実在の人物。映画は弁護士に職を変えたオニールの提案で実現したそう。
“アメリカ最大の屈辱”とも言われる事件の映画化。
オニールもまた“アメリカを売った”ことになるんじゃないの?
と考えるのはボクだけでしょうか。☆3つ。
「アメリカを売った男」公式サイト

「ジャンパー」は、奇想天外なSFアクション・アドベンチャー。
15歳のデヴィッドはどこにでもいる普通の男の子。
クラスメイトのミリーが好きでプレゼントを手渡しますが、同級生の男子が冷やかして、
それを凍った川へと投げてしまうんですね。
拾いに行くデヴィッド。すると川の氷が割れて、デヴィッドは川の中へ。
分厚い氷の下に流され、もうここまでかと思った瞬間、
彼は通い慣れた図書館の床にびしょびしょになって横たわっていたのです。
デヴィッドにとって、これが最初の“ジャンプ”でした。
気付けば瞬間移動能力は高まり、ある日、彼は銀行の金庫室へジャンプ。
大金をせしめて再びジャンプ。こうしてデヴィッドの華やかな暮らしが始まりました。
ところが地球上にジャンパーは何人もいて、その反対組織パラディンの存在もありました。
ジャンパー狩りをするパラディン。デヴィッドもパラディンの標的にされてしまうのですが…。
冒頭“奇想天外な”と記しましたが、まさにそんな設定。
そもそもSFなんだからそれでいいんだけどね(笑)。たぶん好き嫌いの次元でしょう。
全米では堂々の初登場No.1。
それでもピンと来ないのは、なかなか日本脱出ができないボクのやっかみかな(笑)。
ちなみにこの「ジャンパー」は、7日金曜日の公開です。☆3つ。
「ジャンパー」公式サイト

「接吻」は、小池栄子主演作。“狂気の愛”を描いた異色作です。
閑静な住宅街。坂口秋生は白昼堂々、何の関係もない家に上がり、
幼い女児を含む家族3人を撲殺。さらに自らが犯人だと警察に通報し、
マスコミにも居場所を伝え、逮捕の瞬間をTVカメラに撮らせたのです。
その時、坂口の顔には不敵な笑みが浮かんでいました。
その様子をテレビで見ていたOLの遠藤京子は、一瞬にして坂口に惹かれてしまうんですね。
なぜなら坂口の笑みに、自分と同じ絶対的孤独と絶望感を見たから。
京子は、事件の詳細はもちろん、坂口の生い立ち、これまでの人生を調べ、裁判を傍聴します。
完全黙秘を続ける坂口。
京子は坂口の担当弁護士である長谷川に、ある頼み事をします。
「あなたの声が聞きたい」。
差し入れと共にそう書いた手紙を坂口に渡して欲しい。そう頼んだのでした…。
そこから物語は意外な方向に進んで行きます。これ以上は書かない方がいいかな(笑)。
京子もいわゆるいじめられ系のOL。でも妙な気の強さがあるんです。
口をキッと閉じ、ジッと見つめる目。
瞬きの回数が少ない小池栄子の目は、そんな“狂気”をうまく表現してました。
あんまり期待していなかったから、予想以上に面白かったなぁ。
ちなみに坂口には豊川悦司、長谷川には仲村トオル。
タイトルが示すように、この映画を象徴するようなキスシーンがあるのですが、
あなたはそれをどう感じるでしょう?見たら教えて下さいねっ。☆4つ。
「接吻」公式サイト

「ダージリン急行」は、兄弟3人の一風変わったロードムービー。
父の死から1年。フランシス、ピーター、
ジャックの3兄弟はずっと絶交状態にありました。
兄弟のあり方はこれじゃいけないと考えた長男のフランシスの呼び掛けで、
3人はインドを旅することになります。
乗った列車はダージリン急行。
プライベートではそれぞれに問題を抱えた状態の3人が繰り広げる珍道中。
旅の先には果たしてどんな出来事が待っているのでしょうか…。
相変わらずとっくみあいのケンカもする3人ですが、この旅を“心の旅”と位置付け、
兄弟の絆を取り戻し、また今置かれている目の前の現実ともしっかり向き合おうと誓い合っていました。
ただ、家を出た母親がヒマラヤで尼僧になってたりと、こちらも設定は“奇想天外”(笑)。
それがウェス・アンダーソン監督のいいところじゃないかと言われてしまいそうですが、
この作品も“好き嫌い”はわかれるかも。
うひゃうひゃ笑ってる人もいたけど、ボクは正直ちょいハズレだったかな(笑)。☆3つ。
「ダージリン急行」公式サイト

「裸足のギボン」は、韓国映画。実話を元にしたストーリーです。
韓国の田舎の村に住むギボン。実年齢は40歳なんですが、
幼い頃に患った熱病の影響で知能は8歳のまま。
そんなギボンはお母さんが大好き。ギボンの1日は母さん孝行のためにあるようなもの。
裸足のままで村中を駆け回り、
ご近所の手伝いをしてはわずかばかりの小銭をもらって80歳の母親に届ける。
そんな彼を、村の人は“裸足のギボン”と呼んでいたのです。
ある日のこと、村のマラソン大会に出くわしたギボン。
ふと下を見るとゼッケンが1枚落ちているではありませんか。
こりゃ大変だと、ゼッケンの無い選手を探して走るギボン。
次々選手を抜き去り、ついには先頭に立ち、そのまま1着でゴールイン!
毎日走っていたギボンには、相当の走力がついていたのです。
これを知った村長が、村の復興のためにギボンを全国ハーフマラソンに送り込もうと考えます。
ギボンも、歯が悪くてうまく食事を取れないお母さんのために、
賞金で入れ歯を買ってやるんだと超ノリ気。
早速、村長とギボンとの2人3脚での特訓が始まったのです…。
ところがギボンには心臓に疾患があってドクターストップがかかる。
それでも母親に入れ歯を買ってやるんだと走るのを辞めないギボン。
そんなギボンの姿に村のみんなも村長のドラ息子も、ギボンを応援していきます。
村長の腹の中にも、実は深い考えがあったりもして。
ギボンが、ルー大柴+さかなくんみたいで(笑)、
ちょっと日本人のボクらにはTOO MUCHなキャラに思えてしまうかも知れません。
でも、幸せってなんだろう?心の豊かさってどういうことだろう?というのを教えてくれる1本。
見たらあなたもきっと親孝行がしたくなるはずです。☆3つ。
「裸足のギボン」公式サイト

「花影」は、日本と韓国を結んでの恋愛映画。
人気ジュエリーデザイナーの五木尚美は、韓国にも進出しようと釜山へ。
ところがまとまりかけていた話が破談になってしまうんですね。
在日3世の尚美は、祖先が眠る霊園に墓参りに行きます。
ところがどのお墓が祖先のものやらわからず困っていた尚美を、
写生に来ていた小学生たちと若い男性教諭のスンウが手助けしてくれました。
お礼を言う尚美。そんな尚美にスンウは一目惚れ。
名刺を渡して立ち去った尚美の元に一通のラブレターが届いたのは、
帰国してしばらくしてからのことでした…。
日本ではカメラマンと不倫の関係にあった尚美。
写真週刊誌にスキャンダルをスクープされてイメージがガタ落ち。
仕事も恋愛も八方塞がりという時に届いたラブレター。タイミングがグーッ(笑)。
気持ちを切り替えなくてはならない尚美の現状はわかるんだけど、
そのことだけでそこまで決断できる?と思っちゃうようなところがあって、
それがどうも納得できないというか、説得力を欠くんですよね。
初めに結末ありきの印象は拭えなかったかな。ごめんなさい、☆2つ。
「花影」公式サイト

「プライスレス・素敵な恋の見つけ方」は、フランスのラブコメディ。
玉の輿に乗ることだけを考えているイレーヌは、
年上の金持ちとリゾートにバカンスに来ていました。
高級ホテルの深夜のバー。そっと部屋を抜け出して来たイレーヌは、
ソファに寝ているひとりの若い男性を見つけます。彼の名はジャン。
イレーヌは勝手に金持ち男と勘違いをしますが、
実はジャンはこのバーのバーテンダー。
わがままなお客に無理矢理付き合わされ、
飲まされてついソファで寝てしまってたのです。
ところがイレーヌのあまりの美しさに、ジャンはセレブの客を装い、
カウンターに入ってカクテルを作ってイレーヌに振る舞います。
イレーヌもまさかバーテンダーだとは思わないから、
シェーカー捌きに見とれちゃったりして。
挙げ句の果てには空いてるスイートルームを「ボクの部屋だ」と言って関係を持つのですが、
翌朝従業員がお客を連れて部屋の説明に来たものだからさぁ大変!
イレーヌも恋人に朝帰りを咎められて、決まりかけていた婚約は破談に。
事実を知って怒り心頭のイレーヌでしたが、
ジャンは逆に恋の炎が燃え上がるばかり。
チェックアウトしたイレーヌを追いかけて行くのでした…。
その後、ジャンはイレーヌのそばにいたいがために、金持ちの有閑マダムのヒモになるんですが、
これが意外と母性本能をくすぐるのか、モテるんです。
ジャンにうまく貢がせる方法を伝授するイレーヌ。
こうしてふたりはまた徐々に接近していきます。
時に強者弱者の立場が入れ替わったり、逆にイレーヌがヤキモチをやいたりもして。
なんだ、なんだかんだ言ったって気が合うんじゃんって感じで面白かったですョ。
ここにもよく書いてますが、近頃フランス映画をちょっぴり見直し始めてます(笑)。
こじゃれたユーモアがいいんですよね。
タイトルは某金融系カードのコマーシャルからじゃないかなと(笑)。
ゲラゲラ笑うんじゃなく、ニヤリとしたい人は是非!☆4つ。
「プライスレス・素敵な恋の見つけ方」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.2.23

明日への遺言」☆☆☆☆
「地上5センチの恋心」☆☆☆☆
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、映画の試写でついウトウトしてしまい、2時間の映画なのに、
気付いたら1時間半が過ぎてました。あぁごめんなさい(>_<)。
さ、今週は3本です!

「明日(あした)への遺言」は、第二次世界大戦における実在の東海軍司令官、
岡田資中将の軍事裁判の物語です。
終戦後の昭和23年、岡田資中将は、B級戦犯として巣鴨プリズンに拘留されていました。
起訴理由は、アメリカ人捕虜38名の処刑。
中将の部下も合わせて20名がこの罪で裁判にかけられていたのです。
しかし、岡田中将は覚悟を決めていたんですね。
というか、自分の信念を曲げることなくしっかり主張すべきは主張しようと。
そしてできれば部下の命は救いたいと。
「責任の筋を辿って行けば、司令官たる私の方へ来る。
 司令官は、その部下が行なったすべてについて、唯一の責任者である」(資料より)と述べて、
自らが全責任を負おうとしたのです…。
妻や子供たちも裁判を傍聴する中で、ただ目と目で気持ちを伝え合う岡田中将。
それを潔しとする家族たち。
“命を懸けても、愛する人たちへ遺したいものがある。
極限状況において、誇り高く生き抜いた一人の男と
それを見守る家族との深い絆と愛の実話である”。
これが渡された資料の作品紹介の冒頭に書かれていた見出し。まさにその通り。
現代において、人がなくしてしまった誇りや品格の映画です。
岡田資中将の毅然とした態度は、戦勝国アメリカの検察側や裁判官の心をも打ちます。
それでも待っていた判決は…。
藤田まこと主演、小泉堯史監督作品。岡田中将に敬礼!☆4つ。
「明日(あした)への遺言」goo映画ページ

「地上5センチの恋心」は、フランスのラブ・コメディ。
夫に先立たれたオデットは、美容師の息子と、反抗期の娘を持つ未亡人。
デパートの化粧品売り場で働く彼女の楽しみはというと、
ベタベタの恋愛小説家バルタザール・バルザンの小説を読むこと。
そのバルザンが近所の書店でサイン会を開くことになったと知って、
オデットはウキウキソワソワ。
一世一代のオシャレをしてサイン会に行ったのですが、
緊張のあまり自分の名前すら言えないオデット。
あまりの失態に落ち込む彼女でしたが、別の場所でのサイン会に、
今度は失敗しないようにとファンレターを書いて持って行きます。
そして手渡すことに成功。ところが、この手紙が後にふたりの仲を結ぶことになるのです…。
新作を酷評され、妻の浮気まで発覚したバルザンが、
落ち込んだ時に読んだのがオデットのファンレター。
傷ついた心にしみた訳ですな。恋愛にこんなタイミングは重要だったりするものです。
フランス映画はどちらかというと苦手なボクですが、最近面白いのによく出会います。
これもそんな1本。 確かにフランス人らしい個人主義も出てますが、
そんなの全然気にならない大人のラブ・ストーリー。
主演はフランスを代表する女優のひとり、カトリーヌ・フロ。
覚えておいて下さい、また近々出てきますから。
面白かったですョ!☆4つ。
「地上5センチの恋心」公式サイト

「ライラの冒険 黄金の羅針盤」は、イギリスのファンタジー小説の映画化です。
この世に無数に存在するパラレル・ワールド。似ているけど、どこか違った異世界。
物語の舞台はイギリスのオックスフォードなんですが、我々の世界とは違い、
人はみな動物を1匹連れているのです。これは“ダイモン”と呼ばれる守護聖霊。
自分を写し出す鏡のような一生の相棒でもあります。
ここに暮らすひとりの少女がいました。彼女の名はライラ・ベラクア。
ライラのダイモンはオコジョの姿のパンタライモン。
自由奔放な12歳のオテンバ娘には、パンタライモンもお手上げでした。
ライラは早くに両親を亡くし、唯一の肉親である伯父のアスリエル卿の口ききで、
今はオックスフォード大学の寮で暮らしていました。
そんなある日のこと、子供たちが突如姿を消す事件が頻発します。
これにはコブラーという集団が関わっているとか。
そんな事件ですら“コブラーごっこ”にして遊んでしまうライラだったのですが、
そんなライラを引き取りたいと、上流階級の実力者、コールター夫人が名乗りをあげます。
美人で冒険家のコールター夫人に憧れの念を抱くライラ。
ついにこの日が来たかと、寮長がライラにあるものを手渡すんですね。
それは、黄金に光り輝く羅針盤だったのです…。
「ロード・オブ・ザ・リング」、「ハリー・ポッター」、「ナルニア国物語」に続く、
イギリス・ファンタジーシリーズの第4弾。
原作は95年に第1部が発表されたフィリップ・プルマンの児童文学シリーズです。
ライラはその後、コールター夫人に疑いの目を向けます。そして知るコールター夫人の秘密。
そう、彼女こそがコブラーのリーダーだったのです。
夫人の目的はライラの持つ黄金の羅針盤。これは真実を示す羅針盤。
ただし、これを読み解けるのは“運命の子”のみ。
そう、ライラこそが、その“運命の子”だったのです。
その他にも、魔女族、鎧熊族、ジプシャンと呼ばれる水上生活族など、
いろんな種族がダイモンを引き連れて登場します。
このあとシリーズは一応第3作まで予定されてるとか。いかにも序章だなといった感じの今作品。
この手のファンタジー映画好きの人は、先々のためにもチェックを忘れないように。☆3つ。
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.2.23

「アメリカン・ホーンティング」☆☆☆
「いつか眠りにつく前に」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今月はよく試写見てますョ。20日までで13本。なかなかのペースでしょ(笑)。
映画好きのボクにはありがたいことです。
できるだけたくさんの場面で、できるだけたくさん紹介できればと思ってます。
さ、今週は2本です!

「アメリカン・ホーンティング」は“真実に基づく”ホラー映画。
古い屋敷に住む母と娘。娘は毎晩のように悪夢にうなされていました。
母が屋根裏部屋で見つけた古い手紙によると、
この家には恐ろしい秘密が隠されているというのです。
1818年、この家には父母と兄妹の4人が幸せに暮らしていました。
ところが土地を巡るトラブルから、ある女性の怒りを買うことになります。
噂によればその女は魔女だとか。
「呪ってやる…」と脅しを受け、暫くすると、
美しい娘に悪夢のような出来事が次々と襲いかかるようになるのでした…。
と、古い時代、この家に起こった恐ろしい出来事を中心に物語は進みます。
聞けば“美少女憑依系”というホラー映画のジャンルがあるのだそうで。
「エクソシスト」なんかもそう。これもそんな1本です。
ただこの映画、最後まで見てもどうにもわかりづらい。難解なんですよ。
ボクも自分の解釈が合っているのか、未だに自信がありませんから(笑)。
そんな遠回しな表現がどうなのかなぁと。
でもホラーには欠かせない「キャリー」のシシー・スペイセクが母親役で出演するなど
マニア心をくすぐるキャスティングもあったりして。
おそらく単館のレイト・ロードショーですから、
日本においてはかなりマニアックな1本なんでしょうね。
マニアだというあなた、解読してみて下さい。☆3つ。
「アメリカン・ホーンティング」goo映画ページ

「いつか眠りにつく前に」は、豪華女優陣が出演するヒューマン・ドラマ。
病に倒れ、死の床にあるアンにはふたりの娘、コンスタンスとニナがいました。
混濁する意識の中で、アンはハリスという男性の名前を口にします。
しかしコンスタンスもニナも、ハリスという人物のことはまったく知りません。
さらにふたりを驚かせたのは、
「ハリスと私がバディを殺したの」という母アンの言葉でした。
そこから物語は40数年前の、アンの青春時代にさかのぼって行くのです…。
ずっと心の奥にしまってきたこと。
それは若かりし頃の、熱く、そして悲しい恋の物語だったのです。
最期の時に知る母の秘密、そして苦悩。
でもそんな昔の出来事が、最後の最後に娘たちに希望と勇気を与えるのです。
と、これだけじゃよくわからないでしょうね(笑)。
詳しく書こうかどうしようか、実はかなり迷いました。でもやめておきます。
この映画、正直女性の映画です。ボクにはわかるけどわからない。
これが率直な感想です。試写室の女性の多くは号泣してました。
「時の流れってすごく大きいんですね…」と。わかるけどわからない(笑)。
間違いなく女性の映画。だからこそ男性も見てみてはいかが?と思ったりもします。
豪華女優陣とは、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、メリル・ストリープ、
グレン・クローズ、クレア・デインズなどなど。
名女優たちの名演技を堪能して下さい。
☆はごめんなさい、あくまで男目線です。☆3つ。
「いつか眠りにつく前に」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.2.15

「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」☆☆☆☆
「クリアネス」☆☆☆
「奈緒子」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写の日にちを間違えるって切ない…。
いくつか重なってて、熟考して選んだ1本なのに、
「それは違う作品みたいですが…」と受付で言われた瞬間、しまった!と。
見れば1日ズレてたりするのです。あぁ…(笑)。
さ、今週は3本です!

「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」は、ドキュメンタリー映画。
アニー・リーボヴィッツは女性フォトグラファー。
あなたもきっと彼女の写真を目にしたことがあるはず。
例えば、妊娠してお腹が大きくなっていたデミ・ムーアのヌード写真だったり、
ジーンズに黒いセーターで横になってるオノ・ヨーコに
一糸まとわぬ姿で抱き付くジョン・レノンの写真だったり。
この映画はそんな写真を撮ってきたアニー・リーボヴィッツの半生を描いた作品です。
アニーは1949年、コネチカット州ウォーターベリーに、
空軍大佐の父とモダンダンサーの母の娘として生まれます。
カメラ好きだった母親の影響で、アニーも自分のカメラを持つようになり、
サンフランシスコで本格的な写真の勉強を始めます。
そしてローリングストーン誌のフォトグラファーになります。
出版デザイナー界のカリスマ、ビア・フェイトラーに師事。
そんな彼女から痛烈なダメ出しをもらうんですね。
それは単に被写体としてミュージシャンを並べただけの作品。
いたく感じ入ったアニーは、それから写真に“コンセプト”を考えるようになったのです。
写真の中にストーリーやメッセージを写し込むことに成功したアニーの名は、
業界中に知れ渡り、数多くのセレブリティが「アニーが撮ってくれるなら」と、
自らすすんでスケジュールを空けてくれるほどの写真家になっていきました。
ミュージシャン、スポーツ選手、映画スター、政治家、実業家、ダンサーなどなど、
あらゆるジャンルの著名人が、アニーの前でなら自らをさらけ出す。
映画の中で、被写体となった人がアニーについて語るのですが、
その中にはアメリカ大統領選の予備選で話題の、あのヒラリー・クリントンもいます。
さらに衝撃だったのは、前述のジョンとヨーコの1枚。
あの写真を写したわずか数時間後に、ジョン・レノンは射殺されているのですから。
この映画の中では、アニーの作品についてだけではなく、
彼女自身ももちろん描かれていて、アメリカを代表する知識人のひとり、
スーザン・ソンタグという女性との恋、そして死別。
50歳を越えての出産など、波乱の半生を見ることができます。
アニー・リーボヴィッツはレンズを通して何を見、何を表現してきたのか。
もし自分が彼女に写真を撮られるとしたら、そこに一体何が写し出されるのか。
そんなことを想像しながら見るのも楽しいかも知れませんね。☆4つ。
「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」公式サイト

「クリアネス」は、人気ケータイ小説の映画化。
どこにでもいるような普通の女子大生、さくら。
ところが彼女は“売り”、つまり売春をしてお金を稼いでいました。
さくらにはコウタロウという今風の彼氏がいます。
コウタロウはもちろんさくらの秘密を知りません。
自宅兼“仕事場”のさくらの部屋の向かいには、出張ホストクラブらしき事務所が見えます。
そこに金髪の男の子がひとり。
さくらは気になる彼のことをライオンのたてがみから連想して、
勝手に“レオ”と名付けていたのです。
ある日、乱暴な客がさくらの部屋に。
危険に気付いたレオがやってきて助けてくれました。急接近するふたり。
似たようなことをしているふたりにしかわからない心の奥の奥。
でもレオは決してさくらを抱こうとはしませんでした。
その真意を知りたいさくらは、レオを“買う”んですね。
そしてふたりが向かった先は、沖縄・石垣島でした…。
と、これはホンの序章。
さくらもレオもこんな仕事は早く辞めたいと思ってる。
さくらは自分の意志で辞められるけど、レオには組織があるし、抜けられない理由もある。
さくらも優しい恋人のコウタロウを傷付けなければレオとの恋は実らない訳で。
だからこそ起こってしまうさまざまな事件。
監督はボクの中高の同級生、篠原哲雄。でも正直監督に言いました。
「ボクは感情移入ができなかったかなぁ」って。
なぜならボクにはこういう恋愛の価値観が無いから。
原作は、第1回日本ケータイ小説大賞を受賞している十和の同名ケータイ小説。
なぜすごい人気なのかと言えば、共感する若者が多いから?
だとしたら若者の恋愛観ってすっごく変わったのかも知れません。
確かめたい人は映画館に足を運んでみてはいかがです?☆3つ。
「クリアネス」公式サイト

「奈緒子」は、ビッグコミック・スピリッツに連載の人気コミックの映画化です。
12歳の奈緒子は、喘息の療養のため、長崎県の波切島に来ていました。
船の上から陸を見ると、楽しそうに走っている少年がひとり。
その船の船長の息子、雄介でした。
ところが誤って奈緒子が海に転落してしまうんですね。
その奈緒子を助けようとした船長が、なんと命を落としてしまいます。
父を返せと怒る雄介。幼いふたりの胸に、消すことのできない傷が残ってしまったのです。
そんなふたりが再会したのは6年後の東京でした。
雄介は“日本海の疾風(かぜ)”と呼ばれる陸上界の期待の新星になっていました。
奈緒子は自分があの時の少女であることを告げるのですが、
雄介は「もう誰も恨んじゃいない」と言ってその場を立ち去ってしまいます。
雄介が波切島の高校で駅伝を始めると知った奈緒子は、初めての駅伝を応援しに行きます。
ところがひょんなことから給水を手伝ってくれと頼まれた奈緒子。
走ってくる雄介は、奈緒子の手から水を受け取ってくれるのでしょうか…。
陸上部の監督は雄介の父親の親友で、当然事故のあった時も捜索を手伝っていて、
幼かった奈緒子の姿も見ていたと。
雄介も奈緒子も、あの日から時間が進んでいないんだと気付いた監督が、
夏休みの間だけ奈緒子を波切島に呼ぶんですね。
そしてマネージャーとして陸上部を手伝わせるのです。
実はそんな監督にも秘密があって…。
青春映画です。試写室で会った知り合いの女性は、
「アタシ、陸上の長距離やってたから、よーくわかるんだ」とウルウルしてました。
純粋な頃の自分にもう一度会いたい人におすすめかな。
頑張るって素敵だよねっ。☆3つ。
「奈緒子」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.2.8

「アドリブ・ナイト」☆☆☆
「L change the WorLd」☆☆☆
「恋する彼女、西へ」☆☆
「団塊ボーイズ」☆☆☆
「胡同の理髪師」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

早くもGW作品の試写が始まってます。外は雪なのにね(笑)。月日の経つのも早いわけだ。
さ、今週は5本です!

「アドリブ・ナイト」は、韓国映画。
携帯電話を片手に繁華街に立つひとりの女の子。
すると彼女の元に2人連れの男が近付いてきます。
「君、ミョンウンだろ?」。
いくら否定しても信じて疑わない彼ら。
実はミョンウンは10年前に家出をしていて音信不通。
その父親が末期のガンで一目だけでも会わせてやりたいと、
ミョンウンを探していると言うのです。
「人違いでもいいから身代りになって会ってやって欲しい」。
突然の申し出に戸惑いながらも2人の頼みを了承する彼女でしたが…。
原作は日本の平安寿子の同名短編小説。以前も書きましたが、
日本の原作を韓国で映画化するというのがひとつのトレンドになっているようです。
彼女がミョンウンなのか違うのかは最後の最後にわかります。
「アドリブ・ナイト」とは、それまでの筋書きのないドラマのこと。
ミョンウンの実家では遺産相続のドタバタやら、人の優しさやら、
いろんなことに接することになります。果たして彼女の正体は?
探りながら見てみて下さい。☆3つ。
「アドリブ・ナイト」公式サイト

「L change the WorLd」は、
大ヒット映画「デスノート」シリーズのスピンオフ作品。
名前を書けばその人間の命を奪える悪魔のノート“デスノート”。
それを手にした夜神月(やがみライト)は、自分が新世界の神だと思い込むようになり、
キラと名乗り、次々と人を殺していきました。
卓越した頭脳で犯罪に立ち向かうLは、
「キラは97%の確率で日本にいる」と弾き出し、来日。
キラとの頭脳戦が繰り広げられ、Lが勝利。
ところがその代償は大きく、Lに残されたのは23日というわずかな余命だったのです。
と、これが「デスノート」2作の簡単な流れ。
今作はそれとは別ながら、ほぼ同時期に起こったもうひとつの事件に臨むLの物語なのです。
タイでひとつの村がすべてを焼き消すかのように消滅しました。
そこで行われていたのは生物化学兵器による人体実験。
日本の偏った思想のグループが、地球を守るには増え過ぎた人類を減らすしかないと、
ウイルスを製造したのです。
ただし実用化するには自らを守る抗体が必要で、それはまだできていませんでした。
ところが、日本の二階堂博士が抗体を作ることに成功してしまいます。
信頼していた助手の久條希実子こそが、その思想家グループのリーダーだとも知らずに。
人類絶滅の危機はすぐそこまで近付いていたのでした…。
その二階堂博士は命を賭して抗体を破棄するんですが、今度は娘の真希が狙われLの元へ。
またタイからはBOYと呼ばれる唯一の生き残りの少年がLの元に。
Lはこのふたりを守りつつ、テロ集団に立ち向かって行くというストーリー。
ちなみに“スピンオフ”とは、
“ヒット作の登場人物や設定はそのままに、別に作った新しい物語”のこと。
ですから、Lに残された23日という運命も変わってはいないのです。
「デスノート」作品で、キラ以上にLに魅せられたファンにはたまらない1本でしょう。
神秘的なLをかなり掘り下げてますからね。
その「デスノート」シリーズを見ていなくても、まったく別物として楽しめる1本。
安心して劇場に足を運んで下さい。☆3つ。
「L change the WorLd」公式サイト

「恋する彼女、西へ」は、タイムスリップもの。
33歳のOLの響子は、恋人との結婚よりも仕事を選んでしまって、
後悔の日々を過ごしていました。
そんな中、職場の後輩の尻拭いで、広島への出張を命じられます。
重い気持ちで出向いた広島。そこで軍服姿の奇妙な男性と出会うんですね。
聞けば名前は矢田貝亨、昭和20年の広島から来たと。
軍隊マニアだろうと最初は相手にしなかった響子でしたが、
男が道を飛び出してバイクと接触。
ケガをした彼を病院に運んでから、話を聞くようになりました。
「本当に彼はタイムスリップをしてきたのだ」。
響子はそう確信するようになったのです…。
広島に原爆が投下される日まであとわずか。
時空を超えて恋に落ちたふたりの運命や如何に、というお話。
戦争の悲惨さを描いた反戦の一面も持つ作品。
ただちょっといろんなところに無理があったかなぁと。
ラストシーンも正直、設定的に“?”でした。ごめんなさい、☆2つ。
「恋する彼女、西へ」公式サイト

「団塊ボーイズ」は、ジョン・トラボルタを始め
豪華俳優陣が出演するおじさんたちの青春コメディー。
実業家のウディ、歯医者のダグ、作家を夢見るボビー、
パソコン技師のダドリーはバイク仲間。
それぞれがそれぞれに不満と悩みを抱え、
みんな日常生活に飽き飽きしていたオヤジたちだったのです。
ある日、ウディがある提案をします。
「俺たち、旅に出ないか?ノープランで。ただ気の向くままに」。
そして始まった珍道中。しかし、行く手にはさまざまな困難が待ち受けていたのでした…。
いわゆるロードムービー。途中、暴走族のオヤジ版のような連中と遭遇。
そこから物語は一気に佳境へと入って行くのですが、
ごくごく普通のおじさんたちが気丈に奮闘する姿は笑えるものながら、どこか哀しくて(笑)。
当然アメリカには“団塊”なんて言葉はないでしょう。
原題は彼らのチーム名である「WILD HOGS(野生のブタ?)」ですから。
果たして日本のおじさん世代にはどう響くのでしょう?☆3つ。
「団塊ボーイズ」公式サイト

「胡同(フートン)の理髪師」は、中国映画。
胡同。それは北京の大通りから1本入ると広がる細い路地の街。
庶民の古い家々が立ち並ぶ、毛細血管のような胡同に暮らす93歳の理髪師、それがチンさんでした。
朝6時に目覚め、入れ歯を入れ、真っ白になった髪にクシを入れる。
そして毎日きっちり5分だけ遅れる時計の針を戻す。
規則正しいチンさんの1日はこうして始まります。
客も高齢化していて、チンさんは3輪自転車で出張サービスもしているのです。
そんなチンさんの楽しみは、近所の仲間と打つ麻雀。
頭の体操になるからと世間話をしながら卓を囲み、質素な夕食を取り、夜の9時には就寝。
もう何十年と変わらぬチンさんの生活です。
しかし1本通りを出れば、北京の街はものすごいスピードで変化を続けているのです…。
オリンピックに湧く北京ですが、変わっていく都会とそうでない地域の格差がすごい。
その境目にあるところはどうなんだろうかというと、まさにこの胡同がそう。
3輪自転車を停めて、公衆電話で電話をするチンさんの向こうにはおびただしい数の車が走り、
電話ボックスから出てきたチンさんの後ろでは若い男女が熱いキスを交わしている。
我、関せずと自転車に戻るチンさんとの対比が、今の中国をまさに象徴しているのかなと。
この映画はドキュメンタリーではありません。でもチンさんがチンさんを演じています。
内モンゴル出身のハスチョロー監督は、
チンさんのことを“世界最年長のアマチュア俳優”と呼んでいるそうですが、
12歳から始めた理髪師の仕事はさすがの一言。
クシやバリカン、カミソリを持つ手はピタリと震えが止まります。感服!
今、胡同は再開発の波に押されて次々取り壊しが決まっています。
チンさんの家とて例外ではない訳で。
若い役人が来て、壁にペンキで解体を表す文字を書いて行くのですが、
チンさんは何食わぬ顔でこう言うのです。
「なあに、どうせお役所の仕事だから時間が掛かるのさ。
  本当に立ち退く頃には私は焼き場の煙だよ」。
お見事!☆4つ。
「胡同(フートン)の理髪師」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.1.24

「母べえ」☆☆☆
「子猫の涙」☆☆☆☆
「THEM」☆☆☆
「マリア・カラス 最後の恋」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

毎日寒いですね!こんな時には身体の芯から温くなるものが欲しくなります。
“身も心も”という意味では映画なんて最適でしょう。
今週はサスペンス・スリラーもあったりして。
これは寒い冬にあえて食べたくなるアイスクリームみたいなもの(笑)。意外と美味しいかも?
さ、今週は4本です!

「母(かあ)べえ」は、山田洋次監督、吉永小百合主演作。
昭和15年、東京に暮らす野上家は4人家族。
ドイツ文学者の父・滋、母・佳代、長女・初子、次女・照美。
それぞれが父(とお)べえ、母(かあ)べえ、
初べえ、照べえと呼び合う仲の良い家族だったのですが、
ある晩、滋が政府批判の文章を書いたとの容疑で逮捕されてしまいます。
いわゆる治安維持法違反です。
その日から、父を欠いた野上家の、辛く厳しい日々が始まったのです…。
いつもより簡単にあらすじを紹介しましたが、
実はプレス資料のストーリー紹介の冒頭に、
「何もなくても、母の手があった。悲しくても、母の胸があった。」
とあるんです。
この言葉だけで十分かなという気さえする1本。
ただ、単なるお涙頂戴ではなく、佳代は強い女性です。
現代のように、権利のみを主張する上っ面の強さだけの女性ではなく、
芯から強い女性であり、母親です。
この作品を見に行く際に、期待の仕方が違うとちょっと肩透かしを食らうかも。
もっと言えば、おそらくこの時代を生きた人にとっては
たまらなく込み上げてくるものがあるんじゃないかと思うのです。
ボクは正直、ピンと来ませんでした。
戦前、戦中という時代の在りようが今とまったく違うからかも知れません。
「いやぁ、わかるなぁ」と言ったらウソになりますから。
しかし吉永小百合さんってすごいっ。
だって30歳ぐらいの役やってて、何の違和感もないのにはビックリ(@_@)。☆3つ。
「母(かあ)べえ」公式サイト

「子猫の涙」は、実在した伝説のボクサー、森岡栄治の物語。
こちらも昭和の風景を描いた1本です。
昭和43年、 メキシコオリンピックのボクシング・バンタム級で
銅メダルを獲得したボクサー、森岡栄治。
とにかく昔からやんちゃで、先輩だろうが何だろうが、
気に入らなけりゃ叩きのめしちゃう暴れん坊。
そんな栄治がボクシングと出会い、高校総体で全国優勝。
大学進学後も全日本選手権4連覇。
そしてオリンピックのメダル獲得へとつながるんですが、
その後、鳴り物入りプロに転向するも、
網膜剥離で引退を余儀なくされてしまいます。
プロでの戦績は、11戦7勝4敗。
その後プータローとなる栄治には、妻の和江と娘の治子、息子の和則がいました。
収入は和江が夜のスナックで稼いできたお金のみ。
そのお金で毎晩のように飲み歩く栄治。
さらに和江が常連客と歩いていただけでふたりをノックアウト!
ほとほと呆れ返った和江は、子供たちを残して家を出て行ってしまいます。
それからも森岡家はご難続き。街で拾ったホステスを同居させるわ、
兄の株券詐欺に荷担したとして逮捕(後に無実とわかり釈放)されるわ。
森岡家の行く末やいかに…。
娘・治子の栄治評は、「アホでスケベなエロ親父」。
担任の女性教師を口説こうとするんですから、治子にしてみればそりゃそうですよね。
でもいろんな事件が起きれば起きるほど、治子には考える機会ができて、
それに真正面から対峙することで、
父・栄治のことも少しずつ理解できるようになっていきました。
治子ちゃん、いいコです。
ほら、ニュースなんかを見てると、
罪を犯した人間の生い立ちを云々いう声もあるじゃないですか。
「環境が悪かった」と。それもわからないじゃないけど、
治子ちゃんみたいな強いコもおんねんって。なぁ。
なんで関西弁になったかというと(笑)、舞台は大阪なんです。
「じゃりんこチエ」のチエとテツみたい。
栄治にはしっかりボクサーの身体で臨んだ武田真治が、
転がり込んだホステスには広末涼子が、治子には12歳の藤本七海が扮します。
最近、ありそうでなかった浪花の昭和人情物語。
あったかい気持ちになって下さい。☆4つ。
「子猫の涙」公式サイト

「THEM(ゼム)」は、実話に基づいたサスペンス・スリラー。
02年10月、事件はルーマニア郊外で起こりました。
真っ暗な夜道を走る1台の車。運転席の母と助手席の娘は口論の真っ最中。
その時、車の前に突然何かが飛び出してきたのです。
急ハンドルを切った車は電柱に激突。母は動かなくなった車からやっとの思いで出て、
ボンネットを開けエンジンを点検していました。ところが気がつくと気配がない。
娘は心配になって外に出たのですが、母親の姿は消えてしまっていたのです。
ただならぬ気配に怖くなって車に乗り込み、 ドアにロックを掛けたのですが、
娘も母親同様、“奴ら”に襲われてしまったのです。
事件の起こった翌日、フランス人学校で教師を勤めるクレモンティーヌは休暇を取り、
作家である夫リュカの住む屋敷へと向かいます。そこは昨日の事件現場のすぐ近く。
普段は閑静な、林の中の一軒家。ところが、その日は妙な雰囲気が。
そう、“奴ら”が近付いて来ていたのです…。
よくわからない文章になってしまいましたが(笑)、きっとわからない方がいいと思います。
衝撃のラストシーンまでのお楽しみ!
ちなみにこれ、フランス映画です。☆3つ。
「THEM(ゼム)」公式サイト

「マリア・カラス 最後の恋」は、
“世界最高の歌姫”と称されたオペラ歌手、マリア・カラスの恋物語。
歌手志望だった若い頃のマリアを見出したのは、
実業家のティッタ・メネギーニでした。
年の離れたふたりでしたが信頼は堅く、その後結婚。
メネギーニの言う通り、子供は作らず、ダイエットに励み、
マリアは人気歌手としての地位をどんどん上げていったのです。
しかし、時が経てば夫婦の間にもズレが生じ始めます。
特にふたりはビジネスパートナーでもあるわけで。
少しずつメネギーニのやり方に不満を抱き始めたマリア。
そんな時、ギリシャの海運王、アリストテレス・オナシスと初めて出会います。
初めはいかにも金持ちのいけ好かない男と鼻にも掛けなかったのですが、
そこは巨大なサクセスを手にしたオナシス。
マリアは自信満々のこの男に、徐々に魅かれていってしまうのでした…。
オナシスには奥さんも子供もいる。つまりは不倫で愛人なんです。
そんなポジションに飽きたらず、正妻の座を強く求めるマリア。
「子供が欲しいの」。
純粋に女性としての幸せを望んだマリアに対し、
オナシスの気持ちは?そしてこの恋の行方は?
実在の大物同志の愛憎劇。1時間57分という映画の尺に収まり切らないというか、
料理するにはかなり難しい題材だったんじゃないかという気がしました。
場面転換で時間をつまむ感じが否めなかったかなぁと。
ただ、特に女性の間では今もオペラが息の長いブームになっています。
そこに横たわる本物のセレブの悲恋物語ですから、
言ってみればゴージャスなトレンディ・ドラマ?
女性にはたまらない1本かも知れません。
男性の目線はといえば、
「あんなに金持ちだったら俺だって!」の思いが本音かな(笑)。☆3つ。
「マリア・カラス 最後の恋」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.1.19

「シルク」☆☆
「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」☆☆☆☆
「ぜんぶ、フィデルのせい」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ゴールデングローブ賞の授賞式ボイコットで盛り上がりに欠ける今年の映画賞ですが、
その主演男優賞にジョニー・デップが“8度目の正直”で選ばれた
「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」が公開となります。
ファンは楽しみでしょうねっ。
今週はそれを含む3本です!

「シルク」は、日本、カナダ、イタリアの合作。
日本からは役所広司、中谷美紀、芦名星らが出演しています。
舞台は19世紀のフランス。村にバルダビューという男がやってきて製糸工場を設立。
村は潤ったものの、ヨーロッパの蚕が伝染病で壊滅状態に。
そこで市長の息子、エルヴェにアフリカへ渡って
健康な蚕の卵を持ってくるよう依頼をするんですね。
無事卵を持ち帰ったエルヴェのお陰で村の経済も救われたのですが、
今度はそのアフリカの蚕も病にやられたとのこと。
今度はエルヴェに、世界の果てにある日本という国に行ってくれないかと頼みます。
エルヴェには結婚したばかりの妻、エレーヌがいました。
しかし彼女の後押しもあって、日本へと旅立つエルヴェ。
そして辿り着いた幕末の日本。交渉の相手は十兵衛という闇の権力者でした。
彼には妻として仕える美しい少女がいました。一目見た瞬間、恋に落ちてしまったエルヴェ。
少女もまたしかりで、フランスに帰るエルヴェに、一通の手紙を渡したのです…。
超遠距離恋愛(笑)。
フランスにも日本語がわかる人がいて、その手紙を訳してもらったところ、
それはそれは熱烈なラブレター!
その後、何度も日本に行きたがるエルヴェを、妻のエレーヌは変だと疑うのですが。
実はこのエレーヌもまたできた女性でねぇ。
国境を越えた三角関係の行方やいかにというお話。
確かにあらゆる描写が美しいんだけど、エルヴェが少女になぜ惚れたのかとか、
細かいところの奥深さが無いんですョ…。ボクにはそれが不満だったかなぁ。
中国の映像美の戦国ワイアーアクションものとか、
フランスの抽象美的作品とかに似たテイスト。
「わかってないなぁ。だから逆に深いんじゃないか」と言われるかも知れないけど、
これは好みかな。あえてここは☆2つ。
「シルク」公式サイト

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は、ジョニー・デップ主演作。
監督は「チャーリーとチョコレート工場」でタッグを組んだティム・バートン監督です。
19世紀のロンドン。
フリート街で理髪店を営んでいたベンジャミン・バーカーには美しい妻がいました。
ふたりの間に女の子も授かり、つつましやかに普通の生活を送っていたのですが、
悪徳判事ターピンがベンジャミンの妻に横恋慕。
無実の罪を着せて彼を監獄へと送ってしまったのです。
それから15年。
なんとか脱獄に成功してフリート街に戻ってきたベンジャミンは
スウィーニー・トッドと名前を変えていました。
15年振りに見た自分の理髪店。
1階にはロンドンいちマズいと評判のパイの店を営む
大家のミセス・ラベットがいました。
彼女に家族のその後を尋ねて知った悲劇。妻は毒をあおり、
娘はあのターピンから自由を奪われて今も幽閉状態にあると言うではありませんか。
メラメラと燃え上がる復讐の炎。
彼が手にしたのは相棒とも言える商売道具のカミソリでした。
そして再び理髪店を開くスウィーニー。
ところがその理髪店は普通の理髪店ではなく、
入ったら戻れない“悪魔の理髪店”だったのです…。
1847年に舞台化されて以来上演が続いているという人気ミュージカルの映画化。
ゆえにジョニー・デップも歌います。
初体験でもある歌について、ジョニーはインタビューで「怖かった」と。
難しいんでしょうね、歌いながら演じるって。
2階で喉を掻き切られた死体は椅子がクルンと回転して1階の調理場へ。
なんとミートパイの材料になり、
それがうまいと評判になるというちょっぴりエグい部分もあったりして。
でもね、「人を呪わば穴ふたつ」。
さすがにストーリーも錬れていて、どんでん返しが面白かったです。
単なる殺人鬼と化すのがちょっぴり納得いかなかったけど。
ダークサイドのジョニーに会いたい人は是非!☆4つ。
「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」公式サイト

「ぜんぶ、フィデルのせい」は、フランス映画。
1970年のパリ。
アンナは、弁護士のパパと雑誌編集者のママ、そして弟と暮らす9歳の女の子。
パパはスペインの貴族階級の出身。何不自由なく育ったお嬢様でした。
ところがスペインで反政府運動をやっていた伯父が亡くなったのをきっかけに、
父の態度が激変。祖国のために何もしていなかった自分を反省してか、
社会的良心に目覚めたパパとママはアンナと弟を置いて、
南米チリへと旅立ちます。
そして共産主義にどっぷり浸かって帰ってきたのです。
アンナの家にはキューバ人の家政婦、フィロメナがいました。
ところがフィロメナは反共産主義。
「フィデル・カストロという男が悪いの」とアンナに教えるんですね。
もちろんそんなこと言われたってアンナにはちんぷんかんぷん。
でも「パパとママを変えちゃったのはフィデルってヤツなんだ」と。
アンナは元の生活に戻りたいと願うのですが…。
なんて、堅苦しい政治的な映画のように思うでしょうが、
実はこれが笑える作品なんですね。
“ポリティカル・コメディー”とでも言いましょうか。
パパとママは、豪邸から小さなアパートへと引っ越し、
フィロメナをクビにし、学校ではカトリックの授業を受けさせず、
反りの合わない親戚やヒゲの活動家がいっぱい家に出入りして、
ママは中絶がどうのこうのとわからないことをたくさんの女の人と話してる。
アンナにしてみれば、「ぜんぶ、フィデルのせい!」(笑)。
フランス映画が苦手なボクが面白いと言うんだから、面白いんじゃないかなぁ(笑)。
ま、これもまた好みでしょうけど。☆4つ。
「ぜんぶ、フィデルのせい」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2008.1.10

「アース」☆☆☆
「ジェシー・ジェームズの暗殺」☆☆☆
「ジプシー・キャラバン」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

さぁ今年も新作の公開がスタートします。
08年もボクが試写を見させてもらった映画を公開直前に紹介します。
よかったら映画選択の参考にしてみて下さい。
単館ものなどにもいい映画がたくさんあったりしますから!
さぁ今週は3本です!

「アース」は、地球が主役のドキュメンタリー。
今から50万年前、地球に巨大な隕石が衝突し、
その衝撃が地球に23.5度の地軸の傾斜を作ったんだそう。
美しい地球に四季はこうして生まれたらしいんですね。
その地球が今悲鳴をあげていると。
生命の営みを、壮大なる貴重な映像と共に見ていこうという作品。
北極のシロクマに始まり、動植物の生態系を眺めつつ南下し、赤道を越え、
ザトウクジラが目指す南極までの旅。
どうやって撮ったんだろうと思うような映像の数々。
カメラマンは根気強く粘ったんでしょうね。
そんなところにも思いを馳せたい1本です。
ボクはNHKの深夜のドキュメンタリーが好きで、眠れない夜はよく見てたから(笑)、
新鮮な驚きは正直なかったけど、
でも大きなスクリーンで見るとやっぱり迫力が違うなぁと。
環境問題は大上段に構えずに、小さなことからコツコツと。
やれることからやって行きましょう。☆3つ。
「アース」公式サイト

「ジェシー・ジェームズの暗殺」は、ブラッド・ピットの主演作。
19世紀後半、アメリカに実在した男の物語です。
南北戦争では南軍の兵士として戦い、
自分の人生を台無しにしたアメリカという国と戦ってるんだとも言われた
カリスマ的反逆児、ジェシー・ジェームズ。
銀行や鉄道を襲撃し、ややもすれば単なるアウトローでしかなかった彼が、
アメリカ人の間では伝説の男として語り継がれているのはなぜか。
当時から新聞や小説がジェシー・ジェームズのことをセンセーショナルに書き立てたせいか、
彼を慕って集まってくる若者も多かったと言います。
そんなジェシーの“首”に懸かる多額の懸賞金。
ところが、誰ひとりとしてジェシーを警察には売ろうとしませんでした。
危険を犯してまで行なう強盗の分け前なんて、微々たるものなのにも関わらず。
そこには“怖さと憧れ”、その両方があったんでしょうね。
ところが、人生はわからないもの。意外な男にジェシーは暗殺されてしまうのです。
犯人は、ジェシーを心から慕い、一味に加わったロバート・フォード。
20歳そこそこの若者でした。
ジェシーはロバートを弟のようにかわいがっていた。なのになぜ…。
その謎を解き明かそうとしてるのがこの映画でもあります。
正直ジェシー・ジェームズが、日本人のボクにはわからない。
アメリカの人にはピンと来るんでしょうけどね。
全編を通して灰色がかったイメージ。
ブラッド・ピットの演技は確かに秀逸でした。☆3つ。
「ジェシー・ジェームズの暗殺」公式サイト

「ジプシー・キャラバン」もドキュメンタリー。
ジプシーとは、西暦1000年頃、
インド北方のパンジャブ地方から放浪の旅に出て、
ヨーロッパやアフリカ北部に辿り着いたと言われる移動型民族のこと。
なぜ旅に出たのかははっきりとわかっていないのですが、
西に理想郷を求めたとの説もあるよう。
ところが、祖国を持たない流浪の民という見方をされたのか、
ずっと差別や迫害の対象とされ、それは今も続いているそうなんですね。
この映画は、スペイン、ルーマニア、マケドニア、
インドの4つの国から集まった5つのジプシーのバンドが、6週間に渡り、
北米のさまざまな都市を回るツアーを追いかけたドキュメンタリー作品。
さらにメンバーのそれぞれがこれまで決して明かしてはこなかった、
プライベートな部分も包み隠さず語ってくれています。
堅苦しいことを抜きにしたとしても、とにかく音楽がすごい。
歌も演奏も度肝を抜かれます。
この映画は、音楽ってやっぱり国境や人種の壁を越えるんだなというのと、
芸術ってやっぱり表現者のこれまでの生き様がいいスパイスになって
現われるんだなというのをボクらに改めて教えてくれています。
生きてることを実感させてくれるような1本ですョ。☆4つ。
「ジプシー・キャラバン」公式サイト